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「鬼王御守奮闘記(クラフトソード物語)」

ばななん王子 (2005-05-09 09:06/2005-05-09 15:21)


「という事なんです。アマリエさま」

「あらあら。
 サッパリ解からなかったわラショウさん」


オレの話はスッパリとアマリエさまに切られてしまった。


むぅ・・・・・・。


オレにしては長々と解かりやすく語ったつもりだったんだが、如何せんオレは口下手だ。
罵りあったり殴りあうのが得意なやや粗暴なオレは、説明と言う行為が苦手だったりする。

流石のアマリエさまでもムリだったのかもしれんな。

当然ながらオレの話・・・・・・と言うか愚痴の大半は、女としても半人前で未熟、
どこか抜けてて眼を離すとどんなポカをかましかねないドアホウな小娘・・・・・・・・・

何が悲しゅうてか、オレの御主人様である史上最年少で『黒鉄の鍛聖』(見習い)の位になりやがったプラティ話で占められていたりする。

“前”の主人たるシンテツと同じ白銀の髪。
それくらいしか自慢するトコ無いんじゃねぇか? と思っちまう、真っ直ぐモノを見る目の小娘だ。


まぁ、あいつの悪口言っていいのは世界でオレとアマリエさまだけだ。

オレとアマリエさま以外のヤツがほざきやがったらブチ殺す。

アイツを悪く言う権利は他の奴には無いからな。うん。


とと・・・アマリエさまにご説明している最中だったな。

どうもアマリエさまの前に来ると自分を崩しちまうな・・・・・・

自分の良く知る“アイツ”に良く似てるのがいけないのだろうか?
まぁ、アイツは巫女であったし、生まれも違う。
それでも、妙に安心させられる雰囲気と、何を考えているか良く解からない空気が二人を重ねさせるのかもしれんな。

それに、この方がいらっしゃらないとアホでトンマであるが現・主人のプラティに引っ張られなかった訳であるし、物騒ではあったが退屈であったあのシルターンの領で不貞寝してるよかマシだ。


ま、確かに退屈ではないな・・・・・・・・・


アンポンタンで抜け作とは言っても、“御主人さま”とやらであるプラティといると退屈はしない。

中身が解かっているのに脅かされてしまう妙なビックリ箱と一緒にいるようなものだ。

ヤッパリな・・・・・・とニヤリとさせられてしまうが嫌ではないし、次に何をやらすか大体解かっているのに退屈しない。

それに今はクソ邪魔なブロンの眼の無いワイスタァン第二階層のサクロの家をもらって住んでいる。

ハッキリ言って気楽だからのんびりとさせてもらっているという訳だ。


あぁ? オレか?

見て解からねぇのか?

しょうがねぇ奴だな・・・・・・・・・

いいか? よく聞けよ?

オレ様の名はラショウ。

鬼妖界シルターンのゴケイ山に鬼の王在りと言われた男、ラショウさまだ!

・・・・・・・・・んで、今は黒鉄小娘専用の護衛獣。

そして、危なっかしいそのプラティの保護者だ。


ヤレヤレだぜ・・・・・・・・・


────────────────────────────────────────

 ──鬼王御守奮闘記──
SUMMON NIGHT−CRAFT SWORD STORY−After
      SIDE −B−

─────────────────────────────────


「このクソガキ!! 待ちやがれ!!」

濁声を蹴っ飛ばした毒声を吐いて呼び止める男二人。


ここ剣の都ワイスタァンは武器を求める人間でいつもごったがえす。
傭兵から召喚師・・・・・・果ては召喚獣までが武器を求めに来るからだ。


この街には下手な戦士の能力を凌駕する鍛冶師達の頂点、“鍛聖”と呼ばれる存在がいた。

武器を産出する代わりに軍事力を持たない。
その代わりに鍛冶師達が街を守る為に戦う。

だから鍛冶師は並の戦士など足元にも及ばない能力を持っている・・・・・・いや、持たねばならなかった。


現在はかなり数を減らしたものの、七人の鍛聖が戦いに入るだけで軍事バランスが崩れてしまうというのだからその強さの程も知れるというもの。

現に、『黒金の鍛聖を』選び出す大会の折、何故か軍事帝国デグレアを軍艦で攻めて来たのであるが、病気を理由に引退していた『翡翠の鍛聖』ルマリが殆ど一人で鎮圧してしまったぐらいなのだ。

魔迅槍のルマリという二つ名は伊達ではないという事だろう。


そして今、この街には若き鍛聖が誕生していた。


その名はプラティ。

前『黒鉄の鍛聖』シンテツの娘にして、史上最年少の鍛聖である。
尤も、まだ見習い中であり、正式には鍛聖となっていない。

無論、街の皆は鍛聖として認めているのであるが・・・・・・・・・。


「待てっつってるだろがっ!!!!!」


街の人間でない男には知る由もなかった。

「・・・・・・あれ? 私の事?」

とやっと振り返った少女。


腰には大きなホルダーを下げ、何本もの武器が入っている。

美しい装飾を施された大振りな剣や、棘の付いた火の気配がする斧等があり、まさかこの少女が鍛えたものであるとは誰も思うまい。


だが、“この町の人間”であれば誰でも知っている。


この年齢がやっと14にとどいた少女こそが新たなる鍛聖、
黒鉄の鍛聖、プラティその人なのである。


「ああん? 何言ってんだ? ンなワケねーだろ」


そう言って彼女の肩をこづく大きな影。


大剣を片手に持った立派な体躯。
真紅の長めの髪を流した鎧の男―――

プラティに付き従い彼女を守る為にこの世界に呼び出された鬼妖界シルターンから呼び出された護衛獣──

鬼の王であり、自称プラティの保護者。
名を、ラショウと言う。


「そうなの?」

「ばーか。ったり前だろうが」


別にプラティの事を最優先にしている訳ではなく、彼女の認識の浅さと間違いを指摘しているだけで、特に心配している訳ではない・・・・・・筈だ。

尤も、彼女の悪口を言って良いのは、全世界ではプラティの母親であるアマリエと自分だけと豪語しているのであるから怒っていない訳ではないのも事実であるが・・・・・・


「テメェは小娘とは言っても、“一応”は女だからな。
 少なくとも“ガキ”と言っていいのは精神的にも大人ってこった。どう考えてもアイツらが大人とは思えねぇ」

「でも、年齢的に言えば私はまだまだ子供だよ?」

「アホ。ケノンはあの年で女房も子もいるだろが?」


ケノンというのはプラティのいた銀の匠合とは別の金の匠合の鍛冶師で、プラティが試合で二人目に戦った相手である。
鍛冶師の技術より戦士としての能力が高く、まだナイフ位しかまともに作れなかった駆け出しのプラティは必死になって秘伝を覚え、何とか作ったアイアンセイバーで戦って苦労したものである。

その彼も実は妻子持ちである。

尤も、そのくらいの年齢で結婚するのはさして珍しい話でもないが・・・・・・


「それはそうだけどさぁ・・・・・・」

「だったら女の方も磨けばどうだ? まぁ、ムリだとは思うが・・・・・・」


ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるラショウ。


「う〜〜〜〜・・・ラショウの意地悪・・・・・・」


ぷくっと膨れるプラティ。

本気で馬鹿にされている訳ではないのは解かっているし、何時ものようにからかわれているのも理解している。

それでも売り言葉に買い言葉で反応してしまうのは性分であるからどうしようもない。


「そんなトコがガキだってんだよ」

「ぶ〜〜〜〜〜」

「フン・・・・・・まるで子豚だな」

「ヒドイ〜〜〜っ!! 何よ!! そこまで言うんだったらラショウがオンナの磨き方教えてよ!!」

「なっ??!! オ、オレがかぁっ??!!」

「他のどこにラショウって人がいるのよ!!」


聞いてるだけなら単なる痴話喧嘩であり、町の住人からすれば見慣れたものであり、何時もの事だ。

妙に軽いこの街の老人によっては『今日こそあのラショウの年貢の納め時に20b(バーム)じゃっ!』『いやいや、今日も逃げ切るに25b!』と賭けの対象になってたりもする。


だが、“よそ者”がンな事を知る由も無い。


「っざけんなボケがぁっ!!!
 オレ達をほったらかしにするんじゃねぇっ!!!」


何気にイジケ気味の怒鳴り声であるが、プラティとラショウを驚かせるに十分だ。

尤も、プラティにしてみれば『今日こそ本音を聞きたかったのに・・・・・・このバカぁ!!(`щ´)』であろうが、そんな都合は知った事ではないのである。

「テメェみたいなガキが鍛冶師気取りってのがムカつくんだよ!!
 このオレが本当の力ってのを見せてやるからありがたいと思うんだな!!!」


「「はぁ?」」


イキナリの展開に訳が解からない二人。
そりゃ当然だろう。

ハッキリいって言いがかり以下なのだ。

だが、この男らが何をしようとしていかは何となく理解できた。

要は見た目弱っちい小娘のプラティと戦って、“鍛聖に勝った”という名声を得ようとしているのである。


この街の人間であればンな戯けた事は絶対にしない。

まぁ、腕試しだと言って勝負を申し込む輩はいないでもないが、それだってプラティが強い事を知っているからこそ申し込むのである。

当然ながら見た目が弱っちいだけでプラティのその身体はイヤって程鍛えられているのだ。


特に剣の使い方に関しても、現『紅玉の鍛聖』コウレンのお墨付きだ。


「プラティは私の想像より遥かに強くなっているわ・・・・・・そういう意味では嬉しい誤算だけどね・・・・・・」

「そ、そんな・・・・・・私はまだまだだよぉ・・・・・・
 まだまだ勉強も足りないし・・・・・・目標のパパの背中だってまだ見えもしないんだから・・・・・・」

「そうね・・・・・・だけど、いつかは見えるわ・・・・・・そのままの貴女でいれば・・・・・・ね?」

「もぅ終わったぁ? ちょっとプラティ、こっちも手伝ってよ!!」

「(クスクス・・・)ほら、我が妹君が呼んでるわよ」


何気にプラティは友人知人を作るのが上手い。

父親のシンテツ同様、ひたむきで真面目な態度で接する為、自然と人が寄って来るのだ。

コウレン姉妹にしても、プラティのお陰で一時は壊れかけていた仲が修復されているし、彼女の来訪を喜ばない人間は、少なくともこの街にはいない(一部例外在り)。

ともあれ、剣の使い手たる姉妹から見ても彼女の剣の腕は大したものなのだ。


この町で“大したもの”という事は、世間に出れば途轍もないレベルという事である。

ハッキリ言って、実力を知らないとはいえ子供相手にムキになっている時点で男らの強さも知れるという物。

プラティの相手などちゃんちゃらおかしい戯言である。


「どうした小娘!! その護衛獣に庇ってもらえなきゃ何にも出来ないってか?!」

「怖いんなら逃げても良いんだぜ?! オレ達は大人だから寛大なんだからよぉ」


殊更煽っているのはプラティがキレて飛び掛ってくるのを待っているからであるが、彼女は眉を顰めるだけだった。

男らの持っている武器は鉄斬刀と雷のエレメントが着いているグラディスパークだ。

そして自分の持っている“マトモ”な武器は・・・・・・

使い込んだセイントブレードと、火のエレメントを用いて打ち鍛えた幻魔の斧・・・・・・

ハッキリ言って、あの二人に使うと殺しかねない代物である。
さりとて“アレ”を使うのはちょっとナニであるし・・・・・・・・・どうしよう?

等と男達の事を心配していると、横に立つ(とゆーか、仁王立ちしている)ラショウが、プラティが助言を求めて視線を向ける前に口を開いてこう言った。


「とっととぶっ殺そう凸(―щ―メ)」

「え、ええぇ〜〜〜っ??!!」


ごっつ端的に男二人を見下して屠る事を進める同居人兼パートナー。

その表情はいつもの藪睨みに見えなくも無いが、彼を良く知るプラティから見ると男達に向けている眼は間違いなく殺気を含んでいた。


「こんなクソくだらない事で鍛聖の仕事ってヤツを邪魔したってんだろ?
 街そのものに関する執務を止めたって行為は賠死に値する。
 とっととぶっ殺して、とっとと仕事に戻るのは当然だろうが?」

「あ、あのねぇ・・・・・・“仮にも”相手はこの町の武器を持ってるんだよ? そこそこ強いと思うんだけど・・・・・・」

「バカかお前?
 ハッキリ言ってやるが、あの二人の力量はテメェが最初に戦った金の匠合の・・・・・・なんてったかな・・・・・・?」

「最初・・・・・・? 鍛聖の試験の時のだったら・・・・・・チェベスさんの事?」

「そうそれだ! そのチェベス程度だ。ヘタするとあいつ以下だぜ?
 おめぇが負けようと努力しねぇかぎり負けたり出来ねぇよ」

「さり気無くボロカスに言ってない?」

「事実だ(キッパリ)」


チェベス・・・・・・というのはやはり金の匠合の鍛冶師の一人である。
大振りの無骨な剣を作り出す事からも解かる通り、結構力押しで不器用で小回りが利かない。

プラティが最初に鍛え上げたナイフで勝てたりしたのであるからその力量も知れる。

まぁ、ナイフという素早く攻撃できる得物を持っている利もあった事は間違いないのであるが・・・・・・・・・


訳が解からずとも、男らはバカにされている事は何となく理解できた。


「ふ・・・・・・ざけるなぁっっ!!!
 オレ達を馬鹿にしやがって!!!
 テメェっ!! 召喚獣の分際で生意気だぞ!!!


鞘からシュ・・・っと剣を抜いて喚き倒す男。

状況を面白そうに見守っていた町の住人達(プラティらが負ける等とは毛ほども思っていない)は、


「75点!」
「や。ありゃあ、50点だろう?」
「作ったのは金の方か?」
「ったり前でしょ? 完全に外部売り出し用の数打ちモノよ? アレは」
「だよなぁ・・・・・・ブロンの方であんなの売りに出したら半殺しだぜ?」


お気楽に言いたい放題だ。

それが余計に男らをイラつかせる。


「鬼の・・・・・・それも召喚獣の分際で人間様の話にしゃしゃり出てくるんじゃねぇっ!!
すっこんでろっ!!」


完璧に八つ当たりする男。

「ほぅ・・・・・・」と呟くラショウの額にピキっと怒りマークが浮き上がり、こーなったら自分がカタつけちゃると自分最強の攻撃魔法、フレアボルケーノの焔獄の炎で灰にしてやろうとする。

だが・・・・・・


す・・・・・・


と、そのラショウの前に手が出されて詠唱が止められた。


「ダメだよラショウ」

「プラティ?」

止めたのは自分の主人の少女だ。

無論、この少女があいつ等に同意するとはスライムの体毛程も思っていないが(つまり全然無い)、止めるという事は自分がやるという事ではないだろうか?

見習いとはいえ鍛聖となったあの日から他人との争いはできるだけ避けている彼女である。
自分から戦おうとするとは思えなかったからだ。

だけど・・・・・・


「ラショウが術なんか使う事ないよ。
 あの二人は私でたくさんだよ」


彼女は怒っていた。

そう、あの男達はラショウに八つ当たりしたのである。

童顔で子供っぽさの抜けないあどけない顔のプラティであるが、ラショウの事は大切で大事な自分の半身だと想っている。
自分の大切なパートナーの侮辱は許しておけないのである。


「・・・・・・・・・ふん。
 まぁ、やってみろや」


などと憎まれ口を利くも、どことなく照れているラショウ。

極普通にプラティに接している彼であるが、その実、誰よりも彼女の事を考えている彼だ。

シルターンの部下が今の彼を見たらどう思うだろう?
それほど彼はプラティの気配を常に追い続け、眼で追っているのだから・・・・・・


「おじさん達、後悔しない?」

「ざけるなっ!!」
「テメェみたいなガキに負ける訳がねーだろが!!」

毒を吐いて吠える男。

街の物から見れば滑稽な見世物以外の何物でもない。

「父ちゃん。何であのオッサン達ってプラティ姉ちゃんに喧嘩売ってるの?」
「そりゃあバカだからだろ?」
「プラティちゃん優しいからねぇ・・・・・・戦いは好きじゃないのに」
「ホレた男を侮辱したヤツにマジギレってか? か〜〜〜・・・・・・っ!! 見たか母ちゃん!! コレだよコレ」
「うるさいわよ、アンタ!!」
「ところで・・・何分に賭ける? オレは二人だから二分だな」
「う〜ん・・・・・・じゃあ三分。フツーに戦わねぇと思うしな」
「あ、じゃあじゃあ、アタシは二分三十秒!」

ブロンのプロポーズが成功する確率程(つまり、絶対無い)もプラティが負けるとは思っていない住民は、とっとと賭けをおっぱじめていた。
当然、プラティが勝つのにどれくらいの時間を掛けるか・・・・・・だ。

そんな皆の声が聞こえているのかいないのか、プラティはホルダーに手を突っ込み、“ソレ”を引き抜いた。

流石に男達にこれを使うのは躊躇われていたのであるが、自分のパートナーを侮辱するのなら話は別だ。


ジャキン!


彼女が持つ武器の中で一番使い込み、且つ手に馴染みきっているそれ・・・・・・


あらゆる硬度の武器を破壊してきた恐るべき超回転!

手に馴染み切っているせいか、剣より軽く感じる“ソレ”!

数多の挑戦者達にとって具現化した悪夢そのもの。


其れは・・・・・・・・・


「「ソ、ソフトクリームぅ??!!」」

「「「「「「「「「「出たっ!!!」」」」」」」」」」


上は男二人、下は町の住人の感想である。


そう“ソフトクリーム”!!

彼女が握り締めているのは冷たいお菓子でお馴染みの“見た目”「チョコレートソフトクリーム」・・・・・・型のドリルである。

だが、只の色物ドリルと侮る無かれ。
その「ドリル」は雷の属性をもって輝いているではないか。

其の名は「ビタードリル」!
何と赤鉱石、青鉱石、緑鉱石、黄鉱石を平均50づつも消費し、更に黄鉱石に至っては120もいる。
尚且つ魔鉱石まで足さねば生み出せないのだ。

ハッキリ言って見た目はアレであるが、マジな話これでも上級武器なのである。


「「ば・・・・・・バカにしやがってぇっ!!!」」


見た目が見た目であるから挑発効果もバツグンだ。
これに敗れた時の敗北感もスゴイのであるが・・・・・・


視覚的挑発にうっかり乗ってしまう男。

大上段からプラティに襲い掛かってくる。

振り上げられたグラディスパーク!

雷のエレメント付きであるからか、パリパリと電気を纏った大上段からの一撃だ。
普通であればまっぷたつである。


がつんっ


「な・・・・・・っ??!!」


当然のように軽く止められる雷の刃。

それも“チョコレートソフトクリーム”で。


弾かれた時の感触にしてもとてもじゃないが“イロモノ”とは思えない程重い。


がんっ!


今度は思いっきり殴られる男。

何とか剣で受けたものの、熊に殴られたのかと錯覚するほど途轍もなく重い一撃は男の身体を浮かせて背後に飛ばしてしまう。

「ぐぅ・・・っ」

だがそれで終わらせてはもらえない。

ギュィイイイイイイ・・・・・・・・・・・・・・・・ン
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガカ!!

その強力なモーターが生み出す超回転力によるスピン攻撃が男を襲う。
間隙を狙おうにも、その隙が異様に小さくて防御を解けない。

信じ難い事であるが、男の持つグラディスパークの刃が削られていっている。

それも、こんな冗談みたいなドリルで!!

このままでは持たないっ!!

「畜生っ!!」

プラティの背後から無骨な鉄斬刀で切りかかってくる。

だが、余りと言えば余りにも遅い。


ス・・・・・・


男の眼前から掻き消されるプラティの姿。


まさかこの少女が“あの”ルマリやコウレンに教えを請い、修業をつけてもらっている事など・・・・・・・・・知る訳が無い。


『プラティ?
 うん。踏み込みはまだまだ甘いけど、病気にでもなってない限りデグレアの黒騎士団程度だったら負けないんじゃない?』


等とルマリが言っている等知る由もない。


ギュイイイイイイイイン!!!


男がその姿を探している間に、空を飛び、男の背後に着地していたプラティは、“ビタードリル”を構えてその旋回力を溜めていた。


「あ、な、何?! 後??!!」


遅い。


ぎゅわぁああああんっ!!!


物凄い突進力とドリルの旋回力を男に叩きつけるプラティ。

いくら鉄斬刀で防御しても、威力そのものを殺しきれずに地面を水平に吹っ飛び、グラディスパークを持つ男に突っ込んで動かなくなる。


「ぐ・・・・・・ぐぉ・・・・・・な、なんだそれは・・・・・・?」


身体を何とか起こすと、鉄斬刀を持っていた男がずり落ちる。
完全に気絶しているようだ。


「“ビタードリル”よ。
 防御力119だけど、おじさん達の剣一本分より軽い便利な工具よ」

「んなぁっ?! 防御力119だぁ??!!」


驚くのも無理はない。

防御力はグラディスパークが40で鉄斬刀が39である。
彼らが持っていた武器を二つ合わせてもドリルの防御力には叶わない。

尚且つ、その重量の軽さだ。
ナックルまでは行かないが、ナックル以外の武器の中では一,ニを争うほど軽いのである。


「だって、これしか手加減できる武器がなかったんだもん。
 もしこっちを使ってたら・・・・・・・・・」


シュラ・・・・・・とドリルの代わりに引き抜いたもの・・・・・・美しき白亜の剣がそこにあった。


プラティは徐に転がっているグラディスパークを拾い上げるとヒョイと宙に投げた。

何気ない動作であったが、上の階層に突き刺さるが如く高く跳ね上がり、真っ直ぐ降りてきたそれを・・・・・・


かつん・・・・・・


何と、叩き斬った。


「な・・・・・・っ???!!!」


二つになって転がるそれ。
切り口からして、物凄い切れ味と技を窺い知れる。


男は今更ながらプラティの幼い顔を見直し、傭兵達や騎士達の間で言われ続けている言葉を思い出していた。


───戦に勝ちたきゃワイスタァンの武器を手にしろ
    勝ち続けたいのなら這ってでも手にしろ

   その代わり、鍛聖には手を出すな
   “勝利”を産み出すモノに逆らうと敗北しかない


そう、見た目子供でも彼は鍛聖なのだ。


最高の武器を産み出す街で、最強の証そのもの一人。

黒鉄の鍛聖・・・・・・

それが彼女、プラティなのである。


残っている紅茶を喉に流し込みながら、それでも微笑を絶やさないアマリエさま。

言っちゃあなんだが、傍目には『話なんか聞いてませんでした。テヘ☆』てな感じにしか見えねぇ。

だが、これでこの方を甘く見ちゃあいけない。

何てったってこの“アマリエさま”は“あの”シンテツを御し切れるツワモノなんだ。


腹で何を・・・・・・・・・あ、いや、
とても思考の広い方だから油断ができねぇって事だ。


「それで・・・・・・」


ホラ来た・・・・・・
オレは心の中で身構えた。


「それでラショウさんは何が言いたかったのかしら?
 何度聞いてもプラティのお惚気にしか聞こえないわよ?」


へ?

な、何言ってくださんだこの人は?


誰があんなガキの事なんか惚気るかよ!!


落ち着きが無ぇし、オレがちょいとイイ女に目をやると脹れやがるし、護衛獣使いが荒いし・・・・・・・・・


ま、まぁ、確かに最近はちょいと良い顔見せたりもするが・・・・・・

まだガキだ。

そう、アマリエさまと血がつながってんのか? と思わせるほどガキっぷり全開のコドモなんだ。


だから、その・・・・・・まぁ、なんだ・・・・・・


あ、そう言えばまだ本題に入ってねぇな。
なら誤解されても仕方無ぇか・・・・・・・・・

・・・・・・・・・ったくオレともあろう者が何やってんだか・・・・・・・・・


「ええとですね・・・・・・」


兎に角、姿勢を正してオレは本題に入った。


「プラティは確かにまだ見習い鍛聖ですが、中々にがんばっております。
 かなり危なっかしい所がありますが、自分の目標にひた走り、シンテツに少しでも追いつこうと武器や農具の研究は元より、武器貿易や鉱石採掘場に関しての書類に眼を通し “鍛聖”という仕事にまで手を抜いておりません」

「そうねぇ・・・・・・
 ちょっとガンバリ過ぎという衒いもあるけど、プラティはがんばってるわね」


「ですが、やはり半人前は半人前。
 哀しいかな経験の少なさは如何ともし難く、こればかりはどうしようもありません。
 追い討ちをかける様に、今言ったような手合いによる暴言・・・・・・まぁ、その程度でしたら不肖、このラショウが鎮圧する事もできましょうが、その事によりプラティのプレッシャーは残る事でしょう」


う〜〜む・・・・・・確かプラティをダシにしてアマリエ様に会いに来た筈なんだが・・・・・・何かマジにプラティの相談になってきたな・・・・・・・・・
チ・・・・・・ッ! オレらしくも無い・・・・・・・


「ああ、でもその二人組の傭兵ってたしかコウレンさんやブロンさんに物凄く説教されたんじゃなかったっけ?」

「それはそうですが・・・・・・・・・」


アマリエさまの言った通り、あの二人のアホはコウレンとブロンが『街中でプラティにイチャモンつけて攻撃してきた』と石の板の上に重石を抱かせて無理矢理座らせ、二日間ガッチリ説教されていた。

ブロンはダチだったシンテツと、今だ(懲りもせず)諦めていないアマリエさまの一人娘であるプラティに対しての暴行未遂に激怒し、

コウレンも同様・・・・・・つってもアマリエ様の事は関係ねぇが・・・・・・・・・に説教くれていた。

なんだか面白そうだったから、あの二人の様子を見て指差して笑ってやろうと思ってたんだが、プラティに止められたから仕方なく中止した。


・・・・・・・・・!! あ、断っとくが、別にプラティが止めたから止めたんじゃねぇぞ??!!

只単にそんなクソ暇な事に付き合ってらんなかっただけだ。
だから、他意はねぇ!!


解かったか?!


・・・・・・・・・ま、まぁ、いいだろう。

因みに、やっと説教を終わらせてもらった二人に与えられた次の試練は、ルマリの槍付き説教だったらしい・・・・・・・・・

そっちは見たくねぇな。
解放された時にはあの二人は幼児退行してたっていうし・・・・・・・・・


ま、それはどーでもいいんだが。


「つまり、ラショウさんは『プラティがもっと皆に一人前として認知してもらいたい』のね?」


「え・・・・・・?
 あ、ああ、そう・・・・・・なりますか・・・・・・ね?」


いきなり確信めいた事を言われて戸惑うオレ。

シンテツが生きてた頃から突然の口撃にはいつも驚かされていたが・・・・・・

変わんねぇなぁ・・・・・・ホントに・・・・・・・・・


いや、まぁ、間違いって程でもねぇしな・・・・・・

実際、街の奴等はプラティの努力とかを知っている。
だからこそアイツを支えてやろうとする輩が多い。

だが、この街は武器を世界に生み出す街だ。
当然ながら他国からも買い付けに来る輩がいる。

そいつらはアイツの事を何も解かってない。

いや、事情を知らないクソ共に至っては親の七光りの様に言うボケだっている。

当たり前だがンな事をこの街で言うと怒りに満ちた武器屋のオヤジやガキ共が飛んできてドツキまわす。

それでも知らねぇモンはしょうがない。


まぁ、大聖霊パリスタパリスの事なんざ声を大きくして言えねぇしな・・・・・・・・・


って、ヲイ!!


なんでオレがこんなに真剣にアイツの事考えなきゃなんねぇんだ?!

仮にもオレは鬼の王と言われたラショウ様だぞ?! 

なんだってオレが・・・・・・・・・


ったくっ!! アイツの事になったら何時だってコレだ・・・・・・クソっ


「ん〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・じゃあコレ、使ってみる?」


そう言ってアマリエさまはテーブルの下から陶器の壷を取り出した。


・・・・・・・・・・・・最初っから用意してたとしか思えねぇ・・・・・・・・・


アマリエさまの両の掌にスッポリと納まる程度の小さな白い陶器の壷。

どちらかと言うと茶の葉とかを入れてそうな感じの壷だ。


「これは何ですか?」

「これ? 催淫香よ」


「ハイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


香?
じゃなくて?


ああ、そういえばシルターンにもジャコウがあったなぁ・・・・・・

ヤル時の気分を高める為って言ってたっけ・・・・・・・・・
あの匂いはあんまり好きじゃなか・・・・・・・・・・・・ってヲイ!!


「そろそろ奥手過ぎるプラティもちゃんと男を知っておかないといけないじゃないかって思うの。
 男のコトもしらない未通女だからなめられるのも当然でしょ?
 でも、全然知らない人なんかに娘の初モノもってかれたらヤでしょ?
 そこで大人のラショウさんだったら初心者のプラティでもちゃんとリードしてくれると思うし、私だってそろそろ孫くらい欲しいかな〜〜〜って・・・・・・」


左手の指で輪っか作って、右手の人差し指をズボズボ出し入れなさるアマリエさま。


「あ、あの・・・・・・・・・」


「ラショウさんだって憎からず思ってるんでしょ?
 だったら、とっとと唾つけて先手打っておかないと鳶にアブラゲ攫われちゃうわよ?」


アブラゲって・・・・・・アンタ・・・・・・
てか、なんで性行為進めんだぁ―――っ?!

そ、そりゃあ確かに自慢にもなりゃしないが、最近のプラティはドキっとさせられる表情を見せたりする。

時々ぶちかましてくれる俯き加減から繰り出される濡れた上目遣いの攻撃だ。

こんなオレであるが、それなりに理性を持っているという自負もあるのに、ふ・・・・・・とある瞬間、自分の中にある獣性に突き動かされそうになる事もある。
押し倒し、服を毟り取り、その熟れていない身体を蹂躙し、オレの証を焼き付けたくなる・・・・・・・・・

ヘタするとぶち壊してしまいそうになる。

無論、耐えた。

だが、“なんとか”という言葉が“耐えた”という言葉の前に付く事すら最近では珍しくない。


どーでもいい女ってんなら好きにする。

どーでもいいのだから好き勝手絶頂にさせてもらうし、気にする事もない。
誘ったのは向こうだ。
知った事じゃない。


だか、その相手がプラティとなると・・・・・・・・・話は別だ。


キライか? と問われると嫌いだったら一緒にいないとしか答えられない。

嫌なら送還してもらえばいい。

だが、送還されたくないと断言している自分もオレの中にいる。


結局、プラティがどうのとかじゃなく、オレ自身がプラティといたいだけなんだよな―――


はっきり言って、自分でも認めたくない部分でオレはプラティを傷つけられない。

だというのに・・・・・・・・・・・・・・・


まさか実の母親から『犯っちまえ』と言われるとは思わなかったぜ・・・・・・ヲイ!!


「あ、そー言えばヴァリラくんもプラティを狙ってるみたいだったわよね?」


ぴく・・・・・・


「ラジィちゃんなんていつも言ってるみたいじゃない。
 『ボクはアネキのお嫁さんになるんだ♪』って・・・・・・・・・」


ぴくぴく・・・・・・


「ナゼかサクロさんも時々頬を染めてプラティを見てる気がしない?」


ぶちぶちぶちぶち・・・・・・・・・


「ここは一つ、覚悟完了して孕ませてもいいんじゃない?
 だったら、私も全面的にバックアップしてあげられるのにねぇ・・・・・・・・・」


右手を握り締め、人差し指と中指の間から親指を出してピコピコ動かしてらっしゃるアマリエさま・・・・・・


ブツ・・・・・・っ


いかん。


自分でも解かる。


色々ネタふられたせいか、オレはキれている。


流石にアマリエさまに怒鳴り散らす訳には・・・・・・・・・


ガタンっ


やや・・・・・・いや、かなり乱暴に音を立てて椅子を引いて立ち上がるオレ。

このままいたらアマリエさまを本当に怒鳴り散らしてしまう。


「あれ? 帰るの?
 だったら、お茶を分けてあげるからプラティに持って帰ってくれない?」


それでも平気に茶の壷をオレに押し付けるアマリエさま。

口を開けば怒鳴り声になりそうだったから、口を噤んだままその茶の壷を受け取ると、


「失礼しますっ!!」


とっととこの家を後にした。

幾らアマリエさまの言葉でも利けるものと利けないものがある。


香の匂いを使って?

アイツを・・・・?


「くそっ!!」


恐らくリィンバウムにやってきて初めてだろう、アマリエさまに向けた悪態をついたのは。

無論、前にしては言えない。

心の中で・・・・・・だ。


だが、そんな事をやっちまうって事は・・・・・・・・・・・・・・・


オレの中じゃあ、とっくにプラティの存在ってのがアマリエ様を上回っているのかもしれない・・・・・・・・・・・・・・・・・・


チ・・・・・・っ!!


本当にオレらしくもねぇ・・・・・・・・・


クソ・・・・・・っ!


強い酒でも煽りたい気分だ。

だが、あんまり遅くなるとプラティが心配して街を走り回り兼ねん・・・・・・


こんな顔を見せたくねぇんだがな・・・・・・・・・


苦虫を噛んだってのは・・・・・・・・・こんな気分なんだなぁ・・・・・・・・・・・・


訳も無く早足になって第二階層についてしまう。


まぁ、アイツの作ったメシでも喰ってとっとと寝よう。


それに限る。


ったく・・・・・・・・・・・・・・・


「んん〜〜・・・・・・ラショウさん。ごめんね〜♪」


何となく上の階層・・・・・・それも以前はサクロが住んでおり、現在はプラティの家となっている辺りを下から見上げながら、満面の笑みを浮かべつつアマリエは一人ごちていた。


「私ね、“おばぁちゃん”って言われるのは御免蒙りたいけど、三十代の内に孫を抱くのが夢なのよ♪
 だから私の夢の礎になってね〜〜♪」


碌でもねー勝手な家族愛をほざきつつ、可愛い一人娘ともう直デキるであろう愛らしい孫の事を想い、アマリエは空になったラショウの茶の入っていたカップを見つめ、夕日が沈みゆく海に反射する光に顔を赤く染めたままニヤリとするのだった───


 〜POSTSCRIPT〜

ハイ。お久しぶりです。
クリュウ編の合間に書いたプラティ編です。

こっちは、ほぼ全員マトモですが、やはりアマリエとプラティが壊れています。

ただ、主人公がプラティですのでハーレムぽくはなりません。

っていうか、プラティ×多数は考えるのもです。

てな訳で、A面のクリュウ編とB面のプラティ編、どうぞ宜しく願いしまっす。

し〜ゆ〜♪


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