インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「舞−HiME  運命の修羅 第二話(舞−HiME 運命の系統樹+ネタばれの為未表記)」

いよかん (2006-05-04 23:21)

「此処もまたでかいな……」

目の前にそびえ立つ教会。

夕焼けの赤に染められてその荘厳な雰囲気をより一層際立てさせている。

その存在感からか辺りとは変な意味ではなく浮いている一角と成っている。

特に信心深い訳でもない……というよりはむしろ神を敵対視している俺がこのような場所に来る理由は唯一つ。

俺が此処で教員を務める原因となったジョセフ・グリーアさんに会いに来たからだ。

天河教授が行方不明となり、その後継として研究室のパトロンである天下のシアーズ財団からの白羽の矢が俺に突き刺さり、風華の地へと来る事になったのだが。

幼いころに世話になった此処の牧師を務めるグリーアさんがそれならとちょうど空きのあった学園の教員に俺を推薦したのだ。

お世話になった事だし挨拶に行かねば成らないのだろうが俺はどうにも気分が乗らず教会の重厚なドアの前で立ち止まってしまう。

グリーアさんの顔を見れば必ずあの事を思い出さずにはいられない。

年下である俺のことを時には弟のように可愛がってくれ、時には兄のように慕ってくれた彼女の事を。

だがそうも言ってはいられない。

俺は覚悟を決めてドアを押し開けた。

そして俺はありえてはいけない人物に出会った。


舞−HiME 運命を打ち砕く修羅

第2話「懐かしの少女」


「……優花?」

俺の声に今まで祈りを捧げていた少女が振り返る。

俺はその振り向いた顔に再び驚かされた。

その鼻、口、輪郭。何もかもがあの頃優花に瓜二つだ。

ただ一つその無感情な眼を除けば。

優花に似たその少女は余りの衝撃に未だ思考停止状態にある俺の横を抜け、そのまま外へと出てゆく。

ドアの閉まる音で再び俺に正常な思考回路が戻る。

彼女を追おうと振り向きかけて

「やあ。良く来てくれたね高村君」

声に止められた。

教会の奥からゆっくりと初老の男――――グリーアさんが此方へと歩み寄ってくる。

「グリーアさん……お久しぶりです。あの聞きたいことがあるのですが」

俺の言葉にグリーアさんはゆっくりと微笑んだ。

「さっきのあの子の事だろう? あの子は深優・グリーア。最近までアメリカに居たので君も知らなかっただろうが私の娘だ」

合点がいった。

優花の姉妹というのならば似ていても頷ける。

だが……あそこまで似ているというのは在り得るのか?

それに本当に優花に姉妹が居たのか?

その事を俺は問おうとしたが曖昧にはぐらかされ、事務的な話に移された。

その事務的な話し合いの内容はというと。

俺の衣食住は渡された宿舎に行けば全て解決されると言う事。

定期的に九条むつみさんというシアーズの人に研究の報告を行う事。

そして媛伝説の調査をしているという事と何より俺がシアーズ財団の者だとは気付かれてはならない事

大きくその3つの事を伝えてくれた。

俺はあの深優という名の少女の正体について考えながら教会を後にした。


教会に入るときよりもさらに色濃くなった夕暮れの赤が俺の周りに生えている芝生を染める。

与えられた宿舎に行く前に明日から勤めるこの学園の雰囲気を知ろうと俺は人通りの多そうな所で座り込んで色々と眺めている。

辺りには部活でも終えたのだろうか、生き生きとした表情の生徒達が行き交っている。

「俺にも……あんな時期があったよな」

脳裏に蘇るのは昔の事、ほんの数年前の事ではなくもっと昔にあったこと。

友人二人と色々な事をして、笑い、泣き、怒り。先生に馬鹿をやるたびに優しく注意されていたあの頃。

もう二度とは戻らない、幸せとは気付いていなかった幸せの日々。

何で……あんな事になったんだろうな。

先生もあいつ等も悪くなかった。

先生は世界を良いものにする為に、あいつ等は生き残る為に。

必死にあがいた結果だった。

誰かが悪かった訳じゃない。強いて言うのなら世界が悪かった、それが運命だった。

それだけだったんだろう。

立ち上がって空を見上げる。

其処には無限に広がる空がある。

「俺は……この世界で生きるよ。それが俺に出来る唯一の弔いだから」

決意も新たにした所で立ち上がり宿舎への道を確かめる為に地図を眺める。

「ひょっとしてお兄ちゃん?」

懐かしい声に顔をそちらに向ける。

其処に居たのは薄桃色の髪の懐かしい少女。

「おお、朔夜久しぶり。お前そういえば此処の生徒だったな」

天河朔夜。天河教授の一人娘であり、少し前まで家庭教師として勉強をを見てやったりした妹分のような存在だ。

「むーー。私のこと忘れてたの、お兄ちゃん?」

頬を膨らませるその様子は朔夜の容姿と相成ってとても可愛らしく感じられる。

「悪い悪い。忘れてた訳じゃないんだ、初めての場所に来るのに緊張してちょっと頭から離れてたみたいだ」

クシャクシャと頭を撫でてやる。

朔夜は気持ち良さそうに目を細めかけるが、ハッとして目を見開いた。

「それって結局忘れてたって事じゃ?」

「ありゃ、ばれた?」

「あーー!! お兄ちゃん私のこと馬鹿にしたーー」

「いやあ朔夜の印象が昔のままだったんで懐かしくてついつい」

「むむっ! 私だって成長してるんだよ」

ほらほらと言わんばかりにくるりとその場で回り身体を見せてくる朔夜。

確かに身長も伸びたし、それに何より…………綺麗になった。

ほんのちょっと前まではまだまだ子供だったと思ったけどこの時期の成長ってのは早いもんだ。

「お兄ちゃん。なんだがお父さんみたいな顔してるよ」

むむ。表情から心を読めるようになったとは本当に成長してるんだな。

「それにしてもどうしてお兄ちゃんがここに居るの?」

「ああ。俺は今度からこの学園で教師をする事になってな。そういう事だからこれから顔を合わせる機会が増えると思うけどよろしくな朔夜」

「そうなんだ……お兄ちゃんと毎日会えるなんてこれからが毎日が楽しくなるね」

朔夜はそう言ってふんわりと笑顔を見せた。

「…………」

正直に言おう。

俺はその朔夜の笑顔はそこらの芸能人なんかよりもよっぽど綺麗だった。

女の子だった朔夜が今では女として立派に成長して俺の目の前に立っている。

天河教授に見せてやりたい光景だ。

あの人は凄まじい子煩悩だったからこんな風に成長した朔夜をみたら漢泣きすることだろう。

「全く……教授は何やってるんだろうな」

「ふえ? お父さん?」

「今頃どっかで時も忘れるほどにフィールドワークを満喫してる事だろうけど、朔夜がこれだけ可愛くなったん姿を見ないなんてほんとに何してんだか」

――ボン

そんなな音が聞こえそうなほどに朔夜の顔は一瞬で真っ赤になった。

「可愛い……お兄ちゃんが私のこと可愛いって……」

朔夜がもにょもにょと何かを言っているが小声過ぎて俺には聞き取れない。

「おーーい朔夜ーー戻ってこーい」

「ふわっっ!? なななな何?」

俺の声にようやく現実世界へ無事に帰還したようだ。

「これから俺は宿舎に向かうけどお前はどうする?」

「えと……私も付いてく。お兄ちゃんのお家に遊びに行く為にも場所を知っておきたいし」

それから俺は朔夜と最近あった事をお互いに話しつつ歩き始めた。


「ほうほう。つまり朔夜はやっぱり料理は駄目でその嵯峨野さんに家事全般を任せてるんだな」

「うう……否定できないよぅ。だってサギーの料理美味しいし。甘えちゃうんだよー」

そろそろ目的地の筈だが……おっあれか?

「朔夜。此処が俺の世話になるところみたいだけど……普通の家だよなぁ」

広い庭に二階建ての家屋。

いたって普通の一般家屋、これが宿舎?

「えっ……ここって」

朔夜は何故か驚いているようだ。

どうしたものかと悩んでいるとドアの内側から一人の男性が現れた。

「あなたが高村様ですね? お話は伺っておりますどうぞお入りください。……おや? お嬢様もどうなさいました? 夕食も出来ております早くお入りください」

はい? それってひょっとして……

「お兄ちゃん……ここ私の家」

は……謀ったなグリーアさん。

あの人、俺が朔夜と知り合いな事も知ってるのに教えてくれないとは。

未だ呆然としたまま家に案内され夕食を食べた俺はその夕食の味に驚かされた。

ガッチリとした筋肉質の身体にエプロンをつけた嵯峨野さんの姿は似合わないがあの味を出せるとは……何者?

「はい。ここがお兄ちゃんの部屋。元はお父さんの部屋だったの」

食事も終わり人心地ついてから俺は朔夜に自分の部屋となる部屋へと案内された。

「教授の……良いのか俺が使って?」

「うん! サギーと話し合った結果だし、お父さんの部屋にお兄ちゃんの好きそうな物が色々あるからここにしようって」

確かに見回せば教授の集めたと思われる資料の山があちこちに築かれている。

「そうか……ありがとう朔夜。俺はこれからこの資料をざっと見てからシャワーでも浴びて寝るけど朔夜は早く寝ろよ」

「えへへ。それじゃあ明日からよろしくねお兄ちゃん」

朔夜が出て行った後に資料に目を通そうと思ったのは良いが。

その膨大な量に俺は圧倒されていた

何しろ教授ときたら機械類が苦手なものだから全て紙媒体。

さらに教授の字の汚さもあり時間をかけなければその解読はできないときた。

半分にも満たない量に目を通すだけで日付が変わっていた。

そこで俺はもう本日の資料整理を諦め、日課となっている鍛錬をする事にした。

運動着に着替え誰も起こさぬよう慎重に階段を降り靴を変え庭へと向かう。

始めは軽い柔軟をしてから本格的な鍛錬へと移る。

腰の後ろの銅剣を抜き、構え、目を閉じて昔を思い出す。

あの戦いの日々で俺はどのように身体を動かしていたか、そしてあの剣神にして雷神はどのようにその武器を振るっていたか。

イメージが出来上がったところで実際に身体をそれに沿うように動かす。

イメージとの差異に身体がミシミシと悲鳴をあげる。

だがそれでも俺は動かすのを止めない。

もとより人の身では再現不可能だとは分かっている。

少しでも近づければそれで良い。もう力が足りない何て後悔はしたくないから――

一時間ほどの鍛錬。

疲れ果てて庭に倒れるように寝転がる。

月の横には凪の見上げていたあの紅い星の姿は無くただ月明かりが夜を照らしていた。

「明日から教師生活か……先生、見ててくれよ。俺は先生の教えたかった事を少しでも子供達に伝えるから」

――期待してるわ

何処かで先生がそういった気がした。


あとがき

さてさて今回は幼馴染に似た深優と妹分の朔夜の登場です。
深優はEDがアレだったのでこの作品では色々とありますよ。

>ピースケさま
系統樹のSSは確かに殆ど無いですよね。
自分でも言っているように私、いよかんは悪食クロス書きなので脳内にある日唐突に思いついちゃったんですよ。
そしてそのまま勢いである程度のプロット立ててガーっと書いちゃいました。
あとヒロインについてはハーレm……ゲフンガフン、失礼。
ヒロインはまぁ特に決めてませんが流れ的には、誰ともくっつかないと思いますよ……ウソジャナイヨ?

>蓮葉 零士様

静流編がどうなるのかは興味深々ですが、そこは発売されてからですね。
つっても買えるかどうか自分はわかんないですけど。

>墓守様

メガテンッテナニカナーーワカンナイナーー
冗談です。大正解です。あなたは正しい。
あのパトりっぷりが大盛況なメガテンですよ

>15様

自分も系統樹の方が好きですね。
ただあの鬱展開っぷりはちょいと驚きましたがね。
漫画版を見てからどんなもんかと思って買っただけに尚更……

>ファルケ様

一応出番ありますよーー。
ただし終盤の予定ですが。


△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze