現在僕は廊下を全速力で走っている。
中学の3年間、詩織に無理やり入れさせられたバスケ部で多少なりとも鍛えられてたのか
自分で思っていたよりも良い速度を維持している。
だけど何故僕がこんなに走らなくちゃいけないんだろう……
疲労のため、かなり低下してきた僕の頭脳は答えてくれない。
………ちらっと後ろを見る。
…………ああ、そういえばそうだった……
「待ちやがれ主人!!」
「藤崎さんをたぶらかす悪魔め!生かしてはおけん!!」
「うおおおおおおお、てめえさえいなければ!いなければああ!!」
「今こそ!中学の時の時からの恨みを晴らす時!主人覚悟!!!」
僕は追われているんだった……
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愛すべきは幼なじみ?
3話
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ああ〜疲れたよぉ。でも止まったら後ろの奴らに何されるかわかんないし。
なんでこんな事になったんだろうか……
結局しばらく続いた沈黙を破ったのは雛山先生だった。
「……え、ええっとそれじゃあ藤崎さんの自己紹介は以上ね。
…次の子、自己紹介を続けてね。」
どうやら何も見なかった事にするらしい。
こののんびりした雰囲気の先生には少し刺激が強すぎたようだ。
詩織も僕に流し目をして自分の席へと帰っていく。
僕は周りのオーラに圧倒されて震えている。
「………です。よろしくお願いします。」
「は、はい、以上でみんなの自己紹介は終わりですね。……そ、それじゃあ今日はこれだけで終わりにしますね。 明日からは本格的に授業に入るから皆さんよろしくお願いしますね。」
そう言い残してさっさと帰っていく先生。先生もあまり長居したくない空気のようだ。
クラスの皆は先生が教室を後にした事を確認すると一斉に二手に別れ、突進してきた。
「ふ、ふ、ふ、藤崎さん!う、う、嘘ですよね!ぬ、ぬ、主人が彼氏だなんて!!」
「貴女は騙されてるんだ!あんな奴にキ、キ、キスをするなんて!!」
「藤崎さん!!主人君とどこまで進んでるの!?もう、しちゃってるの!?」
「ぼ、僕、初めて会った時から藤崎さんの事が!!」
一つは詩織に
「うおおおお!主人殺す!!」
「ちくしょおおお!!羨ましいぞ、この野郎!!」
「お前さえいなければ藤崎さんは俺の物に!!!」
もう一つは僕に襲ってきた。
「ちょ、ちょっとなんだよ急に!」
僕は素早く鞄を取り教室へと飛び出した。無論彼らも付いてくる。
普段ならすぐにそばに来る詩織も大勢の集団に囲まれて動けないようだ。
「あ〜ん、公君助けて〜〜」
何か聞こえたけど無視しておく。
こうして僕は大量の人間を引き連れ、学校を走り回る事になってしまった。
……ええっと詩織が暴走したのが原因ってことかな……
なんで暴走したんだっけ……ああ、そうだ、僕が唯の幼馴染って言ったからだ、きっと。
ああ、しくじったぁ、というかあの場合はああ答えるしかないよ、実際付き合ってないんだし。
あああ!そもそもなんであんな質問してきたんだよ、あの野郎!
だれだっけあいつ……確か、女の子に話聞きまわっててその時名前言ってた……
…………確か早乙女好雄とか言ってたっけ……
ちくしょう!あいつがあんな質問してこなけりゃこんな事にならなかったかもしれないのに!
むかつくからあいつの出番減らしてやる。
レギュラーなんてとんでもない!脇で十分だあんな奴!
つい、口汚く罵ってしまうぐらいイライラしている僕だが
そんな事をしても、もちろん状況は好転しない。
むしろ、僕が疲労してきたせいで徐々に差が縮まってきた気がする。
彼らもどうやら体育会系の人達だったようだ。まだまだ余裕が感じられる。
まずい、いよいよまずくなってきた。
そう考えながらも僕は運動場を駆け抜ける。
「あの走りは………根性ね!!」
何か聞こえてきたが確認する余裕はない。
野球部、サッカー部、テニス部、水泳部等の皆さんの注目を浴びながらも僕の逃走は続く。
走り回っている内にこの学校の裏門が見えてきた。
う〜ん……どうする、学校を出るべきか……
だが僕に考えさせてくれる時間を彼らは与えてくれなかった。
「いたぞ!!あそこだ!」
「ここまでだ!主人!!」
すぐに追っ手が来た。
「主人タン、ハァハァ……」
嫌な言葉は華麗にスルー。
「もう!行くしかないじゃないか!」
僕はそう言って裏門に向かった。
……ん?なんだあの車……
よく見ると校門の所に黒塗りの高級そうな車が止まっていた。
やけに長いし……あれがロールスロイスってやつかな?
意外と冷静に僕が車を見ていると急に後部座席のドアが開いた。
「ふ、乗りたまえ庶民。」
この声は確か伊集院。おお、僕を助けてくれるのか!
僕はその救いの声をまったく疑いもせず車に飛び乗った。
「ありがとう、伊集院!」
「ふ、礼はいらないよ。外井、出せ。」
言うやいないや、すかさず車を発進させる運転手の人。
素晴らしい加速で後ろのクラスメイトを引き離す。
僕は裏門の所で文句を言いまくっているクラスメイトを窓越しに見ていた。
「うわ〜危なかったなぁ」
「……………ハァハァ」
「え?どうしたの?」
「い、いや、なんでもないよ。はっはっは……」
そういって笑う伊集院。だが笑いが乾いている。
「いや〜本当に助かったよ伊集院。ありがとう」
「……礼には及ばないよ。僕が帰ろうとしたら、たまたま君がここに逃げてきたからついでに乗せただけだからね」
「それでもだよ。伊集院がいなかったら僕はどうなってたか……」
「………確かに何をされるかわかったもんじゃないわね……」
「え、何か言った?」
「い、いや、なんでもないよ。はっはっは……」
そういってまた乾いた笑いをする伊集院。
美形の彼がやると、こんな姿も様になる。
「乗りかかった船だ。君の家まで送ってあげよう。」
「おぉ、悪いね。僕の住所は………」
僕の住所を伝えると、伊集院は運転手に指示を出した。
僕は走り回ったせいで荒くなった息を整えるべく、しばらく静かにしていた。
「……時に庶民、少し聞きたいことがあるのだが……」
しばらくすると伊集院が真剣な表情で喋りかけてきた。
「ん?何?」
「……その、藤崎君とは本当に……つ、付き合っているのかね?」
……その事か。この際一人でも多く誤解を解いておかないとな。
「いや、僕は詩織とは付き合ってないよ」
「し、しかし君は教室で藤崎君と、…く、口付けをしていたじゃないか!」
「あれは!詩織が無理やりしてきたの!詩織は、…僕の事を……その………と、とにかく!
僕は詩織の事はなんとも思っていないよ!」
やや必死になって言っておく。これぐらい強く言っておかないと誤解は解けないと思う。
「……本当に?」
「……そりゃあ、あんな事した後じゃ信用できないかもしれないけど……」
僕はやや俯きがちになってつぶやく。
「う!…………………も、萌え……」
何かを小声でつぶやく伊集院。顔が焼け野原のようになっている。
「どうした?伊集院?」
僕は上目遣いで伊集院を見る。
「うぅ……鼻血が………い、いや、わかった。君を信用しよう」
「本当に!ありがとう、信じてくれて!」
僕は嬉しさのあまり彼の手を握って満面の笑みを浮かべる。
自分で言っといてなんだが正直信用されるとは思っていなかったから嬉しさはひとしおだ。
「ぁぁぁ………し、幸せ………」
伊集院が恍惚の表情をしているが誤解が解けて興奮している僕にはわからなかった。
「………レイ様、そろそろ主人様のご自宅に到着致します。」
「は!……わ、わかった。」
意外と時間が立つのは早かったな
すぐに僕の家が見えてきた。車が家の前で止まるとドアが勝手に開いた。
「ふ、……クラスのみんなには僕の方から藤崎君との仲は誤解だと伝えておこう。」
車を出た僕に伊集院がとても嬉しい事を言ってくれた。
「本当に!?是非頼むよ伊集院!!」
「……ま、任せたまえ。クラスメイトの誤解は完璧に解いておく。」
「おう、ありがとな!」
僕は今日最高の笑顔を伊集院に向けた。
「…………そ、外井、出しなさい!」
そういうと、ロールスロイスは猛スピードで去っていった。
伊集院の奴……照れてたのかな?顔が真っ赤だったし。
しかし、自己紹介の時と随分印象が違ったな。
すごい傲慢で女たらしな奴に見えたけど……いいやつじゃん。
僕は高校で初めて出来た友達を思い、頬を緩ませながら我が家へと入っていった。
おまけ
「ああ〜〜ここが主人君の座ってた席!!……あぁ……」
レイは主人公の座っていた座席にほお擦りしていた。
その顔は限りなくとろけている。正に幸せ独り占めといった感じだ。
「主人君の匂いが……すぅー……」
見ていられないぐらいに顔がにやけている。
この顔を見せればキャアキャア言っていた女子も離れていくだろうに。
「レ、レイ様!後で私にもさせていただけませんか!?」
「ダメ!!………ぁぁ」
彼女はしばらくの間、幸せを満喫していた。
ども!真空ワカメです。3話どうでしたか?
さあ、本格的にレイ陥落です
詩織は出番ほぼ無しです。すいません。
レイ好きの私的には今回は書いてて楽しかったですね。
こんな気持ちで書き続けることができればいいんですが。
それは置いといてみなさんレスありがとうございます。
みなさんのレスを見させていただきますと……もっと壊れ希望なのかな(笑
正直、私は勢いだけでこのSS書いている状況なのでみなさんの意見は
割とないがしろにしてしまうかもしれません。
前もって謝罪しておきます。
ですがかなりの参考にはさせていただきますのでどんどん希望を言っちゃってください。
反映される可能性……あるかも(汗
最後に……好雄すまん(笑
P.S
壊れ表記入れておきました。