「マリアさまが見てやがりまくり♪その4(マリみて)」URS (2004.08.29 08:17)
 ココは乙女の園リリアン女学園の(騒ぎの)中枢、薔薇の館と呼ばれる山百合会の使う建物…。校舎から若干離れているため、一般生徒には敷居が高かったが、祐巳様が「紅薔薇のつぼみ」となると、その親しみやすさから訪れる生徒が増えた。もっとも、普段は仕事があるため、週末や特別に土曜日など解放する日を決めているが…。
 さて、今度はどんな騒ぎを起こすつもりだ、双子の怪獣?(笑)


「ねぇねぇ、志摩子さん?志摩子さんのお姉様ってどんな人だったの?」

 と「白薔薇のつぼみ」二条乃梨子さんは自分の姉である「白薔薇様」藤堂志摩子さんに聞いた。お姉様と呼ばずに志摩子さんと言っているところから、今のところ白薔薇姉妹以外は部屋にいないらしい。どうやら少し早かったようた。
 乃梨子さんにしてみれば、体育祭の後、初めて聖様にお会いしただけなので、あまりお話できなかったから人となりを聞いてみたかったのだ。

「そうねぇ…一言で言うと「祐巳さん萌え」な方だったはねぇ。寄ると見ると祐巳さんに抱きついてらしたから。そう言えば、最近の祐巳さんの妹のかまいようはお姉様に似てきたわね。憂いある美女とセクハラ親父が矛盾することなく同居している感じかしら。」

 と志摩子さんは懐かしそうに仰ったが、聞きながら乃梨子さんは自分の顔に縦線が入り、後頭部にでっけぇ汗が浮かぶのを自覚していた。

『ソレは志摩子さんも一緒だよう(大汗)。』

 今現在の山百合会は祐巳様を中心に動いているといっても過言ではない。紅薔薇ファミリー(祥子様、瞳子さん、可南子さん)だけでなく、「黄薔薇のつぼみ」島津由乃様も、志摩子さんも「祐巳様萌え」ということでは全く大差ない(キッパリ)。
 紅薔薇ファミリーほど表に出さないだけ、祐巳様の同級生のお二人は時折ヤヴェ感じがする…片方は自分の敬愛する姉とは言え。
 じゃあ一体、昨年の山百合会はどんな状態だったのかまったく想像できない。

「乃梨子は居なかったからわからないか…。結構すごかったのよ、祐巳さんが山百合会に加わってから、お姉様と祥子様が祐巳さんを取り合って、何度も抗争になったわ。」

 ちょっと待ってください、我が姉上様!抗争ってなんですか?!若干混乱した乃梨子さんが心の中だけで絶叫する。しかし、志摩子さんはそんな妹の様子を気にも止めずに言い切りやがりました。

「まぁ、あまり被害は出なかったわ。当時は水野容子様が「紅薔薇様」でいらしたから…祥子様とお姉様以外に被害はなかったの(はぁと)」

 ってことはアレですか、アネキ様。お二人の被害は甚大っつうことですか?!姉や!!←乃梨子ちゃん落ち着けや(笑)
 祐巳様顔負けの百面相をブチかまし、ちょっちブルー入る乃梨子さん。そんな妹がかわいくて仕方がない志摩子さんは力任せに可愛がることにした。

「そう言えば、乃梨子?この間『私の』祐巳さんと二人で買い物にいったんですって?(邪笑)」

カキンッ
 乃梨子さんの動きが止まる。ぎこちなく姉君の方を振り返ると、天使のような笑顔で目だけが笑っていない悪魔(乃梨子さん主観)がいた。
 今の発言にかなり問題があったような気がしたが、気にする余裕もない。

「し、志摩子さん、それはこの間の日曜日、偶然町で祐巳様とお会いして…」
「そう、二人きりで会ったのね、『私の』祐巳さんと…(ニッコリ)」

 『お願いだ、話を聞いてYo、姉さン』と言いたいところだったが、ダメだ…言い訳は聞いてくれそうにない(泣)。
 乃梨子さんにしてみれば、偶然出会った先輩とお茶を飲んで帰っただけであるが、志摩子さんの中では『デート』ってことになってるらしい(冷汗)。
 最初は可愛がるネタにするつもりが、思い出したら怒りに変わったらしい(汗)。
まさに乃梨子さんピィ〜〜〜ンチ!!しかし、こう言うとき運命の女神は最悪の状況を常に提供してくれるモノだ。今回も例外ではなく…。

バタ〜〜〜〜〜〜ンッ!!
「「ののの、乃梨子さん!!ゆゆゆ、祐巳お姉様と、ででで、デートしたって、どどど、どういう事ですか?!」」

 乃梨子さんのクラスメイトでもある、双子の怪獣が勢い良く扉を開け放ち部屋へと入ってくるなり、乃梨子さんに詰め寄る。
 言うまでもなくすでに暴走状態にある双子の怪獣は、乃梨子さんを問い詰めはじめた。

「ねぇ、乃梨子さん?」
「な、何かな、瞳子?(冷汗)」
「瞳子は乃梨子さんのことを親友だと思っていますの…。」
「そう、私たち3人はクラスメイトで親友ですわ」
「っていうか、瞳子と可南子さんは滅茶苦茶仲が悪かったと…すみません」

 すっごい怖い目で見据えられ、答えることもできない。すでに普段の緊張状態もどこかへすっ飛ばし、双子の怪獣は息のあったコンビネーションで乃梨子さんを追い込んでいく。
 ちなみに志摩子さんは完全に傍観者と化して、微笑みながらその様子を脇目にお茶(ほうじ茶)をティーカップで飲んでいた…そりゃもう、優雅に(大汗)。
 お姉ちゃん、助けて!(無理っぽい)乃梨子さん大ピィ〜〜ンチ!!

「その乃梨子さんが、瞳子のお姉様と、で、でぇ〜とするだなんて…」

 大げさに言いながら、片手を顔の前にかざし、目に涙を滲ませながら可南子さんに倒れかかる。
 いつもだったら、支えるどころか微笑みながら放置した上、足で踏みつけるだろう可南子さんも、大層演劇的に抱き止めながら続ける。

「しっかりなさい、瞳子さん。こんなことで倒れるより、真相を究明するのが先ですわ…(ギロリ)」

 静かに、もンのすごく静かに言うもんだから、恐怖が倍増する。っていうか、可南子さん、アンタのクソ長ぇ髪の毛が逆立ってる、逆立ってるYo!
 乃梨子さんは逃れることもできず、かといって言い訳もさせてもらえず、追いつめられていた。
 泣いていたはずの瞳子さんはニヤリとどっかの特務機関の父親失格って言うより人間失格の髭眼鏡ばりに口元を歪めると、相棒の可南子さんとともに追い打ちをかける。

「「それで、乃梨子さん?本当のところをキリキリ白状してください、っていうか言え?(はぁと)」」
「ひぃ」

 いつもだったら軽くあしらえる双子の怪獣に詰め寄られ、お姉ちゃま(←いい加減戻ってこいヤ、おかっぱ)からも放置状態…。
 まさにドキドキするほどの大ピンチであったが、マリア様はそんな乃梨子さんを見捨てたりしなかった。

「ごきげんよう!ってみんなどうしたの?乃梨子ちゃん?」

 開けっ放しの扉から救いの天使、福沢祐巳様がひょいと顔を覗かせた。

「「ゆ、祐巳お姉様?!ご、ごきげんよう」」
「ご、ごきげんよう、祐巳さん」
「ごきげんよう、紅薔薇のつぼみ」
『祐巳様、ナイスタイミングです!!』

 心の中でサムアップする乃梨子さん。安堵からかその目には涙が滲んでいる。さっき双子の怪獣・瞳子さんがブチかましやがった嘘泣き(LV53)ではなく、マジ泣きであった。
 祐巳様はとりあえず涙ぐむ乃梨子さんと自分の妹たち、そして優雅にお茶を飲む志摩子さんを見て状況を察した。
 普段はワザとかゴルァと思わせるほど状況把握が遅いっつーより鈍い祐巳様だが、こう言った山百合会の内部抗争やその発端にはやたらと鋭い。
 おそらく日曜日のお買い物の件かなぁとまだのんびり考えているあたり祐巳様らしいのだが。

「瞳子、可南子。ダメじゃない。乃梨子さんはあなたたちの大切な親友なんでしょ?今度誘ってあげるから♪(ニッコリ)」

 祐巳様は会心の微笑みでそう仰ると、最至近距離で直撃を受け真っ赤になりながら顔を見合わせた双子の怪獣(恐ろしいことにリリアン女学園で祐巳様だけは彼女たちが「双子の怪獣」と呼ばれていることを知らない(汗))の頭を愛おしそうに撫でると、今度は志摩子さんに向かっていった。

「志摩子さんも!乃梨子ちゃんは大事な妹じゃない。また遊びに行くからさ、志摩子さんちに♪」

 そう言った瞬間、先ほどまで張りつめていた空気が一気に緩む。っていうか、双子の怪獣は溶けきったバターのようにふにゃふにゃになった。しかし祐巳様はさらに先手を打った。今の状態で他の面子が来たら、特に祥子様と由乃さんが来たら、最初からになりかねない…祐巳様はご自分の親友と姉を正確に把握していたのだ。

「乃梨子ちゃん、今日は山百合会で使うモノの買い出しがあるの。一緒に行ってくれる?」

 そう言うと祐巳様は乃梨子さんと手を組んで開け放たれたビスケットのような扉から、お魚をくわえて飛び去る猫のような(普段からは想像もできないような)敏捷さで乃梨子さんを連れて出ていった。

 祐巳様にナデナデされ呆然とでも幸せそうに真っ赤になって立ち尽くす双子の怪獣を見ながら、冷めてしまったほうじ茶を優雅に飲み干すと志摩子さんは仰った。

「さすがは祐巳さん、見事なものだわ♪乃梨子も浚われちゃったし。でもいいわ、遊びに来てくれるみたいだから(ニッコリ)」
「でも、コレは無様ね…(嘆息)」

「「祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…祐巳お姉様とお出かけ…(にへら〜〜)」」

 そこには祐巳様と二人っきりのお出かけを夢想してニヤけたまま固まってしまった双子の怪獣がいた。
 この後、祐巳様と二人っきりでお出かけするに、お互いが邪魔になると気がついた(最初に気づけという、しごく真っ当な突っ込みはカンベンしてください)双子の怪獣が獲物まで出して大暴れし、戻ってきた祐巳様(と乃梨子さん)に怒られることになるが、ソレはまた別の話。

全速力で終われ!!



【リリアン女学園・山百合会】
●白薔薇ファミリー
藤堂志摩子(とうどう しまこ)
(高等部2年、「白薔薇様(ロサ・ギガンティア)」)
 当代の三薔薇様の中で最強を誇る、現在の山百合会の支配者(爆)。先代支配者の「紅薔薇様」水野容子様から『支配権』を受け継いだ。近隣からはその美貌と策謀、情報操作で恐れられている『漆黒の』白薔薇様。
 アンティークドールとも形容される祐巳の親友にして、現在2年生ながら「白薔薇様」を勤める。銀杏、ユリネ、大豆などが好きという渋好みなところもあるが、冷静沈着で頼りになる。
 「天然ボケ」と「イケイケ」という同級生たちのストッパーであり、貴重なフォロー役である。
 山百合会の中では密かに天然君主と化しているらしいが、祐巳にはメチャ甘のため、事実上祐巳が山百合会を治めていると言っても過言ではない。全く関係ないが諜報謀略のスキルはMAX状態であり、祐巳様を除いては山百合会最強。ニッコリ笑って祥子様まで手のひらで転がす策士である。
 姉の聖様譲りなのか、祐巳のことになると暴走することもある、山百合会のラスボス(大笑)。最近DVを標準装備している…もちろん理由は祐巳を撮すためである(滝汗)。

二条乃梨子(にじょう のりこ)
(高等部1年、「白薔薇のつぼみ(ロサ・ギガンティア・アン・ブトゥン)」)
 市松人形に例えられることもある1年生にして、「白薔薇のつぼみ」。
 高等部入学組で、大叔母がリリアンOGである。仏像マニアであり、20年に一度の玉虫観音の御開帳を見に京都へ行き、雪で第一志望の高校受験に失敗しリリアンに来たらしい、今時自分の趣味のために人生捨てる覚悟のある(しかも世間一般のオタクではないw)結構希少価値の高い女子高生。
 大和撫子な容姿に似合わず、ブッ飛んだ思考回路も有する、瞳子の親友(マブダチ←リリアン女学園で最初に意味が通じたのは祐巳と瞳子だけだったらしいw)
 祐巳がいないと暴走する白薔薇系(っていうよりおばあちゃんと姉)のため、祐巳様には山百合会に居てもらわなくてはと考えている苦労人である。
 ちなみに祐巳様の信任が厚く(令様と乃梨子さんは特に)、この後『懐刀』的な役割を演じ、ものすごい勢いでパワーアップする予定。おそらくは瞳子、可南子の代の山百合会の『支配権』は乃梨子さんが持つようになると思われる。

●黄薔薇ファミリー
島津由乃(しまづ よしの)
(高等部2年、「黄薔薇のつぼみ(ロサ・フェティダ・アン・ブトゥン)」)
 かつては病弱だったが手術で健康な身体を手に入れ(こう書くと改造されたみたいだw)、イケイケゴーゴーな本来の性格が表にでてきた、祐巳の親友にして、山百合会の誇る超行動派の前衛(フォワード)。
 儚げな容姿と三つ編みから誤解されるが、実はイケイケな超強気な性格で知られる。
 超天然ボケ系の祐巳のフォローに絶対不可欠な天性のツッコミであり、つぼみ仲間としても同級生としても祐巳を支える。
 実は祐巳第一主義なので、紅薔薇のつぼみの妹たちとはある時は同盟し、ある時はにこやかに敵対する…リリアンって(冷汗)。

支倉令(はせくら れい)
(高等部3年、「黄薔薇様(ロサ・フェティダ)」)
 イケイケGOGOな妹を持つ苦労人の黄薔薇様。ただし、妹萌えのため気にはしていない。
 山百合会でもっとも常識的、理性的な人物なので貧乏くじを引くことが多い。
 ミスターリリアン2年連続受賞の凛々しい外見と反対に、お菓子作り、少女向け小説が好きな、おそらく山百合会でもっとも普通の女の子といえる。
 祐巳がいると妹由乃がおとなしいので、ずっと居てほしいと思ってたり、思ってなかったり(笑)。

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