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!警告!壊れキャラ有り

「ミカえもん 第2話(GS+ドラえもん+オリジナル)」

臥蘭堂 (2006-06-07 02:01)

 地球の上に、朝が来る。その裏側は、夜だろう。そう歌った人がいた。まったき真理である。夜はやがて朝へと移る。しかし、普通ならば眠りと言うとばりが、その時間の流れを人の意識から弾き出すものだ。
 夜を徹してしまわない限りは。

「あー……朝かあ」

 ベッドから上体を起こした、横島タダオのように。

「結局寝れんかった……」

 窓から差す朝日に照らされながら、赤い眼をこする。くまの浮かんだ目元をもみ、視線を押入れに――夜を徹する破目になってしまった原因に向けた。

 開け放たれた襖の向こうから、白い、あまりにも真白い脚が、だらんと投げ出されていた。それが揺れるにつれて、タダオの視線も右へ左へと揺れる。

「ん……やぁ……ダメぇ……タダオ君ったらぁ……」

 何やらやけに扇情的な声と共に、脚が押入れに引き上げられるが、代わりに襖越しに見事な豊かさをたたえた丸み――妙に狭い布に包まれている――が、覗けたりする。

 これが一晩中続いたのだ。タダオが夜を徹する破目に陥ってしまったのも、無理はないであろう。
 せめて、押入れの主があのスーツを着込んでいてくれたなら、まだしもであったのだろうが「寝る時は流石に着ないわよ」と言う、はなはだ非情なお言葉を賜ったタダオであった。
 それがまた、嬉しくもあり、苦しくもあり。

 もし、タダオがもう5年ほど早く生まれていたなら、もっと違う展開もありえただろう。だが、今のタダオには、モヤモヤしたものを胸に抱えつつ朝を迎える以外、出来る事はなかった。
 仮に、何かを決断した場合、その先に待ち受けているものが何であるのか。それは、タダオにもぼんやりと理解は出来たが、同時に、何がもたらされるか。
 より具体的に言うならば、もう一人の――と言うか本来の――同居人から、何がもたらされるやら。

 それが、恐かったのだとも言える。きっと、相当にロクでもない事になるだろう。

「早く慣れないとなあ……慣れる事が出来たらだけど」

−−−−−
ミカえもん

#02 学校へ逝こう そのいち
−−−−−

「おはよう、魔鈴さん」
「おはよう、タダオ君」

 押入れで眠るミカえもんからどうにか視線を外し、着替えて階下におりると、すでに魔鈴が起き出し、ダイニングキッチンで朝食の準備をしていた。

「………………アレは、どうしてますか」
「まだ寝てるみたい」

 トーストと目玉焼きの皿をタダオの前に出しつつ聞く魔鈴の表情は、見事に表情と言うものを削ぎ落としたものだった。
 ミカえもんが来た昨日、ミカえもんはタダオの部屋に同居する事を宣言した。無論、それを容認するつもりは魔鈴にはなかったのだが、魔鈴がどのような阻止手段を――それこそ、タダオには秘密にしていた筈の魔法まで駆使しても、ミカえもんはたやすくタダオの部屋に戻ってしまったのだ。

 またぞろ二人揃って破壊活動に移ろうかとしたのだが、タダオの仲裁によって、どうにか事なきを得た。と言うか、二人ともタダオの懇願する表情にほだされてしまったのだが。

 結局、幾つかの取り決めがなされ、それを厳守する事を条件に、ミカえもんの同居が認められた。まあ、それをどこまで守るかは、別の話として。

「タダオ君」
「何?」
「アレが嫌になったら、何時でも言って下さいね。私が全力を持って排除しますから」
「はは……」

 そのとばっちりを食うのは俺なんですが、とは、流石に言えなかった。

「じゃ、そろそろ行って来ます」

 ランドセルを背負い、在阪球団の帽子を被って言うタダオに微笑みつつ、魔鈴がかがみこみ、頬と頬をすり合わせた。かすかに。ほんのかすかに唇の端と端とが、触れ合ったように思えた。

「行ってらっしゃい、タダオ君」
「う、うん。じゃ、行ってきまーす」

 若干頬を染めてタダオが出て行くのを見送り、魔鈴は、ほう、とため息を漏らした。その背中に、声が浴びせられた。

「この少年趣味」
「くっ……あなたに言われたくはありません」

 スーツを着込み2頭身状態になったミカえもんが、降りて来ていた。

「ふん……いい加減認めたみたいね?」
「お黙りなさい。朝食……は、いらないんでしたね」
「ええ。アタシの動力は半永久的に持つから問題ないわ。食べようと思えば食べられるけど」

 もしタダオがここにいれば、もれなくその胃に痛みが走るような空気の中、二人の視線はまるで交差する事がなかった。

「しかし……あなたロボットなんですか? 半永久的だなんて」
「ロボットとは、少し違うんだけどね。まあ、それで良いわよ。呼び方なんて大した問題じゃないし」
「なら、ゴーレム? ホムンクルス? そう言えばオカルト技術がどうとか言ってましたけど」

 自身、魔法の研究者である魔鈴には中々に興味深い話ではある。そのせいか、彼女の顔は、タダオの前では滅多に見せる事のない、研究者のそれになっていた。だが。

「ストップ。その辺は聞かれても教えられないわ」
「何故です」
「そりゃ、そう言うきまりだからよ。時間渡航そのものは禁止されていないけど、禁止されている事もある。そーいう事よ」
「禁止されていない……ちょっと、それってどういう事ですか?!」
「さーてっと。アタシも出かけようっと。じゃねー」
「あっこらっ!」

 制止を無視して勝手口から外へでるミカえもんを追いかけたが、すでに姿はなかった。

−−−−−

「あー、びっくりした」

 通学路を歩きながら、タダオは魔鈴の態度が以前よりも変わっているように思える事について、考えていた。
 以前ならば、抱きしめられたりはしたものの、あんなに際どい事まではされなかったからだ。

「あやうくキスしちゃう所だったよなあ。うーん……初キスの相手が魔鈴さん……うれしい事はうれしいんだけどなあ」

 魔鈴が好きかと聞かれれば、迷わず「好きだ」と答えるだろう。しかし、ミカえもんが来た日から、どうにも魔鈴に対して抱いていたイメージが変わってきてしまったのも事実だ。
 タダオがもう少し成長して、リビドーがあふれる時期ともなれば、また違う反応にもなろうが、そう言った点ではまだまだ子供には違いなかった。

「それに、ミカえもんもなあ……」

 彼女の事が嫌いかと聞かれれば、間違いなく答はノーだろう。あの妙ちきりんなスーツを着た2頭身状態であっても、ミカえもんは可愛いと言ってしまえる。
 まして、スーツを脱いだ時の状態と来たら。

 タダオにとって、年上の、憧れの女性と言えば、魔鈴がその筆頭だったのだが、それも揺らいでしまっている。それが何だか恐くて、タダオはかえって、ミカえもんになるたけスーツを着た状態でいて欲しいと思っていた。
 それを彼女が聞き入れてくれるかは、疑問なのだが。

「はあ……」

 小学生がつくには、あまりに深々としたため息が漏らし、通学路を歩くタダオの目に校門が見えてきた。

「まあ、学校にいる間ぐらいは、ゆっくり遊ぼう」

 勉強しよう、とは言わない辺りが、この少年らしいとは言えた。

−−−−−

 市街地の上空を、まったく奇妙な物体が飛行していた。強いて言うならば、青いダルマという所であろうか。小学生の身長ぐらいのそれが、頭頂部に差し渡し1メートルぐらいのプロペラ――というよりは、ヘリコプターのローターに近い――を付け、それを回して飛んでいるのである。
 哀れにもそれを目撃してしまった人々は、あるいは昨夜の酒量を反省し、あるいは過度の労働量を抑える事を誓い、またあるいは――布団をひっかぶって寝床に戻る事を選択した。

 そして、その当の飛行物体はと言えば。

「さーてと、どこ行こうかしらね。やっぱりここは、タダオ君の学校にでも行こうかしら」

 心から愛してやまぬ少年の面影を追う事を、決意していた。

「とは言ったものの、タダオ君の学校ってどこにあるのかしら……こう言う時は、やっぱりアレね」

 ミカえもんは、ごそごそとおなかのポケットを探り、ちんちくりんな人形の乗った箱を取り出すと、高々とそれを天に差し上げた。

「けーんーきーくーんー!」

 ぱぱらぱっぱぱーと、何処か間の抜けたファンファーレが響く。何事かと下を見れば、ビルの屋上でトランペットを吹く人影があった。人影はミカえもんに向かって一礼し、屋上から立ち去っていった。

「……何アレ」

 彼女にも、解らぬ事と言うものはあるらしかった。

−−−−−

「おはよー」
「おはよー」

 学校の登校風景と言うものは、何時の時代も、そう変わるものではない。まして、それが比較的低年齢な子供達の通う学校であるなら、なおさらだ。

 朝の光の中、集まって来た子供達が互い挨拶をしながら校門をくぐり、各々校舎へと入って行く。中には、さっさと教室に荷物を置いてから校庭に出てボールと戯れる豪の者などもいるが、まあたいがいはそのまま教室で先生の来るのを待ち受ける。

 タダオの通う小学校でも、そうした風景が展開されていた。ただ一つ、他所では決して目に出来ぬだろう要素が、付け加えられてはいるが。

 輪型陣、とでも言うのであろうか。身長2メートル近い屈強な体格の男達が6人、皆揃いの黒スーツにサングラスと言う怪しさ満点の姿で、一人の少女を囲みながら歩いていた。別に、少女が拉致されていると言うわけではない。
 その証拠に、輪の中の少女は平然とし、周囲の男達の存在がまったく当たり前の事と思っているかのようだった。おかっぱ頭の下にある目は大きく、目じりが下がり気味だが、そこには微塵の不安も浮かんではいなかった。なにやら、少し音程のずれた鼻歌なぞ口ずさんでさえいる。赤いランドセルと、おとなしめなワンピースが、良く似合っていた。

 六道冥子。タダオと同じクラスに通う、筋金入りのお嬢様小学生である。彼女の実家である六道家は、近隣一帯はおろか、日本でも屈指の大富豪であるのだが、何故か――主に母親の意向なのだが――ごく普通の公立小学校に通学している。
 彼女を取り囲む黒服は、彼女の通学に反対しつづけた父親が、最後の条件としてつけさせた護衛団なのだ。護衛団は総勢12人。現在彼女を囲む以外の6人も、姿こそ現さぬものの、常に彼女の側で周辺を警戒していたりする

 周囲からすれば、全く非常識なこの光景も、うやむやのうちに慣れてしまうものなのか、周囲の子供たちは、委細気にせず冥子に挨拶してたりする。
 ちなみに、大人たちがこれに慣れたのは、また別の理由による。平たく言うならば――「あきらめた」と言う事である。

「よう、おはよう冥子ちゃん」

 また一人の少年が、物怖じせずに黒服の輪に近づき、少女に声をかけた。それに対して少女は嬉しげに微笑んで応えた。

「あ〜タダオく〜ん。おはよ〜う」
「オッサンらもおはようさん」

 歩きながら黒服の輪にも挨拶する。黒服たちはめいめいにタダオを見やり、小さくうなずくだけだった。

「も〜う、みんなちゃんとご挨拶して〜」

 ちょっぴりふくれっつらになって言う冥子だった。黒服たちは、僅かに眉間に皺を寄せて困惑の表情を作ったものの、結局は冥子の言うとおり、はかったように同じタイミングでタダオに向かって丁寧に頭を下げた。

「おはよう、横島タダオ君」
「何でフルネームやねん……まあ、ともかくおはようさん」

 冥子を囲む6人は、外見上まったく変わりがなく、タダオにはまるで見分けがつかない。だから、挨拶もまとめてになる。しかし。

「も〜タダオくんも〜ちゃんとお名前呼んであげて〜」
「いや、見分けつかないし」
「冥子にはちゃんと解るわよ〜?」
「いや、冥子ちゃんだけだと思うよ、それは……」

 タダオの言葉に、こっそりとうなずく黒服たちだった。

――続く――


お久しぶりで御座います。臥蘭堂です。
苦吟しつつもどうにか第二話めの投稿で御座います。
前回はもう、一重にたかすさんの絵からいただいたインスピレーションだけで乗りこなせましたが、こうなって来ると中々w
とまれ、続きになります第三話も、なるたけ早めに仕上げたい所存ではありますが、どうかご容赦の程を。

では、以下レス返しで御座います。

>akiさん
なんと申しましょうか、前回たかすさんが投稿なすって下さいました絵をご覧いただけますれば、大体お解かりなろうかと。そりゃあ煩悩も回ろうかと言うものでw

>なまけものさん
まあ、このお話では魔鈴さんも漏れなく「困った人」と言う仕様になっておりますのでw と言うか、基本的に登場人物は「まぬけな人」か、「もの凄くまぬけな人」にしたいなーと言うのが、私の希望ですw

>meoさん
仰られる点につきましては、どうか「物語の嘘」と言う事にしてご寛恕願えましたら幸いで御座います。

>足岡さん
ご期待通り、魔鈴さんが段々と本性を現そうかと言う状態ですが、お楽しみいただけてましたら、幸いで御座います。

>虜さん
今回は中々壮絶バトルと言う訳にも参りませんでしたが、一応ミカえもんと魔鈴さんは二大巨頭と言う腹積もりですので、ご期待に添えるよう持って行きたいと思っております。

>たかすさん
本作は、たかすさんの御作あればこそのものでした。素晴らしいイマジネーションで刺激をいただきまして、こちらこそ御礼申し上げます。
長編の方は、一応本筋を何本か上げてから、と考えておりますので、気長にお待ちいただけましたら幸いです。やっぱり「タダオのキョーニュー」が妥当でしょうかねw

>tomoさん
お楽しみいただけましたようで、幸いです。どうしようかと考えはしたんですが、やっぱり魔鈴さんにもこっちの道へ進んでいただいた方が、話的にはおいしいかな、とw
ちなみに、よろずの方を利用させていただいたのは、まあGSメインではあっても、ちょっと原典からのズレが大きすぎるかなと思った次第でして。

>とおりさん
ドラ美ちゃんに関しては、一応爆弾を用意してありますw
まあ、コメディが苦手な私ですから、中々筆が進まんで出番までが遠い道のりではあるのですが。

>柳野雫さん
やはり、絵の威力と言うのは絶大であると、改めて痛感しております。中々、絵の秘めている魅力を文章でと言うのも、難行ではあるのですが、まあ楽しい作業ではあります。

上記の方々のほかにも、お読みくださった皆様に感謝を。
余暇の供とでもしてお楽しみいただけましたら幸いです。


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