「マリアさまが見てやがりまくり♪その1(マリみて)」URS (2004.08.29 08:06)
 波乱と喧噪(と混乱と被害)に満ちた学園祭も終わり、リリアン女学園はいつもの落ち着きを取り戻していた…。

 「紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブトゥン)」が大騒ぎの末、学園史上前代未聞の二人の妹を持つに至った大事件は「リリアン瓦版」を大いに賑やかした。

 後に「薔薇の中の薔薇」「薔薇の天使」と呼ばれ、リリアン女学園の中で永遠に慕われることになる「紅薔薇様(ロサ・キネンシス)」福沢祐巳様の、これが伝説の始まりであった。


 朝、である。
 「紅薔薇のつぼみの妹(ロサ・キネンシス・アン・ブトゥン・プティ・スール)」の一人である松平瞳子さんは、一人先に登校して薔薇の館で自分の姉である福沢祐巳様をはじめとした薔薇様方のため、朝のミーティング後のお茶会の準備をしていた。

「私がゆ、祐巳お姉様と姉妹(スール)になるなんて…(ポッ)」

 確かに出会いを考えれば独り言を言いたくなるのもわかる。何せ紆余曲折、お互いに最悪の出会いから約八ヶ月、姉妹(スール)になれるとは思っていなかったのだ。
 それを嬉しく感じている自分に、ちょっと苛立ちつつも瞳子さんは上機嫌でお湯を沸かし、お茶受けを準備していた。
 そう瞳子さんの姉の祐巳様は大の甘党、ちょっとしたお茶受けでもあるとご機嫌になっていただけるのである。

バタンッ!

 ビスケットのような扉を勢いよく開けて背の高い髪の長い女の子が息を切らして入ってくる。

「ごきげんよう、祐巳お姉様っ!!…って何だ、瞳子さんだけか…(プイッ)。」
ピシッ(誰かの額に青筋が!)

 そう、誰あろう彼女が瞳子さんと一緒に「紅薔薇のつぼみの妹」になった、細川可南子さんであった。

 瞳子さんと可南子さんの相性はそりゃもう致命的なまでに悪かった。祐巳様というお互いに共通の、もっとも大切な方がいらっしゃらなければ、かなりヤヴァイことになっていたことは言を持たない…。
 っていうか揉める原因がそもそも祐巳様がらみなんだけど…。
(「マジで殴り合いになったら止めようと思ってたけど…斬り合いになるとは予想もできなかった…。やはりココ(リリアン女学園)はひと味違う。(鞄から独鈷杵を出しながら…ってマテ、コラ!)」とは彼女たちの親友にして、「白薔薇のつぼみ」二条乃梨子さんのコメントである。)

「ちょっと…酷い言いぐさですこと…もう少し落ち着きませんと祐巳様に恥を掻かせることになりましてよ?」

 瞳子さんは芝居がかった口調で可南子さんに注意する。若干以上さっきの台詞への報復が含まれているのは乙女の秘密である。

「まぁ良いです…。それよりもこれもお願いできますか?」

 そう言うと可南子さんは、鞄の中から大事そうに包みを出して瞳子さんに手渡した。

ズシッ

 ちょっと考えられないような重さに取り落としそうになりながら、必死に受け止める。何だ、この重さは!?

「ちょ、ちょっと、可南子さん?何ですの、コレは?」

 かなり不安になった、瞳子さんは可南子さんに聞いた。
しかし、可南子さんはどこか恍惚とした表情で言いやがったのです。

「も・ち・ろ・ん、祐巳様に食べていただく本日の新作、ベイクド・アップルパイですわ!!」
「…可南子さん、私にはサイズが十七号以上あるように見えるんですけど…(汗)」

 やっぱり、この女(アマ)よくわからないと瞳子さんは思った。それよりも祐巳様に手料理を食べていくことを先を越されたのが悔しい。

「取りあえず、午後のお茶にまわしますわよ?祐巳様はともかく、他の方々は朝からアップルパイをこの分量は無理ですわ…。」
「ええ、それでかまいませんわ。いらっしゃられたら見ていただいて…褒めていただいて…その…あの…(ポッ)」

 なぜそこで紅潮する、細川可南子!っていうかズルイぞ!!心の中で全力で突っ込みをブチかます瞳子さんであった。そして心の日記にこう書き加えた。

『明日は取りあえずクッキーを焼いてこよう!』

 何故か会話もなく、ちょっぴりっていうよりかなり緊迫してた雰囲気が漂う中、瞳子さんと可南子さんは朝のお茶会の準備をしている。お互いに顔を合わさずに作業が滞らないところはさすがだが…雰囲気はメチャクチャ悪いけど。

カチャ

「ごきげんよう。あ、瞳子ちゃんも可南子ちゃんも早いね〜〜♪」

 彼女たちのお姉様、祐巳様は朝からご機嫌のようだ。

「「ごきげんよう、祐巳お姉様(はぁと)」」

 一気に薔薇の館と呼ばれる、リリアンの生徒会「山百合会」の雰囲気が和らぐ。そう、祐巳様がいると場の雰囲気まで明るくなるのだ。

 祐巳様は「お日様」であり、「天使様」であり、「マリア様のお使い」なのだ、可南子さんが同級生に啓蒙するのもよくわかる。たとえ宿敵と言えども正しいことは正しいのだ。

「祐巳お姉様、見てください!私が焼いてきたんですよ!!」

 嬉しそうに可南子さんがアップルパイを差し出す。

「うわ〜、大きいね。大変だったでしょう?」

 そう言うと祐巳様は、ご自分より背の高い可南子さんの頭を愛しそうに撫でていた。ちょっとマテ、可南子さん!ずるい、ずるいぃ〜〜〜!

「そんな、祐巳お姉様のためなら…(ポッ)」
「可南子さん、手を休めないでください?!」

 若干瞳子さんの声がきつくなったのは気のせいだろう(汗)。

 今日もリリアン女学園は、マリア様に見守られながら、平穏に過ごしていくのでした。


P.S.
 祐巳様と瞳子さん、可南子さんが楽しげに話しながら朝のお茶会の準備をしているのを、出遅れる形になった「紅薔薇様」小笠原祥子様はビスケットのような扉に張り付き、耳をダンボにして中には入れずにいた。

「ゆ〜〜み〜〜、私はいらない姉なのぉ〜〜(血涙)」

 祥子様は他の山百合会のみなさんが来るまで動けなかったという…。

どっとはらい(笑)



ちょっち設定〜〜♪
【リリアン女学園・山百合会】
●紅薔薇ファミリー
福沢祐巳(ふくざわ ゆみ)
(高等部2年、「紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)」)
 1年の後半に運命のいたずらからか、山百合会に入ることになった、自称「何の取り柄もない普通の女の子」。ちなみに幼稚舎から入学の生粋のリリアンっ子である。
 百年を越える、長いリリアン女学園史上で唯一、同時に二人の妹を持ち、全学園の生徒、教師、関係者から最も愛された薔薇様と言われる。
 もっとも「妹」にしたい先輩2年連続第1位(ちなみに「姉」にしたい先輩も2年連続1位)、支えてあげたい先輩2年連続第1位、「妹」にしたい同級生3年連続第1位(由乃は本性がばれたため1年の時だけ同率1位w)。昨年度ミス・シンデレラ。
 その行動、心根は後にリリアンの生徒であれば彼女を模範とするべきだとさえ言われるようになる。
 性質は温厚にして柔和、決してくじけることなく、常に前向き。いかなる悪意さえ無意識に包み込み、善意に変えてしまう。
 普段は総受・ネコな感じだが、実は鬼攻体質(天然のため意識してやっているわけではないらしいが…)であり、マジになった彼女に逆らえる存在はリリアンに存在しない。
 花寺学院という近隣の学校に同じ学年ながら1歳年下の(超シスコンな)弟がおり、生徒会長を勤めている。うちの中ではお姉ちゃんな内弁慶、そのまま姉妹関係でも割と強気に振る舞う。おかげで姉も妹もメロメロである(核爆)。

小笠原祥子(おがさわら さちこ)
(高等部3年、「紅薔薇様(ロサ・キネンシス)」)
「祐巳、リボンが曲がっていてよ?(ニコニコ)」←リボンが直せてメッサご機嫌な紅薔薇様
「お、お姉様(ポッ)」←恥ずかしいけどうれしい紅薔薇のつぼみ
「「……(ず、ずるいわ!紅薔薇様(祥子お姉様)!!)」」←つぼみの妹たち
 福沢祐巳最愛の姉(グランスール)にして、現在の「紅薔薇様」。旧華族の血筋を引く由緒正しき本物のお嬢様である。それ故一般市民の文化には疎く、ハンバーガーを召し上がるのにナイフとフォークをご所望なさったりする(汗)。元婚約者である従兄の柏木優の性癖告白(男の方が好き)と、祖父と父親の女性関係のせいで軽い男性不信となる。
 2年の秋に祐巳と運命の出会いをして「姉妹(スール)」となる。
 その後、加速度的に祐巳に対する依存度が上がっていく…ちなみに祐巳と長期間会えなくなった場合、確実に廃人の様になって使いものにならないようになると言われている。
(姉妹関係を解消されたら寝込むかもしれん…っていうか精神的大打撃でしばらく再起不能だろう)
 祐巳の二人の妹に関しては、時に祐巳を取り合い、時に嫉妬しあうという複雑かつ斬新な関係になるらしい(笑)。ってすでに緊張状態かよ(冷汗)。
 ちなみにおばあちゃん(祥子様)と孫たち(瞳子・可南子)の間では「祐巳(様)サイコー!」「祐巳(様)マンセー!」ということでは意見は完全に一致していると言われる。それで良いのかよ、リリア〜ン。

松平瞳子(まつだいら とうこ)
(高等部1年、紅薔薇のつぼみの妹(剣))
「この線より後ろのものすべてが、瞳子にとって大事なもの。この「紅薔薇の剣」は下がりませんわ!!」
「と、瞳子ちゃん、気合い入りすぎ(汗)」←姉・福沢祐巳さん談
 無敵のツイン縦巻きロールをチャームポイントとする、演技力過剰なお嬢さん。
 リリアン女学園史上唯一無二の「紅薔薇のつぼみ」の双子の妹のうち、「剣」と呼ばれる、福沢祐巳最愛の妹(プティ・スール)。
 過去の経緯から、姉に文句や突っ込みを入れながらも、結局は祐巳様大好きっ娘であり、対となる可南子との関係は割と(寵愛を巡って)微妙である(もっともある事件以後は表だっては喧嘩しないが…)。
 得物はフランベルジュ(長さ2m、重さ10kg 普段は制服の中に仕舞ってある…?w)。
某葉隠兄弟(←マテ)に師事し零式防衛術(ぜろしき)を修め、「因果」「螺旋」「大儀」などの大技も繰り出す。関係ないが零式鉄球は乙女なので辞退したようだ(笑)。

細川可南子(ほそかわ かなこ)
(高等部1年、紅薔薇のつぼみの妹(槍))
「わが身は祐巳様を守る醜(しこ)の御盾、祐巳様に邪念を抱く下郎は通ること能わず!!」
「醜(しこ)だなんて、可南子ちゃんはとってもきれいで可愛いよ!!」
「そんな、祐巳様………(ポッ)」
「ハイハイ…そこのバカ姉妹(スール)、TPOを考えてね(こめかみに指を当てながら)」←黄薔薇のつぼみ
「よ、由乃、その水着は大胆すぎないか?わ、わたしのもだけど(すっごいハイレグビキニの水着を着ていて若干狼狽気味♪)」←黄薔薇様
「ゆ、祐巳っ!(ハンカチを噛みながら)」←紅薔薇様
「ゆ、お姉様、可南子さんばかり狡いですわ!!(芝居がかったポーズで)」←紅薔薇のつぼみの剣
「さすがは祐巳様ですね…って志摩子さん、そのビデオカメラは!?」←白薔薇のつぼみ
「(うっとり)…祐巳さん…素敵(ポッ)」←白薔薇様
 長い黒髪をワンレングスにした、背の高いお嬢さん。
 リリアン女学園史上たった一組の双子の「紅薔薇のつぼみの妹」。
 瞳子との対比で「槍」と呼ばれる、福沢祐巳最愛の妹。ちなみに「おばあちゃん」に当たる紅薔薇様小笠原祥子様(最重度祐巳依存症!)との相性は(祐巳の寵愛を巡って)かなり微妙であり、前述の瞳子を含めて衝突は絶えないらしい。
 「祐巳様至上主義者」でもあり、そのすばらしさを伝えようとする伝道師でもある。彼女のおかげで下級生の祐巳様信仰は始まったとさえ言われる。
 ある意味紅薔薇ファミリーでもっとも祐巳への依存度が高い娘である(祥子様とは別の意味で…)。
 もちろん、得物は「獣の槍」です!!これも当然ですが、普段は制服の中にしまってあります…ってどうやって入ってんだよ!


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