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▽レス始

「うたわれるもの 黒銀の世界 プロローグ(うたわれるもの+オリジナル)」

幻想師 (2007-03-05 16:11)

注)オリキャラ主人公ですので其れを踏まえてお読みください。うたわれファンでハクオロだけが主人公だという読者は読むことはお薦めできません。ただし、別にアンチハクオロだとか蔑ろにしてオリ主だけ、ウハウハとかは絶対無いのでそこいらは平気です。詳しくはあとがきをみてください。


一歩、一歩、背負いながら地を踏みしめる。思えば、この青年との付き合いも長いがこの姿は初めて見た気がする。

「はぁはぁ」

魘されるように息を切らしながら、朦朧とした意識の中のこやつはどのような葛藤があるのだろうか? いや、それも些細なことだろう。この物語の・・・いや世界の中核を担うこの男にはまぎれもない苦難があるのだろう。

「あ、あの、大丈夫ですか?」
「いや・・・構わぬ。あの姿でいられるよりはましというものだ」
「・・・・・・」

隣にいる娘が背丈の関係でこの青年を背負っているのがつらいように見えたのか、心配そうにこっちを見るが、自分の一言で黙る。

「そもそも」
「は、はい!!」
「そちらも妹を背負っているのだ。手は無いだろうに」
「いえ、村に行けば誰かを呼んでこれます」
「ふむ、しかしながら平気だ。この程度、さじにも劣るというもの・・・心配は無用」
「わかりました・・・では頼みます。あ、あの、それと」
「■■の娘よ」
「は、はい!!」

・・・どうも、自分とこの男のことをうすうす感づいて、緊張しているようだ。
もっとも、分かってもこの男のことだけだろう。自分は気づかれることは無い。

「そう緊張するものではない」
「で、でも」
「それよりも、汝にはこれからのことを心配したほうがいい」
「!」

私の一言で、娘の顔がこわばる。無理も無いことだ。

「しかし、案ずるな。この男、■■したとはいえ酷い事にはならぬ」
「どういう意味ですか?」
「うむ、■■したのがこの男の方でよかったということだ」
「えと、あなたの場合は違うんですか?」
「いや、そうではない。そもそも、私は■■などせぬ。私が言っているのは、別の者のことだ」
「別の人?」

話がかみ合っていなかったので、修正したのだが疑問が生まれたのだろう。
きょとんとした顔で娘は首を傾げている。

「いらぬことは言わぬがいいのだろうが・・・・・・まあ、それは置いとくとして、この男はお人好しなほうだから心配は要らぬといっているのだ」
「・・・あの、ぶしつけなことですけど、その人は・・・なんとなく分かるんですけど、あなたは一体誰なんですか?」


「・・・約束に縛られた待ち人だ」


うたわれるもの 黒銀の世界
プロローグ 始まりは忘却と沈黙にて


??? SIDE

熱い、体が・・・のどが焼ける。全身がばらばらになってしまいそうなくらい苦しい。
何故・・・私は?
―――それに、ここは?

「む、気づいたか? 案ずるな、ここは―――」

眼が覚めてみれば、どこかの古臭い家に居て、自分は寝ていた。
そして、薄暗い部屋の中、灰色に染まる長髪の青年が自分の枕元に座っている。生憎、顔は薄暗いゆえに見難い。

「だ、誰だ?」
「・・・眼が見えておらぬのか?」
「いや、そうでは・・!!・・・ぐぅ!」

全身に動くことへの激しい拒絶が走り、体が焼けるように痛みを訴える。

「無理をするな。今、人を呼んでくるからしばし待っていろ。さっきまでここに居たのだが、用あって代わっている。おとなしくしているがいい。いかにお前とはいえ、体がぼろぼろではよくないだろう」
「待ってくれ、おまえは・・・ぐ!?」
「気がせくのは分かるが待て。まずはお前の体の具合を見るのがいい。生憎、俺のほうも五体満足とはいえぬからお前の体について、詳しいところはさっぱりだ」

怪我ひとつなさそうな様子でわけの分からないことを言って、灰色の髪の青年は部屋から出て行った。全くなんなのだ、ここは?
そういって、記憶を反芻させたがいまいち頭が働かない。体に走る痛みのせいだろう

「眼が覚めたんですね! まだ動いちゃダメです。安静にしていてください、ひどい怪我をしていたんです、あなた」

男が出て行って、しばらくして唐突に、視界の隅にあった部屋の戸が開く。と同時に若い娘が入ってくるなり話しかけてきた。そして、娘は歩み寄ってきて起き上がろうとした自分の肩をせいして寝かせようとする。

「まだ痛みますか?」
「・・・君は?」
「あ、私、エルルゥっていいます」
「エルルゥ?」

聞きなおした名前に娘は、いやエルルゥはうなずく。

「それと、ここは私の家です」
「家? そういえば、さっきの男は?」
「男?・・・ああ、あの人は・・・そうでした。あの人の名前聞いていませんでした。全く、あの人はフラフラとどっかに行っては、のらりくらりとしたことしか言いません、連れのあなたがここに居るのに・・・。まあ、代わりに薬草をたくさん取ってきてくれるんで助かってはいるんですけど」

さっきの男のことについて思うところがあったのか、ぐちぐちと不機嫌そうな顔をしながらエルルゥは話す。しかし、私の連れというのはどういうことだろう?

「自分は一体?」
「あ! すいませんいきなり愚痴こぼしちゃって、ええとあなたは森でひどい怪我をして倒れていたんです。それで、あなたの連れの方があなたを担いでここまで運んでくださったんです」
「怪我? それに連れ?」

全く覚えていない。いつ怪我をしたのだ?
それにさっきの男が連れだと?

「ああ、怪我のほうはもう大丈夫です。峠をこしたって、お婆ちゃん言ってましたから。後はきちんと安静にしておけば・・・連れの方は」
「君が助けてくれたのか?」

疑問もわいたが、それより確認したいことと言いたい事があった。

「私は・・・その、さっき言ったように運んでくれたのもあなたの連れの方でしたし・・・」
「自分は・・・分からない」
「わからないって?」

自分がつぶやいた言葉は、同じようにつぶやくように返された。
・・・そう分からない。この頭の中を走る不快感は、けして怪我のせいだけではない。

不快感に耐え切れず、がばりと痛みを無視して上半身を起こす。
そして、言い知れぬ不安にかられて、彼女の両肩をすがるように掴む。

「教えてくれ!」
「あ、あの?」

突然のことで驚いた彼女の両目に自分の顔が写りこむ。

なんだ、これは?
その眼に映った顔には、仮面のようなものが映っていたのがちらりとみえた。

あわてて、自分の顔に手を当て確認する。たしかに、何かかぶっている。自分は何かを顔にかぶっているのだ。そのままではじっとしていられなくて、自分は立ち上がる。
そのまま、エルルゥを無視して急ぎ足で歩き、部屋の外にあった水瓶を覗き込んだ。

自分の顔を映し、愕然とした。瓶のなかの水面にうつった顔に口元の無い目元を覆う白い仮面が張り付いているのを見てじゃない。それも勿論、気になったことだが先ほどからの言い知れない不安の正体に気づいてしまったからだ。


「自分は・・・一体・・・誰だ?」



灰髪の男 SIDE

「何故、外れない?」

朝か。・・・起きたのか?
男は自分の仮面を触りながら、妙なことをつぶやいている。
昨日はどたばたして、あれ以来話していなかった。部屋の隅の壁に持たれて、自分は座っている。昨晩はこの体勢のまま寝た。

―――しかし、わけの分からぬことを言っているな、この男?

「・・・何を言っている?」
「!―――いつから居たのだ?」
「昨日の夜更けだ。お前が寝込んだあとに、静かに入ってからずっとここに居たが?」
「ずっと、そこにいたのか?」

驚いたように言ってくる。

「まあな、お前が倒れてから俺はずっとここで寝ている」
「・・・座ってか?」
「ん・・・まあ、たしかに座ってだが、それより何を言っておるのだ、外れないなどと?」
「この面、外れないからおかしいのだ、何のために?」
「・・・外れないのはそれが一部だからだろう、何を言っておる?」
「!・・・一部だと、この仮面について知っているのか?」
「話が噛み合っていないな、一体どうしたのだ?」

そう噛み合ってない、まるで初めて知ったような顔だ。
おまけにこの男。前からよそよそしかったが、今は輪をかけてよそよそしくなっている。まるで初対面にあったような雰囲気だ。

「おや、気がついたようだね。それに御主も起きたのかい? 全く、顔だけしか見ないとはどういうことだい? あれからかなり顔をあわせていたのに、全く話をしないとはな」
「む、これは確かに失礼した」

老婆(確かトゥスクルといったか?)が話しかけて、思い出す。ろくに自己紹介も何もしていないことにだ。思えば、こやつの薬草探しや、あたりの散策に気がとられて、会話らしい会話をしたことが無かったな。・・・あれからかなり日がたつのに。

ふ〜む、いかんな。対話能力が無いわけではないのだが、会話自体久しいので会話の重要性が自分の価値観から抜けかかっていた。

「まあ、いいわい。お主の連れが目を覚ましたんだ、話してくれるのじゃろう? さて、そこの。恩人にご挨拶なしかい?」

急に話を振られて、隣に居たのは眼をむいて驚いている。
・・・どうも先ほどから様子が変だ。

「おばあちゃん、この人は」
「分かっておる」

部屋の隅にあった梯子から顔を覗かせて、エルルゥが何かを言おうとするのをトゥスクル殿が言葉で止める。
エルルゥは、どうも朝ごはんを運んできたようだ。話し遅れたが、ここは所謂、屋根裏のような場所だ。それ故に、エルルゥは梯子で登ってきたのだが・・・。

「手伝おう」
「あ! 昨晩は私に知らせてくれた後、どこに行っていたんですか!? 探したんですよ! もう、ふらふらどっか行って!!」

運ぶのを手伝おうと思って、近づいたら怒られた。
何故だ?

「もう、また何故だって顔してますよ!!」
「いや思ったことが、か「顔に出さないでください! 連れの人、ほっぽってどっか行った事を言ってるんです!!」・・・しかし、薬草を「薬草はもう十分です!」・・・」

何か知らぬが、黙ったほうがよさそうだな。

「もう、すぐ黙って。口下手というわけじゃ「エルルゥや」・・! あ、ご、ごめんなさいおばあちゃん!」

どうやら、彼女の火はトゥスクル殿のおかげで消火したようだ。いかんな、どうも感性にずれが出て、それが彼女を怒らせているようだな。

「とりあえず、すまない。どうも、自分には周りが見ない癖があるようだ」
「はぁ〜、分かりました。もういいです」
「エルルゥ、きちんと分かっておるから心配しなくてえぇ」

ため息をエルルゥにつかれ、その間にトゥスクル殿は脈などをしらべ、彼の具合を見ている。

「自分は一体?」
「それはこっちが聞きたいくらいじゃ。もっとも、そこの御主は知っているのじゃろう?」

蚊帳の外に居たのに急に話を振られ、三対の眼が俺を見る。しかし、話に応答するその前に疑問が浮かぶ。

「待て、記憶が無いような素振りだな?」
「・・・ない。しかし、お前は私のことを知っているのだな!?」

記憶が無い。・・・厄介なことだが、ここで口にするのは良くないことだ。

「そうか。ならば、知らぬほうがいいというわけではないが、私はいや、俺に話すことは無い。トゥスクル殿については心配要らない」
「どういう意味じゃ?」

心配ないといわれて、トゥスクル殿はわけが分からないという顔をしている。まあ、会話に主語が抜けているから仕方あるまい。

「ふむ、俺もこやつも疚しい者ではない。ここには、何かから逃げていたわけでも、盗賊まがいをして辿り着いたわけでもない。よって、この村に何か来て迷惑をかけることは無いだろう。もっとも、ここで養生させてもらっているのだ。すでに迷惑はかけているのは、申し訳ないことではあるがな。いささか勝手な持論ではあるが、それ以外に言うことは無い」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。お前は私について知っているが、話さないというのか?」

あせるのも無理は無いが、この男に言うことはない。

「そうだ」
「な!」

きっぱり言う俺に、唖然とした顔をしている。

「大体、この仮面はなんなのだ!? 一部だと!?」
「ええい、錯乱せずとも良い」
「錯乱するように仕向けたのはお前ではないか!?」

だいぶ参っているようだな。
しかしながら、俺に向かって怒鳴るだけで、純粋に怒りを向けないのはこいつの本分故か?

「まあ、その仮面は外れないなら外れないなりに理由があるんじゃろうて。落ち着かぬか」
「ぐ、すまない」
「人を見る眼はあるつもりじゃ。御主達が疚しい者ではないというのは信じよう。まあ、今はゆっくり体を治すことに専念するがいいさね」
「感謝します」

そのまま自分は胡坐をかいたままではあるが、そのまま両手こぶしを地に着けて頭を下げる。それを尻目にトゥスクル殿は部屋から出て行った。

男はあいかわらず呆然としているようだが・・・。

「―――本当に私のことを語らないというのだな?」
「ふむ、気持ちは分かるが、話すつもりは無い」
「では、せめてその理由くらいは教えてくれないか?」
「・・・言葉には表しづらいがいいだろう」

ぴくりと、エルルゥが反応する。出会いの時のことを少し思い出したようだ。

「端的に言えば、俺が口にしても意味が無い」
「意味が無い?」
「お前は自分の力で、俺のことも、怪我の理由も、己のことも思い出し、辿り着かねばならない。それがお前の運命だ」
「サダメ? そんなことでは納得いかない。それとも何か、記憶を失ったことは試練とでも言うのか?」
「否、試練ではない。正確に言えば、本来、私はお前に介入すべきではないのだ。しかし、お前と交わした盟約の名の下での仲故におまえに記憶に関すること以外では力は貸そう」

口調に地が出たが、仕方ない。
間違ったことを言ったわけでも、軽く語れることではないのだ。

「盟約・・・何か約束したのか?」
「そうだ。約束した。―――とても大切なことだ。しかし、気にせずともいい。私は待つ」
「しかし」
「あせる必要は無い。待つと言っても私が勝手に言っているだけだ。そもそも約束したことも時間はあまり関係ないし、意味も無い」
「そうなのか?」
「ああ」

眼を閉じ、頷く。
起こったことは予想外の結果だが・・・これからいろいろとあるだろう。そこに居るエルルゥを含めて、改めて力を貸そう。

『あくまで・・・人として』
「ん? 何か言ったか?」

小さくつぶやいた言葉だが、聞こえたようだ。

「いや、別に何も・・・それより納得しろとは言わぬが、話は飲み込んたか?」
「あ、ああ―――確かに納得できないが、なんとなく漠然ではあるが・・・理解した」
「もうよいか?」
「あ、ああ、何とか自分の力で思い出してみる」
「それでいい、さて長々と話してすまないエルルゥ。まだ冷めてはおらぬと思うがその朝飯を彼にあげてくれ」
「あ、いえ、あなたの分は下にありますからどうぞ」
「それはすまない、いただくとしよう・・・ん?」

梯子のところからエルルゥに似た顔がちょこんと覗いている。
ここ数日、顔こそ見てはいたがやはり自分の周りを見ない行動のせいで名前を知らない。

「ふむ」
『びく!』

眼があうと、その顔はさっと引っ込んだ。

「あ、こらアルルゥ!!」
「いや、よい。ではわた・・・いや、俺は降りるとするよ」

ひっこんだ子の態度が失礼だと思ってかエルルゥが咎めるが、其れを止めて俺は下に下りた。

口調を直すことを忘れていたのは、まずかったか?



仮面の男 SIDE

「ふぅ・・・落ち着いたようで、落ち着かない」
「え、えと、あの〜?」
「あ、ああ、すまない。エルルゥ」

自分の様子を見て、エルルゥが心配そうに見てくる。

「あの男、変わった色の髪と眼をしていたな。それに服装もエルルゥたちとは違う」
「―――そうですね。あの人、失礼ですけど確かに変わった格好していました」

昨日は薄暗くて見えにくかったが、背まで伸びた銀色がかった灰色の長い髪、それを首下辺りで一つに括っていた。それにあの金色の眼。

「あの人の尻尾、見たようなことがない形ですし」
「尻尾?」
「はい、結構珍しい種族の方じゃないですか?」

今、気づいた・・・というよりいまさら気になったことだが彼女には尻尾もあれば、獣のような耳がある。

「その耳と尻尾、本物なのか?」
「え? どういう意味ですか?」
「―――いや、なんでもない。それより、あの男に尻尾などあったか?」
「ええ、ずいぶん長いようで腰に巻いていましたけど・・・。それでも余るのか、結局後ろのほうで垂れていましたよ。・・・あんなに長い尻尾、見たことも聞いたことも無いですけど」

あ、ああ・・・あれか。なるほど、服装の一部だと思っていた。

彼の服装は、エルルゥたちと違い、外蓑などに似た服装だ。口元を隠すように長い襟に、腰下まで伸びた赤い上着を纏い、黒い長裾の下穿きを履いていた。その上からさらにフードのついた長袖で膝くらいまである黒い羽織を着ていた。履物は無いが足裏が傷つかないように白い布を足指の先がちらりとしか見えないくらいに何重にも巻いて履物の代わりにしていた。

件の尻尾とは、上着と羽織の上から群青色の布を腰に巻きつけていた帯代わりの腰布の上にさらに巻きついた黒い鎖とも見えた物が、エルルゥの言う尻尾だったのだろう。

中性的な顔立ちをしていて、かといって女顔というほどでなく、いうなれば男臭さが少し抜けた顔というか・・・まあ、そんな感じの青年だった。

しかしながら、目つきが中々鋭くて好青年と呼ぶには忍びなく、歳の頃は私より下だろうとも思ったが、あの話し方を聞けば其れも霞がかる。
彼との会話は、えらく年配の人と話しているように錯覚するからだ。

「さて、あの人の言うことなんですが、冷め・・・ふぅ、まだ温かいですね。お粥、作ってきたんです。モロロ粥」
「モロロ?」
「少し栄養のあるもの食べないと」

そう言って、エルルゥはお椀からよそって匙をと一緒に粥を口元に持ってくる。
言わずもがな、これは食べてということだろう。

「あ、あぁ、その―――ありがとう」
「あ、あの、いえ・・・その、私は薬師の見習いとして当然のことを。あ、ほらさっきから言っていますけど、冷めますよ」



そんな感じで、あれから彼女にはいろいろ良くしてもらい、体も少しずつではあるが良くなっていった。トゥスクルさんの息子さんの古着も貰い、本当に何から何までほんとに感謝の言葉を言い表せないくらいだ。申し訳ない気持ちに負けて、いろいろと動こうとしたら止められて、またまた申し訳ない気持ちになったのは言わぬが花だったが・・・。

薬草の調達や、力が要る作業はどうも灰色の髪の青年が手伝ってくれたようだったし、エルルゥの手が離せないときは、彼が肩を貸してくれたりもした。もっとも、彼はあの一件以来思うところがあったようで、接触がエルルゥたちと比べると少なかった。

まあ、そのおかげでエルルゥが彼に対して言っていたことがよく分かった。

と言うのもあの青年。
話をすればきちんと答えるし決して口数が少ないわけではないのだが―――時々、会話が妙なところで詰まったり、会話の機会が急にぱったりやんだりと、非常に気まぐれというかなんというか、不可解なところがある。

根暗ではないし、会話自体にはなんら問題は無いのだが、彼には思い立ったが即行動という感じでいきなり会話をきる時がある。

・・・それより、私も聞いていなかったのが悪いが彼の名前をいまだに知らない。

「何か初歩的なところで、会話できていないな」
「え?・・・アルルゥのことですか?」
「あ、いや・・・そうだったな。どうも私は避けられているかもしれないな」

つぶやいた言葉にエルルゥが反応した。
エルルゥの妹、アルルゥとも考えてみれば打ち解けていない。灰髪の彼とは違った意味で会話ができていないな。

「あの子、人見知りしているだけなんで、嫌ってるわけじゃ無いだと思うんですけど」
「・・・そういえば、『違う』とかなんとか言われたことがあったな」
「そうですか。其れは、たぶんお父さんの服を着てたから驚いたんだと思います」
「父親か? 姿は見たこと無いな」

そもそも、体がろくに動かなかったのを理由に外に出ずにいたので男は、ひとりしか見ていない。

「お父さんは亡くなりました。お母さんも、アルルゥを生んですぐに・・・」
「!―――そんな大事なものを借りていたのか?」
「気にしないでください。私たちが小さい頃のことですから」

そういう彼女の顔は少し悲しげだった。

「そういえば、ハクオロさん」
「ハクオロ?」
「えと、おばあちゃんが名前が無いと不便だからあなたのことハクオロって名前で呼べって」
「ハクオロか。分かった、その名前ありがたく貰っとくとしよう」
「あ」

自分がつぶやいた言葉に、エルルゥは何か反応する。

「どうかしたか?」
「い、いえ、なんでもないです。それより、やっとあの人の名前聞きました」
「何、本当か?」
「ええ」

あの人とは、いわずもがな灰髪の青年のことだ。・・・しかし、これだけ共に居てエルルゥにすら名前を言っていなかったのかあいつ。

「『もう、隠してるわけじゃないんですよね?』って聞いたらあの人、『忘れてた』なんて言うんですよ!!」
「・・・何というか、あいつらしいな」

不機嫌そうにエルルゥは怒っている。
その時のことが容易に想像できてしまうのが彼所以だろう。最近、気づいたが彼の目つきが鋭いのは錯覚だったようだ。いや、確かに鋭い時もあるのだが、大半は上まぶたが半分閉じたような眠そうな半眼をしている。

『眠いのか?』と聞いたら、『別にそうではない』と返事がかえってきたところ、どうも平常時の彼はおっとりと言うか、何と言うか、兎角なんとも言えんが怖いとか、威圧される人物には見えない。

それでも三枚目に見えないのは、あの顔の造詣ゆえだろう

「えと、ハクオロさんは彼の名前知ってましたか?」
「いや、何と言うか・・・私もつい聞くのを忘れていたよ。しかし、私の名前すら教えてくれなかったなあいつ」
「あ、名前は知らないって言ってましたよ?」
「は?・・・彼は私の連れだったのだろう。あれは嘘だったのか?」
「いえ、そうじゃなくて、通名とか、あだ名みたいなもので呼び合っていたって言っていましたよ」
「なるほど、そういうことか。―――いけない、話が伸びた。ここで聞きそびれたらまた聞き忘れてしまうな。それでエルルゥ。彼の名は?」
「えと、本当の名前かどうかは知りませんけど、とりあえずこう呼んでくれって言われました」

そこで私はようやく知ることができた。あの青年の名を・・・。

「ミツキさんって言うんだそうです」


ふと思ったが、名前を聞くのに本当に間抜けなくらい時間がかかったということの要因に自分にも多少落ち度があり、彼ことミツキのことも一概に言えないなということに気づいた。


あとがき

というわけで、うたわれのオリジナルストーリーでオリキャラとハクオロの二人を主人公に進めていこうと書いた物語です。

雑談にはなりますが、オリ主最強ハクオロ蔑ろハーレム〜っと言ったモノにする気はございません(強調)。
しかしながら、オリ主は最強ではないがそこそこ強く書かれる事と原作キャラ(エルルゥは初めから物語の都合上除外)との複数カップリングかもしくは普通に一人のカップリングにはしたい(といっても、断然ハクオロの方が好かれている数が多いと思いますが)と思いますんで、そういうのがオレキャラバンザイものだと判断してしまう人は見ないことをお薦めします。万が一見ても、文に対する誤字や文章の構成の仕方、もしくは設定の矛盾などの注意は構いませんが、それ以外の苦言は勘弁してください。

まあ、とりあえずオリキャラ最優遇だと物語のバランス的に面白くないのでそういうものはさすがに作る気はありませんが、あくまでオリキャラモノなのであしからずと言うことがいいたかっただけです。

さて、遅れましたが初めまして、もしくはおひさしぶりですと書かせていただきます。というのもずいぶん昔にSSを多くは無いですがそこそこ執筆したりしていました。
しかし、どれも中途半端な状態で終わった情けない作者なのです。ということで前の名前を変えて、心機一転して執筆に望み完結させたく再誕いたしました。
前の名前はさすがに口にはしませんが、読み手の皆さんのご想像にお任せしますw

さて、というわけで次回もよろしくです!!
以上、幻想師でした。


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