疾風吹きすさぶ荒野、いや石切り場に佇み睨み合う二組四人の影。
「フン、キサマのような落ちこぼれがここまで生き延びるとはな」
「わたしは負けぬ、絶対に」
「それはそれとして・・・」その一人、黒い本の使い手シェリ−が問う。
「後ろの魔物達はどうするの?一緒にかかって来ても構わないわよ」
「いや、彼らは・・・いわば見届け人だ。勝負がつくまで動きはしないよ」
赤い本の使い手清麿は答える。
「まあいいわ。どうやら残った魔物はこの場にいるので全部のようだし。
そろそろ始めましょうか」
「ああ、だがその前に・・・シェリ−!」「そこね!『アイアン・グラビレイ』」
「清麿!」「『ザケル』」
一斉に、ある一点に攻撃をかける四人。
「なぁ−にしてるんだ清麿。『心の力』を無駄に・・・しちゃ・・・?」
立会人の一人、フォルゴレもまた歴戦の戦士。その場の異常に即座に気付く。
そこの地面は電撃と重力波になぎ払われていた・・・まるで、何かが存在するかのようなUの字に。
「ほぅ、我に気付くとはなかなかだな」
その場にまるで羽織っていた透明な衣を脱いだようにするりと姿を表す一人の男。いや魔物か。
「貴方、何者です」「部外者は危ないんで立ち入り禁止だぜ」
背中に冷たい汗をかきつつ軽口をたたく本の使い手。魔物達は険しい顔で相手を睨みつけている。
「我は、そうさな、いうなれば『魔界の王』よ」
「!!」驚愕する一同。
「そう驚くようなものでもあるまい。この戦いの勝者が次の王である以上、その戦いを現王が見届けるのはむしろ当然。
とはいえ色々聞きたいこともあるだろう。ひとつだけ質問するがいい。
その質問が面白いモノなら答えてやろう。『幾多の謎』とやらの答えをな」
「では聞こう」
一歩前に出たのは赤い本の使い手清麿。
「アンタ、王になって何千年になる?」
「フフフフ、これまで色々質問されたがそれに気付いたのはきみが最初だ、赤い本の使い手よ」
「それ、どういう意味あるか?」
後ろのほうから問い掛けるリィエン。
「以前からおかしいとは思っていた。何故王を決める方法が戦いなんだ?
王に求められる素質は強さだけではないだろうに。
しかし現実に王を決めるためにはひたすら戦い、王候補同士で傷つけ合うという手段が取られている。
百万歩譲って魔界の王には力のみが必要としよう。
しかし王候補の選出基準も無茶苦茶だ。
強い者、力を求める者、権力を望む者、そして強い相手と戦う事を望む者などはまあ普通としても
戦いを望まない者、戦いを嫌う者、権力を求めていない魔物までも無理やり戦わされていた。
王になりたくない者をなぜ王候補にする?
それに例えばティオなどは性格は戦闘向きだが、防御や回復といった他人とともに戦い、フォロ−するのが得意だ。
キャンチョメにいたっては奇襲、騙しが本領。
なのになぜ彼らまで1対1を強要されるであろうこの戦いに駆り出された?」
「いい所に気付いたな、人間」
何やら剣呑な雰囲気を纏わりつかせ始めた。
「答えてやろう。だが聞いたら少々どころではない痛い目にあってもらうぞ。
まあ安心したまえ。殺しはしない。
まず自己紹介をせねばな。
我が名はダロス。四千年前から『魔界の王』をやっている。
続く
はじめまして、シンペイと申します。
「夜に咲く話の華」の小ネタ掲示板にちこっと掲載してたのをちくと変えて投稿します。
これは、ガッシュ達の戦いが「王を決める」というより「蟲毒」のように感じた所から考えました。
お許しを頂いたのでこちらにも投稿させて頂きます。