此処は魔法の力によって作り出された箱庭。真祖の吸血鬼で大魔術師であるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルによって造られた、異空間。
この空間にてこれより、二人の幼き天才魔法使いの戦いが始まろうとしていた……。
二人の天才の名は――
ネギ・スプリングフィールド。
高町なのは
これはその二人の戦闘の記録の一幕である。
「魔法合戦 パート1」
この異空間に唯一つ存在する人工的な建物。その上空にて二人の魔法使いの戦いは続いていた。
「ディバイン・シューートゥ!」
対魔術防護能力の力も備えている白き戦闘服に身を纏い、高町なのはは"Divine shooter"という名の中距離射撃魔法を解き放つ。
その数、5つ。
その標的たるネギ・スプリングフィールドは、これまでと同じく魔法の射手(サギタ・マギカ)にて迎撃しようとする。
しかし。
「それじゃあ、間に合わんよ。ボーヤ」
地上にて観戦しているネギの師匠、エヴァンジェリンが口を開いた。
その通りだった。始動キーを口にして更に呪文の詠唱をしてから呪文を発動するネギに対して、なのはの普通の攻撃呪文はネギが始動キーを口にするのと同じくらいで発動し、防御呪文にいたっては呪文を口にせず、手をかざすだけで呪文が発動する。
全くもって反則的な呪文の発動スピードだとネギは思った。
こちらは、空中ゆえに杖に乗っているので、移動に制限があるが、あちらはどんな高等呪文か靴に魔法によって羽が生え、超高速な移動を実現している。
考えられる可能性は幾つかある。一つはあの靴がそういう能力を持つアーティファクトという可能性。他にも色々な可能性があるが、今はそんなことを考えている場合ではない。
かろうじて"風楯(デフレクシオ)"で防御し、牽制に"魔法の射手(サギタ・マギカ)"を放ちつつ、一定の距離をとる。離れすぎると大技を食らうし、接近戦は機動力のない僕が不利。
勝敗は低い。だけど諦めたりしない。勝つ要素は、
――まだ、存在する。
――はずだ。
「あのままじゃあ、ボーヤは負けるな」
私、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは現状の二人の戦いを見て、そう判断した。少ないとも地上戦なら分が有っただろうに、あちらの魔法使いが自分よりも年下で非力そうな少女だったゆえに、ボーヤはあの少女の出した条件を飲んでしまった。
曰く。
「戦いは空中のみ。海に落ちたら負け」
この条件ではボーヤが最近学んでいた中国拳法が全く使用できない事を意味していた。あーゆうのは、魔法と違って地面を蹴ってこそ威力を発揮するもの。踏み込むものが全くなく、かつ空中戦にあまり慣れていないボーヤに比べて、あっちの嬢ちゃんは明らかに闘い慣れている。
この戦闘は完全にあっちの嬢ちゃんに有利だった。ボーヤが捕まるのも時間の問題だろうと思う。
それよりも。
私はなのはと名乗った嬢ちゃんが持つ、魔法の杖に興味があった。
確かに"立派な魔法使い(マギステル・マギ)"ならあれぐらいの魔法、無詠唱で唱える事はできるかもしれないが、あの嬢ちゃんではその可能性は低いといわざるをえない。
それよりもあの嬢ちゃんが持っている杖に秘密があると考えた方が普通だ。
あの杖、玩具屋で売ってそうな安っぽい杖。しかし、そう見えるのは見掛けだけ。中規模程度の魔法を無詠唱で発動する事ができるのであれば。更に嬢ちゃんが危険な時、嬢ちゃんは念じるだけで、防御魔法を発動できた。これを考えると、もしかしたらあの杖にはある程度の自我が存在するかもしれない。
これは面白い。エヴァンジェリンは口を歪ませた。これほど面白いものは見つけたのは久しぶりだ。
戦闘は収束しつつあった。やはり慣れない空中戦の事もあってかボーヤの負けのようだ。
「まあ、一度思いっきり負けてみるのも悪くないさ、ボーヤ」
かつて、自分がサウザンドマスターに敗れたように。そういう負けは自身の成長の大いなる糧となるはずだから。
そうして数世紀の間を生き続けてきた吸血鬼は笑った。
闘いは、ネギの魔法で半裸にされた、なのはの怒りの"Divine buster"の高出力版によって、ネギは海に叩き落され、なのはの勝ちで幕を閉じた。
「まったく、今日の修行はいつもより厳しくするか――」
その光景を見たエヴァンジェリンの笑った顔は、今までで一番綺麗な笑みだった――。
――日はまだ沈まない。
完?
後書きmagic-41
はっきり言って書き殴りです。ただ単にこの二人を戦わせたかっただけ。しかも全然戦闘シーンなし。後半、エヴァの独り言になってるし。
ここが言い、悪いといってもらえると、今後の励みになります。
これを見て、両作品に興味を持ってくれると嬉しいです。これらの二次創作は数が少ないんですよ……。
では。