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▽レス始

「世界樹の見える街で(GS+ネギま!)」

羊 (2007-02-10 03:03)


 暗闇を抜けるとそこは見知らぬ街だった。

 


 夜,とあるゴルフクラブの依頼で,新たなコース候補地の山を調査していた途中である。
見習いスイーパーの横島忠夫は,おかしな気配を感じ取った。
それは一瞬, 霊感に引っかかっただけのもので,同行していた雇い主であり,GSとしての師匠でもある美神令子の方は何の反応も示さなかった。
 自分は勘が鋭い方だ。
 と自信を持って言うことはできないが,それでも数多の死線を潜り抜け,師匠でさえ気づかないものを,いくつも感じ取ってきた身である。
 直感,というやつだろうか。
 自分にとって大きな意味を持つものなのかもしれない。そう感じた。

 一度,気になりだしたら止まらない。
 気配が段々強くなってきているのではないか,とも思う。
 それは山中を進めば進むほど,高まってきた。
 そして,ついに,気配の元である洞穴を見つけたのだ。
 その異常性。
 気配の強さ。
 師匠は洞穴の近くに来るまで気づかなかった。
 それもそのはずで,隠匿性に長けた結界が洞穴周辺に張り巡らされていたのだ。
 プロが2人揃って―うち1人は半人前だが―知らずの内に結界内に踏み込み,そうして初めて気づくことができた,というほどの特異さ。
 にも関わらず,なぜ,自分は随分と離れたところから気づくことができたのだろうか。
 洞穴の異常さに。

 しばらく2人で意見を交し合った。
 そうする間も異常な気配は,強さを増し続け。
 どのような対策を講じるべきか,判断もつかぬまま。
 横島,虎の子の切り札を使うべきかと,用意したその瞬間。
 気配が爆発的な高まりを見せ,その一瞬後には全ての異常が消え去っていた。
 唐突に。突然に。するり,と。
 まるで,手の平からこぼれ落ちる水のように。
 うたかたの夢のように。
 曖昧な存在感だけを残して,全てが消えた。
 美神にとっての,全てが。

 唐突に。突然に。するり,と。
 まるで手のひらから零れ落ちる水のように。
 うたかたの夢のように。
 曖昧な存在感だけを残して。
 横島の全てが,この世界から,消えた。


 1話 そこは大きな樹の下で 


 

 「ここ,どこだ?」

 気づいたら,そこにいた。
 大きな樹のその根元。
 一体,全長何メートルあるのか。
 高く,太い。
 世界全てを支えているかのような大樹の根元に横島はいた。
 何が起きたのだろう。
 わからない。
 わからないままに,周りを見る。
 美神がいない。
 なぜ。

 そうだ。
 光だ。
 自分は光に飲まれたのだ。
 洞穴が放つ,太陽のようなその光に。
 激しく,眩しく,しかし,優しい。
 身体を包み込むような感覚。
 優しい世界へおいでなさいな。
 と,美人に誘われたような気がした。

 「でも,なんで美神さんはおらんのやろ?」

 がめつい女は嫌いな人だったんだろうか。
 美人は仲良く,がモットーな横島的に,それはとてももったいない気がした。

 とりあえず,状況を整理しよう。
 整理できるほど,何か手がかりがあるわけではないが。
 それでも行動せずにはいられない。
 美神はどうなったんだろうか。
 美神さんのもとへ戻りたい。
 おキヌちゃんやエミさんや冥子ちゃんや小竜姫様。
 ワルキューレ,カグヤ姫,小鳩ちゃんに愛子にまだ見ぬ世界のねーちゃん達。
 裸の美人で埋め尽くされた武道館。ジョニー・B・グッド。
 夢はまだ果たされていない。
 事務所へ帰りたい。

 『戻』

 淡く右手が光り,翡翠色の綺麗な球体が形づくられた。
 中には一文字『戻』と。
 文珠。
 この世界,人類で唯一,横島のみが生成可能な霊能道具。
 万能にして,万能にあらず。
 普遍にして,不変にあらず。
 万敵を排し,万民を護る。
 それは一つの極地。
 絶対にして絶大。
 最強にして最凶。
 死と隣り合わせの修行を乗り越え,あの人の側にいるために身につけた超常の,さらに超常の力。
 自己の霊能者としての完成形。
 虎の子の切り札。
 発動させる。
 戻してくれよ,温かい我が家へ。


 結果,文珠は沈黙したまま何も起こらず。
 洞穴の光と横島の発する力の気配に引き寄せられた者達が。
 次々と現れ,取り囲むようにして,横島を睨みつけていた。


 「君は何者じゃ?」

 中国の山奥,人里離れた,常人にはたどり着けぬ場所に住む,常人にはたどり着けぬ領域の住人。
 仙人のような雰囲気をまとう,常人には理解できぬ長大な頭の老人が,横島に向かって問いかけた。
 敵意も害意も感じられない。警戒感さえ感じられない,その言葉は。
 なぜだか,横島に寒気を覚えさせた。

 「ヤマダタカオ。ゴーストスイーパー。」

 簡潔に短く。こういうとき,相手に多く情報を与えてはいけない。
 つけこまれてはならない。
 名前を馬鹿正直に教えて,呪いをかけられたりすることも防ぐ。
 美神ならそうしたはずだ。
 内心,冷や汗ものである。しかし,悟られてはいけない。
 ここは余裕をもって。そう,憎きスケコマシ,西条のように振舞うのだ。

 「ゴーストスイーパー?退魔士のようなものかのう?」

 偽名はスルー。華麗にスルー。
 とぼけた感じでじいさんが言う。
 顔を横に向け,そばにいるヒゲメガネの中年一歩手前であろう渋いおっさんに聞く。
 意識はこちらに向けたまま。
 おっさんは肩をすくめる。
 それがとても様になっていて,一瞬,横島の口が引きつった。

 「さきほどの,強い力を感じたのじゃ。それはとてつもない強さでの。
  正直,ここにいる全員が束になっても対抗できないほどの強さじゃ。」

 ふむん,それはあの洞穴の力だろうか。
 思考する。
 じいさんは問いかける。

 「それは君が起こしたものか?」

 答える。妙に誤解されたら厄介だ。
 こちらに相手方を害する意図がないことを主張しなければならない。

 「いや。ちょっとした調査中に原因不明のなにか,おかしなものに巻き込まれたみたいっす。
  気づいたらここにいました。」

 詳しく説明する。自分はGSの助手であり,霊障調査のために山にいた。
 そこで異様な気配を発する,結界に封印された―今,思うとそうだったような気がする―洞穴を見つけ,それが光を発したかと思った次の瞬間,この街にいた,ということを。
 順を追って,懇切丁寧に喋って聞かせた。

 「にわかに信じられる話ではないのぅ・・・それもなんじゃが,もう一つ気になることがある。
 君が先ほどから言っているGSとは一体なんじゃ?そのような単語は聞いたこともない。」
 「えっ?あの,聞いたことないって,マジすか?
  えっ,だってオカルトGメンとか美神とか知らないってことスか?」

 愕然とする。それはそうだろう。GSで美神といえば,泣く子が黙り,ヤクザが泣き出す,神も悪魔も金ヅルよ,といわんばかりのメディアへの露出も高いあのナイスバディーで。
 親は親で国の対オカルト機関,オカルトGメンの大ボスで,やっぱり一般への露出が多い年齢不詳の超美人。
 母娘揃って,非常識の塊。あの美神家を知らない。
 そもそもGSという世間一般にも認知されている職業を知らない。
 一体,ここはどこなんだ?

 「知らんな。非常に面白い与太話ではあったがの。
  まったく,嘘をつくならもうちぃっとマシな嘘をつかんかね,ヤマダタカオくん?」

 眼光鋭く,プレッシャーをかける仙人じいさん。
 密度が増した。気配の密度。濃い。見える。感じる。
 これはやばい。美神さん達に匹敵する,もしかしたらそれ以上の力。
 敵に回したら命が危ない。
 さすがに座布団の人は不味かったかしらん。

 「や,ほんとっす!ほんとなんすよ!!どうやったら信じてもらえるっすかね!?」

 両手を挙げてホールドアップ。じいさんの力の高まりに呼応するかのように周りの人間達の力が高まる。たこ殴りはいやや。

 「君が敵でない証拠はない。なんの意図があってここに来たのか正直に話してもらおうか。
 そして,君の背後にいる組織のことも,ね。結界内への侵入方法ももちろん,話してもらうよ?」

 渋いおっさんが,渋くおっしゃってくれた。
 なんだ,一体。組織って,なんやねん。わいは悪の秘密結社の怪人か。
 結界内への侵入方法?知るか。こっちが知りたいぐらいだ。
 まずいな,これは。このままではたこ殴りのうえ,海に沈められるかもしれん。
 まだだ,まだ俺は美神さんの身体を手に入れていない。
 今までの分を取り返すまで死んでも死に切れん。どうにかして,逃げ切らんと。
 頭をできる限り高速回転させてこの局面の打開策を練る。
 練る。ねる,ネるネルネ〜ルネ。
 くだらないことを考える一方で,逃れる術を探る。

 と,そこで。
 また,あの気配がした。
 洞穴の,光り輝く,優しい太陽。
 目を開けていられない。
 なんという力か。直に感じて分かる。
 これは人間が出しうる力ではない。
 神の仕業か悪魔の仕業か。
 なんというか,誰もが横島の話を信じてしまいたくなってしまうほどの力。圧倒的な,抗いがたい力。世界樹が光っているのか。
 全員,異常な気配と,光を感じ。
 混乱する頭の中で,老人は前言撤回。
 横島の話を信じることとし,原因究明を心に誓い。
 次は何が出てくるのか。鬼か蛇か。
 少し楽しみだった。

 そして現れたのは。

 「ここ,どこだ?」

 一つに揃った三つの声。
 戦いと母が三度の飯より大好きな魔を纏う者,闘争の信者。
 美形で清貧で薔薇が似合う古の血の継承者,バンパイア・ハーフ。
 でかくて薄くて赤貧な密林の王者,セクハラの虎。
 鬼より蛇よりある意味,厄介。
 色々飢えた男共が4人。
 GS界の明日を担う。
 はずの。
 いつものメンバーが,今ここに。


              続く


 あとがき

 初めまして。
 お初にお目にかかります,羊と申します。
 一年ほど前,別のところで連載の投げっぱなしジャーマンをぶちかまして以来,SSから遠ざかっていたのですが,最近になって再び,みなさんのSSを楽しく読まさせていただいているうち,またぞろ妄想の虫が湧き出てしまい,投稿させていただこうと決心しました。
 今度は,しっかりとなんらかの形で区切りをつけるまで
 書き続けたいと思います。
 更新はかなりのんびりしたものとなるでしょうが,
 どうかよろしくお願いいたします。

 次回からはも少し軽い文章になると思います。
 ほんとは今回もコメディタッチでノリノリなヤツを
 書くつもりだったんですが・・・
 やっぱり書くのって難しいですね。
 ネギま!の人物も2人しか書けてないですし。
 精進します。
 一応,GS側はこれ以上,面子増えません。
 ただでさえ,ネギま!は人数多いですから。

 それでは,また次回。


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