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▽レス始

「魔除けの鐘を鳴らす者達 外伝 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-06-10 22:16/2006-06-11 06:57)


魔除けの鐘を鳴らす者達 外伝 その頃あの人は・・・・・


「ふぅ〜・・・・・・一息つくか」

無精ひげに、よれよれのYシャツをだらしなく着こなした男が、休憩を取る為。胸ポケットに入れていたタバコとライタ−を取り出した。
母国のタバコとは、まるで違う味のタバコだが、吸うという行為で昂った気持ちをリラックスできる。

ふと部屋の窓から見える外の景色を見る。
昨日や、その前の日と変わらない波打つ海が見える。
長い船旅。目的地に到着する予定は残すところ、あと3日ほどであった。
乗っている船は地球連邦軍大西洋艦隊所属の空母オ−バ−・ザ・レインボ−。
ある物をドイツから南アタリア島に輸送して、極東支部所属第13独立外部部隊ロンド・ベル隊に受け渡す筈だった。

二日程まえにロンド・ベル隊旗艦のア−ガマが、日本から出発して南アタリア島に向う途中の太平洋で消息を断たなければ・・・・・
敵対組織と戦闘に入り全滅。
あるいは戦線を離脱して音沙汰不明なら話は簡単なのだが、南アタリア島のSDFの報告では、突然に監視衛星の捜索網レ−ダ−から消えたとの連絡があった。
地球上から完全にロストしたのだ。
行方不明になったア−ガマ捜索に、それなりに協力的な対応をSDFは取っているが、この二日間で得られた情報は何もない。

「加持さん!加持さん!加持さん!!!ア−ガマが行方不明になったって本当?」

男が与えられた、士官待遇の個室に一人の少女が男の名前を呼びながら飛び込んできた。
太陽を連想させる情熱的な赤い髪と勝気なアイスブル−の瞳を持つ女の子だ。
エヴァンゲリオンとのシンクロを効率化する為のワインレッド色のインタ−フェイスを髪留め代わりに使っている所を見るとNervの関係者なのだろう。
年齢は十代半ばだが、その年齢の少女とは思えないプロポ−ションをしている。

「アスカか?親しき中にも礼儀ありだぞ」

加持と呼ばれた男がタバコを口から離し、部屋に入る時はノックをするようにと注意する。

「別にいいじゃない。加持さんは兄さんみたいな者なんだから。それよりも空母の兵士達の間で噂になってるのよ。ア−ガマの消息が分からなくなったって本当なの?」

「流石に耳がはやいな。そうだ、二日程まえにア−ガマは太平洋上で消えた」

隠しても、いずれ分かる事だ。妹分の少女に知っている事を教えた。

「心配か?」

「まあね。この天才美少女パイロットの惣流=アスカ=ラングレ−が加わる部隊だもの」

ここ一年で随分と性格が、いい意味で柔らかくなった少女に聞いた。
幼馴染の少年に命懸けで助けて貰ってから、無理に自分の価値を証明しようとしなくなった。
以前は男の前だと、いい子を演じているようだったが、今ではすっかりと自然体でいる。
絶対に裏切らない味方が、一人でも居ると知ったお蔭で、肩肘を張り、ギリギリまで絞られた弦のようであった精神に余裕ができたのだ。
懐いてはくれたが、どこか警戒していた自分にはできなかった偉業を成し遂げた少年を、心から尊敬できる。

「あっ!これ、もしかしてロンド・ベル隊のパイロットリスト。噂のサ−ドチルドレンも確かア−ガマに乗っていたのよね」

仕事で使っているノ−トパソコンの画面は消していない。
めざとく見つけたアスカは、加持が止める前にマウスパットを握りクリックしていく。
Nervドイツ支部でも、立て続けに使徒を撃退した初号機とサ−ドチルドレンは噂の的になっている。
セカンドチルドレンの情報閲覧レベルでも、第2新東京市の戦闘映像は閲覧できず、人伝いの話だけを聞いていた。
なんでもエヴァンゲリオンに初めて乗ったにも係わらず40%台のシンクロ率を弾きだし、いまではアスカと同じ80%台に達しているとドイツ支部では噂になっている。
昔のアスカなら、そんな噂は絶対に認められなかったろう。良くも悪くもエヴァ弐号機に乗ることが全てだった。

「ふ〜ん。あの英雄アムロ=レイも乗ってるんだ。それに、ここまで特機が集中している部隊は連邦軍じゃ考えられないわね」

いい仕事してますね加持さん。パイロットと搭乗機の戦歴が一目で分かるように整理された画面を次々とスクロ−ルしていく。
いずれ、同じ部隊で闘う以上。知っておかなければいけないが、今はサ−ドチルドレンの情報が先だ。
エヴァンゲリオンシリ−ズに乗るパイロットとしては、やはり他系統の機体に乗るパイロットよりも遥かに気になる。
性格が、だいぶ柔らかくなったとは言え勝気の性格は変わっていない。
エヴァチ−ムの中でのエ−スの称号は手に入れたいのだ。

「あっ!あった。あった。―――って!!!うそ!?・・・・・・なんで・・・・・本当なの!?

お目当てのサ−ドチルドレンのデ−タを見たアスカが、驚きのあまり大声を出し、食い入るように画面を見る。
ディスプレイに映し出されているパイロットの顔は、アスカの幼馴染である少年の顔だった。

「あ、あのな、アスカ。少しは落ち着いたらどうだ」

加持が、マウスを握り潰せる程に強く掴んでいるアスカに声を掛けるが、其れが不味かった。

「・・・・・加持さん・・・・・・いつから知ってたの?あいつがサ−ドチルドレンだって?」

意識を画面から、加持に切り替えたアスカが幽鬼漂うオ−ラをまとい、凝縮された怒りの混じった声で訊く。
シャド−ボクシングをする紅い鬼を背景に纏う少女に戦慄して男が後退りながら、勇気と理性を総動員して説得を開始する。
失敗すれば酷い目にあいそうなので必至に口を動かす。

「いいか、よく聞けアスカ。これはBランクタイプ4の特殊扱いの情報だ。資格を持たない閲覧者に、情報を洩らしたら厳重に処罰される。話した側も聞いた側にも。わかるな」

軍事訓練も受けている少女に、軍内部の情報漏洩は許されない。
たとえ身内といえ話せなかった。と、道理を立てて話した。

ふ〜ん・・・・・・へ〜・・・・・・アタシがアイツに関して資格がない?加持さん。そう思ってたんだ・・・・・」

あの幼馴染に関する資格がないと言う言葉は、赤毛の少女の癪の種を、これ以上ないほど刺激した。
なにを思ったのか赤毛の少女は、部屋の片隅に置いてある植木鉢に目線を向けた。

「大きくなったわね。ウルド。ベルダンディ−。スクルド。もう直食べごろよね」

室内植物を育てる為の専用器具から放たれた光を一身に浴びる三個のスイカを見ながら、含みがある声で赤毛の少女が加持に言った。
時を司る三神の女神の名前が付けられた加持の宝物だ。

「あ、ああ?・・・・・・そうだな」

精魂込めて育てた品種改良された室内スイカの話に突然切り替わり、意図が分からず曖昧に応えた。

「スイカと言えば夏!夏と言えば海!そして海と言えば・・・・・さぁ。なんでしょう加持さん?」

突如、舞台に立つ女優のように優雅な振る舞いをみせ少女は困惑する加持に聞いた。

「わからない!いや、わかりたくない!」

赤毛の少女が言う言葉の先に何が待っているのか分かった加持は、大人が持つ矜持の仮面を捨てて悲鳴を挙げた。
恐慌に囚われる加持にとどめの一撃を与えように赤毛の少女が絶望を言い放った。

「それは!スイカ割りで−す!!!」

「いぅなぁぁぁ――――!その不吉な言葉を俺の前で言わないでくれぇぇぇ―――」

スイカ割り。それは夏の海の定番。
だが、スイカをこよなく愛し育む加持にとって、スイカは我が子同然。
消費者の娯楽によって無惨に砕かれる愛しい子供達。美味しく食べられるのなら納得も行く。
だが、「砂がついたから、ばっちくっていらない〜」とスイカを捨てるお子様に何度、正義の鉄槌を喰らわそうと思ったことか。
下にビニ−ルシ−トを引けと、常識を知らない奴に説教を何度したか分からない。
時には拳と拳で語り合いもした。拳で語った多くは彼女連れで海にきていた彼氏であった。
大半の彼氏は彼女の前で、常識を知らないお子様と指摘され恥をかくと、逆上してケツの青さを露見する。
大学時代。親の脛を齧っているだけの同年代ボンボンを何人叩きのめしてやったか覚えていない。
そして、一人になった彼女を口説けて一石二鳥でもあった。

「やめろ・・・・・やめてくれ・・・・・」

砕かれ、食べられる事なく生ゴミの日に出されたハニ−達の無惨な姿が脳裡に描かれる。

「アタシもやりたくはないわ。でも!アイツにできてアタシに出来ないなんて可笑しくない!?こんどアイツに会う前に出来るようになりたいのよ!そう。悲しいけど、これは戦争なのよ」

一年戦争時代。二本足の巨大モビルア−マ−に特攻したパイロットのようなセリフを言うが、意味は無い。ただ言いたかっただけだ。

「くっ!恨むぞ!シンジ君。あの時に君がアスカに、教えなければ今日の悲劇は起きなかった」


アスカに悪魔の所業を、教えた者の名を碇シンジと言う。
きっかけは、加持がドイツ支部で育てていたスイカ農園に少年と少女を招待した時に、悲劇が生まれた。
スイカ割りと呼ばれる唾棄すべき遊びをアスカに見せたのはシンジであった。

スイカを食すならスイカ割りと師匠から伝授されていたシンジは、迷うことなくスイカ割りを行った。
目隠しをして、身体を回転されたくらいで敵を見失うような軟な空間把握能力なんぞ持っていない。
たとえ、五感を封じられようと心の眼で敵を斬れ。
そういった修行も行ったシンジにスイカ割りなど児戯に等しい。

実際、シンジが割った・・・・・いや、斬ったスイカの断面は実を潰さず見事なものであった。
刃物を使っていれば・・・・・・
シンジが学んだ流派のスイカ割りは、五体のみで行うと決められている。
決めたのは、もちろん師匠だ。

シンジが手刀でスイカを斬ったのを見たアスカは、自分もやると言い出した。
空間把握能力なら少年に劣っていない少女は、目隠ししていても寸分違わずタ−ゲットのスイカに手刀を当てれたが、少年のように斬るには至らない。
少年と別れた幼い時から英才教育を受けていた少女の拳は、瓦10枚だろうと割れる威力を秘めていたが、いくら試しても少年のように斬ったようにはならない。
それが悔しいのか、ムキになってスイカを割り続けた。

加持がちょっとした用事で席を外していた短い時間で、加持スイカ農園は壊滅した。
一個、一個に名前を付け心血注いできた恋人達の憐れな姿に、加持は号泣した。
ああ・・・・・・もう戻ってこない。

形がラブリ−だったジョセフィ−ヌ。
色は他の誰にも負けないほどセクシ−だったフラソンワンズ。
その魅惑的なつるは、俺をさそっているのか?カテリ−ヌ。

一個、一個の名前と特徴を言いながら、血の涙を流す加持の横で、

『なに恥ずかしがってんの!このアタシが食べさせてあげるのよ!はい、あ〜ん!』

自らの手で少年にスイカを食べさせる少女が居る。
なんで出来ないのよ!と荒れる幼馴染を、あの手この手で宥めた少年。
言葉だけでなく色々とやって懐柔した。その為か子猫のように甘えてきた幼馴染とピンクの固有結界を作っていた。

「二度と呼ぶか・・・・・・・」

それが、あの時の悲劇を教訓にした加持の心の叫びであった。


「この一年の間で、だいぶ格闘トレ−ニングを積んだけど、スイカみたいな適度な硬さで試し割りできる物はなかったのよ」

お願い!加持さん!と言ってくる紅い悪魔に、加持は恐怖した。

「な、なにが望みだ?」

搾り出すように言う。この少女が本当に望んでいるモノは他にあると理解していた。

「望みなんてないわ。ただ、ちょっと、あのバカに関して知っている事を洗いざらい話してくれるだけでいいから。それだけで、このふつふつと湧いてくるナニかをスイカにぶつけなくて済むわ」

「・・・・・・俺が、知っている事は、このデスクに全て納められている。パスワ−ドは『青き西瓜の楽園の為に』だ」

コンパクトディスクを諦めたように少女に手渡すと加持は、がっくりと肩を落とした。
軍事機密はいいのか?なんて野暮なセリフは今の男には届かない。
男・・・・・・いや漢には属している組織に逆らっても守らなければならない物があるのだ。
シンジにとってのイルイがいい例だ。
下手にあの金色の髪の少女を傷つけようものなら、鬼神と化した越えた者の激怒を骨の髄まで味あわされるだろう。

「だが、アスカ。心配していないのか?知っての通り、彼はア−ガマと共に消息不明になったんだぞ?」

これで一年以上連絡を取ってこなかったバカの情報が手に入り、喜んでいる少女へ聞いてみた。
あまりにも少女が平然としているからだ。
もう少し。いや取り乱しても可笑しくない少年と少女の関係を加持は知っている

「大丈夫よ。あいつはバカでドジでスケベだけど、一度交わした約束は絶対に守るわ!」

あの時、別れの挨拶にさよならではなく、再会の言葉で約束を交わした。その事を言っているのだろう。
あの少年にしか見せない筈の極上の笑顔を浮かべながら、少女は言い切った。
表面上悪く言っているが少年の情報に心が歓喜しているのが丸分かりだ。
自然と表情に浮んでいる。
だが、そこは指摘しないのが大人と言うものだ。
それに下手に藪を突けば、他人のノロケ話を延々と聞かされる羽目になる。それは一種の拷問だろう。
口から砂糖を吐き出したくなる程、甘ったるい内容の知り合いの恋愛話は。

「それよりも、加持さん。毎日電話を必ず一回は掛けてくるように言ったのに、一度も掛けてこない、あいつをお仕置きする時は手伝ってね」

そっちは約束してないのだが、あの少年に関しては唯我独尊を行く少女を止められる言葉も気力も残っていない加持は、黙って肯いた。
後に、少女にお仕置きされた少年が真相を知った時、加持のウルド、ベルダンディ−、スクルドを奪ったのは別の話である。


あとがき

この時、赤毛の少女は知らなかった。
少年が金髪の義妹を過保護に溺愛している事を。
その事実を知った時、降るのは血の雨か少年の涙か?
まあ、どっちにしろ痛い目を見るのは少年一人と言う事で問題なし。
嫁の結婚記念日をど忘れするが、娘の誕生日はしっかりと記憶している構図ですね。


レス返し

ATK51様> 求めるモノは同じでも、価値感や手段の違いで相容れぬ関係になり、敵対するのは人が2人以上集まれば仕方がないでしょう。
片方だけが求めていても、利潤が加われば尚更に。
彼女については後々の話で登場します。

ななし様> 大気圏突入中にコアブロックを切り離したら燃え尽きるは、先にコアファイタ−の方だと思うのは自分だけでしょうか?
アムロが乗っているSガンダムを其処まで追い詰めるには、黒の堕天使かズフィル−ドの巫女が駆る白の邪蛇クラスの敵が必要です。

15様> スパロボだとZガンダムとほぼ同スペックだけど、メイン武器がEN消費型のZより使いやすかった記憶がありますけどね。インコムは弾数だったので。
ジェネレ−ションの方だと登場するステ−ジの味方に量産型のZやダブルゼ−タが多すぎて、あまり目立たなかったような気がします。

アルテミス様> 64の話だとGR計画で人類を滅ぼそうとして、αだと人類の可能性に賭けてみて九大天王と十傑集と共に人造神に挑みますが、この世界での大いなる炎の役割はまだ未定と言うことで。

ジント様> 次回ではシンジは活躍します。イルイは・・・・・更なる次の話で・・・・・出せるかな?

火素矢様> αの世界では空手純愛男の力は人間としてはトップレベルですが、MSを生身で破壊できるほど常識外れではありません。
この世界でシャッフル同盟と本気で戦えば骨も残りません。
それかMXだと、あくまで人間試合用モ−ドの本気で、実戦命懸けモ−ドではなかったのかもしれません。

ヤ−ド様> Σガンダムで壮絶に罠に落ちた閃光君より主役らしかったですけどね。

黒百合様> ああ、確か個人的にはフォウを選びたかったが機体欲しさにロザミアを選択した覚えがあります。


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