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「ラブひな・サーカス〜プロローグ〜(ラブひな+からくり・サーカス)」

でまえそば (2005-03-26 03:02)


―――暗い 暗い 夜の森

本来なら、辺りを明るく照らすであろう月も、分厚い雲に隠され、
ただでさえ、不気味な森の様子を、更に薄気味悪いものにさせている。

そんな暗い森の中、一人の少年がうずくまっていた。


「ゼヒッ!ゼィっ!……………」


少年は荒い呼吸を繰り返しながら、じっとうずくまったまま、その場を動こうとしない。
年の程は十五、六であろう、眼鏡をかけた少年であった。

少年は額にべったりと脂汗を浮かばせ、ただひたすら、荒い呼吸を繰り返している。

どのくらい、そうしていたのか。
少年には、もはや時間の感覚すら解らなくなってしまっていた。

そんな中、いつに間にかうずくまっている少年の前に一人の男が立っていた。


「クックック…………、ひぃーひっひっひ!!
 苦しそうだなぁ、うん?少年よぅ?」


突然、少年の前に現れた男は、苦しそうにしている少年を笑い飛ばす。
普通なら怒りそうな物だが、何故か、少年の今まで荒かった呼吸が少し穏やかなる。


「………あの、………ありがとう、ございました。少し、楽になりました………。」


少年は、ほんの少し笑顔を浮かべ目の前の男にお礼を言う。
暗闇のせいで、男の顔はわからない。
だが、少年には男がまるで自分を憐れんでいるように見えた。


「くくっ………、気にする事はないさ、少年。
 だが、少年よぅ。そのままでは、お前さん……………………死ぬぞ?」

「……………そう、でしょうね……。そんな気は、していました……」

「……ほう?少年、君は死ぬ事が怖くないのかね………?」


男は少年の返答に、少しおどけたように問い返した。
少年は俯いたまま、搾り出すように声を出す。


「………そんなの、怖いに……、恐いに決まってるじゃないですか!!
 僕だって、死にたくなんか無いですよ!……護りたい約束だってあるんだ………。
 でも……、でも、しょうがないじゃないですか…………」


震えるように声を出す、少年。
男は少年をみて、数秒沈黙した後、口を開いた。


「約束………か。………………………少年よ、生きたいかね…………?
 生きたいと言うのなら、私は君を助けてあげることができる。
 ただし、その代償に君は地獄を見る事になるかもしれない……、それでも…かね?」

「え………?」


言われた事を理解できず、少年は呆然と聞き返す。
男はひひっと笑い、まるで物語の語り部のように口を開く。


「さぁさぁ、どうするね、少年?生きるも死ぬも、どちらも地獄……。
 いやいや、ひょっとしたら、今死ぬ方が楽かもしれない。
 それでも君は地獄の中を生きたいのかね?…さぁて、どうする?決めるのは、君だ」

「あ、………い、生きたい……です。僕は、………生きたい!」


少年は男に対して、はっきりと声を返す。


「クククッ………、そうか、そうかね。いいだろう、では少年よ、君の名前は……?」

「…………景…太郎。浦島……、景太郎…………です」

「ひひっ……、よろしい。では行こうか?ついてきたまえ、ケイタロウ」

「あ、あのッ!あなたは、一体………?」


二人の間に、強い風が吹く。
月を隠していた薄暗い雲が除除に晴れ、月明かりが男の姿を明らかにする。
男、というよりも老人といったほうが正しいだろう。
老人は銀色の目に、銀色の髪をしていた。老人は再び、ひひっと笑う。


「うん?あたしかい?あたしは<F・O・U>で、フウ。
 フウ・クロード・ボワロー。人呼んで、道化のボワローだ」―――


          「ラブひな・サーカス〜プロローグ〜」 


五年後―――
フランス 南東 プロヴァンス地方―――

小雨の降る薄暗い広大な平原に、一組の男女が立っていた。
男のほうは銀色の髪に銀色の目をしている見た目十五、六才の少年。
身長は165位であろうか、体を茶色っぽいオーバーコートで包み、
足元には、その少年一人くらい軽々と入りそうな巨大なトランクが置いてある。

女性の方は、少年よりも少し背が高い。
まるで快晴の空のような、綺麗な青色の髪を肩口に揃えていた。
すっと通った鼻筋に、少しつり上がった目をしている。
その薄緑色の瞳は一見、人に冷たい印象を与えてしまうだろう。
体のラインにぴったりとくっついている黒いレザースーツを身にまとい、
均整のとれたプロポーションを惜し気も無くさらしている。


「――景太郎様、お寒くはありませんか?――」


女性が少年に無機質な声で話しかける。
女性に呼ばれた少年―――景太郎は苦笑を浮かべた。
そして、頭を2、3度振って、答えを返す。


「いや、僕は大丈夫だよ。
 僕よりも、リーズバイフェの方こそ、寒くない?」

「――私は純粋な人間(ヒューマン)ではありませんので、
 そのような心配の必要はございません――」


景太郎にリーズバイフェと呼ばれた女性は、全くの無表情でそれに答える。


「はは……、いつもの事だけど、そういう事じゃないんだけどなぁ………。
 …………それよりも、リズ。あいつら本当に来るかな……?」


今まで、のほほんとしていた景太郎が急に真面目な顔をして、
リーズバイフェに声をかけた。


「――81,27%の確立でここを通る事は、ほぼ間違いないと思われます。
 ………それとも、景太郎様は私の計算が信用できませんか?――」

「うぇっ!?い、いや、そういう訳じゃないんだけど!
 その………、まぁ、一応と言うか、確認の為というか…………」

「――冗談です。どうかお気になさらないでください――」


景太郎がへっ?と言った顔でリーズバイフェを見上げる。
リーズバイフェは、本当によく見ると解る程度に口元を吊り上げていた。
長年の付き合いである景太郎は一瞬でそれを見つけると、当然の如くブーたれる。


「はぁ……、まったく………、リズの冗談は心臓に悪いよ…………」


景太郎は文句をいってはいるが、それは本心からではない。
リーズバイフェもそれはわかっているのだろう、何も言わず口元を吊り上げたままでいた。
それ以上お互い声は出さないが、それでも二人を和やかなムードが包み込む。
………が、唐突にそんなムードをぶち壊す声が二人の耳に届く。


「ギ……、ギギッ!今日はこっちの町に行く、ゾッ!!」

「人間〜、人間〜、ど〜こかナァ〜。キヒ、ヒヒヒヒ……」


二人から少し離れた小高い丘の向こうから、歌っているような、叫んでいるような、
気味の悪い声が聞こえてきた。


「来た………か。流石はリズ、計算通りっ、てとこかな?」

「――当然の結果、という物です。………数はおよそ十三。
 私と景太郎様ならば、何の問題も無く、排除可能な数です――」

「おっけー!!んじゃ、行くとしようか!!」

「――了解、思考レベル―第三戦闘状態に移項(オープン・コンバット)――」


景太郎は足元の大きなトランクを片手で軽々と持ち上げ、声が聞こえる方向に駆け出す。
リーズバイフェも景太郎の後を追従するように駆け出した。

二人が向かった先、そこに居たのは一言で言うならば「ピエロ」の集団であった。
そこにいる者達は、まるでサーカスに出てくるような、ピエロの服を着ていた。
顔も真っ白に塗りたくられ、その上に様々な明るい色で‘笑顔’が描かれている。
だが、その集団は明らかに、異形だった。
ある者は異常なほど腕が長い、また、ある者は足だけが妙に長い。
他にも、丸い…まるでボールのような球状の体をしている者もいる。
そんな異様な「ピエロ」の集団が奇怪な歌を歌い、笑いながら、行進していた。


「キキッ……!!今日は何人の血を吸ってやろうかなぁ〜」

「ひゃっはぁ!オレはコロシまくっちゃうぜぇ〜!」

「ギャハハハハ…………………、あン?うぎゅぁ!!」


突然、今まで笑っていたピエロの一人が奇妙な悲鳴をあげながら、吹き飛んだ。
ピエロ達が驚きながらその場を見ると、そこにはいつの間にか一組の男女が立っていた。


「――景太郎様、そのトランクでアレを殴るのはいかがな物かと――」

「いや、なんか見てるだけで腹立っちゃって……、つい…ね?」


リーズバルフェが少しあきれたような声を出す。
景太郎のほうは、まるで気にした様子も無く、軽く頭を掻きながら返答を返した。


「……な、なんダぁ!?てめぇらぁ!ブチコロスぞ、人間がぁ!!」

「うわぁ、怒ってるよ……。どうしよっか?リズ?」

「――どうしようもないでしょう。怒らせたのは景太郎様ですし。
 なんでしたら、この場で土下座でもしてみますか?――」

「聞いてんのかぁ!?こノ……!テメェらぁ!!ブッコロスぅ!!!」


二人のあくまでのほほんとした様子を見て、
ついに一人のピエロが切れて、景太郎に襲い掛かる………が、
景太郎はそれを見ても微動だにしない。
すると、少し景太郎の後に立っていたリーズバイフェが、音も無く景太郎の前に立つ。


「――お下がりください。景太郎様――」


そして、リーズバイフェが、静かに腕を顔の前で交差させると、
いきなり、リーズバイフェの両手の平から西洋剣に似た刃が飛び出す。


「ゲぇッ!!?」

「――目障りです。この木偶人形――」


驚愕するピエロをよそに、リーズバイフェはフワリと、
刃の突き出た腕を十字に振り、あっさりとピエロを両断した。
十字に切られたピエロから、銀色の液体が噴き出し、
機械の部品のような物が、あたりにばら撒かれる。


「――下級の機械人形(オート・マータ)如きが、
 景太郎様に触れようなどと、なんて愚かな。恥を知りなさい――」


あっさりと仲間が破壊されてしまったピエロ、いや機械人形が、
悲鳴を上げるように叫ぶ。


「テ、テメェらぁ!ただの人間じゃネェな!?…………あン?そのガキの髪と目の色…。
 ゲゲぇ!ま、まさか、おまえら……、人形破壊者(しろがね)かぁっ!?」

「しろがね………ね。ちょっと違うんだけど……、まぁ、いいや。
 どうせやることは一緒だし。………それじゃあ、土は土に、灰は灰に……」 

「――忌まわしき人形は、歯車に――」

「…………………………リズ?それ、僕の台詞なんだけど………」


二人がのんびりと会話している間にも、
機械人形たちは、ジリジリと二人の周りを囲むように移動を行う。


「キサマらが、しろがねだと、ワカッタ以上確実に……、コロス!!」

「コ・ロス、しろがね、コロス……………」


すっかり包囲されてしまった二人。それでも二人は、全く余裕を崩そうとしない。
それどころか、景太郎は軽く口元に笑みすら浮かべている。
景太郎の両手の指には、いつの間にかそれぞれ指輪のような物が嵌められており、
ピアノを演奏するように、十本の指を滑らかに動かす。


「さて、と。そろそろやりますか………」

「――了解。敵の殲滅を開始します――」

「はは……、さて、と。
 それじゃ、――――――踊ってさし上げろ!アルメリア!!!」


景太郎の声と共に足元に置かれたトランクから、大きな黒い影が躍り出た―――


・ ・

・ ・ ・


「まっ!こんなもんだよね……。リズ?そっちは終わった?」

「――問題ありません。敵の殲滅を確認いたしました――」


二人の周りには、大きな歯車から、小さなネジにいたるまでの
大小様々な残骸がばら撒かれていた。
よく見ればそれが先ほどまで、ここを行進していた機械人形と気付いただろう。
逆に言えば、よく見ないと解らないほどに彼らはバラバラにされていた。


「ふぅ……、えっと、これでこの周辺の奴らは全部狩り終わったのか……な?」

「――はい。情報によると今回で最後になるはずです――」

「ん〜、……これからどうすればいいか、リズは聞いてる?」

「――いえ、私は何も聞かされておりません――」

「そっか、それじゃぶらぶらしながら………ん?」


景太郎が言葉を言い終わらないうちに、辺りに甲高い電子音が鳴り響く。
景太郎は懐に手を入れて、音の発生源でもある携帯電話を取り出し、電話に出る。


「 はい、こちら景太郎………って、なんだ、爺さんか。どうかした?
 えっ?あぁ、今ちょうど終わったとこだけど…………。
 次?また、随分と急だね……。あぁ、それはわかってるよ。…んで?次は何処なの?
 ……………うえぇッ!?にっ、に、日本ッ!!?
 そ、そうか、爺さん!ついに、僕を東大に行かせてくれ……………、へっ?
 はぁぁぁッッッ!?ひっ、ひなた旅館ーーーーッ!!?」


こうして、浦島景太郎の運命の歯車は、カラカラと回り始めた――――


                        〜プロローグ 終幕 第一幕へ〜


     あとがき

どうも、現在寝込んでおります、でまえそばでございますー!ずずっ(鼻を啜る音
いや、なんか風邪なのかインフルエンザなのか花粉症なのか、訳わかんない状態でして。
SS書ける体調に戻るにはまだかかりそうでして………。ずずっ(鼻を啜る〜
というわけでこの「それから〜」を書いてるときにちょこちょこ書いてた物をですね、
投稿させていただこうかな〜、と。ちなみにこのSSはですね、
「景太郎が不死身なのはアクア・ウイタエを飲んでいたからなんだよ!!!」
とか私が勝手に思って書き始めたものです。ずずっ(鼻を〜
次の話(ひなたガールズと出会う)もほぼ出来てはいるんですが見直しとかしないと…。
ヒロインもまだ決めてないですし。誰がいいですか?(聞くな
結構、異色なクロス(だと思う)なので感想等ありましたらよろしくお願いします〜。

                       でわ!でまえそばでしたぁ!ずずっ


△記事頭

▲記事頭


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