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「永遠の煩悩者 第四話 後編(GS+永遠のアセリア)」

ふむふむ (2006-07-08 09:46)
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―王宮―


贅沢品や高価そうな美術品がこれみよがしに置いてある部屋で、初老の禿げた男と美しい黒髪の女性が激しく口論していた。


「龍退治など無理です!少し頭を冷やしてください」


美しい女性……レスティーナ王女が禿げた男に意見する。


「頭なら冷え切っておるわ!」


禿げた男……ラキオス王はギャグなのか、そうでないのか分からない答えを返す。


「バーンライトが攻めてきておるのだぞ!今すぐ龍を殺し、マナをラキオスのものにしなければならないのだ。」


このファンタズマゴリアの世界には龍が存在している。龍はすさまじい力とマナを保有しているのだ。龍を殺せば莫大なマナを得ることができる。


「今はラキオスに現在いるすべてのスピリットで防備を固めるべきです。そもそも龍を殺せるかどうかすら分からないのですから。しかも何故『求め』のエトランジェを龍退治のほうに送るのですか。戦闘能力については『天秤』のエトランジェのほうが上だと思われます」


その言葉にラキオス王はいやらしい笑みを浮かべる。


「簡単なことだ。あのエトランジェが死んでも代わりがいる。」


その代わりにという存在が何か分かったレスティーナは、顔を青くした。


「カオリに……いえエトランジェの妹に剣が使えると思えません」


「神剣は主を求めると聞く。それにエトランジェの妹も兄が殺されたとなれば復讐に燃えて剣を使えるようになるだろう」


人を人と思わない冷たい言葉にレスティーナの額に冷たい汗がながれる。外道とでも言えばよいのだろうか。


「話は以上だ。早く『求め』のエトランジェに伝えて来い。ワシは生やすのに急がしいんだ」


そういって王の寝室からの退室を命じるラキオス王。レスティーナは拳を強く握りながら退室した。


一方そのころ……


横島たちはラキオス領のエルスサーオに向かって行軍していた。到着に約四日ほどの日程が必要だが、隣国のバーンライト王国のスピリットよりは早く到着できそうである。


「ヨコシマ様ー元気ないけど大丈夫ー?」
「だいじょうぶ〜?」


「ああ、大丈夫だよ………」


横島の声は誰がどう聞いても大丈夫に聞こえないだろう。顔色も良くないし、何より目に力がない。これからスピリット………いや、見た目麗しい女性を殺さなくてはならないことが横島の心を重くしていた。


(ムキムキマッチョでキザでロンゲで女にモテモテな奴なら迷わず殺せるんだが)


心の中で愚痴を言う。少なくても現実にそんな奴がいるかは謎だ。


「あの、そのヨコシマ様はとても疲れているようですが」


ヘリオンが心配そうな声を出す。第二詰め所のスピリットは全員でエルスサーオに向かっていた。しかし、横島に元気がないせいで士気がまったく上がらなかった。


「だ、大丈夫です。きっと私がヨコシマ様を守ってみせますから!」


おどおどしているが、横島を守るというヘリオン。とはいってもヘリオンは今回が初陣なのだ。しかも第二詰め所内では恐らく一番弱いだろう。それでも彼女は横島を守ると宣言した。横島の心は嬉しさとそれ以上に情けなさでいっぱいになる。


(こんな小さい女の子に守られるか……情けないよな)


改めて回りを見る。ヒミカ、セリア、ハリオン、ネリー、シアー、ヘリオン。この六人の命は自分が握っている。そして自分には彼女たちを守れる力がある。


「ああ、俺もきっとみんなのことを守るよ。なんつっても美人と将来間違いなく美人になる子たちだしな」


その言葉にヘリオンは顔を赤らめて嬉しそうにする。ツインテールを暴れさせながら喜ぶ姿はけっこう不気味だ。他のスピリットもみな一様に嬉しそうだ……セリアとハリオンを除いて。セリアはいつもどおり厳しい表情をしていたが、ハリオンは珍しく不安そうな顔をしていた。


(守らないと………絶対に)


心の中で決心する。ただその決心の中には「たとえ相手のスピリットを殺してでも」という、みんなを守る方法については抜け落ちていた。


―エルスサーオ―


エルスサーオについた一同は作戦会議を始めていた。


「我々はこれからエルスサーオから少し離れた地点で防衛線を張ります。情報だと向かってきているスピリットの数は六体です。」


作戦の説明はセリアが行っている。横島ではまだこういった芸当はできない。


「私たちは七人、個々の力量に関しては上だと考えられます。ただネリー、シアー、ヘリオン、の三人は初陣でもあり、まだ訓練不足と言えるでしょう。ヨコシマ様に関しては神剣の位が高いこともあってマナの総量も高く、どのような場面でも部隊の中核になれると思います」


力を発揮できればですが……と最後に付け加える。そこまで言ってセリアは横島のほうへ向く。


「どのように戦ったほうがよいと思いますかヨコシマ様?」


横島をみつめてくるセリア。睨みつけているといってもいいだろう。


(きっと試されているんだろうな)


いまだにセリアは横島を信頼してはいなかった。ここで無様な答えは言えないだろう。


「ネリー、シアー、ヘリオンは後方で神剣魔法の援護をしてもらおうと思う。敵のレッドスピリットが放つ赤の魔法を防ぐにはブルースピリットが使う青の魔法が必要だし、まだ前衛は早いと思う。ヘリオンの黒の魔法は青の魔法で防げないから必要で、やっぱり前衛はまだ早い」


そこまで言って横島はセリアの顔色を伺う。ぶすっとした顔をしているが特に不満はなさそうだ。


「セリアとヒミカは前衛で……敵を倒してもらう。俺とハリオンは中衛で敵の攻撃から皆を守ったり、場合によっては攻撃したりオールマイティーに動こうと思う」


そこまで言ってみんなの様子を見てみる。ネリーは少し憮然とした顔をしていたが納得してくれたようだ。シアーとヘリオンも特に不満はなさそうだ。ハリオンは……いつものようにニコニコと笑っている。セリアは相変わらず機嫌が悪そうだが、特に悪いところはなかったのだろう。ただヒミカだけは少し驚いた顔で横島に意見する。


「ヨコシマ様、レッドスピリットは基本的には後衛なんですが……」


レッドスピリットは強力な攻撃魔法を得意としていて、後衛で魔法を唱えるのがセオリーである。ヒミカもレッドスピリットなのだが……


「あれ?ヒミカは前衛が得意だったと思ったけど」


その言葉を聞きヒミカは顔をほころばせる。


「いえ、そのとおりです。私たちの戦力を把握してくださってありがとうございます」


単純にレッドスピリットだから、ブルースピリットだからとその能力を決め付けず、人物の特徴を把握してくれたことに感謝するヒミカ。ヒミカの信頼度が2上がった。


「それでは、戦いにむかいましょう。バーンライトのスピリットも迫ってきているようです」


そういって、セリアが自分の神剣である「熱病」を構え、神剣の力を発揮したときだけ現れるハイロゥ(天使の光輪)を出現させる。


「まだ戦闘体制にはいるのは早いんじゃないか?」


横島が抗議するが……


「馬鹿なことを言っている暇があったら、貴方も神剣を出して周りの気配を探ってください。敵が近くにきています」


さすがに少しむっとくるが、とりあえず神剣をだすことに決める。


(あまり使いたくないんだけどな………)


どうしても『天秤』のことが信用できない横島だったが、スピリットとまともに戦うのならば必要なのはちがいない。横島は右手に『天秤』を出現させ、あたりの気配を探ってみる。


「っ!!おい、随分と近くに神剣の反応があるんだけど」


「だから言ったじゃないですか。すぐに迎撃に向かいましょう」


スピリットの面々が人の目では捉えられないほどの速さで敵の迎撃に向かう。横島も慌てて後を追おうとするがハリオンに呼び止められる。


「ヨコシマ様〜無理をしちゃいけませんよ〜。お姉さんが守ってあげますから〜」


彼女の目には深い慈愛に満ちていて、横島の頭を優しくなでる。その母性を感じるしぐさに横島の顔が赤くなる。めずらしく飛び掛りはしなかった。


「それじゃ〜行きましょうか〜」


そうして横島たちは戦いの場へと向かった。


戦場は遮蔽物などがない平原になるようだ。罠を張ったり、奇襲などはできそうになく、単純に力と力の勝負になることが見て取れる。


横島は『天秤』によって霊力を除く、全ての力が増大していた。視力すらも上がっているようで、数キロは離れたところにいるバーンライトのスピリットの顔の細部までしっかり見える。その顔には表情というものがなく、ハイロゥは黒い色をしていた。完全に神剣に心を飲まれている証拠である。


神剣に心を飲まれるというのは、簡単に言えば自我の喪失。ただ神剣の本能であるマナを集めること以外に何の意思も持たなくなる。機械のように人の命令を聞いて、スピリットを殺し、マナを集める。この状態のスピリットは戦闘能力が上がるため、人間たちはスピリットたちを調教して神剣に心を飲ませようとするのが普通だ。当然スピリット自身が望むことではない


「フォーメーションはヨコシマ様が言われたとおりでいいわ。さあ迎え撃つわよ」


セリアが全員に号令をかける。こういった役目は隊長である横島のはずだが……


「ヨコシマ様!呆けていないで戦闘の準備を!」


「……ああ、悪い……」


横島はまだスピリットを殺すことを躊躇していた。というよりも自分がスピリットという女性を殺すというイメージがまったくでてこない。メドーサや死津喪比女といった女性を殺したことならある。だが彼女らは本当に悪党だったし、女性だとか考えている余裕もなかった。


(これから戦いだってのに、呆けてる場合じゃないだろう!)


横島とて向こうの世界では高いレベルの戦士だったのだ。自分の状態を把握するぐらいはできる。この状況のまま戦えば殺されかねないと理解していた。


(殺すしかないんだ!!集中しろ!!殺さなけりゃ……みんな殺されちまうんだ!!)


必死に自分の戦意を高めようとするが、うまくいったようには感じない。彼の力の源は煩悩である。ただ相手に付け焼刃の殺意を抱いたところで強くなれるはずもない。


横島は悩み、苦しんでいたが敵にとってはそんなことは関係ない。敵のスピリットたちが風をまいて襲い掛かってきた。


「ヨコシマ様!迎撃を!!」


ヒミカの激が飛ぶ。周りでは各自がそれぞれ個別に敵と相対していた。敵のレッドスピリットの魔法はネリーとシアーの魔法で防ぎ、ヘリオンは黒の魔法でみんなを援護している。セリアたちは一対一の形で敵のスピリットと戦っていた。さしたる連携もないが、個々の能力で上回っているのなら悪い作戦ではないだろう。横島が戦況を分析していると、すさまじい音をさせながら槍が飛んできた。


「サイキックソーサー!!」


とっさにサイキックソーサーで槍をはじき返すが、サイキックソーサーはその一撃で破壊される。はじき返した槍を敵のグリーンスピリットが拾い、そのまま槍で突いてくる。


その突きはたしかに速いが、直線的で回避は容易い。型どおりに槍を振るっているだけのようだ。槍の速さにも慣れた横島は、回避しつつチャンスを待つ。攻撃があたらないスピリットは、仕切りを直そうと後退しようとするがその瞬間、虚をついて『天秤』を構え前に出る。今まで一度も攻撃を仕掛けてこなかった相手がいきなり剣を向けてきた為にスピリットの反応が鈍った。

こういった「虚」をつくのは横島の十八番だ。たとえ剣術や格闘術を知らなくても敵のタイミングを外すのは戦闘においてもっとも重要なファクターのひとつである。……別にギャグじゃなくてもこれぐらいはできるようだ。


「はあ!!」


横島を引き離そうと体制が整っていない状態から槍で刺突を仕掛けてくるが、スピードもなく大振りであるために隙だらけだ。横島はその一撃を難なく避け、『天秤』を構える。日本刀型である『天秤』をまだ扱いこなせてはいなかったが、威力だけなら文珠とまではいかなくても栄光の手よりは高かった。


(狙うならのどだ!!)


グリーンスピリットは回復の魔法を得意としている。体を切り裂いても喋ることさえできれば傷を癒してしまう可能性があった。のどさえ潰してしまえば魔法の詠唱もできないし、なにより殺すことができる。


『天秤』を両手で構え、スピリットではありえないほどのマナを乗せ、高速の突きをスピリットに放つ。体制が崩れているスピリットに回避することはできない……はずだった。『天秤』の刃は、のど手前で止まってしまっていた。止めた理由はいたって単純。敵スピリットの顔を見てしまったのだ。


(小鳩ちゃん?)


横島が『天秤』を向けた相手は15,6歳ぐらいのそばかすが残る少女だった。ライトグリーンの髪を二つに纏め、胸はかなり大きい。なにより横島の隣に住んでいる隣人にそっくりだった。

殺し合いの最中に敵のことを想う。決してやってはいけないことを、横島はしてしまった。致命的な隙が横島に生まれる。


「死ね!!」


敵スピリットが再び刺突を仕掛けてくる。


(や、やば!!)


迫ってくる槍を見て横島の顔色が変わる。槍の穂先を見て避けられないと分かってしまった。


グサ!!


槍が突き刺さる………ハリオンの肩に。


「ハリオン!?」


ハリオンが横島を庇ったのだ。横島が声を上げるがハリオンは気にせず、自分の神剣である『大樹』を敵に向けて振るう。敵スピリットはバックステップで避けるとそのまま後退を始める。見れば他のスピリットたちも後退を始めていた。第一ラウンドが終わったというところだろう。


「お、おい!ハリオン!大丈夫か!!」


「心配無用ですよ〜」


のんびりした声で応えるハリオンだが、肩からは痛々しく血が流れている。セリアたちもその様子に心配になって駆けつけてきた。彼女らには傷はなく、戦いに苦労した様子はなかった。


「ハリオン!怪我は大丈夫!」


「はい〜ぱっぱっと治しちゃいますから〜」


そういうとハリオンは魔法の詠唱を開始する。


「回復します〜ア〜スプライヤ〜」


なんとも間延びした声で回復魔法を唱えるハリオン。しかし、威力はかなりのもので一瞬にして傷がふさがった。その様子にみんなが安心するとセリアが横島のほうを向いて睨みつける。


「ヨコシマ様、先ほどの行為の説明を願います!」


先ほどの行為………殺せたはずの敵スピリットを殺さなかったことだろう。それは結果的にハリオンを傷つけることになった。


「…………」


横島は何も言わない。というよりも言えない。その理由はあまりにも単純で馬鹿らしいからだ。他のスピリットはセリアの剣幕に押されて会話には入ってこない。


「なにか言ったらどうなんですか!!」


セリアが顔を真っ赤にして怒っている。


「ヨコシマ様は〜スピリットを殺したくないんですよ〜」


答えたのはハリオンだった。


「そ、それは本当ですか、ヨコシマ様」


セリアが横島に確認を取る。横島は自分の心情を言い当てられて驚いたが、相手がハリオンなら納得できるような気がした。


「ああ……俺はスピリットを殺したくない」


「何故ですか、理由を言ってください」


理由……それはあまりにも単純。それは……


「スピリットはみんな可愛い女の子じゃないかーーー!!」


いきなりの大声に全員が驚く。その声には魂がこもっていた。


「人間に逆らえないから戦っているだけなんだろ!なんでそんな女の子たちと戦わなくちゃあかんのじゃーー!!!」


可愛い女の子とは戦いたくない。あまりにも馬鹿らしく、だからこそ横島らしいといえる。しかし………


セリアは横島の言葉に呆気にとられた顔をするがすぐに無表情に戻る。


「スピリットはすべて女性です。いまの貴方の言葉が本当なら、貴方はだれも殺せない………戦力として数えることはできません」


セリアの声は淡々としたものだった。


「殺せなくてもやれることは………」


回復や補助も戦闘には必要なことである。だが……


「敵を殺す覚悟がないことが問題なのです。殺し合いの場で、相手を殺したくない戦士がどれほど役に立つと思うのです!」


セリアの言葉を聞き、横島は黙り込んだ。その通りだったからだ。横島も生きるか死ぬかの戦いを何度も経験してきた。セリアの言うことは正しいと横島も判断できる。


「貴方はなにも守ることなどできない。むしろ守らなくてはいけない存在を殺してしまうかもしれません」


「っ!!!」


横島の心に彼女が浮かび上がる。自分が殺してしまった……最愛の女性が。


「……貴方の力がなくても、あの程度の敵なら問題ありません。貴方はエルスサーオで待機していてください」


セリアは仲間たちに声をかけ、敵の追撃に向かおうとする。ヒミカたちは横島のほうを向き声をかけてきた。


「初陣なのですから気を落とさないでください、ヨコシマ様」
「お姉さんは強いから大丈夫ですよ〜」
「気を落とさないでヨコシマ様。く〜るなネリーにまかしてよ!」
「シアーもかんばるの」
「失敗は誰にでもありますから気を落とさないでください。私なんてしょっちゅう失敗してます」


ヒミカたちが横島に慰めの言葉をかける。だが今の横島にはその言葉すらつらかった。


「みんな!追撃するわよ!!」


セリアの号令に全員が敵スピリットを追撃しようと駆け出す。横島はその後姿を見ることしかできなかった。


ふらふらとした足取りでエルスサーオにやってきた横島はそのまま地面に座り込む。


(俺………なにやっているんだ?)


心の中で情けなさと悔しさが入り混じる。


(少しは成長したんじゃなかったのか?)


魔神大戦が終わり、彼女が誇れるような男になってきていると思っていた。だが現実は………


(結局なにも変わってなかった。また俺のせいで女性を犠牲にしてしまうところだった!)


悔恨と絶望が横島を包み込む。そんな横島に『天秤』が声をかけてきた。おそらく罵倒されると思っていたが、『天秤』は横島を罵倒などしなかった。


『主よ、お前は優しいな』


「はっ?」


はっきり言って意外だった。間違いなく責められると思っていた横島がほうけた声をだす。


『殺し合いの極限状態で相手の身を案じるのだ。正直たいしたものだと思うぞ』


「それは……」


しかし、だからこそ戦えないのだが………


『主ほど優しい男がよく愛する女を殺せたものだ』


―――――――いまこいつはなんて言った?


「お、おい『天秤』愛する女って!!」


『主が愛した女といえばルシオラ以外にないと思うが』


ルシオラの名を聞いて横島の頭が真っ白になる。いったい何故……


「『天秤』!なんでお前がルシオラの名を知っている!!」


右手に握っている『天秤』に怒鳴り、睨みつける横島。普段の彼とはまったく違う、すさまじい形相だった。


「私は主のパートナーだぞ。なにより私は主を導かなければならないのだから、それぐらいは知っている」


答えているようで、まったく答えになっていない『天秤』の返答。そして横島が何かを言う前に『天秤』が喋り始める。その声は妙な響きをもっていた。


「主よ、何故お前はルシオラを殺したのだ?お前は何のために戦ったのだ?」


その言葉は横島の心を深く貫く。


「世界がかかっていたんだ。だから俺は世界のため……に?」


違う。それは違う。あのとき俺はそんなことを思っていたのか?人類のため、世界のためになど戦っていたか?俺はそんな人間だったか?………違う。


―――私は金のため………あんたは女のために戦う―――


「そうだ……俺は女の……ルシオラのために戦ったんだ」


『ならば何故、最後に世界を取ったのだ。女を取ればよかったではないか』


横島の目が少しずつ虚ろになっていく―――


最後の決断。世界と女を天秤にかけ、そして世界を取った理由。それは何故か?


――――アシュタロスは俺が倒す!!


「約束をしたんだ………アシュタロスは俺が殺すという約束」


『そうか……主はアシュタロスを殺すという約束……いや、目的のために愛するもの殺したのか』


その言葉に横島は違うと言い返そうとしたが、何故か言葉が出ない。頭に霞がかかっているようで思考が混濁する。


『主よ、別に私は責めているわけではないぞ。犠牲もなく成し遂げられることなどないのだからな』


『天秤』の優しげな声と共に、何かが……得体の知れない何かが横島の心に侵入していく。


『ルシオラという存在がなくなったからこそ、本懐を成し遂げられたのだ』


横島の心が何かに犯されていく。意識が遠ざかり、横島の目から光が消えようとしたとき

その声が聞こえた。


――――――横島……私たちは何もなくしてないわ―――――


最愛の女性が最後にいった言葉が横島の心に力を与える。次の瞬間、横島の目に光がともり、急激に意識が覚醒した。


「『天秤』!いったい俺に何をしようとした!!!」


心が乗っ取られていく感覚。自分が自分じゃなくなっていく感覚。間違いなく『天秤』の仕業だと確信した横島は左手に栄光の手を出現させる。


『ちっ……多少の効果はあったと思うが……』


「いったいなにを言ってやがる!?なにが目的だ!『天秤』!!」


そういって『天秤』に栄光の手を近づけていく。『天秤』を壊さなくてはならない、横島はそう思い始めていた。


『天秤』は少し黙っていたが、いきなり喋り始める。


『神剣の気配を探ってみたらどうだ……主よ』


いきなり会話の流れを切ろうとする『天秤』を睨むが、胸騒ぎを感じ神剣の気配を探る。すると近くに20以上の神剣の反応があった。


「な。なんでこんなに神剣の反応が!?」


セリアたちと敵のスピリットは合わせても12人。二倍以上の反応などありえない。


『簡単なことだ、敵の増援が現れたのだろう』


セリアたちは六人、敵は14人以上という倍以上の戦力差になっているということだ。横島は急いでセリアたちの所へ向かおうとするが『天秤』に止められる。


『行ってどうする、主はスピリットを殺せないのではなかったか?………まあ私を破壊すればどうやっても仲間たちは救えないがな』


「うっ!」


横島の足が止まり、そしてまた悩み始める。自分はいったいどうすればいいのか、そもそも何を悩んでいるのか。


『主は約束をしたのではなかったか。妖精たちを守ると約束をしたはずだ。主の目的は仲間のスピリットを守ることなのだろう?アシュタロスを殺すために恋人を殺した男が何故、仲間を守るために敵のスピリットを殺せないのだ?』


「ぐうっ………ぐうううっ!!」


心が痛い。この痛みは感じたことがある。この痛みは最後の戦いのときの選択の痛み。


『悩むことなどない。主はどちらを取るべきかを天秤にかけているだけなのだ。仲間の命と敵の命………いや、女性を殺したくないという主の優しい気持ちのどちらを取るのか……』


それはあまりにも単純なことだった。『天秤』の言うとおり、セリアたちの命と女性を殺したくないという自分の思い、どちらを取るか………ただそれだけのことである。だがそれは横島がもっとも嫌う行為……何かを得るために何かを捨てるということだ。


「『天秤』……俺は!!」


選ばない訳にはいかない。それは逃げだ。ルシオラに相応しい男になるのなら、逃げるわけにはいかないのだ。


「さあ主よ、仲間の命か!女性を殺したくないという思いか!


どちらをとる!!!


セリアたちの戦いは明らかに劣勢だった。


「マナの支配者である永遠神剣の主として命ずる!炎よ、雷をまといて敵を滅ぼせ!ライトニングファイア!!」


「すべてを止めて、凍らせる!アイスバニッシャー!!」


敵のレッドスピリットが放とうとしていた炎が冷気を纏った魔法によって打ち消される。だが、詠唱されていた魔法はそれだけではなかった。


「マナよ、炎になりて敵を焼き尽くせ!フレイムシャワー!!」


別なところで魔法の詠唱をしていたレッドスピリットの魔法がセリアたちに襲い掛かる。


「全員散開!!」


セリアの号令に全員が逃げようと動くが、完全には避けられず炎の雨をあびてしまう。


「きゃあああ!!」
「くうううう!!」


ネリーとヒミカが悲鳴をあげる。


「ハリオン!回復魔法を!!」


「は、はい〜………ハーベスト〜」


癒しの風が全員を癒していく。しかし、全快とまではいかずいくつかの傷は残っていた。敵スピリットは休まず襲い掛かってくる。


「このままじゃ全滅するわ!後退しましょう、セリア」


ヒミカが撤退を促す。二倍以上の戦力差に新米スピリットが三人もいるのだ。勝敗は火を見るより明らかだった。


「分かってるわ!でも隙がないのよ!」


ひっきりなしに敵は襲い掛かってくるのだ。不用意に背など向けたら一瞬で殺されるだろう。


(私のミスだ………エルスサーオを防衛するだけでよかったのに!)


今回の任務はエルスサーオの防衛だった。だがセリアは追い払った敵スピリットを追撃してしまったのだ。守りさえ固めていればこんなことにはならなかっただろう。


(このままじゃヒミカの言うとおり全滅する。でも撤退する隙がない………ならば隙を作るしかない!)


セリアは決断する。それは仲間を守るために―――――


「ヒミカ!私はこれから敵陣に突っ込んで暴れるから、その隙にみんなを連れて逃げて!」


「ちょっとセリア!それって……」


自分の命を捨てるということ――――――


「はあああああ!!!!!」


気合の声を上げてセリアが敵陣に突っ込む。敵スピリットたちは突出したセリアに集中攻撃をかけていく。セリアは必死に抵抗した。敵の剣を受け流し、槍を弾き、刀を受け止める。体にいくつもの裂傷が刻まれるが、それでも敵陣に突っ込んだ。すると唐突に敵の攻撃が止まる。何事かと思ったが次の瞬間、自分の最後を悟る。極大の火球がセリアに向かって飛んできたのだ。


(避けられそうにないわね………ここまでか)


仲間たちは逃げ切れたのだろうか。目を閉じたセリアの脳裏に仲間たちの顔が思い出される。その中にしまりのない顔をしたバンダナの男がいた。


(まったく………最後になんであの人の顔なんか……)


セリアに極大の火球が迫っていく。だがセリアと火球の間に何かが割り込んだ。


「サイキックオーラバリア!!」


ドオオオオオオン!!


すさまじい轟音が鳴り響く。


(あれ?私……生きてるの?)


あの状況で生き残れるはずがない。そう考えていたセリアは何故自分が生きているのかを確かめようと目を開ける。そこには………


「セリア!大丈夫か!」


しまりのない顔した隊長がいた。


「……あ、はい私なら大丈夫で…………な、何で貴方がここにいるんですか!?」


本来いないはずの人物がいきなり現れたことに驚愕するセリア。急いで立ち上がろうとしたが体中の痛みに顔をしかめる。


「いま治してやるから無理すんな」


そう言うと、横島は『天秤』を構え魔法の詠唱を開始する。


「欲望のオーラよ、俺が欲する存在にその力を分け与えてくれ!ディザイア!!」


横島の周りに魔法陣が形成され、そこから生まれた光がセリアを包み込んでいく。


(すごい……傷が治っていく)


ハリオンたちの回復魔法にはやや劣るが、それでも十分な回復力だった。


「怪我は治ったみたいだな。………行くか」


そう言って『天秤』を敵スピリットに向ける横島。その様子にセリアが驚く。


「貴方は女性を殺せないと言ったのではなかったですか?」


セリアの言葉に横島は悲しそうに笑う。


「みんなを守るって約束しただろ。それに俺は……」


そこまで言うと横島は全身にマナと霊力を回して敵スピリットに突っ込んでいった。


横島は人間ではありえないスピードで一番近くにいるスピリットを目指して走る。近くにいるスピリット………小鳩似のグリーンスピリットが標的だ。小鳩似のグリーンスピリットが横島の接近に気づいて、身体の周りに高密度の大気の壁を作ることで身を守ろうとする。


「『天秤』………全力で行くぞ………栄光の太刀!!」


『天秤』の刀身にオーラと霊力が集中していく。オーラと霊力によって光り輝く刀身を、小鳩似のグリーンスピリットに向かって全力で突く。


なんの音もしなかった。『天秤』と大気の壁がぶつかり合う音も、肉を貫く音もしなかった。


「えっ?」


唯一聞こえたのは何がおきたのか分からない声だけだった。それも当然だろう。なぜなら気がついたら刃が自分の胸部を貫いているのだから。マナと霊力が込められた『天秤』は圧倒的な切れ味で、自分の体を貫かれたことすら気づかせなかったようだ。そして彼女が上げた声はそのまま最後の声になる。


「マナも霊力も………爆ぜろ!!」


ボンという音とビチャッと言う音が鳴り響く。彼女の体に突き刺さっていた『天秤』を通じて、体の中でマナと霊力を爆発させたのだ。彼女の体が爆発し、横島が愛するチチもシリもフトモモもただの肉片になってばら撒かれる。

彼女の体に一番近くいた横島は全身血まみれだった。だがそれは一瞬のこと。スピリットやエトランジェは死ぬと金色のマナになり消滅するだけなのだ。横島の体にこびりついた血や、周りの肉片は金色のマナに変わり消えていった。何も残らない、残せないのがこの世界の法則だ。


(目を閉じるな!逃げるな!これが俺の選択したことなんだ!!)


横島は目の前の凄惨な様子に胃液が逆流しそうだった。だがこんなところで吐いたら命を落とすことになる。


「死ねーーーー!!!」


すぐに別な敵のスピリットが現れる。ブルースピリットがウイングハイロゥを展開して空から神剣を振り下ろしてきた。ブルースピリットの一撃は重いが連続ではない。横島は右手にサイキックソーサーを作り出し、斜めに構えて重い一撃を受け流す。一撃に力を込めていたブルースピリットは体制を崩す。その隙を突いて横島は腹部をおもいっきり蹴り上げる。


「がはっ!」


血を吐きながらぶっ飛ぶブルースピリットだが追撃はしない。というよりもする暇がない。いつの間にか接近した、ブラックスピリットが居合いの構えをとっていたからだ。


「栄光の手!!」


右手のサイキックソーサーを霊波刀型の栄光の手に変えて、振るわれた刀をぎりぎり受け止める。だがブラックスピリットは焦らない。ブルースピリットと違ってブラックスピリットは速さと手数を優先する。たとえ一撃を防がれても次々と連撃を放つのだ。しかしこのブラックスピリットが連撃を放つことはできなかった。


「な、なんだこれは!!」


霊波刀が手の形に変わり、敵の刀を握っていたのだ。ブラックスピリットは驚き、必死に栄光の手から神剣を引き離そうとするが、横島はその隙を見逃さなかった。


「はっ!」


掛け声とともに『天秤』を一閃する。ブラックスピリットは栄光の手から神剣を引き離そうとしていたから何の防御もしなかった。『天秤』の刃はブラックスピリットの首を捉えてあっさりと切断した。頭がコロリと地面に落ち、頭を失った首からは血が吹き出る。


(いやだ!もう逃げたい!殺したくない!!………だけど俺は!!)


横島の心が悲鳴をあげる。それでも彼は逃げることはない。仲間たちを守るという約束と彼が過去にとった行動がスピリットを殺せる原動力となっていた。


「全員後退して密集隊形!」


バーンライトのスピリットの隊長が号令をかける。横島の戦闘力を警戒して防御陣形を整えるようだ。


(『天秤』………一気に決めるぞ!!)


『主よ、さっきからマナと霊力を全開にして戦っているのだぞ。しかも同時に使うという無茶までしている。これ以上無理すればどうなるか分からんぞ』


(いいから!さっさとこの戦闘を終わらせるんだ!!)


『………承知した』


横島は右手に2個の文珠を出現させる。『天秤』を左手に持ち、いま使えるすべてのマナをオーラに変えていく。


(この一撃でどれぐらい女の子たちが死んじまうのかな………)


遠くのほうに集まっているスピリットたちを見る。美女と美少女たちが密集隊形をとり、攻撃に備えていた。


(飛び掛ってナンパして、セクハラして殴られる世界もあったのかな?)


文珠に文字を入れ、マナをオーラに変えて、殺す準備を整えていく。


(殺したくないけど………大丈夫だ。きっと殺せる。だって俺は……)


――――――恋人さえ殺せる男なんだから。


「いくぞ!!」


敵が密集しているところに『『爆』・『発』の文珠を投げつける。さらに魔法の詠唱を開始する。


「マナよオーラに変われ。滅びの雨となり降り注げ!………オーラフォトンレイン!!!」


バーンライトのスピリットたちは飛んできた文珠を警戒していなかった。マナをまったく感じなかったからだ。だがそれは間違いだった。密集隊形の中心まで来たとき、突然爆発して破壊を撒き散らしたのだ。


「がああ!!」
「ぐうううう!」
「い、痛い!!」


もろに文珠の爆発をくらってダメージを受けるスピリットたち。それでも死者はでなかった。高い身体能力のおかげで死をぎりぎりで免れたのだ。急いで回復魔法を唱えようとするが、攻撃はこれだけではない。上空からオーラの弾丸ともいえる雨が降り注いできたのだ。


「っっっっああああ!!!!」


スピリットたちの絶叫が鳴り響いた。文珠で受けたダメージは大きく、防御も逃げることもできないまま滅びの雨をその身に浴びた。スピリットたちは全身が穴だらけになり絶命していく。滅びの雨が止むと、そこに動くものはなかった。ただ黄金のマナだけが漂っていた。


『見事だ、主よ』


いくら伝説のエトランジェといっても一人で二十を越えるスピリットを殺したのだ。その力は異常とすらいえた。


『だがもう少し力の配分を考えることだな。常に全開の力で戦うなど愚か者のすることだ。それだけではない。敵が後退したときに私たちも味方と合流するべきだった。全員殺しきれたから良かったが、もし敵が生き残っていたら、いまの主では殺されていただろう』


『天秤』は今の戦いの反省点を喋るが、横島はまったく聞いていなかった。ただ身体を震わせていた。


「う、うええええ!!」


横島は胃の中のものをすべて吐き出し、膝をついた。


『早く妖精たちに回復させてもらうことだ。しかし聞いていたようにマナとは旨いものだったのだな』


それだけ言うと『天秤』は金色の粒子に姿を変えて横島の体の中に吸い込まれていった。


「ヨ、ヨコシマ様……大丈夫ですか……」


ヒミカたちが横島に近づいていく。彼女たちは横島の戦いぶりをしっかり見ていた。援護をしようと思ったのだが、その戦いの凄まじさに援護どころではなかった。誰もがその強さに呆然としていたのだ。恐る恐るといった感じに横島に近づいていくが、突然横島が叫びだした。


「殺したくなかった……なんで俺が可愛い女の子を殺さなくちゃいけないんだ!彼女たちには未来があった!剣を振る以外にもたくさんやれることはあったのに!!」


その叫びには力があった。ヒミカたちはその叫びを聞き入っていまう。


「なんで!俺が!彼女たちの未来を奪わなくちゃいけないんだよ!!」


そう言って、横島は泣き声を上げる。ヒミカたちは誰も動けなかった。これほどスピリットを想っているとは信じられなかった。泣き続ける横島にハリオンが近づいていく。


「ヨコシマ様〜ありがとうございます〜。私たちのことをそんなに想ってくれて……」


横島はハリオンの言葉に反応せず、泣き続けるだけだった。ハリオンは横島を優しく抱きしめる。


「感じますか〜お姉さんのぬくもりを。ヨコシマ様が守ってくれたんですよ〜。だから……お姉さんの胸の中でゆっくり休んでください」


ハリオンは強く優しく横島を抱きしめた。


「う、うあああああああ!!!」


横島がハリオンの胸の中で最大の泣き声を上げる。聞いている者まで涙を流してしまいそうな悲痛と悲しみに満ちた泣き声だった。


しばらくして、横島の泣き声が止んだ。そして静かな寝息が聞こえてくる。


「あらあら〜寝ちゃったみたいです〜」


その言葉を聞いて、ヒミカたちはようやく動き始める。泣いている横島と抱きしめるハリオンから目を離せず、動くこともできなかったのだ。


「私たちも〜がんばらないといけませんね〜」


「がんばるってなにを?」


ハリオンの発言にヒミカが疑問の声を上げる。そしてハリオンは同姓であるヒミカでさえ見惚れる笑みを浮かべる。


「こんなにいい子を泣かしちゃお姉さん失格じゃないですか〜……強くなって少しでもこの子を泣かせないようにしないといけませんね〜」


そういって横島を見るハリオンは聖母というにふさわしい顔だった。ヒミカも横島の顔をじっと見てみた。涙でくしゃくしゃになった顔は年齢よりも幼く見え、とても綺麗に感じる。


「そうね……強くなって彼を守りたい」


ヒミカもハリオンに同意する。


「うん……ネリーもヨコシマ様のことを守るよ。強くなって絶対に!」


「シアーも……ヨコシマ様が泣くの見たくないの。私もがんばる!」


いつも調子が良いネリーと内気なシアーも横島を守ると誓う。その声には慢心も弱さもない。その声には強い力があった。


ヘリオンはこの戦いが始まる前に横島を守ると宣言した。だがそれは力強い発言ではなかった。しかし、今は違う。


「私もヨコシマ様を守ります!!こんないい人を泣かしちゃだめです!!」


あんな泣き声はもう聞きたくありませんとヘリオンも横島を守ることを誓う。


そしてセリアは………


(本当にスピリットのために涙を流しているの?彼は人間のはずじゃない)


根強い人間への不信感がセリアにはあった。きっといつか裏切ると思い、横島を見張っていた。そうしなければ仲間たちが傷つくと思ったからだ。だが………


(彼なら信じられるの?彼は人間だけど……・・・)


信じられるのか、信じられないのか。セリアが悩んでいるとヒミカが声をかけてきた、


「セリア………人間は信じられなくても、彼のことは信じてあげられない?」


その言葉を聞き、セリアは横島の顔をあらためて見る。スピリットのために流した綺麗な涙の跡が見える。セリアはそれを見るとぷいっと顔を背ける。そして………


「強くはなるわよ………戦場でいちいち泣かれたら面倒だから」


素直に守るといえないセリアにヒミカが苦笑する。


そしてヒミカはふと空を見上げる。


(きっとこれから時代は動いていく。国も、人も、そして………私たちスピリットも)


どこからか龍の咆哮が聞こえてきたような気がした。


『さて、第一段階終了か。次は贄を転送してもらわなければならんな』


あとがき

批判を覚悟しているふむふむです。

今回は難産でした。GSとアセリアのクロスで一番難しい場面だったと思います。あの横島に女性を殺させなければいけないのですから。殺させない方法もいろいろ考えたんですけど、どれもご都合主義、最強主人公のようにしかならなくて断念しました。今回の横島の強さは限界まで力を使っていたから強いのであって、次からはパワーダウンします。

今回はかなりシリアスだったのでギャグが入れられなかったですけど、次は横島らしい戦闘を目指します。

言葉を早く覚えすぎという突っ込みだけは勘弁してください。いろいろ限界なんです。


ではレス返しを


<KOS-MOS様

自分も横島は秩序には向かない気がします。ただ妙な倫理観とかを持っているので……
スピリットにルパンダイブさせる案もあったのですが、あのシリアス展開では不可能でした。次はどうにかできるかもしれません。


<覇邪丸様

人外と子供に人気の横島はロリーに目をつけられてしまうのです。それは彼の宿命といえるでしょう。横島の魔族化とか暴走に関しては、関係がなくはないといったところです。次回もがんばります。


<e1300241様

誤字報告ありがとうございます、修正しておきました。
「禿」の文珠に爆笑していただけてありがとうございます。ラキオス王にはあれぐらいがちょうどいいかなと思いまして。神剣の強制力に関しては『天秤』がうそをついてます。
ヒミカの胸に関してぽちぽち話に絡め、いつか日常変(←誤字にあらず)を書くときのネタにするつもりです。次回もがんばります。


<とり様

ハリオンはみんなのお姉ちゃんなので最強です。ラキオス王との謁見はしばらく待ってください。神が死んだため出てきたくないそうです(笑)


<蓮葉 零士様

たしかにラキオス王は小物です。ああいうのはぷちっと死んでもらうべきですな。
横島が「秩序」か「混沌」かについてはあまり言えません。へたに言おうとするとネタばれになってしまいますから。ただ、蓮葉 零士様はかなり鋭いといっておきます。


<あかつき様

心眼も天秤も横島を導くという点については同じです。天秤がどこに導こうとしているのかは謎ですが。横島の活躍に期待してください。


<rin様

模擬戦には神剣を使うという設定を忘れていました………申し訳ありません!!これからはちゃんと確かめます。
横島はスピリットを殺してしまいました。やっぱり納得できないでしょうか?


<七誌様

「禿」以上に恐ろしい文珠……それは「臭」。……なんて恐ろしいことを考えるのですか七誌様。いまさらながら色々面白い復讐を考えてしまうじゃないですか。
スピリットに対した時の横島の行動はこういうことになりました。……これ以外なにか方法が無かったのかいまでも悩んでます。


<ななし様

確かにちょっとあっさり文珠を使いすぎたかもしれません。まあ原作でも結構あっさり使っているので………
人間たちに対して横島がどういう行動をとるのかはしばらくお待ちください。色々考えているので。


<剣一心様

はじめまして、感想ありがとうございます。横島と悠人の出会いはちょっと短かったかもしれません。やはり横島は第二詰め所のスピリットたちとの交流がどうしても多くなってしまうので………
第一詰め所の面々と交流するときは短くても内容を濃くしていこうと思います。応援よろしくお願いします。


<ルウナ・イクリプス様

セリアは横島のセクハラ対象になる外見ですが、絶対零度のオーラによりセクハラを避けています。これは後の伏線ってやつです。
強制力と世界意思は違います。強制力は単純にエトランジェは王族に逆らえないというものです。世界意思に関しては……この世界にもそれに近い大きな力はあります。


<y様

福隊長………なんて恥ずかしいミスを……
修正しておきました。誤字報告ありがとうございます。


<あき様

確かにあき様の言うとおりなのですが、あの時点で横島君はレスティーナのことを知らなかったので、責めるのは酷でしょう。『天秤』は横島を確かに騙してるけど……間違ったことは言ってないですよ。


<一条様

「無」「脳」の文珠で脳を無に!……なるほど、そういう方法もあるか(笑)
正直自分ではまったく考え付きませんでした。ラキオス王はある意味愛されてますね。


<透夜様

ラキオス王は野心に燃え、人格は最悪ですが透夜様の言うとおり悪政を行っているわけではありません。ラキオス王がヅラだったらというのは………そのパターンもやってみたかったですね。言葉の間違いのご指摘ありがとうございます。あぶなくずっと間違えるところでした。


<嗚臣様

悠人が隊長で、横島が副隊長なのは神剣の位によるものです。『求め』は第四位で『天秤』は第五位なので、単純に位が高いほうを上にしているのです。それに悠人のほうが最初にラキオスに現れたからでもあります。
部隊の命令系統は精鋭である第一詰め所を隊長である悠人が指揮して、サブスピリットである第二詰め所を副隊長である横島が指揮します。命令は悠人が出し、横島がそれに従う体系になります。そのあたりは次回にでも説明します。


<黒覆面(赤)様

この小説を読んで永遠のアセリアを買ってくれたそうで……それだけでも書き始めた意味がありました。
横島と悠人は被らないようにがんばります。今回いきなり被ってしまいましたが………
黒覆面(赤)様が言うとおり表面上はともかく、根本は似ていますが違う部分もありますので被らないようになんとかやっていけると思います。
神剣については基本的には使って戦います。裏技や姑息な手を使えば戦えないわけではないのですが、敵のスピリットたちはたくさんいるので神剣を使わないで勝てるとは思えません。次回もがんばります。

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