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「破壊の王と真祖の姫(ARMS+月姫)」

黒夢 (2005-04-02 17:01)


そこは、様々な可能性が最後に行き着く無限の廃虚。

そこは、全てのものが存在し、何一つない凍えた世界。

そこは、夢と現実の狭間にある無限に存在する可能性の墓場の一つ。

そこは全てが終わっている。

だから、本来そこに生という可能性が行き着くことはありえない。

だから、そこにある二つの生は仮初のものだろう。

だが、仮初だろうとその二つの生は出会ってはいけないものだった。

一つの生は人が生み出した最強。

一つの生は真祖が生み出した最強。

その二つの生が出会ったのは偶然か運命か何者かの導きか――――

――――ここに避けられぬ闘争の鐘が鳴る。


破壊の王と真祖の姫


「ここは……」

目を開けると、そこは見渡す限りの廃虚の都。

「自室で寝てたよな……俺」

そうだ。今日は朝からいつものように学校に通い、いつものように授業を受け、いつものように家に帰って寝たはずだ。間違ってもこんな所に来た記憶はない。

「ってことは、これは夢……?けど、それにしてはリアルすぎる」

なぜかはわからないが、断言できる。間違いなくここは夢じゃない。だが、現実でもない。もっと別の何かだと。

「……とりあえず、この辺歩き回ってみるか。なにかわかるかもしれないし」

元々こうゆう摩訶不思議な世界に少し悲しいが慣れてしまっているので、大して混乱もせずに何をすべきか判断することが出来た。とにもかくにもこの場に留まってあれこれ考えていてもしょうがない。とりあえず辺りいったいを一度歩き回ってみることにした。

「しかし……本当にいったいなんなんだ……ここは……」

冷静になってよく辺りを見回せば、ここは見れば見るほどに奇妙な空間だった。朽ち果てた建造物の合間を縫うように広がる枯れ果てた木々の森にも驚きだが、その奥にわずかに見えるゲームに登場するような塔や山がこの空間の異常さを確固たるものにしていた。

ブウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

「……ん?今のは……」

右手にわずかに感じた違和感に立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡す。すると廃虚のビルが続く正面からコツコツ、と足音が聞こえてきた。

「こんな所に人がいるのか?」

この朽ちた場所にも人がいることに驚きながらもどこか安堵していた。ここにいるのは自分一人ではないということに。足音は徐々に近づき、遂にその足音の主を視界におさめられた。

その人物は流れるような金の髪、吸い込まれそうな赤い眼、神がかり的な造形美を持った美しい女性だった。そのあまりの場違いな美しさに思わず見とれていると、女性が睨んでいることに気づく。

「アナタは、なに?」

女性が冷徹な視線で射抜きながら口を開く。この場には自分と女性しかいないのだから彼女は自分に話しかけているのはわかる。ついでに睨んでいる相手も自分だろうとゆうことも。何故睨まれているのかはわからないが、とりあえず、言われたとおり自己紹介することにした。

「俺は高槻 涼。そうゆうあなたは?」

「……まあいいわ。私はアルクェイド・ブリュンスタッド。もう一度聞くわ。アナタは、なに?」

それが望んでいた答えと違ったのか女性、アルクェイドはもう一度同じ質問をする。

「だから、高槻 涼だ。それよりここはいったいどこなんだ?なんで俺達しかいないんだ?」

この状況でこの落ち着きよう。もしかしたら何か知っているかもしれないと期待して涼は聞き返す。

「……本当に何も知らないのね。ここは可能性が最後に行き着く凍れる都。本来、ここには終わりしかないわ。だから始まりを象徴する生はここには存在できない。けど、例外も存在するわ。それは星と世界の意思がめぐり合う時。私は世界側。なら、アナタは星側のはずよ」

親切丁寧にこの空間を説明してくれていることはわかるが、あいにくと涼はアルクェイドがなにを言っているのか全然理解できなかった。

一ヶ月前ぐらいまで非日常の世界に身をおき、いくつもの理不尽や非常識を経験してきた涼にとっても今の話の内容は寝耳に水だ。だが、理解できていないはずの彼女の言葉一つ一つにどこか納得している自分がいる。そして、ここから出る方法も彼女の言葉を理解した自分がごく自然と告げてきた。


それは――――


「こんな寂れた終わりの世界なんて一秒だっていたくないわ。
私がここから抜けるために――――アナタは消えなさい」


自分を繋ぎ止めている相手を殺せばいい。


突如、アルクェイドがまるで瞬間移動でもしたと思わせるスピードで涼の眼前に現れると明らかに人間とは違う凶悪な爪で一切の躊躇も無く涼を引き裂こうとする。

「は、速い!」

とっさに涼は右腕を盾にしようと前に突き出すが、そんなもの、何の役にもたつはずがない。なぜならそれは純粋な暴力の塊。人間など紙のように引き裂く化け物の一撃だからだ。

故に人間である涼はその一撃で命を散らすはずだった。


――――その右腕が異形の腕に変わるまでは。


「!?」

その異形の右腕が完全に形を変えるのとアルクェイドの凶爪が到達するのはほぼ同時だった。

「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

何とか受け切れたものの涼はダンプカーに撥ねられたような物凄い衝撃を受け、一直線に背後にそびえる廃虚のビルの外壁のそばまで弾き飛ばされ、致命的な隙が生まれる。殺される、涼の思考がその言葉で埋め尽くされた。だが、体勢をくずした涼にアルクェイドはなぜか追撃を加えずに厳しい表情で涼の異形の右腕を凝視している。

「……ふーん。それがアナタの力なんだ。けど、それはなに?魔術でも混血でも幻想種でもない。これまで世界が生んできた力とはまったく違う歪んだ力。なるほどね。だからここに私とアナタを呼んだのね。誰にも邪魔されずに歪んだものを修正させるために」

「世界?修正?いったいさっきからなにを言ってるんだ??あなたは、何者なんだ?」

今、涼は混乱の境地にいた。それも仕方がないだろう。ここにいるのだけでもわけがわからないのに、ようやく見つけた人は明らかに人間の身体能力を遥かに超えていて、意味のわからない言葉を並べている。これだけの事態に遭遇して混乱しない者のほうがおかしい。

「アナタが知る必要はないわ。どうせ、ここで消えるんだから」

だが、アルクェイドは涼の質問を無表情で切り捨てると殺すと言外に告げて再び涼に襲い掛かった。しかし涼とて様々な死線を右腕の相棒の『ARMS』と共に切り抜けてきた歴戦の戦士。来るとわかっていれば、いくらでも対処の方法はある。

相手は確かに速いが無駄が多いと見抜くと振り下ろされた爪を無理に受け止めようとはせずに右腕で逸らし、逆に相手の懐に潜り込み全体重を乗せた左腕のブローを決めて気絶させようとする。だが、完璧に決まったはずの渾身の一撃はまるで効いていないのか、鬱陶しい蝿を追い払うかのようにアルクェイドは爪を走らせた。

涼はバックステップでそれをかわし、アルクェイドとの距離を取る。一瞬の静寂。

今の攻防で互いにこの相手には手加減無用と判断したのか、二人はより激しい戦闘の中に身を投じた。

アルクェイドはそのあまりあるパワーと神速のスピードで猛攻を仕掛け、涼はアルクェイドには及ばないものの人の範疇を大きく超えたスピードと技、『ARMS』で対抗する。身体能力のみを考えるなら一瞬でアルクェイドが勝利しただろう。だが、涼には身体能力が劣っていようが相手の動きではなく殺気で捉える技術と人間が生み出した戦いの技があった。これにより二人は一進一退の闘いを繰り広げていた。

だが時間が経つにつれ少しずつ、ほんの少しずつではあるが、涼が押され始めた。

それとゆうのもアルクェイドの驚異的な学習能力にある。単純な攻撃なら一度見れば対処法を考えることができるアルクェイドには二度同じことが通用しない。しかもそれだけではなく、その攻撃の技術を吸収して自分の技として使うことができる。つまり、アルクェイドは戦えば戦うほどに強くなるのだ。

涼の健闘も空しく、遂に完全に形勢がアルクェイドに傾き、涼はその強烈な一撃を避けきれず左胸から右肩を爪で深く抉られる。

「があああぁぁぁぁ!!」

常人なら即死ものだが、『ARMS』を持つ涼はこのぐらいで死ぬほど柔ではない。しかし、痛みは普通に感じるのだ。あまりの激痛に意識が飛びかけるが、眼前に迫った爪をなかば反射的に後ろに跳び回避する。しかしその反動で地面に倒れた体が思うように動かず、立ち上がることが出来ない。

「終わりね。その身体じゃもう次は防ぎきれないわ。足掻くのは止めなさい。そうすれば痛みもなく一瞬で消してあげる」

「くっ……!」

アルクェイドのゆうとおり、この身体ではあの鋭く速い爪をかわすことはできないだろう。だが、このままおとなしく死ぬ気など涼にはさらさらなかった。なぜなら自分には大切な人が、仲間がいる。そいつらを置いて死ぬなど、絶対に許せるはずがない。

アルクェイドは勝利を確信しているのだろう。余裕を持って優雅に歩きながら近づいてくる。


『力が欲しいか!!』


涼の眼前まで来るとその手に殺意の爪を宿し、凍りついたような冷たい表情で地べたを這い蹲る涼を見つめる。


『力が欲しいのなら……』


「さようなら。世界の理に背く世界の敵さん。あなたに怨みは無いけど、私が戻るために消えて」

そして無情にも断罪の凶爪は振り下ろされた。


『くれてやる!!』


「え……?」

そんな唖然としたアルクェイドの声が、この終わった廃虚の中で静かに響き渡る。予想外なことに、振り下ろされたはずの断罪の凶爪は役目を果たすことはなかった。

なぜなら……突然現れた黒い巨大な手によって役目を果たすための腕が肘から千切られていたのだから……。

「くぅ……!?」

なにが起こったのか理解できない。そんな混乱の思考の中で、千切られた腕の激痛を無視して後方に跳ぶ。

痛みと混乱と怒りが己の中で激しく渦巻く中で自分がさっきまで立っていた場所を確認する。

そこには文字通り化け物がいた。三メートルはあろうかという黒い巨体。その腕に握られているのはその化け物とは不釣合いなアルクェイドの肘より先の部分。一目でわかった。あれはさきほど命を刈り取ろうとした高槻 涼のもう一つの姿だと。そして、あれこそが世界が修正したいものなのだと。

『我に挑むとは愚かなり!!真祖の姫!!我は魔獣“ジャバウォック”!!破壊の王!!我に戦いを挑んだことを後悔するがいい!!貴様に真の“破壊”を見せてやろう!!』

その破壊の宣言と共にジャバウォックからほとばしった圧倒的な力が手に握っていたアルクェイドの腕を跡形もなく粉砕し、地を砕き、周りの廃虚をも砂塵へと変えていく。それはまるで、世界そのものが恐怖に身体を揺らしているようでもあった。

「……世界が危険視するはずだわ。こんなものを放っといたら本当に世界が滅びかねない。あなたはこの終わった世界で永久の眠りにつきなさい」

すでに腕の再生が終わったアルクェイドは魔獣に向かい駆け出す。そのスピードは先ほどのそれを上回り、まさに閃光のようであった。だが、それでも地上最強の魔獣相手では意味を持たない。

ジャバウォックはいとも容易くその閃光のスピードで向かって来るアルクェイドの動きを見切ると、自分を殺すために繰り出された爪に合わせるように超震動を発生させた自身の爪を突き出し、アルクェイドの腕ごと爪を押し潰し粉砕する。

「なっ!?」

痛みよりも驚愕が勝るのか、アルクェイドは呆然と押しつぶされた腕を見つめる。今まで数多の敵を屠ってきた最強の肉体が負けたのだ。その衝撃は計り知れない。

だが、殺し合いでの油断は即、死に繋がる。もちろん呆けた相手を気遣うほどジャバウォックは甘い相手ではない。動きが止まったアルクェイドの足を掴むと上空に飛び、全力で崩れた廃虚の山に投げつけた。

投げつけられたアルクェイドはまるで隕石のように廃虚の山へと直進し、激突の瞬間の物凄い衝撃が小型のクレーターを形成する。

『遅いわ!!白兎と比べれば貴様など止まっているも同然!!その一撃も騎士のそれに劣る!!その程度の力でこの魔獣と渡り合おうなどという愚かさ、身をもって思い知るがいい!!』

ジャバウォックの口から灼熱の吐息が漏れ、微塵の躊躇もなく灼熱の業火を解き放った。

業火はクレーターごと周りの廃虚や枯れ木の森を飲み込み、勢いを増しながら全てを燃やし尽くす。

落下の衝撃に加え、この業火の海に飲み込まれて生きているものなど皆無であろう。しかし、彼女もまた真祖の姫と呼ばれ恐れられる正真正銘の化け物。この程度のことで消滅などするわけがない。

クレーターの中心の炎が突如として全て鎮火する。そこには服がボロボロに破け、苦しそうな息遣いをしながらも無傷で立つアルクェイドがいた。

『腐っても真祖の姫……この程度で破壊することはできぬか……ならばその肉体、二度と蘇生できぬように塵にしてやる!!』

上空から敵を八つ裂きにするために猛スピードで魔獣が迫る。アルクェイドはそれを臆することもなく静かに見つめると、目を瞑り、空想を思い描き、解き放った。

「星の息吹よ……!」

その言葉と共に何もなかった空間から出現した鎖が空中でジャバウォックをがんじがらめに縛りつけ、動きを封じる。

『これは……!?』

突如として虚空から現れ自身を完全に縛り付けた鎖にこの戦いが始まってからはじめてジャバウォックが驚愕の声を漏らす。

「まさか、ここまでやるとは思わなかったわ。私が肉体のポテンシャルで圧倒されるなんて……とても自然発生したものとは思えない」

『自然発生だと?ふざけるなよ!!我は母アリスとエグリゴリによって生み出されし者!!人が生み出した究極の戦闘生命なり!!』

「!?人が生み出した?……いえ、ありえなくはないわね。人は生み出すことにかけては他の生命の追随を許さない生き物。けど、あなたは生まれるべきではなかった。ここで可能生ごと潰えなさい。それが、世界のためよ」

『我は我が友、高槻 涼が滅びるその時まで滅びん!!たとえ世界が相手だろうと!!』

何とか身を縛る鎖を引き千切ろうと鎖を握り、力を込めるが、どれほどの強度なのか、ジャバウォックの力をもってしても軋むだけでびくともしない。

「無理よ。いくらアナタでも私を戒めるその鎖を破ることは出来ないわ」

それは絶対の確信だった。アルティメット・ワンならともかく、それ以外のものであの鎖を引き千切れるはずがない。だが、それさえもジャバウォックは咆哮をもって否定する。

『舐めるなよ、真祖の姫よ!!我を束縛することは何ものにも出来ん!!』

微かにジャバウォックの鎖を握る手が輝きだし、体内で核にも勝る本来この世に存在しない禁断の物質、“反物質”を生成し始める。

『見せてやろう……真の“破壊”というものを!!』

そして握り拳大まで収縮されたそれは――――解き放たれた。

アルクェイドにはそれが何なのか理解できなかった。

唯一わかったのは一筋の光の弾は鎖の一部をいとも容易く消滅させ、終わった世界と始まりの世界を隔てる境界すらも“破壊”したという結果だけ。

「あなたは……なに?」

いくらここが終わりの行き着く世界で境界の軸が歪んでいるとしても、一つの世界の境界を破壊するほどの力など、ありえない。境界が破壊されたことで生まれた元の世界に引き戻される奔流の中で、アルクェイドは呆然とその化け物に問う。

『我は破壊者……我は虐殺者……我は魔獣……我は破壊の王!!真祖の姫よ、覚えておくがいい!!再び我の前に立ったその時が貴様の終わりの時だと!!』

その宣言を最後に交わっていた奔流は二つに分かれ、それぞれの眠る場所に戻っていく。

――――その時点で夢であり現実でもある世界の終わりの鐘が鳴った。


あとがき

どうも、黒夢です。ここまで付き合っていただいた皆様、ありがとうございました。

この作品ですが、今執筆中のバトル系長編を書いている時にふと書きたくなって息抜きとして書いたものです。

なお、この世界設定ですがオリジナルです。当初は夜の街中で偶然出会った二人が闘うシンプルなものだったんですが……書いているうちに町が一つか二つ消えてしまったので急遽この設定にして書き直しました。

月姫を知っている方々からはアルクェイドが押されるはずがないなどの色々な意見があると思いますが、これはあくまで私の私見です。ですが、息抜きで書いたものとはいえ、もちろんちゃんとこの結果になった理由もあります。どうしてこうゆう結果になったのか知りたい方は遠慮なく言ってください。出来る限り説明します。


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