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▽レス始

「舞−HiME  運命の修羅 第一話(舞−HiME 運命の系統樹+ネタばれの為未表記)」

いよかん (2006-04-30 22:13)

「ふう。此処が風華か」

駅前で軽い手荷物を足元に置いた男が一つ伸びをして誰に言うとでもなく呟いた。

男の容貌はスラリとした細身の身体にスッキリとした髪型、ここまでなら十分に爽やかな男と称せるだろう。

しかし男の持つ眼がそのようなイメージを払拭していた。

意思に満ち溢れ強い輝きを見せているかと思えばその奥にはなによりも暗いこの世の物とは思えぬほどの闇が広がるその眼

その眼こそが男の最大の特徴であるが為、男の初対面の評価はことごとく『不思議な眼をした人』という評価をされている。

だが周りを行き交う人々は当然のごとくただ立っているだけの男の容貌に何の注意もしない。

「えっと学園までの道は……こっちか」

ズボンのポケットから紙切れを取り出しじっくりと見てから男は一歩を確かな調子で踏み出す。

男の名は高村恭司。

過去に於いて東京にて世界の新生の儀式によりその人生を狂わされた男。

これから先の物語はこの男がとある儀式に再びその人生を弄ばれる。

そんなお話


舞‐Hime 運命を打ち砕く修羅 

第一話「風華の地にて」


俺こと高村恭司は只今凄まじく困っていた。

「えーーと……ここ何処だ?」

そう迷ったのである。

地図を見て来たは良いが俺の準備した地図とは大きく街が変わっていて既に地図は役立たずと成っていたのだ。

「全く教授もなぁ……こっちの事を考えてくれよ」

それは無理な事だろうと自分でツッコム。

夏の日差しがジリジリと俺を苛立たせるかのように照りつける。

とりあえず……

「通りがかりの人にでも聞くか」

そう決めて辺りを見回す。前方の坂から降りてくる一人の女性を発見。

しかも好都合な事に着ている服から判断すると俺の赴任先であり現在の目的地である『風華学園』の生徒だろう。

俺は走って近寄りその女生徒を呼び止めた。

「そこの君……あの……道を聞きたいんだけど」

女生徒が振り向く。

赤みがかったショートヘアに整った可愛らしいとも凛々しいともどちらとも言える顔。

起伏に富んだ出る所はでて引っ込む所は引っ込んでいる身体。

一般的に言う美人、いやこの場合は美少女だろう。が、今はそんな事はどうでもいい。

「はい?」

少女が驚いたように声をあげる。

「風華学園までの道を聞きたいんだけど……ちょっと道に不慣れなもので迷ったみたいなんだ」

用件を告げてようやく納得したかのように目の前の少女が眩しいまでの笑みを浮かべる。

「ああ。それならこの坂を真っ直ぐに行って越えたら直に見えてきますよ。先輩……ですよね? ひょっとして転校生ですか?」

ああ……今回はそっちに間違えられたか。

俺はどうも年齢を間違えられる傾向にあるようでこれまでに会った初対面の人の殆どが俺の年齢を間違えるのだ。

それも年下にも年上にもどちらにも間違えられる。

若い人からは本来の年齢よりも大抵年下に見られる。

そして年配の人からはどうやら年上に見られるようで、17歳の時に「お子さんはいらっしゃるんですか?」とキャッチセールスのおっさんに聞かれたほどだ

ま、俺の今まで過ごしてきた人生を考えると実際にはそのくらいの年齢だから、そのおっさんを一概には責められないが。

そしてこの少女もその例に漏れず俺のことを先輩ぐらいの年齢と見たわけだ。

「いや、俺は今度から風華学園の高等部で講師をする事になった者で名前は高村恭司。ちなみに担当教科は古典。君は風華学園の生徒だろ? これからよろしく」

「えええええええーーーーー!? せ、先生だったんですか? すいません、失礼な事言っちゃって」

「俺はどうもよく年齢を間違えられる。慣れてるから別に気にするな」

「まさかその顔で先生とは……あ! 言い遅れましたけど、私は鴇羽舞衣。最近こっちに越してきたばかりなんですよ」

そういって再びニコリと笑う鴇羽という少女。

その顔に何かを感じて俺は声を出していた。

「なあ。以前会った事無かったか?」

「やだ。先生ナンパですか? 駄目ですよ校則があるんですから」

校則?

「そういうわけじゃないんだが……気のせいか。じゃあ有り難うな鴇羽」

鴇羽に別れの言葉をして俺は再び風華学園に向けて歩き出した。


……が

「……」

思わずその歩みを途中で止め見上げてしまう。

それほどの大木が坂の頂上付近の開けた場所に生えていた。

「これは……樹齢は百年単位じゃないだろ」

俺の4人分は在ろうかという幹にそこから伸びる枝は幾重にも分かれ雄大な広がりをを見せている。

そこまで見上げた所で気が付いた。

「これ桃の樹か!?」

辺りになにやら甘い香りが立ち込めていたので何かあるのかとは思っていたのだが、まさかこの樹が桃の樹だとは思いもよらなかった。

大樹にはよくよく見れば至る所にそれこそ桃色の丸い実がぶら下がっている。

「こりゃあ凄いな」

そう呟いて樹に触れようと一歩踏み出した時

――ブルリ

腰の後ろに括り付けていたモノが震えた気がした。

「何だ……?」

ソレを手に取り目の前にかざすように持つ。

無骨な儀式用の刃のつぶしてある銅剣。

推測される作られた時期から考えるとこれでも凝ってある方なのだが如何せん現代人には無骨な印象を与える。

「気の……せいじゃあ無いよな?」

普通ならば自然に銅剣が震えることなど有り得ない。

だが……この銅剣には『何か』がある

霊的な何か。あのセカイで見た数々のそういったモノに通ずる感覚がする。

そう思ったからこそ祖父に無理を言って貰い受け、こうして身に付けている。

「だけど今はどうやっても解明は不可能だよな」

一人ごちて銅剣を再び腰の後ろに納める。

そして再び風華学園に向けて歩み出そうとした瞬間。

――隣を女の子が四足で駆け抜けていった。

思考停止

「今時の女の子は四足で走るのか……」

エラー付きで再起動

「きゃあーーー!! 先生どいて、どいて!!」

後方からの声

振り向きざまに身に走る衝撃に一歩後ろにのけぞってしまう。

視界いっぱいに広がる先ほど出会った少女――鴇羽の顔

「クッ……」

俺にぶつかった鴇羽が倒れ込むのを一歩を踏み出し右手で何とか支えきることに成功。

あの日以来鍛え上げた身体は右手のみでも鴇羽の体重を支えきってくれた。

「おいおい、前を見て走らないと危ないぞ?」

俺の言葉に鴇羽が固く閉じていた目を開ける。

「あれ? ……ッッ! すいません先生!」

慌てて鴇羽が身を起こす。

「別に気にしなくて良い、鴇羽の体は軽いから大して苦じゃない。それに……可愛い女の子を抱きしめられたんだ役得だよ」

先ほどの体制を思い出したのか鴇羽の顔が真っ赤に染まる。

そして振るわれる右手

「へっ、へんたーーい!!」

――スッパァーーン

俺の頬から小気味良い音が鳴り響く。

転びかけた時にはだけた胸元が更にその行動であらわになる。

「嫌ぁーー!!」

フェードアウトして行く叫び声。

「ちょっと待っ……って無理か」

鴇羽の胸元にちらりと見えたあの紋章。

アレは……媛伝説に幾度となく登場している紋章。

なぜあの紋章が鴇羽に?

俺は痛む頬を押さえつつ呆然としていると背後からの人の気配。

「そこの変態……何者だ?」

余りにも失礼な背後からの声に些か怒りを感じつつ振り向けば……何故か銃らしき物を此方に向けられてました。

持っているのは長い黒髪を持つ、鴇羽とは違ったタイプの少女

その銃から感じられるのは俺の持つ銅剣と同様の何か

「この時期に風華にやってくる以上何かがあるのだろう? 吐け。素直に言えば命まではとらん」

こちらに向けられる銃口

「いや、何の事だか分からないんだが……?」

ビシリと俺の足元が爆ぜる。

こいつ……撃ちやがった。

「私は冗談を言っているのではない、早く言え。次は当てる」

俺は目の前の少女の手の筋肉の動きを見逃さないよう凝視しながら自分の此処へと来た事情を語った。


「ふむ……教師とはな……本当か?」

「なんなら免許でも見せようか?」

「いやいい。学園に問い合わせれば判ることだ。それより一番地という名に聞き覚えはあるか?」

玖珂なつきという名らしい少女の顔が更に険しいものへと変わる。

一番地……一番地

「住所か?」

それ以外には俺に思いつく一番地など無かった。

「知らないならいい。悪かったな脅迫紛いの事をして」

ようやく銃口が俺からそれ、一息つける。

「もう良いのか?」

「ああ行って良いぞ」

目的地である学園は既に坂の下に見え始めている。

許可の出た俺はその場を逃げるように後にしようとして……呼び止められた。

「待て! 一つだけ忠告しておいてやる。学園の校則第一条は『恋愛禁止』だ。先ほどのような発言を繰り返していると解雇されるぞ」

どういう事だ?

聞こうと思い振り返ると其処に既に玖珂の姿は無くバイクの走り去る音だけが残されていた


「まさか……理事長が小学生とは………………ありえねぇ」

理事長との会談を終えて堅苦しい雰囲気の理事長邸をでた俺の第一声である。

その小学生理事長だが、年齢からすると凄まじく大人びていて会話をする分には全く問題は無く、むしろ中学生の時の朔夜の方がよっぽど子供だった。

理事長はひょっとして俺と同じで……?

思考の海に沈みかけた所で上からの声

「真白ちゃんはなんだって? センセ」

上を見上げれば樹の枝に腰かける白髪の少年の姿が其処に在った。

「君は?」

「僕は炎凪。此処の中等部の生徒さ、それにしても大変だよねセンセ。この時期に風華に来るなんてさ」

「玖珂も言ってたが、何なんだ? 今の時期に何が起こるって言うんだ?」

「それは秘密だよ……今はね」

茶化すかのような凪の笑み。

「センセにも見えるんでしょうあの媛星が。なら確実にそのうち分かるさ」

凪が空を見上げるのに合わせて俺も空に目を向ける。

其処には……赤い紅い星が、まるで血のような、まるで禍霊のような……

その状態で数秒だろうか数分だろうか、気が付いた時には凪の姿は無く、空にも紅い星など微塵の欠片も無かった。

「何だってんだよ一体……」

今日一日今まで起きた事全てに対しての感想は誰にも聞かれることは無くあっさりと消え去った。


あとがき

始めまして悪食クロス書きのいよかんです。
どのルートでも必ず死者が出る舞ーHiME 運命の系統樹と多くのパトリストを生み出したあのゲームとのクロスです。
我ながら趣味が悪いかと思いますが脳内に色々と受信してしまったので書いてしまいました。
理論的には鬱と鬱をかけることによってハッピーエンドになる……と思う。
ちなみに主人公最強物ではなく、原作の高村よりも戦闘に慣れている程度です。
感想いただけたら幸いです。


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