少し薄暗い、しゃれたバー、なんだか懐かしい洋楽が流れている。
そんななかの窓際の席に一組の男女が座っている。
「令子ちゃん、ちょっと飲みすぎなんじゃないのか」
「んー、まだ大丈夫よ」
そこにいるのは、高そうなスーツに身を包んでいる西条といつものボディコンスーツに身にまとっている美神令子である。西条は老けたかんはあるが相変わらずどこかの金持ちの伊達男といった雰囲気で大人の魅力は健在である。令子はもともとの美貌に加え、色気がさらに出たというかまさにかおりたつような色気が出てきているようである。
「そうかい、でもあまり飲み過ぎないようにね。僕も飲んでるから車で送ることはできないから」
「ふふふ、でも大丈夫よ。まだぜんぜん酔ってないから。でもそうね、お兄ちゃんとこうして一緒にお酒を飲むのは久しぶりね」
「そうだね。多分アシュタロスの事件が終わったころ以来だから、もう三年ぐらいになるのかな」
西条はウォッカの入っているグラスを持ちながら少し思い出すように話した。
「まあ、なんだかんだでみんなで騒ぐことはあっても、ふたりで飲むことなんてほとんどなかったしね。でもこういうのもたまにはいいじゃないか」
「そうね、楽しいわ」
令子がうなずいたとき、西条は苦労して令子を誘い出した自分をほめ、これはいい雰囲気になってきたと思った。
「横島じゃこんなしゃれたところ、つれてってくれないもの」
令子が次の言葉をつないだ瞬間、いきなり背中に冷や水を浴びせられたような気分になった。令子はそんな西条の様子には気づかないように、いとおしそうに指輪を見つめていた。
そんな令子の様子に気づきかせた西条はそれが何なのかをわかるが、それは違うと何とか必死に自分に言い聞かせ、言い聞かせてもぬぐいきれない不安の中継ぎの言葉を発した。
「令子ちゃん、それはどうしたのかな」
西条が何とか言い放ったその言葉は少しかすれてはいたものの、何とか最後まで言い切った。令子はその言葉に少しほほを染めてちょっと恥ずかしそうに次の言葉をつづった。
「ああ、これは横島君からもらったのよ。よりにもよって仕事帰りによ。ムードも何もあったもんじゃなかったわ。ひどいと思わない」
令子は言葉とは裏腹にまるで怒っているようではなく、とても嬉しそうにしている。
「横島君らしいね。そうか・・・」
西条は返事をしたものの、まるで世界が色を失ってしまったのかのような感覚になり、何も感覚をなくしてしまった。そしてウォッカを口につけ一気に飲み込んだ。
その後、西条は何を話したのかほとんど覚ええていない。
いつの間にかに帰ることになった。
「西条さんどうもありがとう。楽しかったわ」
令子がそういった瞬間、西条は気持ちが抑えられなくなり、思わず令子を抱きしめた。
「さ、西条さん」
少しうろたえたような声を令子が出したところ、西条はわれに帰ったように令子を放した。そして何かを吹っ切るかのように・・・
「令子ちゃん、婚約おめでとう」
令子は少しだけ驚いた顔になったが次の瞬間満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう」
あとがき
初の投稿となります。下手な文章ですが少しでも読んで面白いと思う人がいてくれればと思います。