この作品は、jynk-y様に捧げるお姉さま＋ナルト作品です。
　　　　　ご感想などありましたらよろしくお願いします。



　中忍試験・３日前・・・・風影の館

　
　「んで？そのお見合いの相手のことぶん殴ってきたのか？」

　「ああ・・・カンクロウ、人が気にしていることをぺらぺらと喋るとろくなことがないということを教えてやろうか？」

テマリが大扇子をカンクロウの脳天に打ち下ろそうとしたとき、父風影の従者が入ってきた。

　「テマリ様・・・お父上がお呼びでございます」

　「ちっ・・・わかった今行くと伝えろ」

　「た、助かったじゃん・・・・」

　「なに？」

　「いいえ！！私が悪うございました！！お姉さま！！」

　「わかればよろしい」

幸薄き長男を満足げに許すと少し気が楽になった。テマリは、砂隠れの里を治める風影の娘である。遠目に見ればなかなか器量もよく、美しい娘なのだが、その逆鱗の凄まじさを目の当たりにすれば、妊婦が産気づきマフィアの大ボスが跪いて懺悔するほどだ。そして、今日の犠牲者はある国の大名の息子であった。テマリ自慢の大扇子をこともあろうに“物干し竿”と言ってしまったために、力の限り張り飛ばされて全治３ヶ月、リハビリ期間２ヶ月の重傷を負ったのであった。
　
側で見ていた従者はこの時のテマリを、

　「男の子に生まれていたら、きっと砂隠れを代表する豪傑になっておられたことでしょう」

と言い表している。そういうわけで、これからテマリは父親にみっちりと２時間はお説教を受けることになるのだ。が、これもいつものことなので完全防音耳栓を用意しておけば何のことはないのだった。お説教が終了してやれやれ助かったとばかりにテマリが自室で背伸びをしていると、幸薄き長男・カンクロウと超独善的・次男我愛羅が部屋に入ってきた。

　「ん？まだ何か用でも」

　「姉さん・・・・これを読んでおいてくれ」

我愛羅から手渡された紙には“木の葉開催・中忍選抜試験概要及び参加申込書”と記載されていた。

　「じゃ・・・」

　「ああ・・・わかった、んじゃお休み！！」

テマリはさっさとドアを閉めると、誰もいないことを確認しカーテンを閉め、部屋の明かりを消して電気スタンドを点けると机の一番下から一冊の本を取りだした。題名は『THE!!BEST OF BOYS COLLECTION!!　かわいい男の子のハートを射止めよ！！』
というどこから見ても男の子好きな女性、すなわちショタコン雑誌である。
　そう・・・テマリは天性のショタコンなのである！！
　ちなみにこの時午前０：４５。手渡された書類は、見事にゴミ箱に丸めて捨てられていたのだった。その書類の一枚に、『テマリ婿養子候補』なる資料が添えられていたことは全く知らなかった。


　翌日・木の葉隠れの里入り口前付近の通り


　空は青く澄み渡り、頭上では鳶が鳴いている。そんな日にテマリとその愉快な仲間たちは（マテ）、遠く木の葉くんだりまで来て中忍試験を受けるのであった。不満がないわけがない！！木の葉は、忍五大国の中でも有数の観光スポットである。地中海洋性気候で年中暖かいこの里には、台風が一番多く上陸するという難点をのぞけば誰もがここに引っ越したいと望む。砂ばっかりで面白みのない砂隠れとは象とアリンコほどの差があるのだ。

　『ここに生まれたかった・・・・・』

そんなことをぼんやりと考えながら、テマリは勝手に行動している我愛羅を探してカンクロウと一緒に歩いていた。
　と、そのとき。カンクロウが急に立ち止まった。

　「イテェじゃん。このくそガキ！！」

　『痛いのはこっちだ！！このばか！！』

カンクロウの石頭にしたたか鼻をぶつけたテマリは心の中で叫んだが、長女のプライドが痛みを表に出さない。こういうところは尊敬すべきなのだが、性格のせいですべて台無しになってしまうのだった。

　「木の葉丸を離せってばよ！！このデブ！！」

　まだ変声期を迎えていない、男の子特有の叫び声がした！！
はっとして目を向けると、我愛羅と同い年くらいの金髪少年が腕を振り回しながらこっちに走ってくるではないか！？しかし、どこかで見たことがあるような？
　カンクロウは少年をひと睨みすると、傀儡師特有のチャクラの糸を飛ばしてスッテンコロリと転ばせた。

　「イッテェェェェェェェ！！」

石畳の道にしたたか頭をぶつけ、少年はすっころんだ。

　「はん！！木の葉の忍って弱いじゃん！！」

　「な〜〜に一人で余裕ぶっこいてんだ、ボケェェェェェイ！！」

　「ハゴォ！！」

テマリはカンクロウの頭を扇子でひっぱたくと、少年に駆け寄った。
　近くで見ると間違いない！！
　あの雑誌のトップページに載っていたキングオブボーイズ・うずまきナルトである！！
　
　続く・・・・