「なんだ!?どこだここは!?」
目が覚めたら俺は山道に倒れていた。
ここはどこなのだろうか?
少なくとも俺は山道を登っていたという記憶がない。
『大丈夫ですか、お怪我は?』
しばらく、ぼけ〜としているとそんな声が聞こえてきた。
聞こえてきた声の感じからし女の人だろう。
そう思って声のした方を見た。
その人物を見て俺は驚いた。
そして、思わずその人物の名前を口に出してしまった。
「え!?おキヌちゃん…?」
そう、その人物とはGS美神に出てくる登場キャラクターだった。
目の前に漫画の登場人物がいるという非現実な出来事に俺は夢かと思い頬をつねってみたが痛かった。
この目の前の非現実は現実の物だった。
『わ…私の名前を知っているあなたはいったいどなた!?』
おキヌちゃんは驚いている。
いきなり見知らぬ人が自分の名前を知っていたらそりゃ誰でも驚くよな…。
「俺は神崎浩介っていうんよろしく」
『あの、ひょっとして私の名前を知っているということは私が何者なのかもご存知なのでしょうか?』
何者かってそりゃー誰でも一目でわかると思うんだが…人魂が浮いている時点で…。
「幽霊なんだろ?」
俺は正直に答えた。
『きゃー!!ごめんなさい!ごめんなさい!!別にあなたを殺すつもりじゃなかったんです!!』
おキヌちゃんはそういいながら俺の目の前から消えていった。
「さて、俺はこれからどうするかな…」
俺自身驚きなのは非現実に直面した自分自身だった。
この非現実な世界を楽しんでみたいという気持ちがあった。
そういう風に思ったのはこの世界が自分の好きな漫画の世界だったというのが大きいのかもしれない。
俺がこの世界で楽しむ方向に考えをまとめていると今度は男の声が聞こえてきた。
まさかワンダーホーゲル!?
俺は好奇心で声のした方に顔を向けた。
「美神さん!美神さん!美神さーん!!」
その声と共に俺は声の主とぶつかった。
そして、その人物は額にバンダナを巻いた男だった。
その人物には見覚えある。
このGS美神の世界の中心的人物の横島忠夫だった。
「うわ〜!!命だけは勘弁を〜!!」
大量の荷物を背負いながら倒れた横島はひどく怯えていた。
まあ、何があったのか予想はつくんだが…。
「落ち着け、そんなに怯えて一体何があったんだ?」
俺はそんな声を掛けながら横島を助け起こした。
「あ…ああ…実は…」
横島から聞いた話は俺の予想通りの物だった。
幽霊のおキヌちゃんに殺されかけたのだという。
「それで、そんなに急いでたのか…、で…さっき言ってた美神さんて人に会わなくていいのか?」
「そうだった〜!!美神さ〜ん!!」
横島はそう叫びながら走っていった。
大量の荷物を背負っていたというのに横島の足は速かった。
さてと…。
「俺も行くかな…」
「15、6の女の子の幽霊?」
旅館に着くとそこには鍋料理を食べていた美神さんがいた。
「温泉に出るのと同じやつかしら?」
「ウチに出るのはムサ苦しい男ですわ、そんなめんこいお化けなら、かえって客寄せになるで。」
旅館の主人はそんなことを言う。
「で、そっちのあんたは誰?」
横島と一緒に現れた俺を見ながら美神さんが尋ねてきた。
「神崎浩介といいます」
「私は美神令子よ」
目の前の人物を当然俺は知っている。
「えっ!?まさかあのGSの!?」
俺は名前を聞いて驚いたふりをした。
俺って役者だな〜。
「あら、私のこと知ってるの?」
「ええ、まあ、俺もGSを目指そうかな〜なんて考えてまして…」
「だったら、私の事務所に来ない?」
いきなりの勧誘だった。
「急な話ですね…」
「私の事務所にいるの私とそこにいる横島くんだけなのよ」
「え〜と、要するに人手が不足しているから人手がほしいと…」
「その通りよ、どうかしら?」
いきなりの話で俺は正直言って驚いた。
この世界に来てからどうするかという考えの中にGSになるという考えがあった。
「あの〜美神さん俺の話聞いてます?」
俺と美神さんがそんな話をしていると横島が美神さんに自分の話を聞いているのかと確認してきた。
「聞いたわよ、今回とは別件でしょ」
「で…でも俺殺されるとこだったんスよ!!」
それでも横島は引き下がらなかった。
「生きてるんだからいいじゃない!横島くんが除霊料金出すなら別だけど」
そんな横島に対して美神さんは笑顔でそう返答した。
「さて、おなかもいっぱいになったことだし、問題の露天風呂に行くわよ!」
「俺の飯は?」
部屋にはその一言を残した横島がぽつんと残された。
露天風呂へと俺達は移動した。
すると、美神さんが手に持った見鬼くんに反応が起きた。
「正体を現しなさい!!」
『ど…どーも…』
現れたのは問題のワンダーホーゲル部員の幽霊ではなくおキヌちゃんだった。
「何しに来たのさ?」
『一目で私の正体を見破ったあなたなら私をお助けくださるかと思って…』
「いや…見破るもなにも人魂が浮いてる時点で君の正体わかると思うんだが…」
「最もな意見ね…」
そんな話をした後おキヌちゃんは自分が300年前に人柱になった地縛霊だということを語りだした。
「どうするんスか美神さん?」
「そうね…」
横島と美神さんのそんな声が聞こえる中俺は別の事を考えていた。
ワンダーホーゲル部員の幽霊はどうしたんだ?
旅館の主人が男の幽霊と言ってたしワンダーホーゲル部員の幽霊で間違いないと思うんだが…。
もしかしてすでにこの場にいるのか?
よし!一か八かワンダーホーゲル部員がいることに賭けるか。
「そこにいるワンダーホーゲル部員!いるなら出て来い!!」
美神さんと横島は俺のその一声で俺の方を見た。
『よくわかったっスね』
するとワンダーホーゲル部員の幽霊が現れた。
「何でわかったんだ神崎?」
「よくわかったわね神崎くん」
「いや〜まさか本当に出て来るとは思わなかったな〜」
本当に出て来るとはな〜。
「まさか当てずっぽう?」
横島がそんな事を聞いてきた。
「そうだけど何か問題あるのか?」
問題があるとすればさっきの俺の一言でワンダーホーゲル部員が出て来ないという場合ぐらいだろう。
出て来なければただの間抜けにしか見えないからな…。
「へ〜、神崎くんGSにとって何が重要なのかわかってるみたいね」
美神さんは感心している。
「まあ、俺の事は置いといて、ワンダーホーゲル部員!!」
『オス!!』
「山は大好きか!?」
『大好きっス!!』
よし!俺の狙い通りの反応だ!
「だったら山の神様になりたいと思わないか?」
『や…山の神様…!?』
俺とワンダーホーゲル部員のやり取りを聞いていた美神さんは俺の考えに気が付いたようだった。
「それがいいわ、あんた成仏やめて山の神様になんなさい!」
『やるっス!やらせて欲しいっス!!』
ワンダーホーゲル部員は即答した。
「それでいいわね?」
『はい!!』
美神さんがおキヌちゃんに確認する。
「この者をとらえる地の力よ!その流れを変え、この者を解き放ちたまえ…!!」
こうして、ワンダーホーゲル部員が山の神となった。
そして……
おキヌちゃんが成仏することになった。
けど、俺はおキヌちゃんが成仏できないことがわかっていただけに感動的な別れの感じはしなかった。
『ありがとうございました神埼さん、これで私も成仏できます』
「俺は何もしてないって、成仏できるのは美神さんのおかげだろ?」
『美神さんもありがとうございました』
「いいのよ、こっちも手間がはぶけたもの」
『さようなら……』
『あの…つかぬことをうかがいますが、成仏ってどうやるんですか?』
おキヌちゃんのその一言で美神さんと横島はこけていた。
「いや…俺に聞かれても成仏なんてしたことないからな…」
こうして、俺とおキヌちゃんは美神さんの除霊事務所で働くことになった。
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初めましてモリータです。
この話は現実世界の神崎浩介というオリキャラの主人公がGSの世界に入ってしまうという話です。
これからよろしくお願いします。