ふぅ〜……やっぱり風呂はいいなあ。
嵐のような高校生活初日をようやく終えることが出来て
僕は緊張感から解放されたせいか自分の部屋に入るなりすぐに寝入ってしまった。
余程疲れていたんだと思う。目が覚めたらもう晩ご飯の時間になっていた。
流石に寝すぎだと思ったけど、過ぎた事は仕方ない。
今は晩御飯を食べ終わって風呂に入っているところ。
本当に気持ちいい。ここだけが僕のオアシスと言ってもいいぐらい。
しいて不満を言うなら詩織がいつバスタオル一枚で入ってくるかわからない事ぐらいだ。
やばいだろそれ、なんて言わないでくれ。……もう慣れちゃったんだよ(泣
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愛すべきは幼なじみ?
3話
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やや長めの入浴を終えて身も心もさっぱりした僕は、冷蔵庫に常備してあるコーヒー牛乳を飲んでから
自分の部屋に戻った。
しばらくベットに寝転がりながらテレビでも見てのんびりと過ごすことにしよう。
しかし……今日はよく走ったな……
中学三年の夏にバスケ部を引退してからというもの、体育の時間も手抜きしてやってた僕にとって
あれだけ全力で走り続けたのは引退してから初めてだった。
どうやら………体力はあんまり落ちてないみたいだな。
久しぶりの全力疾走だったがあれだけの速さを長時間維持できたのだから
僕の体力は引退前とさほど変わらないみたいだ。
部活……どうしよっかなあ……バスケ部は詩織が入るだろうし……却下だな……
問題はそれを詩織が許してくれるのかという一点だが今は置いておく。
後は…野球……サッカー……テニスなんてどうだろうか……ん〜どれもパッとしないなあ…
ちなみに文科系のクラブは最初から頭に無い。
体を動かす事は元々好きだからだ。
だからといってバスケ部に入りたくは無かったのだが。僕が入りたかったのは……
……あ、そうだ……水泳部があった……
そう、僕は中学の時水泳部に入りたかったのだ。
小学生の頃からスイミングスクールに通っていたし、そこではスクールの代表として大会に出た事もあった。
成績もあまり良くなく、陸上での運動神経もいまいちだった僕にとって水泳は唯一の自信だった。
当然中学に入ってからは水泳部でがんばろうと思ってたんだけど…詩織がね……
なんだっけ、確かすごい剣幕で怒り出したんだよ。
「だめえええ!!公君の柔肌を他の女子に見せるなんて……あぁ考えただけでも相手を校舎裏に呼びたくなっちゃう!だめよ公君。あなたの体を好きなだけ見ていいのは私だけなんだからね。そうだ!よかったら私と一緒にバスケットボールやらない?公君はちょっと体が小さいから不利かもしれないけどPGだったら問題ないし 公君ならきっとレギュラーも取れるわ!それにね、バスケットのユニフォームって二の腕が全部でるのよ。公君が着たらきっと…………良い!良いわもうこれしかないわ!さあ今すぐ体育館に行くわよ公君!!ほら、早く!!ハアハア……」
…………思い出したら涙が止まらなくなってしまいました。
「なんとかして水泳部に入りたいなあ……はぁ……」
「へぇ……公君水泳部に入りたいんだ………」
ビクッ
いきなり独り言に相槌が打たれた。
し、詩織か、一体どこに!?
声はしても姿が見えない。さまざまな詩織の奇行を見てきた僕だが流石にびびる。
「もう……公君ったら私をほったらかしにして帰っちゃうんだもん。……いけない子ね……」
ゾク……
詩織の声は僕の火照った体を一瞬にして凍らせるぐらいの温度だった。
やば……詩織本気で怒ってる………
「周りのみんなが帰らしてくれないんだもん………処理するのに時間かかっちゃったわ…」
いったい何を処理したんですか詩織さん!?
「おお、落ち着け詩織。ぼ、僕も変なクラスメート達追っかけられてて詩織の方にいけなかったんだよ。」
「へぇ……それで伊集院君の車で帰ってきたんだぁ……私を置いて…」
「し、詩織見てたのか!ってそれはあいつが追われてる僕を助けてくれてそのまま家に送ってくれただけだよ。」
「やけに仲が良さそうだったわね……伊集院君なんか顔を真っ赤にしてたし……」
「そ、それは!…っていうか伊集院は男じゃんか。別にやましい事なんか何もないよ!」
「……男ねぇ………まあそういう事にしておいてあげるわ……」
し、詩織何を言ってるんだ?伊集院は男に決まっているだろうが。
そういえば僕はいつまで姿の見えない詩織としゃべり続ける気なんだ。
「それより詩織!一体どこにいるんだよ、出てきてよ!」
「ふふ……あなたの下にいるわよ……」
「ええっ!!………………」
言われて僕は今いるベットの下を見てみた。……………………
怖っっ
ベットの下に潜り込んでいた詩織さんの放つ絶対零度の視線と目が合ってしまいました。
ふと僕の股間の涙腺がゆるゆるなのに気がつきました。
「……い、何時からいたんですか、詩織さん?」
「公君がお風呂に入っている間にちょっとね……」
「………………………」
くねくねと身をよじらせながら無言で出てくる詩織。だから怖いって。
「ふぅ……それじゃあ公君……お仕置きね!」
言うや否や僕に飛び掛ってくる。
「うわああぁ!!」
僕は素早く身をひねり詩織をかわす。
かわされた詩織はふぅっと一息ついてから僕の方へと振り向く。
「もう、公君ったら……そんなに今日は激しいのを期待してるのね(はーと)」
「誰もそんな事は望んでいません!!」
ああああだめだ!!今日の詩織さんは無敵すぎる!
僕では手がつけられない!
じわじわと僕との距離を詰めてくる詩織。顔がすっごい笑顔なんですけど……
「さあ公君!!今日は最後までやりましょうね!」
「何をやるんですか、何を!!」
「ナニってそんな……公君のエッチ!わかってるくせに、もう私の口から言わせる気?」
「お願いですから正気に戻ってください!!」
「えいっ!!」
可愛い声とは裏腹に凄まじい速度で僕に抱きついてくる詩織。
うっきゃああ!捕まってしまった!!
ああ、詩織の胸が!!匂いが!!……………嗚呼(陥落寸前
「う〜ん、公君良い匂いね……私のためにちゃんと準備してきてくれたのね」
「な、な、そんなんじゃないよ!僕は普通に風呂に入っただけで……」
「照れないで公君、私はちゃんとわかっているから……」
「わかってねえええ!!」
い、いかん頭がくらくらしてきた………
「うふふ、公君ったら顔真っ赤にして可愛いんだから……」
詩織は体重を前にかけて僕をベットへと押し倒した。
そして僕の胸に顔を埋めてくる。
「ううぅ………詩織これ以上はまずいって………」
これ以上は……引き返せなくなってしまう……
「まずくなんかないわ……私はずっとこの時を待ち望んでいたんだから……」
詩織はこれまでの壊れ具合を払拭するかのような真面目な顔で僕だけを見ている。
「詩織…………」
「公君…………愛してるわ、私にはあなたしか見えないの……お願い……」
………………詩織……そこまで僕の事を…………
久しく見ていない詩織の真剣で、熱い目を見てしまって僕は………
「うぅ………………詩織………ごめん!!」
ギブアーップ!!
僕は詩織を強引に押しのけてドアへとダッシュした。
「あん、公君どこに行くの!!」
「ごめん、僕はまだ身を固める気はないんだ!さらばだ詩織!!」
速攻でドアを開け部屋から脱出。そして部屋の鍵をかけて詩織を閉じ込める。
僕の部屋には窓が無いので詩織はこれで脱出不可能である。
何故鍵を今持っているのかは聞かないでくれ。しいて言うなら経験の賜物といった所だ。
「公く〜〜ん、カムバーーーック!!!ああんもう、また逃げられちゃった!!」
素早く家を飛び出す僕の耳に詩織の叫びが聞こえた。
さて、どうしようか………
詩織から逃げる事に成功した僕は暗い夜道を一人歩きながらこれからどうするか悩んでいた。
しかし、さっきは本当にやばかった……長い事詩織に襲われ続けているが(笑
あれほど僕の心が揺れ動いたのは初めてだった。
原因はもちろん、あの詩織の真剣な顔を見てしまったからだ。
詩織があれほど真剣な顔をして僕を見てきたのは何時以来だろうか…
いつも僕を襲い、誘惑してくる時はとろけきっただらしない顔をしていたんだが……
もし、あれが本当の詩織だったら……僕は………
……考えててもしょうがないか。それよりもこれからどうしようかな……
現在、僕の部屋には詩織がいるしあんなに状態の詩織の所に帰るのはあまりにも無謀。
となると……
僕は携帯電話を取り出して、ある人へと連絡をとる事にした。
「………あ、もしもし?うん僕。悪いんだけどさぁ……うんそうなんだ。また詩織がさぁ
……そうそう、だからさ、今日も悪いんだけど泊めてくれない?……良い?本当、
ありがとう!うん、それじゃあ今から家に行くね!うん、それじゃあ!」
やれやれ、今日もまた世話になっちゃうなんて……。
僕は苦笑しながら目的地へと向かった。
おまけ
「もう、公君ったらまた逃げちゃって度胸がないんだから」
公に逃げられて部屋に閉じ込められてしまった詩織は公のベットに入り、今日の反省をしていた。
その手馴れた一連の動作から経験の豊富さが伺える。
「でも公君いままでと反応が違ったわ……やっぱりシリアスで攻める作戦は成功のようね。
これからもこの作戦で押していけばその内………ふふふふふふふふ」
暗闇に包まれた公の部屋に詩織の笑い声がしばらく響き続けた。
はいどうも、真空ワカメです。
う〜ん話が進まないなぁ。
めちゃくちゃテンポ悪いです。すいません。
4話というにはあまりにもボリュームが足らない気がしますが
今回は勘弁してください。
でわ今回は短めで失礼します。