「蒼い師と緑の弟子 第1話(まぶらほ+風の聖痕)」キキ (2004.11.22 14:12)
 ご指摘いただいたので、こちらに移しました。
 
 
 
 
 女の子が泣いていた。なぜ泣いていたのかは、忘れた。いや、聞かなかったのかもしれない。どういう子だったのかも覚えていない。覚えているのは、その子が泣き止んで、嬉しかったことと、それが自分の魔法によるものだったということだけ。その前までのことは全部忘れているのに、それだけ覚えている

いや、忘れられないだけ

なぜならそれが「式森和樹」にとって、全ての始まりだったから。







 「おい、このサンプルはまだ使えるのか」

声が聞こえる。変な響きで

「当たり前だ。なんていってもこのB−79は」

僕のいる水槽を指す女、ゆらゆらと動く。

「平行世界から来たのだからな。そう簡単には、壊さん」

「ああ、だがその世界のことについて1年以上もたって解ったのは、人間全部が「魔法」を使えて、それぞれに違う回数があり使い切ったら死ぬ。それ以外は俺たちのところと酷似している。まあ、俺たち魔術師が基本的に隠れているのに対して向こうは「魔法」を隠してないせいで歴史が少し違うようだがそれもほとんど違わない。そして向こうにはいけないってことだけだ、もしかして俺たちこいつの親に騙されているんじゃないのか?」

  男がこちらを指差す。

親という言葉を聞いて何か言おうとしたが、ホースが付いた鼻と口を覆うもののせいで何も喋れない。右腕にある緑色のチューブが痛い。頭に植えられたものが痛い。いや体中につけられて外に繋げられているチューブが痛い。でもその痛みよりも魔法を二回連続で使った後遺症でだんだん色々なことを忘れていくのが恐い、だから必死で忘れないようにしたけど、もうこの檻に入れられる前のことは、顔も思い出せない女の子のこと以外何も思い出せない。

―――父と母の顔と名前も住んでいたところも何も思い出せない。

だから、この檻から出される唯一の時間のとき裸の女の人に乗られることは痛いけど、そこまで恐くなかった……



「それはないだろう」

「ああ、なんでだ」

「このB−79の親は、協力的だった、特に母親はな。なんといってもB−79の腕を折っただけ―それ以上のことは禁止だったが―でいろいろ話してくれたのだからな。それに嘘をつくにもそれだけの知識を得る余裕もなかった。まああの売女にそんな頭はなかったとおもうが」

「そういうなよ。女としては、お前よりよっぽど良かったぞ。なんて言っても抵抗しなかった。まあ旦那の反応のほうが面白かっただろ。特にお前には」

「まあ確かにな。そのおかげでこいつらの「魔法」が見られたのだからな。あの「魔法」が平行世界から来たという何よりの証拠だ」

「ああ、たいしたもんだった。なんたってサムエルの野郎を殺ったんだからな、あの旦那。そういえばそのころか、このガキが反応しなくなったのは」

殴ろうが、電撃流そうが、「魔術」を叩き込んでもな。ああそういや薬物の反応はあったかと、男が笑う。とても嬉しそうに………何が嬉しいのか解らない。

「まあ無理もないだろう父親が目の前で脳髄にされ、母親の死体を見ては」

  薬物でも微々たる反応だったがと女が嘲笑う。こちらを見ながら

「はっ、よくいうぜそのとき嬉々として頭さばいていたのはどこのどいつだ」

 割れたスイカのようだと思ってしまった。でも違った、紅くて紅いものを割れた所から流すもの………僕にはお父さんだと分かった。

「ふむ、しかしお前はあの女に対して執着していただろう。それなのになぜお前が殺さなかったのだ。あのときもうあの女は、不要だったのに」

「ああ、あれはミハイル様が持っていった。なんに使ったのかは知らんが」

 死体で帰ってきたけどなと男が言いながら、なにかを蹴る。

それは、ぼろぼろになった雑巾のようなものだった。ずっと前からそこにある……。それは、黒いものが肌にへばりついていた。丸い黒い穴が顔のようなところに二つぽっかり空いていた。でも最初に見たとき僕にはお母さんだと解った。でも僕は泣けなかった。悲しかったのにほんとうにかなしかったのに……



何もしない僕を見て「父親のときには、暴れたのだがもう壊れたか」と長い金色の髪をした偉そうな人が言った。ああそうかもしれない。僕はとっくに壊れているかもしれない。だって僕は、1つのことしか考えてない。何もできなかったことが、弱いことが、悔しいとしか考えてない。だって、僕のせいなのに、それなのに

あれ?    変だな?



「まあ、やつらはいい。このB−79ほどの魔力はなかった。こいつ1人でも並の魔術師30人分、いや50人分の魔力はある。それにこいつは「魔法」が7回しか使えないらしいが、それでも1回1回が信じられんほど強大だ。あの時あの方がいなければどうなったことか」

「確かに、おかげでこの「水晶檻」と常に監視2人だ。しかも1度「水晶檻」にひびを入れたからな。そういや、こいつ後何回「魔法」使えるんだ」

「5回だ。恐ろしい数だ、2回でこいつがどれだけのことをしたか………まあ、それだけ価値があるということだがな。だからまだ生かしているんだ。」

「五体満足でな、何人このガキの「魔法」でやられたのやら………それにこいつの魔力の多さには興味が尽きん。向こうの世界ではこんな奴がどれだけいるのやら、それを知るためにもこいつを」

「まあ、たしかにいじり足りんな血液では限界があるし解剖もできなかったからさまざまな実験でも解らなかった。しかし、こいつをこのままにしておくのも儀式が成功するまでだその後は、好きにいじれる。「穴」が開くのに期待しろ」

「はっ、悪魔召還の儀式の時に偶然開いた並行世界への「穴」かあのときの穴は何度試しても開かないじゃないか」

なんで周りが………



「まあ、生贄が悪かったからな。それにあの時は生贄が極上だった上に、向こうでこいつが「魔法」を使った。それに重なるように儀式が発動したらしいからな。しかし、今度は生贄もすばらしいものが用意できた今度こそ・・・」

 こんなに     



「そういえば、聞いたか。あの術式の時に来た生贄の知り合いらしい化け物みたいに強い仙術を使う小僧」

 蒼いんだろう



 「ああ、あの・・・支部をいくつか潰しているらしいが大丈夫だろう。ここはアルマゲストの本部だぞ、第1あの小僧は、アーウィン様に敗れて死んだと思われていた死に損ないだ。注意する必要もない」

 「そうだな、あの小僧が来るわけ」

 

 「………ずいぶん前に来てるぞ」



 その声とともに1人の人が現れると同時に回りにあった蒼いものが、男と女の首を跳ね飛ばした。話している時のままの表情で飛ぶ首。冗談みたいに飛ぶそしてその人は、お母さんの死体を見て何かをつぶやいた。そうするとお母さんの体が蒼に包まれて消えた。そしてその人はこちらを向いた。

(うわぁ綺麗) 

最初にその人の目を見てそう思った。黒い髪に黒い上下の服をきた1本の剣をもった僕より年上だけどそこまで離れていそうにない少年、顔は良く見えない。でも目だけはみえた、まるで蒼い空のような目。ずっと見ていなくて忘れそうだったそら。蒼くて手の届かないまったく穢れのない蒼穹。それを見ているだけで自分にこびりついた穢れが消えていくように思える。だから、じっとその人をその人の目を見た。水で歪まないから良く見える、蒼の眼差しを。

(あれ?ここ水の中じゃない)



 「小僧、立てるか」 

とその人が言って気が付く、チューブも変なものも、体の中にあったものも外にあったものも全部なくなっていたそしてチューブが色々なものがあったところには、傷ひとつなかった。

(ああ、そうかこの人が治してくれたんだ)

そのことも嬉しかったし、この人がさっきあいつらにおもちゃにされていたお母さんの体を休ませてくれたように感じたから

「あ………う」

ありがとうと言いたくて、声を出そうとした………でも喉が、からからで体にも力が入らないから全く意味のない言葉になってしまった。

 「へえ、他のやつとは違って理性があるのか。お前1人か?ああ、無理なら声は出さなくていい。Yes だったらうなずけNoだったら首をふれ」

 『驚いたな。ずいぶん優しいじゃないか、まあこういう子にはいつもそうだがな』

うなずこうとすると男の人の声が響いた。頭の中に響くような声、とても心に響く声が。驚いて周りを見ても誰もいない。変だなと思っていると

 「おい、お前いまの聞こえたのか」

 と、目の前の人が言うのでうなずいた。目の前の人は驚いた顔をすると「驚いたな、奴らより素質あるんじゃないか」とつぶやいた。そして「ああ、そうだ」と言いながら、虹色の液体の入ったビンを服から取り出すと

「小僧、これ飲め。声が出るようになるし体の痛みも取れる」

 

 受け取ってなんだろうと思っていると『お、おいそれは!』というあせった声が響いた。それで少し戸惑うと「気にせず飲め小僧薬だ、毒じゃない」と目の前の人が言うので、何故か安心できて飲んだ。飲むと体が暖かくなった。体のふしぶしまであった痛みが消え「体が・・」声まで出るようになった。すごいこんなこと魔法でもできない。驚いて目の前の人を見るとその人は、黒い目−蒼くなくなっている残念だ−をこちらに向けて

 「声が出るようになったか。じゃあ聞くがお前ここに1人でいるのか?ああ、いや、お前が解っている事、覚えていること全部話せ」



 といったので、僕は全部話した。ところどころつまったし、ひさしぶりに声を出すので聞きづらかっただろうにその人は静かに黙って表情を変えずに僕の話を最後まで聞いてくれた。違う世界から来たらしいこと、なぜここにいるのかは解らないこと、お父さんとお母さんのこと等全部。

 「平行世界ね。なるほど奴らがここまで厳重にするわけだし、この小僧が曲がりなりにも無事なわけだ・・・生贄ってことか、ふざけたことしやがる」

 とその人は言った。その声を聞いて僕は怖くなった、目の前の人を見ていると殺されると思った。でも目をそらせられなかった。その人は、怒っていてくれた、本気で怒っていてくれた。だからすごく不思議、怖いけど嬉しかった。



 『とりあえずその少年のことは後にして、これからどうする。そろそろ向こうの増援がくるころだ。向こうの数が多いと、逃げるにしろ殺すにしろ大変だぞ』

とまた声が響く、また僕がきょろきょろして下を探していると目の前に青い剣が出され「こいつがしゃべっているんだ」と言ったので、目を上げるとその人は僕を見ていたずらっぽく笑っていた。「へえ、すごいなぁ〜」と僕がその人の笑顔を見れて嬉しくなって言った時その人が

「そうだな、ここにいても仕方ない。ここから出るぞ、立てるか」

と、言ったので立とうとしたが力が入らなかったので転んだ。悔しくなってもう1度立とうとすると「体が忘れているんだな。しかたないな」という声が聞こえたと思ったら持ち上げられ背中におんぶされた。「っつ」驚いて手を前に廻すと首に、抱きついてしまった。あ、と声が出る「どうした」とその人はつぶやくように言った。

でも、僕にはその声よりもよりもその人の背中の暖かさに気をとられていた。お父さんほど広くはないけど暖かい本当に暖かくて安心できる背中。今までこんな暖かいものがあるとは思えないほど暖かかった。その人に負ぶさって少し経つと、なんだか眠くなってきたそうしたら

                

 「どうやらお客さんが団体で、いらしゃったようだな」

 その人が言うので前を見て驚いた。今まで水の中からみていたやつらが着ていた服を着たのがたくさんと、犬と蝙蝠の羽があわさったのもたくさんそれが前のほうにいてその後ろと足元に蒼いものがまたあった。少し年を取った男が

「貴様ここにきて、ただで帰・・」

 そこまで男が言ったら彼らの後ろと足元にあった蒼いもの

(違う。あれは信じられないほどの魔力がこもった風)

がそいつらを切り裂き、押し潰し、破裂させた



「2流だな、はっきりした敵が前にいるのにがたがた抜かすとは」

『せめて最後までしゃべらせてやっても良かったんじゃ』

「いや、あそこまで隙があるとなつい」

 『まあたしかに隙だらけだった。わざわざあそこまで近づくとは………ここはこいつらの城だぞ、ほとんどお前が壊したとはいえ全部の罠を壊したわけでもないし、お前の力が解らないのに目の前に出てくるとは正気か?なんで、残った罠を発動させなかったんだ?』

「ここに来るまでに、今ここに居るやつほとんど殺したからな。残った奴もこいつらの研究成果があるから逃げはしないと思ったから、罠を使った奇襲の1つや2つ仕掛けてくると思って注意していたんだがな。真正面から全員で来ると解っていたら、わざわざこいつらが仕掛けた罠を書き直さなかったのに………無駄な労力つかっちまった」

『つまり奴らはお前にはめられたわけね………いつも思うんだがそんなことをいつの間に……まあいいか。しかしもうここには誰もいないようだな』

 「ああ、ボスと幹部がいないと判ったから奇襲かましたんだが」

『………お前にはめられてここから離れたやつらが、居ないか………まあ、大成功だな』

「いや。出て少し様子見なければなんともいえない。ここが偽の本拠地ってことも考えられるからな。まあ、別に偽物でも構わないんだがな」

『そうだな、しかし主。贋物でも構わないとはどういうことだ』

「ああ、ここは公にはアルマゲストの本拠地になっている。その本拠地が跡形もなくなってしまえば、弱くなったってことだとほとんどのやつが受け取るだろうしな。そしたら俺らが何もしなくてもこいつらに恨みを持っている組織や個人、それに協会や教会が動くだろうな。まあ、一応情報屋に情報を流すぐらいはするが」

『しかし、思い道理にいくか。小さな組織や個人はともかく協会と教会は』

「別に、上手くいかなくてもいい。混乱するなり、他に注意してこちらをあまり見なくなれば。アルマゲストはどちらかというと新興の組織だし、それにここ西欧にほとんどの拠点が集中している。だから、西欧にある他の2大勢力である協会と教会から注目されている。そしてその強引な手段によって他と対立している。教会と協会は世界でも有数の組織だし今どちらも前よりお互い仲がいいしなにより内部でおおきなゴタゴタがない、動くさ。そうしたら本物じゃなくても本拠地がなくなったアルマゲストはどうやっても教会と協会に備えて、そっちと睨み合うか。戦争するかだ、それに本拠地をやった犯人が誰かというのを調べる必要がある」

 『だから支部の時、仙法も精霊魔術も使わずに敵を何人か逃がして監視の使い魔とかを見逃したのに、ここの奴らは皆殺しで、監視のものは機械類も魔術品も全部破壊したのか………そして止めには相手を混乱させるために、わざわざお前が今他の場所に居るように勘違いさせてからここに攻めて、お前だとそう簡単に分からないように………今度からもう少し話してくれ』

「ああ、これからはその流れを見て、奴の居場所が判って手薄になるまで少し待ちだな。アルマゲストを恨んでいる奴らはすぐにでも動きはじめるだろう。それとな騙すのはまず味方からだし、お前を全力で使うのはしばらく後だ」

『ふむ、そういうことなら了解したわが主。しかしいいのか他に奴らのうち何人かを譲って、私はお前の手で奴らを全員殺すと思っていたのに』

「アーウィン以外は、誰が殺ってもかまわねーよ。それにできるだけ楽に勝ちたいんだ。それにそうなったら何人か逃げても追うのは他がやるだろう。そうすれば、俺の労力が減る」



僕を背負っている人と剣が歩きながら話をしているけど、ぼくはさっきの蒼い風を思い出していた。強くて綺麗なあの風は本当に「なんて綺麗な蒼い風だったんだろう」と声に出したらそれを聞いた、目の前の人と剣が話をやめて

「『お前さっきの見えたのか!!』」

と驚いた声を出した。ぼくは何で驚いているんだろうと思いながら見えたと答えた。あいつらの後ろと足元にたくさんあったと。そしたら目の前の人はため息をつくと

「あの風はな高位の精霊魔術師で、しかも生半可な感知力がなきゃ見るどころか感じることしかできないって代物だ。現に、さっきの奴らやお前と話していたとき攻撃していた奴らは感じてもいなかった・・・素質で見れたってことか・・勘弁してくれ、これ使えるようになるまで結構苦労したのに」

 後半はどこか疲れたような声でその人は言っていたけど僕は、その人が言っていた「素質」しか頭に入ってなかった。だってもしかして僕もこの人みたいに強く成れるのかも知れないのだから。

 「あのっ」

 「あん。何だ」

 「僕、あなたみたいに強くなれますか?せめて自分の大切なものを守れるくらいに強く」



 そう言うとその人は立ち止まって僕を背中から降ろし僕の目を見ながら何かを(守りたいか・・本当なら俺の復讐よりよほどいい理由だな・・素質もあるし、それに平行世界から来た人間であるこいつは、もうどうあがいても狙われるアルマゲストだけじゃなく。教会や協会・・いやそれ以外にも)つぶやくと

 

 「2つ言うことと、1つ聞くことがある。それによって決める」

 「はい、なんですか」

 「まず、俺はアルマゲストを潰しているまだその途中だ。だから、戦っているときお前を見捨てるかもしれない・・・いや、じゃまだと判断したらその場で殺す。それと俺は、今まで誰かを教えたことなんてない。だから手探りだし、かえってお前にとって悪いことになるかもしれない。それでもか?」

 「はい」

 「じゃあ1つ聞きたいことを言う。お前は、アルマゲストにいろいろなものを奪われた。そして俺は、やつらを潰す。だから俺と居ればお前の仇に、会うこともあるだろう。お前の父親はともかく母親の仇と。その時、お前はそいつを殺すか」

 とその人は言った。お父さんを殺したやつはこの人が殺した、でも顔は覚えていない覚えているのはブニブニした脳を取り出されてスイカのようになった頭。

お母さんも覚えているのは骸骨のようになった顔に空いた二つの穴。だから、お母さんを殺したミハイルってやつのことを考えると、頭の中が真っ赤になってちかちかするだからそのままを言った

「正直、解りません。お母さんを殺したやつを考えるとちかちかするんです」

 「そうか。なら・・・」

(お前を教えることはできない。目の前にそいつが居たら、復讐だけしかない奴は邪魔になる・・・俺もそうだしな。お前は俺と一緒にいないほうがいい)



 「でも、もういやなんです。目の前で大切なものがなくなって自分が何もできないのは、いやなんです・・」

 それだけだった。考えてもそれ以外になかった、あのネバネバする水の中でそれしか考えてなかったから。言い終わるとその人は静かに

 「それがお前の理由か」(守りたいって事が)

 「はい」



 駄目かな・・駄目だよな、自分でも良く解らないのだから。さっきまで背負われた暖かさを思い出すと、(教えてもらえなきゃ、多分この人とはもう会えない。そんなのやだな・・僕はこの人の名前も知らないし、ありがとうってまだ言えてないのに)次に言われる1言が怖かったけど、じっと目の前の人の目を見続けた。そしたらその人は、僕の頭を撫でながら

 「・・・判った。今日から俺のことは、先生とでも呼べ。俺が今までで覚えたものそして、これから覚えるものをお前に叩き込んでやる。だから、死んだ気になって覚えろ。光栄に思えよ、俺の最初の弟子になるんだからな」

 笑いながらそういってくれた

 「えっ・・・本当ですか。僕あなたに教えても」

 『ちょっと待て、お前まだ13だろ、それにこの子は、7歳ぐらいだ。お前のことだから、育てられなくはないだろうがそんなにあっさり決め』

 「で、お前の名前は」

 『おい、話を聞・・・』

 「あっ、はい式森和樹です。これからよろしくお願いします、先生。あの・・先生の名前は」

 『ねえ・・私の』

 「八神和麻だ。んじゃよろしくな和樹」

 それが僕にとって、親であり、兄であり、師になる人の名前だった。太陽の光が差し込んでくる外に近い場所、何かの声が聞こえる場所で、僕らはお互いの手を握りあった。

 『解った、解りました。これから和樹は、和麻の弟子。反対しない賛成する、いや大賛成だ。だから、頼むから私を無視しないでくれ!私も紹介してくれ!おい聞いているのだろう和麻、和樹』



 



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