減らない魔力
僕は家から走っている。僕の大好きな人が待っている彼女の家に。
この途中に一人の大きいぼうしを被った女の子に出会った。
女の子は一人で寂しく泣いていた。はやく彼女のもとに行きたいが泣いている女の子をそのまま置いていくことなんてできない。それにもしそんなことを彼女が知ったら嫌われるかもしれない。なので
「どうしたの?」
和樹は優しく声をかけた。返事は最初返ってこなかった。何度か声を掛け、ようやく女の子は顔を上げて答えてきた。
「だれ?」
「ぼく? ぼくは、せかいいちのまじゅつし!」
「ほんと?」
「もちろん!」
「ならわたしのいえがひっこしできないようにできる?」
「わたしもうどこにもいきたくない・・・ずっとここにいたい・・・・・ともだちもつくりたい・・・」
そしてじっと、和樹を見つめる。
「わたしのおねがいかなえてくれる?」
「えっ!」
和樹は困ってしまった。できることはできると思うが女の子の望む形ではできないと思ったからだ。(例えば記憶を消したり、怪我をさせたり)
そんなことを考えていると・・・
「うそつきっ! パパたちといっしょだ、いつも・・・いつもうそばっかり! ほんとうはまじゅつしでさえないんでしょ!!」
和樹は別のことだったら叶えて上げられるととっさにいった。
だが次に言われたお願いもさっきほどでないにしろ難しい事だった。
「できる?ううん、できないよね・・・・・・・やっぱりいいよ。」
女の子は悲しそうな顔をしながら言った。
「・・・だ、だいじょうぶ」
「ほんと?」
「う、うん」
「じゃあ、もしほんとにできたら・・・・」
女の子はできた時の約束を言った。
和樹は『え〜と、それはもういるからいいよ』と言った。
和樹は手を空にかざした。
その小さな手から魔法の発現である光が空全体に向かって放たれた。
和樹はこのとき8回しかない魔法を生まれて初めて使った。
それは待っている彼女や両親にも禁じられている事だった
女の子の願いは普通の人間一人では叶えることができない願いだったが和樹はそれを叶えた。
なぜかというとそれは
自分の中に流れる先祖代代受け継がれる世界最強の力があったからだ。もちろんそんな魔力が自分にあるとはまだ幼かったので知るはずがなかったが。
和樹が起こした通常では起こせない奇跡・・・・それは真夏に雪を降らすことだった。
女の子はとても喜んでかえっていった。
「やくそくだよ、せかいいちのまじゅつしさん(^^)
という言葉を残して
「やくそく?なんのことだろ。あ、はやくいかなきゃ」
その後、和樹は思い出したかのように走り始めた。
今の自分にとって一番大切な人にむかって・・・・・
ジリジリジリジリジリジリジリジリ!!!!
バチン!!!
「和樹く〜ん。まだ起きないの〜、時間ないよ〜」
和樹の彼女兼幼なじみ兼パートナーである千早が呼びかけた
「う〜ん、今起きる〜」
といいながら和樹は起きた・・・・・・・・わけがなくすぐに又寝だした。
「ほんと〜にこれかもうひとつをしないと完全には起きないんだから」
千早は呆れたようにまた少しうれしそうに言った.
「はい、ヒュ〜」
和樹の耳に息を吹きかける
「う、う〜・・・・・ZZZZZZZZ」
一瞬反応したもののすぐに寝てしまう(しかもベタにアルファベットで)
「ちぇっ、やっぱり起きないか。それじゃ最後の手段!」
千早は和樹のベッドにもぐりこんで彼の体を抱きしめた。
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ」
「え、千早・・・・・・・・うーん・・・・・またか。」
「あ、やっと起きた〜早く行かないと遅刻だよ」
「それはわかるけど、さっきのあれやめない?普通に起こしてよ」
*あまり役には立たないトリビア〜
ちなみに布団のなかに潜り込んでおこすとたいていはおきるらしい。(友人談)
「な〜にいってるのよ。和樹君普通に起こしてもおきないくせに。」
「う、まあそうだけど」
「だから、最終手段としてこれは使います。それに毎朝私と抱き合えるんだよ、うれしいでしょ?」
と顔を赤らめて聞いてくる。
さすがにこの顔に勝てず
「うれしいに決まってるよ。さ、はやく遅刻しないようにご飯食べよ」
と前半本心、後半照れ隠しとしていう。
そして布団から飛び出すと制服を着込んだ。洗面所に行き顔を洗い千早の作った朝食を一緒に食べる。
食べ終わるともう一時間目が始まる時間だったが、千早の料理をゆっくり味わえたから良しとした。
「それじゃあ、千早行こうか」
「は〜い鍵を閉めて」
「「出発」」
そして、二人は家を出た。
「和樹君、走る?」
「いや、どうせ間に合わないし千早と長い時間いたいからね」
「うん、ありがと。じゃ腕くもっか!」
「うん。」
そうして二人はあまあまムードのなか学校に向かった
学校には1時間目の中ごろには着いた。
「それじゃ〜ね。」
学校に着いて靴を履き替えると、千早はF組に僕はB組(できれば行きたくない)に向かうために別れた。
教室に向かう途中の保健室の前でB組で(いや、学校内で1番)会いたくない人物、仲丸が怪しい行動をしていた。
しかも今は一時間目の最中である。こんな所で一体何をしているのか・・・
(ったく、あいつは何してるんだ)
と思ったが話し掛けると共犯にさせられるだろうから無視して教室に向かおうとした。
「おお、我が友、式森、ちょうどいいところに来たお前も手伝え!!」
が、運悪く仲丸に見つかってしまった。
「何を手伝うのか分からないけど断らせてもらうよ」
こいつには友とも思われたくない。
こいつにとっては(利用できる)友達という意味だろうからな。
「で、授業をサボってまでして一体何をしてるんだ」
「ふふふ、良くぞ聞いてくれた。これを見ろ!」
仲丸は両手の親指と人差し指で四角を作り保健室の内部の様子を映し出し和樹に見せた。
だが結界が張ってあるのか霊符での×のじが見える以外他は何も見えなかった。
(ま、そうだろう)
あたり前の事だなと思いながら仲丸に聞いてみる
「で、覗き防止用の結界が張られたドアが何なんだ?」
「いいか聞いて驚くなよ。この中には三年の風椿玖里子がいる」
「はあ」
「ようするにこの学校の全てに関わりのある裏の実力者がいるということだ。この意味が分かるか、式森!」
「だから?」
「はあ〜〜〜鈍い奴だな! つまり風椿玖里子のあられもない姿を手にしてみろ、それをネタに揺することができる!」
「・・・・・・はあ、まったく。そんなくだらない事やめなよ.」
「ふざけるな、くだらないことだと。これは交渉だ。」
仲丸は自分の世界に入り自分の主張を披露し始める。
「これは友好的な取引だ! 弱みを見せた方が悪い!」
「・・・・・・・弱みって・・・・・・・・」
「いいか、式森。地位と名声と権力を作ってくれるのは、学力や成績じゃない! 金とマジックポイント(魔法を使える回数)だ!! 世界平均で数十回、 我が葵学園の平均が約八千なのに対しておまえは何回だっけ?」
「七回だよ(十年前までわね)」
「七回・・・そうだ!たったの七回だよなぁ〜〜〜〜〜。そんなお前が学園生活を楽しむためにはいったいどうすればいいかよく考えてみろ」
「今のままでも十分だよ。大切な人もいるし」
「何!」
後半の言葉は聞こえなかったらしく、和樹の言葉に仲丸は不思議だと驚きを示した。
「熱でもあるのか? 魔力もない、運動も苦手、趣味もない、勉強もできないお前が楽しんでるわけないだろ!!! そこのどこが幸せだ!!!」
「少なくとも、お前の言う楽しみは僕にとってはむしろ嫌悪すべきものだよ」
和樹の言葉はまったくに一般人にとっては的をいていた正論だ。
「裏切ったな! お前は親友だと思っていたのに・・・この薄情者!!!」
(お前にだけは絶対に言われたくない言葉だな)
今までのことを思いだしてしみじみ思った。
「あ、あと後ろに気をつけたほうが良いよ。」
仲丸は和樹の言っている意味が最初分らなかった。
「は、後ろだ・と・・・・・・・・・・」
仲丸の顔色が真っ青になった。
「な〜か〜ま〜る〜〜」
体が震えるような低い声が仲丸の背後からかけられた。
「ま、松田!」
「松田さんおはよう!仲丸のことよろしくね〜」
和樹は素早く仲丸から離れる。
和樹の声は耳に入ってはいないようで仲丸に問い詰めている。
「授業エスケープと覗き行為は、B組協定第三条第七項に違反だって決めたでしょうが!!!」
といいながら両手から光が出現させる。あきらかに敵意の込められた攻撃魔法を放つ体制である。
「だ、黙れ、松田! いつからお前は権力の味方になったんだ!!」
「『B組協定作ろう』と言ってそれを作ったのはどこのどいつだ!!!この変態が〜〜〜〜」
「ギィャァァーーー!!」
ズゴン
仲丸が、魔法を当てられまいと逃げるが、彼と校舎が悲鳴を上げることとなった。
「待てこの!」
「待つか、ばかが・・・・・グワァァァ!!!」
バコン
「死ねぇ! 死になさい! むしろいっぺん地獄を見学してこ〜い!!!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁっっっ!!!」
ガラッ!
突如保健室のドアが開かれた。
「へっ?」
「まったく、また2年B組?」
そこから長髪で金髪の女性が出てくる。自分よりも少し背の高く、なぜか上半身は色っぽい下着姿。
仲丸が交渉(一般に脅迫という)しようとしていた三年の風椿玖里子である。
(うわ〜、最悪)
「同じクラスの馬鹿たちが失礼しました」
そう言うと和樹は一目散に逃げ出した。
顔を覚えられていませんようにまた、千早にこのことが尾びれ背びれついて伝わりませんようにと後者を特に祈りながら。
あとがき
なんかはじめてSSなんて書いてしまいました。まあガキが書いたものなんでドへたです。そんなもんでも続きがみたい物好きな人は感想をお願いします。