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「祥子さんの日記 1ページ目(GS+リレー小説『カモナ マイ 魂の牢獄』)」zokuto (2004.09.23 23:18)


 〜 まず始めに 〜

 この『祥子さんの日記』は昔行ったリレー小説『カモナ マイ 魂の牢獄』のキャラクターを利用しております。

 が、基本的、リレー小説の結末とアフターストーリーズ祭りとは直接関係ありません。

 ただ、キャラクターだけが出ているGSの日常的な話をオムニバス形式で書くというわけであります。

 では、本編を。














   祥子さんの日記

     〜祥子さんの始めの一日〜






 私の名前は祥子。

 正確には、渋鮫祥子と言います。

 数ヶ月前には、存在しなかった人間ではありますが、今では一家三人で幸せに暮しています。

 私を除く二人は、兄さんこと横島忠夫と、姉さんこと渋鮫幽壱です。


 本当は私、何十年も前に死んだんです。

 けど、当時の私の恋人である渋鮫さんが、私の死に嘆き悲しみ不完全な反魂の術を使い、それの副作用で姉さんと一つの体に二つの魂を共有し、しかもそれも致命的欠陥により、地脈の流れる部屋でしか生を続けられぬものでした。

 渋鮫さんは私達の別離と生存に尽力しましたが、遂に彼も老いの前に他界し、残された姉さんは僅かに生を続ける方法として、とある屋敷を管理をすることによってとあるGSの方から生存の為に必要な霊波貰うことにしました。

 長い間、姉さんと私は外に出れぬ苦しみに耐えてきたのですが、そこに颯爽と現れたのが兄さんでした。

 兄さんは、霊具『文珠』を使って、私達の魂を二つに分け、更に体を複製し、私達を不完全な反魂の術の呪縛から解き放ってくれたのです。

 それで、今、私が私として存在できているらしいです。

 兄さんの上司で、私達の管理する館の雇い主である美神氏に協力してもらい、私達には戸籍を手に入れることが出来ました。

 本当は姉さんには既に渋鮫人工幽霊一号という戸籍もあったのですが、兄さんが気を使ってくれて新しい戸籍に変え、性別も女の性に変えたそうです。

 ちなみに、私は勿論死人だったわけで新しく戸籍を作ったわけですが。

 まあ、それはともかく、私と幽壱姉さんは外見が瓜二つどころか全く同じことを利用し、一卵性双生児という見かけで今を生きているわけです。


 ところで、横島さんをお兄さんと呼ぶのは、幽壱姉さんに言われたからなんですけれども、なんででしょう?

 まだ『義兄さん』じゃないと思うので、まだ……希望はあるかな。






 ――――――――――――





「やあ、祥子さん。 気分はどうだい?」

 私が、日記をしたためているとき、お兄さんが遊びにきてくれた。

 屋敷の地下居住スペースに私と姉さんは生活をしていて、オーナーから屋敷の管理を任されているのだ。

 霊的にも肉体的にも不安定な私に、毎日毎日気遣ってくれる横島兄さん……密やかに私の胸は兄さんへの思いが燃え盛っているけれども、私はまだそれを告げるには臆病過ぎているのだ。

 でも、いつかはそれも……

「良かった。 魂も体も元気そうだね、いつもより活き活きしてるよ」

 そう言って、私の黒くて長い髪を頭のてっぺんからなでてくれる。

 いつもいつも兄さんがしてくれることだけれども、その度に心があったまるような気持ちがする。

 ふと、兄さんと同じことをしていた渋鮫さんのことを思い出され、何かを言いながら微笑む嘗ての恋人の幻覚が彼の中に見出されました。

 いけないいけない、自分の過去を人に押しつけるようなことはしちゃダメよ、私。

 彼は彼として見るのが……

「ん? どうしたんだい祥子さん、顔色が悪いけど」

 そんなことを考えていると、兄さんが心配そうにこちらの様子を窺がっていました。

「いえ、なんでもないです」

 兄さんの顔が急に近づいてきたので、顔が赤くなってしまったことが自分でもわかる。

 昔も赤面症だったのだけれども、それは今も変わらない。

 渋鮫さんが、昔の私に似せて作ったのだから、それも無理もないかと思う。

 ……そんなことよりも、どうにかしなきゃ。

「んー、ちょっと熱があるかな? 顔赤いよ」

 そういって、自分の額を私の額に……

「きゃっ!」


 コツン


「んー、ちょっと熱があるかな?」

「ああわわ……」

 ちょうど目の前に兄……横島さんの顔が迫って、額と額が密着してる……。

 それを考えるだけで、もう何も喋れない、考えられない。

 いくら赤面症だとは言え、こんなことでここまで混乱したのは始めて。


 ……前の体ではそうでもなかったのにどうしてかしら。















 渋鮫さん……あなたの趣味ですか、そうですか。

 今は亡き嘗ての恋人をそっと心の中で呪っていると、私の目の前から兄さんの顔が離れていきました。


「ふ〜む。 今日はあんまり無理しない方がいいよ。 文珠をあげるから、横になりな」


 顔がトマトのように赤くなってしまった私の手に、そっと私と姉さんを救ってくれた霊具『文珠』を握らせてくれました。

 その存在自体が暖かい球体は、自然と私の頭に冷静に与えてくれます。


「うん、良くなったみたいだね。 でも、もうお休み」


 兄さんは少しふらつく私を優しく抱き上げ、寝室まで運んでくれました。


「じゃ、また明日会いに来るから」


 ドアが閉まるほんの寸前、そう言って、出て行ってしまいました。



 ……私は、今、幸せに生を謳歌しています。







 ――――――――――――――――





「ふぅ。 色々と大変だな」

 ドアを後ろ手で閉め、ほっと一息をつく。

 彼女の魂は、幽壱の魂と混じっていたとき、かなりの力の比率が非常に低かったから、体を手に入れてもう一ヶ月も経つというのに不安定のまま。

 週に一回文珠で操作をしてやらないと、魂が分解して死んでしまう。

 だから、毎日ここに通って彼女の様子を見ているのだ。

 渋鮫男爵が苦心して作成しただろう彼女の記憶だが、イマイチ出来が悪いのか断片的なものしか見られなかった。

 色々と不自由している彼女を幸せにしてやる……には苦労が多いんだなぁ、コレが。


「ま、カワイイから、苦労が多くてもいいけどね」

「ほぉ、今の台詞を聞いたら彼女もさぞ喜ぶでしょうね」


 不意に誰かに呼びかけられたので、そちらの方向に顔を向けると……幽壱が居た。


「『祥子はかわいい、キスしちゃいたいぐらいだ』なーんて、気障な台詞ですね。 横島さん」

「そこまで言ってない。 何すねてるんだよ。 別にいいじゃねーか、お前と姿形は変わらないんだから、俺が祥子をかわいいって言うのは、即ちお前をキュートだって言っているのと同じなんだぜ」


 頬を膨らませ、プンスカと怒っている幽壱をなだめる。

 流れるような美しさの黒髪と、白い肌にピンク色のワンピースが俺の目には眩しい。


「フン。 どうせ祥子の方が性格がカワイイっていうことをごまかしてるんですよ。 いいですよ、ええ、いいですとも、どうせ私は事務的で無機質の人工霊魂でしたよ」

「やれやれ……とんだ無機質だこと。 わかったよ、お前の言いたいことはよーくわかった」

「へぇ? じゃ聞きますけどね。 私の言いたいことっていうのはなんなんですか?」

「お詫びにデパートで買物に付き合え……だろ?」

「……!! 横島さん、エスパーですかっ!?」

「毎日毎日荷物持ちさせといて良く言うよ。 どうせ準備もしてたんだろ、行くぞ」

「あ、ちょっと待ってくださーい。 ポーチとお財布持ってきますからー」



 ……とりあえず、俺は幸せ……かな?












           続く






△記事頭
  1. 幸せばんざ〜い!おおいえ〜〜〜!
    嬉しいです!最高です!この喜びは原作でおキヌちゃんが帰ってきたとき以来のものですよ〜。
    幽壱ってばしっかり『双子の姉さん』してますね〜。やっぱ双子っていったら性格が対称的じゃないとね!ああ〜なんか無性に放映スタートするっていうアニメ『双恋』が見て〜〜!!!
    九尾(2004.09.23 23:33)】
  2. 黒髪の双子、姉は事務的な喋りだが不器用、妹は幼いかんじで不器用・・・・双恋ですねぇ・・・・
     横島はどちらかを選ぶのか、それとも二人を愛するのか・・・
     気になるところです
    D,(2004.09.24 00:46)】
  3. ほのぼのと、何でもないような、でも幸せに満ちた日々を送っているようで何より…
    幸せなのは良い事です…
    偽バルタン(2004.09.24 02:18)】
  4. で、デパートでどんなぷれいをすんの・・・(こら

    幽壱っ! 大丈夫、無機質なら某零号機のパイロットとか色々好む人種はこの国に掃いて捨てるほどいるから(え
    カラカッタの村(2004.09.24 22:27)】
  5. 久しぶりにお邪魔させていただきます。
    のっけからアレですが、告白いたします。
    この作品のタイトル「祥子さま…」と勘違いしておりました。
    わ、我ながら「ロサ・キネンシスinGS」とは恐ろしい勘違い…
    眞戸澤(2004.09.26 21:36)】

▲記事頭


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