コズミック・イラ73。
ユニウスセブンが落下しつつある状況が確認された頃、ジャンク屋のステーション『ジェネシスα』に収納されているコーネリアス級補給艦で一機の白と青のツートンカラーのMSの発進準備が進められていた。
膝をつき四つん這いの姿勢でそのMSは目覚めの時を待っている。
何故そんな体勢なのか?それはサイズの所為だ。一般的なMSは18m前後だがこのMSはそれよりも10m程高い、頭頂高30m近い規格外のサイズなのだ。故に自然と整備するためには必然的にこのような体勢にならざるを得ない。
連合ZAFT共に“G”と呼ぶフェイスタイプの頭部の後頭部、そこが空いており中のコクピットでは見慣れないノーマルスーツを来たパイロットが調整を進めていた。
「ワリィワリィ、アウトフレームの改修に思ってた以上に手間取っちまってよ」
「こっちは大丈夫だ、ロウ」
コクピットハッチから覗き込んだ逆立てた髪にバンダナを巻いたジャンク屋、ロウ・ギュールにパイロットが答える。ヘルメットの所為で見えにくいがパイロットはロウより少し年上、でも二十歳にはなっていない青年だった。
「でも大丈夫か?こいつはデルタとのトライアルで負けたんだろ」
「・・・ジャンルの違いだ。長距離走の選手が短距離走で優秀とは限らない」
パイロットは火星で特殊任務に採用されたMS『デルタ』を思い出していた。
あいつとこいつではジャンルがあまりにも違いすぎる。
つまり性能の方向性でこのMSは不採用となったのだ。
でもそれで良かったとパイロットは思っていた。親父とお袋が設計・開発を手がけた“弟”があの超が幾つ付くか分からない程の短気で血の気の多い生まれながらのエリートお坊ちゃまに使われるのは流石に腹が立つ。
「セットアップ完了、出すぞ」
「おう、俺もすぐ追いかける」
ロウはハッチを蹴り、反動で奥の方のメンテナンスベッドに固定されているZAFT系のデザインの赤いMS“レッドフレームMJ”へ向かっていく。
それを確認するとパイロットはハッチを閉めOSを起動させる。
頭部のメインカメラに光が宿る。ただしそれは“G”のツインセンサーではなくZAFT系MSに多く見られるモノアイだ。
「リア!」
『核融合炉、正常に作動を確認。全システムオールグリーン』
パイロットに声に自立型サポートAIの電子音声が反応する。
「よし、こちらフェイト・トリーズナー。クロスファントム、出る!」
ステーションからゆっくりと進み出たMS…クロスファントム。その背中の特徴的なX字型のバインダーに光が生まれていく。
「ヴォワチュール・リュミエール展開!!」
『了解、展開完了まであと5、4、3、2、1、オープン』
バインダーからあふれ出していた光の幕が翼を形成しクロスファントムを加速させる。このMSこそ現時点の地球圏で単独で最高速、最航続距離を誇る唯一のMSだった。
この一人のマーシャン、フェイトによって世界の運命は大きく変わる事となる。
<続く>
はじめまして、アノンと言います。
これはスタゲやデルアスを見て思いついた話です。
出来る限り頑張るので末永くお付き合い頂けるとありがたいです。