殺人請け負います 職業・殺し屋
これ以後、殺人を扱っております、お嫌いな方は避ける事をお勧めします。
因みにこれは短編です、衝動的な電波で書き上げております。
連載などは全く考えておりません。
貴方は幾らで人を殺せますか―answer 幾らでも。
リスクを考慮し殺人を引き受けますか―answer 殺人にリスクは付き物。
貴方は何の為に殺人を犯しますか―answer 私の中の正義の為。
では、貴方にとっての正義とは―answer 私が赦せない全て。
唐突ですが、一つつまらないお話などをさせていただきたいと思います。
本当につまらない話、なんですけどね、時間潰しの耳汚しとでも聞いてくれませんか。
構いませんか。
それでじゃあお話させてもらいます。
何年か前に何処かで聞いたのか読んだのか、それともネットで見たのかも覚えていないんですけどね、とても嫌な話なんですよ。
退屈凌ぎに話をするならこういう話はすべきじゃないんでしょうけど。
まぁ、退屈ですし。
どうです、嫌な話なんですけど、聞きますか。
ふふっ、こんな話を偶々隣り合わせた私が話すのも変ですけど、少し馴れ馴れしいですか。
構いませんか、すいません、変な話を言い出してしまって。
変な女ですね私って。
そうでもないですか、おじさん、変な女の話に付き合ってくれるなんていい人なんですね。
では。
嫌な話、酷い話ですね。
ああ、思い出しました、私の家の近所で起こった話でした、だから良く覚えていたんですよ、当時はニュースでも取り上げられていたと思います。
人が何人も殺されているのが見つかったんですよ。
全員が全員女性で、みんな殺されていたんです、みんな若い女性ばかりで。
近所の廃屋です、少し町外れの、余り人が寄り付きそうに無い、何か良くないことが起こりそうな場所、そんな場所って探せば結構あるもので、いや探さなくてもあるものかもしれませんけど。
最近じゃ、何人か殺されているのが見つかっても大した事無いんでしょうけど。
テレビでも三日続けば長いほうな気がします、それだけ世間が物騒になっているってことでしょうか、人が多く死ぬ事件でもそんなに騒がれないっていうのは。
女の私としては怖い話です。
でも、私の場合近所でしたから、それなりに耳に入ってきたんです。
そういう話に詳しい知り合いがいたもので。
え、誰かって。
近所の交番の人です、知り合いでして、その時の事件のことは犯人が捕まっていないって事もあって私のことを心配してくれてそれなりに話してくれました。
いい人ですよ、いまどきいない感じの町のお巡りさんって感じで。
ああ、話が逸れましたね。
何年か前ですし、まだ猟奇殺人っていうんですか、そういうのもそれほど今ほど多くなかったような、だからそれなりに長い間報道されていました。
殺人といっても結構な数の大量殺人でしたし、記憶にこびり付く様な変な事件だったみたいですから、長く報道されるのは当たり前かもしれません。
本当に変ですよ、と言っても殺されているのが主に中学生、高校生、大学生ぐらいの可愛い女の子だったってことぐらいで、そう言えば小学生もいたって話も聞きました。
男性は一人もいなかったって話です、でも変なのは、いや酷いのわって言うんでしょうか。
殺されていた女性、全員が全員強姦されていたらしいんです。
小学生から、大学生まで全員、強姦された上で殺されたらしいんですよ、それこそ小学生なんて初潮の始まっていない子供だって犯されて、前から後ろまで犯されていたらしいです、それも多分酷い扱いで、それはそれは酷い扱いで。
警官が発見した時は、その、全裸で殺されている死体を見て嘔吐したらしいですよ。
絞殺されていた女性が全裸で転がっている、確かにおぞましいでしょうが、その死体の状態、酷い仕打ちを見て若い警官は吐いちゃったんだそうです、年を取った方も目を背けたそうですね、死体になれたベテランの刑事さんがです。
本当に酷かったんでしょうね、刑事さんともなれば司法解剖に立ち会うってこともあるそうじゃないですか、それが女性の私が言うのもなんですが、若い女性の死体ぐらいでそこまで気分を悪くするなんてって。
まぁ、当然かもしれません、血に塗れて、秘所と肛門からは血が流れ出して、体中甚振られていた傷跡、マトモな神経をしていたら早々正気を保てるものではないでしょうね。
それが大量です、悪夢の具現でしょう、気分も悪くなるでしょうし、見たくも無いでしょう。
そんな事件ですから、それはもう被害者の数から凄い者で、遺族の数にいたるやその数倍ですよ、近所の人の娘さん中学生だったんですけど、そのお母さんなんて見ていられないほどで。
それでも犯人はいまだに捕まっていないんですよ。
いや、怪しい人はいたらしいんですよ、でも逮捕できなかったらしくて。
警察のほうでも臍を噛んでいたらしいですよ、被害者の一人には警察署長の娘さんもいたらしくて、それはもう必死で捜査していたらしいんですけど。
犯人も殆ど特定できていたんですよ。
だって被害者、一つの共通点がありまして。
誰も彼も、同じ大学付属の学校の生徒さんだったんです。
それはもう小学校から大学まで、どれも容姿の優れた娘さん。
調べれば調べるほどに怪しい人間が浮かび上がってきていたのに、逮捕できなかったんですよ、警察は。
何でって、その犯人、ここまで言えば判るでしょうけど、その学校の関係者ですよ。
学校自体も有名なところでそこの大学から官僚になる人達や政治家になる人、それこそ人が羨むような地位についているような人がたくさんいて、その手の不祥事が学校関係者だとバレたら面目丸つぶれですよ。
犯人もそれなりに親とかがそういう世界に口が聞く人だったみたいですけど。
それで警察に逮捕させないような、迷宮入りをさせろなんて命令が下ったってわけですよ。
これは警察上層部もそれなりに嫌だったらしいですけどね。
あれほどの大事件、犯人が逮捕できませんでしたなんて世間に公表したら無能の烙印を押されるのは当の警察ですからね、それでも世の中便利なものであるものを大量に積んだら快く警察の上の方も納得してしまったと言うわけです。
それで万事目出度し犯人が捕まることなく、現在では殆ど捜査員も置かれていない事件になっています、年月がたてば時効となり本当に目出度し。
でも、それって被害者や遺族や真剣に捜査した警察官の人達にしてみれば。
娘を殺された署長さんなんて娘さんが小学生だったのに、上のほうから圧力がかかって、殆ど拉致のように警察の方に拘禁されたらしいですよ。
いったい幾ら積んだのやら。
本当に酷い話ですよね。
え、どうしてこんな話を知っているかって、大体なんでそんな不愉快な話をって。
まぁ、暇つぶしって最初に言ったと思うんですけど。
何で震えているんです。
まぁ、震えますかね。
件の連続強姦殺人犯さん、学校の理事さんですよね、お若いのに。
お父上は、与党の元政調会長、親戚にも検察庁長官ですか、たいそうな顔ぶれです。
で、暇つぶしもそろそろ終わりですね。
お約束の時間なんですよ、お仕事の時間です。
あら、何が言いたいんです言葉になっていませんよ。
それともそろそろ声が出せないのかしら。
あ、私のお仕事ですか。
普段は警官なんてものをやっています、貴方の事件では所轄がちょっと離れていたんで、当時はお話だけしか知らなかったんですけど。
で、今は、殺し屋です。
貴方、いろいろな方から恨まれていますよね、その犯罪の遺族とか、他にも色々強姦してきたそうじゃないですか、それはもう数え切れないくらい、そして数え切れないくらい殺してる。
だから、殺してくれって頼まれたんですよ。
今回はその酷い話の遺族さんで、当の署長さんですね、小学生の娘さんをレイプされて殺されて、犯人を見つけながら逮捕できなかった。
まぁ、殺したいほど憎んでいますけど、憎んでいたんでしょうけど、署長さん、ご家族がいらっしゃってまだ三人もお子さんがいるらしいです。
そうなると他の子供たちのためにも殺せませんよね、殺したら、幾ら貴方でも罪に問われる、そうなると残った家族がね。
だから私が殺すんですよ。
空気が変わる、先程まで優しげに、酷い話と言いながら世間話をするように話していた女の雰囲気が激変、激流のように発する気配が変わり、爆発のように殺意が溢れる。
女の隣で座っていた男は表情を蒼褪めさせ、カタカタと震えている。
「なぁ、あんたが殺した女。てめぇが殺した女、何人だ。ん」
口調は変わったがその言葉は潜められたもの隣にいる男が何とか聞こえる程度。
男は返答しない。
「ああん。本格的に効いてきやがったか。声も何もでねぇってかよ。それなら答えてやんが六十三人だ。あたしに依頼した署長さんの調べではよぉ。せつねぇよなぁ、調べ上げても逮捕なんてできねぇんだ。まぁ、それでもその数そのやり方、その存在それを調べ上げたことでこのあたしが落札したんだから、徒労も報われたって感じか。かはは、くっだんねーけどよ」
「そうそう。偉いパパを持ったボクゥ。あんたが殺される値段教えてやろうか。最初は三千万、まぁ人一人殺すってんなら高い部類だろうぜ。一般人が出せる金額にしちゃ破格って値だよ。知ってっか。五千万の資産を持ってる国民なんて三パーセントいねえんだ。で、だ、相当恨まれてるよ手前。内の組織、殺しの依頼を引き受ける権利をかけてオークションをやんのよ。俺ら殺したい奴等の巣窟だからよ。どんどん安値を指して最安値をつけた奴のもん。なかなか酔狂で愉快なシステムだろ。殺しってエクスタシーを得るためにどんどん安値をつけてくんだよ」
一拍置いて、女は嬉しいのか楽しいのか快感を感じているのか、子憎たらしい口調で。
それでも言葉は極々限定、辺りの誰も彼女の言葉に関心を向けない。
男にだけ向けられた言葉。
「お前の価格は。あたしが落札したんだけどよ、四十七万六千百九十円。中々の安い値がついちまったよなぁ。人一人、殺す値段が五十万もみたねぇって。それっぽっち、あたしが歌舞伎町で股開いてりゃ二週間で稼げるっつの。手前なら小銭程度か、特殊なプレイ頼める店に行っちまえば一回で終わりの値段だよなぁ。あん、何だ、その驚いたような顔はよ。自分の値段が不服か、ボーイ」
「言いたい事あるんなら聞いてやらんこともねぇけど。て、無理か、そろそろ毒が回ってきて体中がいてぇだろ。声も出ず、動きも出来ない。安心しろよ、これから大阪まで二時間はあんよ。その間じっくり苦しめよ。なーに、周りからはねむっているよーにしかみえねぇって。だから誰の騒ぎにもなんねぇ。静かに苦しめ。安心して苦しめ。あたしは大阪で降りて東京とんぼ返りだけどよ。あんた福岡まで苦しみの旅楽しみなよ」
それから二時間、女はまるで楽しむように愛でるように男を眺めて、大阪で下車、その時男はまるで眠るような表情で、それでいて肉体精神的には迫り来る死の恐怖にあがなえず、崩壊しかけの自我の中感じていたのは、まるで少しずつ水が溜められる水瓶に放置されるような、そんな苦痛、意識は明瞭、痛覚も明瞭、それでも体は指一本とて動かない、助けも呼べず犯されるように毒が回る、心を体を毒で犯される。
男が死体となって発見されたのは大阪岡山間の車掌の乗車券の確認の際に発見された。
あん、何であたしが殺しをやるかってか。
だって赦せないじゃん、世の中馬鹿ばっかりだけどよ、頑張ってん人って結構いるのな。
家族愛しんでるお父さん、お母さん、息子、娘、色々いるわけさね。
それぶっ壊されてさ、赦せるってか、赦せるってんなら、あんた人間失格、愛している家族壊されて平気ってやつはそりゃ生物失格だろ、壊したやつと同列。
だから殺してやんの、ぶっ壊したやつ、ぶっ壊して平気な奴、そんな奴、そんな生物失格いらねえよ、そいつ殺しゃ、あたしのエゴイスティックな正義心は満足、被害者も低価格でリーズナブルに復讐できて万々歳。
いい事尽くめで、皆々様様これ幸いってとこだろーが。
ま、何延べよーと、あたしはあたしのエクスタシーのためにやってんのよ、悪人が、あたしの毒で犯されてるとこ、特に女犯して平気なやつに言葉でいってやんのよ、自分が死ぬカウントダウン、自分の命の値段、いい顔すんぜぇ。
神経毒だから表情なんて眠ってるよ―だけんよ、目がな、なんで自分がって顔すんの。
そんなこともわかんねぇ馬鹿殺すのは、傑作だっつーの。
ま、正義なんて戯言つかってんけどよ、あたしの正義、人を殺すことで成り立つとっても卑しい心根の殺し屋、いつかあたしが誰かの正義で殺されんのかね。
これでも家族いるやつも殺してっから、ま、そのときゃ殺されてやんよ。