チェコ共和国 プラハ・・・・・・・冷戦時代には情報戦の中心地であったが、冷戦が終わり、その様相は薄れつつある。観光地として人気の場所の一つ。が変わらないものがある。
社会不適合者の集まる場所・・・・だが、この「不適合」は世に言う「不良」や「ヤクザ」「マフィア」と言った連中ではない。
「外道」
人として道から外れた魔術師、霊能力者が集う場所。
そこに、一組の男女がいた。ヨーロッパ系の人間を見分けるが日本人にとって難しいように、ヨーロッパに住む人間達も中国系や朝鮮系の人間と日本人を見分けるのは難しい。だが、安宿の亭主はある種の『匂』から、この人物達を日本人だと判断した。亭主は大昔に習った日本語の記憶を振り絞り日本人の男性に尋ねた。
「アンタ等、日本人だろ?こんな安宿に止まることないんじゃないか?」
意外なほどに流暢な日本語に男性は驚く、自分の名前を書いているノートから眼を離し、顔を上げる。赤いバンダナが特徴的だ。
「趣味でね」
「はぁ・・・まぁ、いいがね。金さえ置いてくれれば、それにウチは見てくれは悪いが、シーツは真っ白だぜ」
バンダナの男性は少しだけ笑った。
「それは嬉しいね」
ポンとバンダナの男性の横にいる幼女の頭にてを置く。亭主はニヤリと笑った。
「はぁ・・・親子連れかね?」
「見ればわかるだろう?」
訳ありと感じたそれ以上詮索はしない。亭主は鍵を渡す。バンダナの男は鍵を取ると、幼女を連れ部屋へと向う。亭主はノートを取り上げ、先の人物達の名前を確認した。
そこには
『横島忠夫 横島 蛍』
「あ〜〜〜疲れた」
と言って、幼女・・・・・蛍はベットに飛び込む。ワンピースの裾がふわりと浮き、可愛くデフォルメされた熊のマークが刺繍されたショーツがチラリと覗かせる。
「だらしないな・・・蛍は」
「だって、パパ〜〜あの人達、しつこいんだもん」
プゥ〜〜と口を膨らませた。怒った顔でも愛らしく感じる。横島は苦笑して彼女の横に座り、頭を撫でる。
「仕方ないさ・・・・彼らだって仕事なんだし」
横島諭すように言った。
「う〜〜〜でも、あの人達はジ〜〜エスなんでしょ?ジ〜〜エスは人間の味方なんでしょう?なんで、ほたる達を苛めるの?」
「彼等は、俺達を人間だと思ってなんだよ・・・」
横島は苦笑しながら、蛍の額にキスをする。蛍は唇のあてられた額を少しだけ撫でると、照れくさそうに笑ったが・・・・・
「ふぁ〜〜〜〜〜」
と、大きな欠伸を上げた。目をゴシゴシと擦る。
「蛍・・眠い?」
蛍は頷くとベットに横たわると、すぐに静かな寝息をたてていた。横島は蛍の前髪を軽く撫でると自分のベットに入り闇の中へと沈んだ。
墓前の前で手を合わせる女性がいる。少しだけ愁いを帯びた眼だ。オカルトGメンの美神美智恵だ。
「ゴメンネ・・・・・・令子・・・・でも、彼は・・・・・横島君と蛍ちゃんはGメンにとって必要なのよ・・・・・」
立ち上がり歩き出す。後ろから長髪の男性が後ろから追いつく。
「で?彼が『また』見つけることが出来たらしいけど・・・状況は西条君」
「はい。チョコの要員がチェブで彼と交戦・・・・・いつものごとく、一名の残し全滅。あ・・・・横島君の写真があります」
西条は写真を渡した。美智恵は写真を見て笑った。
「あら、彼、全然変わってないじゃない」
「は・・・・・10年前と変わっていません。外見上は17歳のままです」
笑いが苦笑に変わる。
「コレも彼女のおかげかしら?」
「魔族の因子が関係しているのは間違いないと思います」
西条の表情に苦痛が生まれる。嫌いな相手だったとは言え、今では『捕獲対象』『監視対象』『研究対象』・・・・で、ある。だが、それが成しえない場合は『絶対敵』『殲滅対象』
「横島君も蛍ちゃんも・・・・・・・た・・・・」
「助ける・・・・・なんて言わない下さいね」
彼は美智恵の言葉を止める。軽く睨まれるが、西条は視線を外さない。
「分かってるわ・・・・でも、彼等は必要なのよ。『文殊』の力も彼等自身の力も」
横島の横に産まれた時の姿、そのままの姿の蛍がいる。静かな寝息を立て蛍が寝ている。横島は蛍の黒髪を撫でる。
「しかし、本当にあきらめの悪い連中だな・・・・・・」
横島はしばらく考え込むと・・・・・口を歪ませる
「久々に昔馴染みの連中に顔合わせと行きますか」
囲まれているため、一般人は立ち入る以前に存在そのものを感じ取れないでいる。
「そう言う小僧こそ、イロイロ派手にやっているようだのぅ?」
横島は軽く眉を顰める。話題をずらそうとする。
「オイ、オイ。爺さん、俺は32だぜ?それに娘までいるんだぞ?」
ポンポンポン
と、蛍の頭を軽く叩きながら苦笑した。
「ワシから見れば、小僧で十分だわい。それに・・・・・その姿だったらこそ、『小僧』だぞ?」
魔族の因子で17歳のままの容姿の横島をカオスは見た。
「やかましい」
「だが、なぜ此処に来たんじゃ?」
蛍とマリアがTVゲームに夢中になっているのを確認して、横島は言った。
「なんとなく・・ってのは、半分冗談だけど・・・な。まぁ・・・・ちょっとわが故郷に顔出しと・・・・・」
横島は言葉を止めた。
「爺さんの顔を見ようと思ってな・・・・蛍!!」
「うゆ?」
蛍が愛らしく振り返った。
「そろそろ、行こうか?」
と横島が言った瞬間、間一髪をいれず、叫んだ。
「え〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!ヤダ〜〜〜〜〜〜〜〜!!もっと、マリアと遊ぶ!!!!」
ジタバタ、ジタバタ
と、駄々っ子その者・・・といった感じで足をバタつかせる。横島は軽く苦笑して蛍の頭を撫でる。
「ほら、ほら、我が儘言わない。そろそろ『遊び相手』が来るから、マリアに迷惑かけるのは嫌だろう?」
みゅ〜〜〜〜〜と、しょぼくれるがマリアを友人としてみている蛍は、マリアが傷つく事を嫌う。
「う〜〜わかった」
横島の言葉に一応の納得を得た蛍の額に軽く唇を当てる。
「おい、『横島』」
カオスが呼んだ。横島が振り返る。
「死ぬなよ」
横島は軽く笑って答えるだけだった。
人気の無い街の一画。
「あ〜〜〜気配が上手く掴めない奴がいると思ったら・・・・お前かよ。ピート」
横島の目の前にはオカルトGメンの制服に身を包んだ金髪の美少年が沈痛そうに立っていた。後ろには様々な装備を持った10名ほどが控えている。
「横島さん」
「お前なら一人で出てくると持ったんだが・・・・」
「横島さん」
ピートの言葉を無視して、さらに続ける。
「まぁ・・・・時が経てば、人は変わるか?ヴァンパイア・ハーフ」
「横島さん!!!」
ピートが叫ぶと同時に霊気が噴出す。噴出された横島達に直進するが、横島が軽く手を振ると噴出された霊気は髪の毛を軽く揺らす程度となる。
「横島さん!!お願いです。僕達についてきてください!!美神隊長がきっと!!」
「あ〜〜煩いぞ、ピート。俺たちを襲ってきた連中にも言ったが、俺達は検体で一生をすごすつもりは無いぞ?」
ザワ
横島から濃厚な殺気が放出される。その殺気に軽く怯む。後ろに控えている人間がピートに囁いた。
「ピートさん、『アレ』の捕獲は説得は無理です。実力で」
「ック!」
男の言葉でピートを除いた男達が身構える。横島はソレを見ていった。蛍はこのような時の父親はあまり好きではないが、カッコイイとは思っている。漆黒の瞳が魔族の因子の影響を受け、暗い紫に変わっている。
「蛍、ザコはお前に任せる。ピートの方は俺がヤル」
「は〜〜い」
と蛍は手を挙げた。
一組の親子とヴァンパイア・ハーフであるピートを含めたオカルトGメンが対峙する。
チリチリ
それぞれの霊力が高まり、ぶつかり合い金属に似た音があたりを支配する。始めに動いたのはピートを除いた10名が飛び出す。これに反応したが蛍だ。蛍は信じられない加速でと飛び出し交差した。
ビシュゥゥゥゥゥゥゥ
と、何かが噴出す音、その音源はGメンから聞こえてきた。Gメンの首が吹き飛んで噴水のごとく、血が吹き上げている。一方、真っ白なワンピースの幼女には傷どころか、ワンピースにさえ、切り傷一つない。
蛍の手には二本の霊波刀を文珠『剣』によって強化されたものが握られていた。
「おじさん達。パパと蛍の愛の逃避行を邪魔させないもね!!」
プゥと頬を可愛らしく膨らませるのだが・・・・・・・邪魔があるから『逃避行』と、言えるのでは?などとは誰もこの状況で突っ込む物はいない。オカルトGメンのメンバー一人がこの状況から、逸早く立ち直り
「ック、悪魔め!!!主よ、我に立ちふさがれし者を討ちたまえ!!アーメン!!」
男が唱えると、霊力が集まりサッカーボールほどの大きさになると真っ直ぐ飛んで行くが、蛍はあっさりとかわす。目標を失った霊光弾は付近のコンクリートの塀にぶつかり爆発を起こす。
「ふ〜〜んだ。そんな攻撃じゃ蛍はやられないもんね〜〜」
蛍の体がぶれ、二つに分かれた。
「忍法分身の術〜〜〜〜〜!!ニンニン♪」
二人の蛍が8人に減ったGメンに突っ込む。4人が銃器で狙い、残りの四人が主に力を請う。銃弾と霊光弾が二人の蛍を捕らえる。個々の能力と連携プレイを利用して、避けられるはずが無い。
「!!!やったか!!!」
全ての弾丸が蛍を貫いた・・・・が、蛍の姿が霧散する。
「なに!?二つとも虚像だと!!!??」
「へへへん。こっち!!」
上空から幼い声が聞こえた。Gメン達が上空を見ると、デホルメされた熊がプリントされたシューツが見える。だが、鑑賞に浸る暇は無い、蛍が両手を大きく上げ霊気が収縮されていく。
「いけ〜〜〜!!拡散ビーム砲!!!」
蛍が霊気の塊を投げると細かく分かれ、上空からシャワーの様に降り注ぐ。
「皆さん!!」
ピートが駆け出そうとするが、鋭い蹴りが彼を襲う。ジーンズ・ジャケットのポケットに手を突っ込み、煙草を口にくわえた横島だ。
「おいおい、ピート。お前の相手は俺だぜ?」
「っく」
横島は口だけに微笑を浮かべながら連続した蹴りを繰り出す。手はポケットの入れたままだが、速く鋭い蹴りがピートの頬の皮膚を浅く切り裂き血がにじみ出る。この攻撃に堪らず上空に逃げるが、横島もすぐに続く。
「逃げてるばかりじゃ〜俺を捕まえられないぞ?」
『横島親子』の捕縛に対し、納得ができない彼は素直に攻撃ができないでいる。避けきれない横島の蹴りを腕で受け止める。
「ック」
体中に衝撃が走り、骨が軋みをあげる。横島はそれを回転軸の点として体を回転させ、踵落としを喰らわそうとする。防いだだけで骨が悲鳴を上げる蹴りをまともに喰らうわけには行かない。
「!!ヴァンパイア・ミストか!?」
蹴りが当たる瞬間、ピーとの体が霧状に変化する。霧は、あっと言う間に横島の後ろに集まり、元の姿に戻る。
「主よ!!我に立ちふさがれし、敵を討ちたまえ!!アーメン!!!!」
横島に着弾。爆発を起こす。ピートは爆発を見てから、ハッとし叫ぶ。
「しまった!!横島さん!!」
爆煙がはれると・・・・・薄い光の膜に覆われた横島が確認できる。ピートは驚きと安堵が混じった複雑な顔をする。
横島は指に文珠が挟まれていた。文字は『壁』
「へぇ〜やるじゃないか?GS試験の頃よりも大分威力も上がってるし、ヤンパイア・ミストの展開が速いしな」
横島は感心したように言った。文珠を半秒と経たず、形成され文字が浮き出る。
『剣』
霊波刃の威力が増幅され形成され、横島は軽く跳躍(空中だけど)一瞬で横島とピートの間が詰まり、霊波刃が振るわれる。ピートも爪を伸ばし振るう。
ギリ、ギリ、ギリ
刃が鬩ぎ合うする音。そんな中、横島は余裕タップリの顔で言った。
「なぁ?ピート。なんで、俺達が欲しいんだと思う?何故、協力をしなければ殺さなければならないんだ?」
「それは・・・・」
横島が力任せにピートを振り払う。ピートは沈痛な表情し言った。
「それは、横島さんの文珠の力が・・・・・魔族の因子が・・・」
「そう、文珠、ルシオラの因子・・・・・人間は力を欲し、そして異質な物を恐れる。だから、協力をしなければ殺す」
「でお、隊長が・・・きっと!!」
横島から殺気が消えた。眼をつぶる。
「横島さん」
殺気が消えた事でピートは安堵した。自分の願いが通じたと・・・・
が・・・・・
横島の眼が開いた。殺気は無い。
だが、ピートは戦慄した。殺気は感じられないはずなのに、異様な感覚がピートを襲う。冷たい汗が背中を流れる。
「・・・・・・・・・・隊長が?隊長が?そんな訳があるか!!!!!」
先ほどまで無かった殺気がいきなり膨れ上がる。
「あの人はな!!蛍が令子さんを殺したと思ってるんだよ!!!!!」
先ほどとは比べ物にならないスピードで間が詰まる。霊波刃がピートを襲う。ピートはヴァンパイア・ミストで逃れようとするが
「ワンパターンなんだよ!!」
横島が霧を掴んだ。
「ッガ!?」
強制的に元に戻され、地面に投げつけた。盛大に土煙が起こる。止めと言わんばかりに横島は霊光弾を投げつける。さらに爆煙が立ちがる。
横島はユックリと地面に降り立つ。蛍の方を見ると、最後の一人を切り捨てるのを確認する。視線をピートに移す。
「ピート・・・・俺達にかまうな」
「が・・・ぅあ」
呻き声をあげながらピートは横島を見る。蛍が横島に駆け寄り、横島は蛍を抱き寄せ濃厚な・・・・恋人同士がするようなキスをした。
そして、消えた。
残されたピートは仲間の死体・・・・・・・そして、横島の言葉。だが、その様な事情など露とも感じぬ青空を見ながらピートは泣いていた。
どこかの喫茶店。
「ねぇ、ねぇ、パパ。今度は何処に行くの?」
蛍はアメリカ人が好むような大ボリュームのパフェを食べながら言った。口の周りにはクリームが付いている。横島は笑顔で娘の口の周りに付いたクリームを指でスクって舐める。
「う〜〜ん?今度はな・・・・・・」
彼は祖国の名前を口にした。
あとがき
やっぱり、エロをやりたい・・・・・(アホ)・・・っと、言う訳でインモラル要素だけは排除して再投稿です。ファイルがゴッチャになっているの整理・加筆をして投稿する予定です。