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「月堕幻夢1−3(NARUTO+オリジナル)」

月堕 (2005-03-02 23:15)


「・・・・・・こりゃ、凄い」


雑多溢れる街。
忍び五大国の中で最も活気のある里と称される木の葉の隠れ里だが、
今日の、この街路はだけは何時もの比ではないほど人通りが多い。

その理由は一目瞭然。
何故なら誰もがその理由に眼を向けているのだ。


「ほんとに増えてるね〜、火影岩」


感心した様に、いや実際感心しているのだろう。
腕を組み、ふむと頷きながらそれを眺める男の姿には大人になったことで捨ててしまった子供の純粋さや悪戯心に対するある種の憧憬が浮んでいた。


「五代目火影か。ま・・・・・・資質はあるんだろうけど、次の代の火影になるには未だ時間が足りないだろうねぇ」


微笑ましいものを見るように布で覆われた口元を微かに歪ませる。
確かに他に類を見ないほどの規模の悪戯だが、
子供らしい可愛げのある向上心とも取れる。

――――何と無しにその姿に失った友人の姿とダブらせる。


(あの冷静沈着な先生の息子がねぇ。
容姿はよく似てるけど、性格は全然だな。
いや、案外先生の子供時代もあんな感じだったのかもね。
・・・・・・想像つかないけど)


ふむ、ふむと一人頷く。

彼が世界で一番尊敬している人物。
歴代火影の中で“最速”を謳われ、
閃光とまで称された速さと多彩な術の使い手。

歴代最強と謳われる“教授”三代目火影すらも上回る――と彼は思っている――芸術的な殺人技法に、様々な術を考案する発想力と術法知識。

若くして死んでしまった為に、生前の想いと相まって「決して越えられない」という非人間的イメージが出来ていたが、その息子は良い意味でも悪い意味でも、その偶像を壊してくれる。


「カカシ上忍!」


火影岩に取り付けられている階段の最下層の段から、男の居る中階層の段に女性の声が届く。
男は額当てで隠れていない方の瞳を気だるげに向けると其処には男の中で苦手リストトップ5に入る、見覚えのある中忍が呼びかけていた。


「先刻申し上げましたように火影様がお呼びですので、あまり待たせないで下さい!」

「あ〜ごめんごめん。道に迷ってね」


肩を竦めて、己を急かす中忍に相槌を打つ。
戦闘を有利に進める為に、大抵の忍びは空間把握能力が高い。
故に、己の庭であるこの木の葉の里で迷う様な忍者など居はしない。

声を掛けた中忍も、即座に察し得る、そのあからさま過ぎる嘘に額に青筋を立てるが、相手が里の上忍の中でも最強の一人として数えられる男なので何も言わず、理不尽さに対する怒りを押し殺すように深呼吸して肩を怒らせて階段の傍で待つ。


「別にそんなところで待たないでも直ぐ行くよ〜」

「貴方の直ぐを待って居たら日が暮れます・・・・・!」

「あははは、真面目だね〜。そんなに怒ってると皺が増えるよ」

「カカシ上忍・・・・・頼みますから、これ以上私を怒らせないで下さい」


件の中忍、「春野 ユメ」は自分と価値観が違いすぎる不真面目な男に元々少ない堪忍袋の尾が切れそうになる。

彼女がカカシと顔を合わせるのはこれで三度目。
今回は偶々任務完了し、時間が空いた直後だったのでついでと言う事で上忍の詰め所に伝言を伝える役目を預かったのだ。
最初は家の近くということもあり快く受けたのだが、相手がカカシという時点で返品しそうになったが、受付が受理してくれず、
――――これ幸いと厄介事の様に押し付けたのだ。


彼女はカカシに碌な印象を持っていない。

何せ、初めての合同任務で固くなっていた彼女に優しい言葉を掛ける初対面の同僚の中、一人やる気なさげに、「イチャイチャパラダイス」なるいかがわしい書物を読んで片手間に「宜しく」と呟く男なのだ。真面目一辺倒の自分とは絶対に相性が悪いだろうと見た瞬間に即座に認識していた。


“――――この男とは深く関わらないでおこう”


そう普通ならこういうタイプの人間は無視する彼女だが、その直後に噂から尊敬していた「はたけ カカシ」の実物である事を知ったことで一気に尊敬から軽蔑へと評価が180度変わり、無視する筈が目の敵のようにして言動がきつくなったのはある意味仕方のない事だろう。

その任務でカカシの雄姿を見ていれば色々変わっただろうが、予想された他国の忍びの襲撃等は何も起きずに、ひたすらカカシの不真面目さだけを見たのでその評価が底辺を割ってしまった。

そして二回目。前回カカシに用件を伝える任を受け、カカシを捕まえるのに、己の全能力を駆使する羽目になり、その上で二時間掛かったのも嫌う理由に含まれているのだろう。


――――因みにカカシはカカシで彼女に苦手意識が芽生えていた。


忍びの心得は厳格である。時間厳守等は当たり前、任務は鉄の心で挑み、
常に精神を精錬し、肉体を鍛えよとある。
アカデミーでも成績優秀だったユメは忍びの戒律など一字一句間違いなく覚えているし、可能な限り実践を試みている。
ユメは別段それは特別な事だとは思わない。忍びである以上、そうするのが当然なのだ。


とは言え、その為に暗部でもないのに常時正装な忍び装束を着て、口元を覆面で隠しているユメは少々やり過ぎかも知れない。


どんな規則でもそれが存在するのはそれ相応の理由がある。
忍びの心得も同様であり、忍び一人一人の生存率を引き上げるというのが最もな理由の一つである。カカシ程ではなくても上忍、いや、下忍でも数年も経てば任務の適度な手の抜き様や効率の良い息抜きの仕方を自然と覚えるし、非常時は兎も角、常時の日常的な規則などは然程意味が無いと言えば意味が無い。

しかし、此処は隠れ里。
忍びは一部の人間のみが為れるエリート職の様なものだし、上忍とも言えばある種の憧れや尊敬を持って語られる存在である。

その上忍。その中でも最強の一人である。
忍びの素性は基本的に秘匿とされている余計に性質が悪い。
里の子供達はあの男を見て、忍び全体を見る。
そう、“あれ”を見て、己の目指す地点を知り、
――――真似する様になるかもしれないのだ。


(つまり憧れの忍びとは、遅刻の常習犯で、返事は気だるげで、常時セクハラに訴えられるようないかがわしい書物を携帯し、何時も起きているのか寝ているのか解らない半眼で、更に里の誇りである額当てを変態チックに目隠しに使い、若白髪で、髪はぼさぼさで――――」


「・・・・・あのさ、陰口は聞こえない様に言おうよ」

「独り言に突っ込まないで下さい。
後、陰口だと思うんなら治すように努力してください」


ジト眼で此方を眺めて呟くカカシに、ユメは厳しく言い返す。
すると、即座にカカシは明後日の方向に向き、「良い天気だな」と話を逸らそうとする。

実際、こんなのを見て、忍び全体を見られたりでもしたら迷惑どころの騒ぎではない。いっそ二十四時間暗部として存在してもらった方が里の利益としては大きそうだ、とユメは思う。


「さ、早く火影様も元に行きますよ。―――向こう向いても駄目です。
トイレ休憩も、間食も無しです。迅速に、脇目も振らずに、今直ぐに!」

「・・・・・・・君は俺に死ねと言うのか!」

「これで死ぬなら寧ろ死んでください。
馬鹿なこと言ってないで行きますよ。
――――一応忠告しますけど、
次に寄り道したらそれなりの処置を取らせて貰います」


今直ぐ首に縄でも付けて引っ張って行きそうな勢いのユメに気圧されながら、カカシは「いや、寄り道は寄り道だけど無駄な寄り道じゃないんだよ」と必死な態度で火影岩を指差す。


「中々凄いと思わない?」

「ああ・・・・あれですか。確かに凄いですね」


凄いと思うのは確かだが、
彼女が同意するとは思わずに思わず動きが止まる。

覆面越しだが、その口元は微笑が浮んでいるように見える。


(もしかして・・・・・子供の悪戯とかには母性愛がくすぐられるタイプ?)


だが予想はあっさり覆される。


「強力な接着剤を使用した様で中々落ちないらしいですよ。
市販の接着剤と火影岩の岩石の欠片を予め医療忍術の要領でチャクラによる合成を行い、火影岩の接着性のみに関して通常以上の性能を保持できる様にしたみたいです。アカデミー生に出来る訳が無いですから、事情を隠して火影様に懇意したのでしょう。
・・・・・中々合理的且つ柔軟な発想です。感心します」


「その着眼点も面白いけど、・・・・・・君も中々変な人だね」

「何処がですか。好い加減な言葉は慎んでください」

「いや、俺が間違ってんのかな、今のは?」

(普通悪戯に関しての感想が来ると思うんだけど・・・・・?)


あれだけ規則に五月蝿いのに、子供の悪戯はどうでも良いのかとか、火影を騙すのを合理的で済ませて感心するのは彼女の言う模範的な忍びとして有りなのかとか色々思わないでもないが、恩師の子供が誉められているのに悪い気がせず、カカシもその方向性で話しに相槌を打つ。

何かある度に規則をこと煩く語るので、神経質なのかと思っていたが、
何時も何故か忍び装束の正装なのといい、案外、彼女も図太いのかもしれないとカカシは思い始めた。

そうして道すがらに、火影岩の地層の性質と瞬間接着剤の化学合成によるチャクラの有効活用という異様な話題を和気藹々と語りながら火影邸へと向かう彼らを見て、我が子を「あの人達を見ちゃいけません」と隠す親の行為は一番子育ての上で正しい行為だろう。


因みにその後、時間を守ってカカシを到着させて時間内に到着した事で受付と傍で待機していた知り合い達は騒然となったという反応でカカシの日頃の態度を雄弁に語った。


ツキオツルマボロシノユメ
月堕幻夢
第一章 月の章
−3−


「ふむ。カカシがこんな時間に来るとは珍しい。
医療班でもかなり優秀だが、それ以外のサポートも中々に優秀そうだな」

「――――で、火影様。この人選は何なのですか?」


皮肉でもなんでもなく本気で感心している火影に、カカシは相も変わらず 気だるげに此処に集っている面子の説明を求める。


「それはこちらの台詞だな」

「私は未だ成り立てだけど
・・・・里の上忍が三人も招集されるなんて、S級の任務ですか?」

「ふむ、S級ではないが・・・・
困難さ、重要性で言えば、ある意味ではS級以上じゃな。
アスハ。紅。――――それにカカシよ。
お主達にこれから特別な任務を与える」


その言葉に三人とも目付きが変わる。
気だるげにしていたカカシでさえ、目を開き、背筋を伸ばす。

私事ではとことん手を抜く男だが、
流石に任務――それもS級以上の特別任務―――とあれば忍びに相応しき姿に戻る。

三代目火影。
一度は引退したものの、四代目火影を喪したことにより再び忍びとして返り咲いた男。既に老境の域に達しているのは解っている。解っているが・・・・・


(くっ、半端じゃないな、この威圧感は・・・・!)

(それほど重要な任務って訳ね)


椅子に座り、顔の前で手を組む何気ない動作。
その動きの一つ一つに凄まじい威圧感を感じる。
普段は好々爺とし、年甲斐も無く色を好むどうしようもない爺さんだが、このいざと言う場では流石としか言えない存在感を醸し出す。

忍び五大国の内、最強と呼ばれる火の国。
そして火の国の軍事力を担う隠れ里の中で最強、それも歴代で最強と称される三代目火影はそのまま現存する五影の中でも最強であることになる。

故に、――――それは、この大陸で最強の男と言う意味でもある。


(高齢の衰えがあるとは言え、最強の名は健在ね)


紅は畏怖と共に僅かに感心する。
最近はその高齢が問題視されているが、それでもこの存在感を知る限り、
その疑問は要らぬ心配のようで頼もしい。


―――それが無ければ単なるエロ爺であるからその感慨も一押しである。


(ま、あちらも随分きな臭くなっているみたいだしね。
海を隔てているとは言え、油断できるもんでもないだろうし、
任務もその辺りかね〜。どの国も物騒だからあんまり行きたくないけど)


最近までの倭国の反乱を始め、護法国や天象国でも色々不穏な動きを見せ始めている。特に元から同盟関係に無く、三国で一番の強大さを誇る帝国や辺境の妖魔達による人外の楽園、魔都は以前から決して楽観し出来なかった相手だから尚更緊張も高い。


(下手に今の混沌とした南大陸に喧嘩を売るのはやばそうだしな。
魔都まで動いたら洒落にならないし・・・・・・情報収集の潜入かな?
なら場所は、今は未だ混沌としている倭国かな。
今の護法国や天象国の警戒レベルはかなり高いだろうし。
帝国って線もあるけど、それは勘弁して欲しいな。
――――これで、魔都だ、
なんて言ったら忍者辞めて正式に農家にでもなろうか?)


噂では魔都には九尾クラスの妖魔が多数存在するらしい。
噂に尾は付き物とは言え、そんな確実に死ねそうな場所に三人で行くなどやってられないというのがカカシの本音。
行くなら、五影五人で手を取り合って勝手に行けと言いたいが、
―――普段の態度の悪さを見逃されているカカシでも、それは流石に不敬罪になりそうだから言わない。

他の二人は畏敬の念を覚えている三代目の存在感もカカシには何か不穏さが感じられて心に警戒心が先立つ。
魔都は無いにしても余程困難な任務を命じられるに違いない。


「実は――――――」

「「「――――実は?」」」


ゴクリ、と唾を飲み込み、三代目の言葉を待つ。
酷く言い難そうな三代目の様子に、それほど困難な任務なのかと想像する三者。北大陸は最近は平和な為に大した任務は無かった事で、適度に真面目に、適度に怠惰に暮らしていて正規部隊に位置する大抵の忍びの能力は鈍っているか、低いままがデフォルトである。

それを思い出し、恐らく話に聞く忍び大戦クラスの困難な任務、――九尾鎮圧以来の困難さだろう――に、僅かな恐れと同時に忍びとしての血が沸々と燃えるアスハ。

上忍になったばかりで、まだまだ自分にそんな困難な任務を遂行できる自信が無く、不安を感じている紅。

そして、平和の中に燻っていた己の猛き、冷たい魂に思考が鋭利となりながらも、何故か三代目の態度に近来の己を思い出す様な親近感を感じて、今一つ昔に戻れないカカシ。

刹那の、そして永劫の様に長い沈黙が流れる。
室内に居るのは四人。火影と上忍が三人。
今の彼らは僅かな大気の揺れさえ機敏に感じ取る。
時計の針でさえ、歯車の駆動音、軋み方から時刻を推測する様な超人的な事も可能かもしれない。

三代目は言いずらそうに口の前で手を動かす。
だが、意を決したのか、皺だらけの顔に恐ろしいばかりの威厳を出して高々と命じた。


「お主ら三人には――――――!」

「「「――――!」」」


「新人の下忍の育成を担当してもらう事になった」


瞬間、確かに部屋の空気が死んだ。


―――実のところ、
うずまきナルトなる人物をまるで知らない訳ではなかった。


ハナビは飛び級をしている為に、
現在の学年の人物とは然程長い付き合いがあるわけではない。
期間で言えば精々、半年といったところだろう。
ましてや、家庭の事情で最低限の必須授業を受ければ卒業が可能な為、アカデミーに長期滞在することはないことで、人の縁は益々低い。
ある程度交流がある人物は女子の中に数人。男子ではほぼ皆無になる。

その数人の女子達も、自分よりも年下のハナビに保護欲が沸いて世話を焼いているという感じであるので対人関係の薄いハナビ自身だけにその関係が友人関係なのかどうなのか定義付けるのに少々疑問さを感じる。

うずまきナルトと言う名は彼女たちの中で何度か口にされた名だ。
ハナビの世話を焼いていた所為か、彼女達は度々アカデミー内での良し悪しの噂を語って聞かせていた。
その中で一番語られたのがうずまきナルトなる少年の名。
孤児であり、親は九尾襲撃事件で無くなったとされている少年は活発であると同時に酷く悪戯好きな少年であるらしかった。

親の命を唯々諾々を聞いて、
訓練に明け暮れているハナビとは対照的な存在。
――――かと言って何かしらの関心を抱いたわけではない。

大小様々な悪戯を繰り返し、授業妨害も度々起こすらしく、彼の印象は同学年の女子の中では最悪クラスに悪く、男子の中でも特に良くはない。


(――――まあ、巻き込まれる側としてはそんなものでしょうね)


そんな訳で、彼にはなるべく関わらない方が良いと同学年の女子に忠告されていたが、そもそも他者に関心の薄いハナビだけに誰がナルトか固体認識できてないのが痛かったと言えば痛かった。

話を聞いたときも、そんな人間も居るのだな程度にしか認識していなかったのだから無理もない事だが、真摯に忠告を聞いておけばよかったとハナビの胸中に微かな後悔が過ぎる。

知ってさえいれば、最初に出会った瞬間に無理にでも無視して―――――

そこまで考えて、僅かに嘆息する。


(いや、・・・・やはり出来なかったでしょうね)


結局のところ巻き込まれただろう。
ハナビがハナビで、ナルトがナルトであるが故に。

火影を目指す彼と、火影に複雑な感情を抱く彼女であるが為に。


「馬鹿野郎! お前はもう何度か卒業試験に落ちてんだぞ!
あんな悪戯している場合じゃないだろ!?」


怒り心頭。まさにその言葉が相応しいイルカの形相に、流石のナルトもやや冷や汗を掻いている。ナルトが悪戯をするのは何時もの事だが、今回は時期が悪く、規模もまた何時もの比ではない為にイルカの説教にも気合が入っているのが見て取れる。


(――――それは良いのですが)

「分かってんのか、ナルト!
大体お前、火影岩に落書きするとは何事だ!」


ハナビといのは何度か授業をサボっているが、それ以外の面では優秀な生徒であるし、ハナビに至っては日向一族の事情もありあまり強く言えなかったイルカだが、今回はナルトの悪戯への激怒に触発されて二人への追及もかなり厳しいものへとなっていた。

とは言え、イルカも大人。此処で大人しく謝ればある程度怒りも収まりそれほど厳しい追及には為らなかっただろう。だが―――――


「はいはい、ゴメンナサイ」

「(何故、私たちまで正座されているのでしょうか?)」

「(――――あそこで見つかったのが不味かったわよね)」


全然反省の色が見られないナルトとそのやや後ろで神妙な顔をしながら「木霊法」という無駄に高度な術で会話するハナビといのにイルカの額の血管がヒクヒクと痙攣する。

普通の下忍、中忍ならばれないだろうが、イルカは教員免許を与えられるほど優れた中忍である。ハナビといのの会話等筒抜けである。


「―――ふふ、そうか。
お前らがそういうつもりなら此方にも考えがあるぞ?」

「・・・・・い、イルカ先生。顔が怖いってばよ」

「(ヤバイですか?)」

「(デンジャラスゾーンね。前にキバの奴が一ヶ月アカデミー中のトイレの床を鏡の様になるまで磨かされたときと同じ表情よ。
――――あの時あいつ半泣きだったわ)」


毎日毎日夜遅くまで、ワックスを片手にトイレの床を磨いていれば、キバでなくとも泣きたくなるだろう。

イルカの後ろでナルトを馬鹿にしていたキバを代表とする男子だが、イルカの不穏な声と、その阿修羅の如き表情に何かしら身に覚えが有るのか一気に静まる。


「三人とも南大陸の情勢を古文に直した後でこの間に教えた図形転置法の暗号文で書き直せ、――――今日中に、最低千文字で、だ!
出来なけりゃ暗号文と歴史の課題を山ほど出してやる覚悟しろよ!!」

「うげぇえええええええ!!」

「―――また面倒な課題を」

「図形転置法の暗号文・・・・転字形の初級暗号文よね。
どんなんだったかしら(まあ、シカマルに手伝わせよう)」


どんなやり方かは分からないが、歴史、古文、暗号文というだけで脳が拒絶反応を起こして叫ぶナルトとその意味を明確に把握し、あまりの面倒臭さに思わず口を開くハナビ。そして胸中で不穏な言葉を呟くいの。

その三者の反応を眺めた後、三人を置いて鼻息荒く、教卓の前に立つ。

「この三人を除き、今日はこれにて解散だ。
なお、全員とっとと帰宅する様に、善意にしろ悪意にしろ、間違ってもこいつ等の作業に関わるなよ、関わった奴は―――――どうなるか、わかってるだろうな?」

額を痙攣させて笑うイルカに、全員が冷や汗を掻き、
コクコクと無言で頷く。


(シカマル〜)

(いのを怒らせたくねぇけど・・・・・)


幼馴染にチョウジに触発され、シカマルはそっとイルカの顔を見る。
ふと目が合い、にっこりと此方を見て笑うイルカを見て、シカマルは久々に全身を駆け抜ける冷たい戦慄を感じる。


(親父の浮気疑惑で怒り狂ったお袋と同じ感じだ。
・・・・・下手したら死ぬな)


あの時の父の惨状を思い出し、大量の冷や汗を掻く。
いのを怒らせたくないし、出来れば助けてやっても良いのだが、
流石にこの状態のイルカを敵に回してまでやりたいとは思わない。


(とっととずらかろう)

(・・・・・いのが怒るよ)

(花でも・・・いや、あいつの家は花屋だな。
明日、綺麗な物か、旨い物でも送っとけ)

(前に両方送ったときに受け取った後、鎖骨を折られかけたの忘れたの?)


類稀な頭脳が封印していた記憶を蘇らせる。

あれはあれで恐ろしかった。
いや、大体あれはチョウジが綺麗な物と称してビー球を上げたのが致命的だった気がする、と考えたが、そもそも自分達の身の上では宝石やアクセサリーを買うなど無理があると思い直す。


(――――卒業試験まで旅に出るか)

(そうだね)


アイコンタクトで全てを語る二人の瞳は悲哀と絶望に満ちていた。


作者の一言。
今回はカカシ先生初登場。オリキャラさんも一人登場。
かなり原作とは違う展開になりそうです。
因みに南大陸の話は完璧オリジナルです。
どんな国があるかも当然オリジナルです。
どんな国かは次回で語ろうと思います。


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