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「とある和樹の恋 第一話(まぶらほ)」

殻葉面 (2005-10-06 18:58)

 私立の名門・葵学園高等部二年生の式森和樹は、周囲からのんびりした人物だと認識されている。
 朝寝坊の常習、休日の昼寝癖等等がそれを裏付けているわけであり、事実彼はのんびりした少年なのだが、『やる』と決めたことには全力で力を注ぐという熱い面をも併せ持っているということを知る者は少ない。もっとも、それを知ってる者であっても、何時彼が熱くなるのか予想を立てるのは困難なのだが。

 で、突然だが本題に入る。

 そんな少年・式森和樹が恋をしたのだ。


とある和樹の恋 第一話
  By 殻葉面


「付き合ってくれませんか………」

 その言葉はとても唐突であり、和樹らしくやや弱気な口調ではあったがその表情は真剣だった。場所は葵学園近くの住宅街。前を歩いていた女性に、和樹はいきなりそう言ったのである。

「和樹っ!?」
「なっ、式森!?」
「にゃぁぁ〜?」
「和樹さん!?」

 おおっぴらかつあからさまに和樹を狙う少女3人(+α)が、彼のいきなりの行動に驚いて叫び、硬直する。

「「「「「嘘ぉっ!!?(×40)」」」」」

 いつものようにどこからともなく湧いて出た、和樹のクラスメ−ト2−Bクラスの面々が驚いて絶叫する。

「「!?」」

 和樹らからやや離れた位置の建物の陰で、仄かに硝煙の匂いがするコ−トを着た金髪の外人女性と、メイド服を身に纏った銀髪の外人女性が身を堅くする。

「ふあ〜あ、あぁ」

 安アパ−トのゴミにまみれた自室で、伊庭かおりがのんびりと欠伸した。その手にはPS2のコントロ−ラ−が握られている。スト−リ−に関わる気ナッシング。

「式森くんに春が来た、か?」
「くすくす」

 保健室に棲むマッド兄妹が微笑(と書いて妖笑と読む)する。彼ら二人の耳には地味な機械。盗聴は犯罪だが、いうだけ無駄というものだろう。

「式森くん………」

 どこか遠くの町で、山なんとかいう少女がポツリと呟いた。が、無論その声が和樹に伝わるはずもなく、今日も彼女は等身大和樹抱き枕に泣きつくのであった。

「………………む?」

 和樹に言われて振り向いた女性は、年齢は和樹とそう変わらないように見えた。艶のある真っ黒な髪にバンダナを巻き、左右の腰、そして背中にそれぞれ竹刀を二本ずつ、つまり合計六本も差している。和樹を見つめ返すその瞳は厳しく、そして鋭利だった。そう、ちょうど凛あたりの背丈を和樹と同程度まで伸ばし、その物腰をより攻撃的なものにすれば彼女のようになるかもしれない。

「今私に何か言ったのはお前か………」

 そう和樹に尋ねるその眼光は、キシャ−覚醒時の夕菜にも劣らない。だが、それを見つめ返す和樹の静かな視線も負けてはいなかった。

「うん。付き合ってって言ったんだ」
「付き合えだと?」

 ふと、女性の目が細められる。和樹の姿から何かを得ようとするかのように。

「ひょっとして、鬼薔薇高校からの刺客か? いや、その制服、葵学園か」

 どうも『付き合え』という言葉の意味を誤解しているらしい。

「ふん。剣、すなわち闘争の道を極めんとする者が他人の刃を借りるとはな」
「いや、そういう意味じゃなくて」

 一瞬躊躇し、そしてやや赤面しながら言葉を紡ぐ。

「その、よかったらどこかでお茶でもしませんかって、そういう意味で」
「何?」
「いや、あの、ごめん、いきなりこんなこと言っても迷惑だよね?」
「ま、待て。するとつまりなんだ」

 女性がどもった。

「つまりアレか、これはナンパというヤツか?」
「う……うん。そうなる、の……かな?」

 疑問系。もうお互い真っ赤っか。既に周囲は置いてきぼりである。

「キシャ−−−−−ッッ!!!!」

 とりあえず、夕菜が暴発した。


 とにもかくにも、これが和樹と彼女……蛇如来斬斬子との出会いであった。


後書き


 書いてしまった……お初にお目にかかります、殻葉面です。お目汚しな作品ですが、受け入れて下さるとありがたいです。

 蛇如来さん。まぶらほのとある話のとある会話の中で、名前とその非常識な戦闘スキルのみ登場した女性ですが…………彼女、小説のほうで登場したりしてませんよね? 本誌を買う習慣がないからちょっと不安。もし出てなくても、これから出ることになったら困るなあ。まあいいけど。

 できたら感想なんか書き込んでもらえると嬉しいです。それでは。

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