第一話「目が覚めればそこは」
「・・・・・・っ痛、あれ?生きてる?俺どうなったんだ?」
目を覚ました横島はあたりを見渡す。穴に落ちたはずなのにそこは広い焼け野原だった。しかもいまだに燃えているようだ。
「おっかしいな? 俺とシロはなんか穴に落ちたと思ったのに・・・てシロっ!? おーいシロっ!」
気づけば、一緒に落ちたはずのシロの姿が見えない、辺りを見渡してもシロの姿はどこにも見えなかった。
「畜生、シロと離れ離れかよ・・・仕方ない、探索しに行くか……て、あれ?」
と腰を上げたがある事に気づいた。
「なんか視点が低いような……ははは、まさかな」
まさかと思ったが
「服もなんだかでかいような・・・のわっ」
歩こうとして自分の靴に躓いた。
「う、嘘だろ……縮んでるっ!?」
数々の苦難を乗越え、貧弱ではない程度の身体を手に入れていたはずなのに、今の自分の身体は過ぎ去りし過去小学校低学年になっていた。
「なんでだっ!? 何かの呪いか?それとも・・・・」
座り込んで考えるが、そこに彼の様子に気づいた者がいた。
「君? 君は大丈夫なのかい?」
「……まさか天罰?・・・ははは、そんな心当たりなんて・・・・・・ありまくりだな」
脳内では神族の小竜姫どころか魔族にすらセクハラしまくった記憶が蘇る。
ま、実際は当たらずとも遠からずなのだが。
「おい! 大丈夫かっ?」
「そんなー! いくらなんでもあんまりやー! ・・・て、えーなんでしょう?」
頭を抱えて喚いていたが、やっと自分が声をかけられていることに気づいた。
声をかけた人物は、何でこんなところにいるんだろう? というくらい普通の格好をしていた。ただ、その腕に今の自分と同じような年頃の子供を抱いている事を除けばだが・・・
「君もこの火事に巻き込まれたみたいだね、僕と一緒に来ないかい?」
やさしげに聞く。
「へっ!? あ、いいんすか?」
正直、これからいく当ても無かったため渡りに船だった。
「ああ、もちろんだとも」
にっこり笑う男。
「それじゃあ、お願いします!」
「ああ」
そして、二人は病院へ行った。
「はあ、退屈やなあ・・・・」
今、横島は病院のベッドで暇をもてあましていた。
外傷こそ無かったものの、あんな火事だったのに無傷ではおかしいという事で検査入院していた。
彼はヒマな時間に新聞などを読み、あの場所で何があったのかということや、ここが自分のいた世界では無いということを知った。
「なんでこんな事になったんだかなぁ」
ため息をついて隣のベッドで眠る少年を見る。
隣のベッドには、あの日、男が腕に抱いていた子供があの日から眠り続けていた。
「・・・・・・あ・・・」
「え?」
隣の少年を見ている途中でいきなり少年は目を開けた。
「お、おお! 目ぇ覚めたか!? ちょっと待ってろよ今ナースコールすっから!」
「・・・・・・え、あれ?・・・・・・」
目覚めた少年はどうしてここにいるのか分からない様子であちこちをキョロキョロ見回していた。
『どうしたの?横島君?』
スピーカーから若い女性看護士の声が響いた。
「あ!その声は美雪さんっすね? いやー相変わらず美しいお声で、ぼかーっもう!!」
用件も忘れて口説きにかかるが、悲しい事に今の彼の体は小学校低学年頃の肉体である。つまり・・・
『駄目でしょう? 用も無いのにナースコールしちゃいけないわよ』
全く持って相手にされてない、まあ元の体だったとしたらセクハラで訴えられるだけでなく、この病院の女性看護士に代々伝わるサブミッション(関節技)を決められていただろうが。
(ちなみに開祖曰く、『人の治し方を知っているという事は人の壊し方も知っているという事だ』は、全看護士の恐怖の言葉として伝えられている。)
「いえいえ、用ならありますとも美雪さんの美しいお声を聞くっていう……」
『ブツッツ』
切られた。
「ああっ!! 美雪さんっ! 待った! 待った!」
ようやく用件を思い出し再度ナースコール。
『もう、横島君用も無いのにナースコー・・・』
「違うんすよっ! 俺の隣のベッドのヤツが目、覚ましたんすよ!」
『何ですって!? わかったわ、先生!先生!』
慌しく医者が来て検査を終えた頃、一人の男が見舞いに来た。
「こんにちは横島君、それに君が士郎君だね」
そうフレンドリーに挨拶する男
「あ、ども」
「うん、率直に聞くけど。孤児院に預けられるのと、始めて会ったおじさんに引き取られるの、君たちはどっちがいいかな?」
「「へ?」」
二人はハモった。
横島は
(どちらにせよ行く当てもないし、この世界の足がかりは必要だしな)
士郎は
(孤児院とどっちも知らないことに変わらないし)
「いいっすよ」
「僕も」
どちらもYES
その答えに男はにっこり笑って
「そうか、良かった。なら早く身支度を済ませよう。新しい家に、一日でも早くなれなくっちゃいけないからね」
そう言って慌てて荷物をまとめだした。
「おっと、大切な事を言い忘れた。うちに来る前に、一つだけ教えなくちゃいけない事がある。」
そうして気軽に
「初めに言っておくとね、僕は魔法使いなのだ。」
本気でそんな事を言った。
「へえ」
「うわ、爺さんすごいな」
と二人はそう返事した。
「一ついいか?」
横島がたずねる。
「うん?なにかな?」
「おっさんの名前は?」
「ああ、言い忘れていたね、僕の名前は衛宮切嗣というんだ」
こうして、横島と士郎は衛宮切嗣の息子となった。
横島忠夫と衛宮士郎という兄弟として・・・・・・
あとがき
ええ修正第二段投稿いたしました。
自分の未熟さをひしひしと痛感してます。
脊髄反射で書いていたようなものとかわらないのですがw
以下レス返しです。
>">ケルベロスさま
ありがとうございます。
異世界移動のプロセスが曖昧すぎるなと思い、キーやん、サっちゃんそしてゼル爺さんを登場させてみました。
>">YATさま
今回は自分が旧作で感じた矛盾点を克服して行く事を目標に頑張っていきたいです。
>">草薙さま
早速の突っ込みありがとうございます。
自分のなかでゼル爺さんは結構お茶目だと感じたため、この作品ではチラリと覗いたGS世界で横島を見つけたために聖杯戦争でどんな事をするのか興味を持ったためと思ってください。
ぶっちゃけキーやん、サッちゃんと同じように面白そうだからというのが理由なんですけどね
この作品では基本に、椎名先生の作風を参考にさせていただきたいと思っています。
シリアスな場面でも笑いを忘れない、そんな作品を目指したいです。
それでは次回をお楽しみに。