夢
「……だれ?」
「ぼくは、せかいいちのまじゅつし!」
「……ほんと?」
「うん」
「じゃあ、わたしがおひっこししないようにって、できる?」
少年は夢を見ている
「わたし、もうどこにもいきたくないもん。……」
「ねえ、まじゅつしだったら、わたしのおねがい、かなえてくれる?」
「やっぱりできないんだ。……」
子供のころの夢
「ほんとうはまじゅつしじゃないんでしょ」
「うそつき」
「じゃあこのおねがいかなえてよ」
本当ならば、少年はここで少女の願いを聞き、雪を降らす……はずだった。
だが、今回の少女のお願いは、斜め45度のちょっと上あたりをいっていた。
「まほうしょうじょになりたい!」
電波魔法少女
マ ジ カ ル
本気狩るキシャー
とらいある版
「うわわわわわ!」
よほど夢見が悪かったのか、少年が飛び起きた。
少年の名前は式森和樹。
魔法のエリート校である、私立葵学園の2年B組の生徒だ。ちなみに出席番号一三番。
そんなエリート校の、おちこぼれ、それが彼、和樹だった。
『人間は生まれながらにして魔術師である』という事柄が起草されたのはもはや戦前のころ。
そのときから、人はみな、魔術師ということになった。
しかし、彼は一般人ですら十数回は使えるという魔法を和樹は7回しか使えない。
「落ちこぼれ」と呼ばれているのにはそんなわけがあった。
しかし、実は彼の魔法は生まれつき7回だったわけではない。
実は生まれたときは、108回はあったのだったのだ。
除夜の鐘と同じで覚えやすい。しかし、この回数すら、彼の後の運命を物語っていたのかもしれない。
とりあえず、101回分もなくなってしまったのには訳があった。
「まほうしょうじょ、かぁ……。あの時、あの子にさえあっていなければなあ……。」
あの子、とは夢の中に出てきた女の子のことだ。
それにしても、人は生まれつき魔術師なのに、魔法少女とは、これいかに? と思われる方もいるだろう。
当然、当時の和樹もそんなことくらいは知っていたわけで。
―――夢の続き
「でも、みんなまほうつかいなんだよ?」
「ちがうの! わたしはまほうしょうじょになりたいの!
つえをふりまわしてへんしんしたりとか、ほうきでそらをとんだりとか。しゃべるくろねこがいたりとか……。」
「いや、それなら、じぶんで―――」
「できないの?」
少女は潤んだ目で少年を見上げた。
「うっ。」
「……うそつき。」
「で、できるさ、それっくらい!」
少女はその言葉を聞くと、ぱぁっとひまわりのような笑顔を見せた。
―――あの笑顔にだまされた、と後に和樹は思った。
「じゃあ、おねがい!」
「えっと、どういうのがいいの?」
「とりあえず、みためはまほうしょうじょっぽいの! あ、ほうきとかもわすれないでね!」
「え……っと、じゃあ……」
少年は手を少女の方に向け、魔法を使う。すると、少女の姿が見る見るうちに変わり、ある姿になる。
それは某赤いキャンディと青いキャンディで大きくなったり小さくなったりできる魔法少女に酷似していた。
「こういうのでどうかな?」
「だめ! もっとおとなっぽいのがいい!」
しかたがないので少年はもう一度魔法を使う。すると今度は魔法のコンパクトを持った少女になった。
「だめ! ほうきとか、そういうのがほしい!」
「ええー……。」
その後も少年は魔法使う→少女を魔法少女の姿に変える→だめだし食らう→魔法使う→……
という、最悪のサイクルを強要された。
そして、
「すごいすごい! わたしがなりたかったのはこういうの〜。」
「は、ははは……」
少女が、自分の望む「まほうしょうじょ」になれたころには、そのだめだしは100回にも及んでいた。
つまり、コレが少年の魔法回数が減った理由なのである。
―――夢と理想の終わり
「はぁ……、いまさら昔の失態を悔いてもしょうがないか。さっさと学校にでかけよ……。」
和樹は朝食(トースト2枚)を牛乳でかき込むと、歯を磨き、制服に着替え、寮を後にする。
寮を後にし、通学路を小走りに駆けてゆく。
しかし、そんな和樹を電柱の影から見守る影があった。
「ふふふふふ……、和樹さん。一人でさびしかったでしょう。でも、もう大丈夫。今日からはあなたの妻のこの
式森夕菜がずっとそばにいますからね……。」
ここに警察の人がいたら、おそらく確実に補導されているであろうこの少女こそ、夢に出てきた女性であった。
―――宮間夕菜、それが彼女の名前であった。
幼い時にあった、男性のことを一途に思い続けている、と言えば聞こえはいいだろう。
しかし、彼女は、もうすぐで固有結界になりそうなくらい、妄想が激しかった。
彼女の頭の中では、すでに和樹は旦那決定らしい。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の様、しかしその実態は放射性物質よりもタチが悪い、それが彼女だった。
「さて、和樹さんは学校に行ったようですし、新居をきれいにしておくのは、妻として当然のことですよねっ!」
本当の夫婦なら当然……なのかもしれないが、もちろん、2人はそんな関係ではない。
もし勝手に入ったら住居侵入罪にでも問われて、警察のご厄介になるはずなのである。
しかし、この少女は、そうはならなかった、訳は追々話すとしよう。
そして、少女は寮の、少年の部屋の前に来た。
なぜ部屋がわかるのか? というと、少年が出てくる前からストーキ(略)をしていたからだ。
「さあ、和樹さんの妻としてのお仕事の第一歩ですわっ! ……あら?」
人間、家を出るときは、用心のために鍵をかけるのは当たり前である。
そして、和樹ももちろんそうであった。
つまり……、鍵がかかっていて入れないのだ。
「くっ! この扉めっ! 私と和樹さんの甘い生活を邪魔する気ですか!」
もし、扉に命があって、しゃべれるのだとしたら、そんなこといわれてもなぁ、とか返していたに違いない。
そりゃあ扉からしたら、不法に侵入しようとする人――言わずもがな、夕菜――を止めるのは当たり前のことで。
「くっ、こうなったら!」
と言うと、少女はハンドポーチを取り出し、ファスナーをあけ、中に手を突っ込んだ。
少女が中から取り出したのは、
――――釘バットだった。しかもところどころ紅い。
ハンドポーチに入るわけないのに、どうやって取り出したんだ? とかは聞くな。聞くとホムーランされるZO♪
そして、夕菜はその釘バットでドアをぶち破るのかと思いきや、釘バットを頭の上の方に掲げて、
「ファイナルッッッッ、フュゥゥゥゥゥジョォォォォォォォォン!!」
なんか叫んだ。
すると、突然、夕菜の体が光り輝き、光り終えるとそこには、
ガ○ガ○ガーじゃない「魔法少女……らしきモノ」が立っていた。
背丈は明らかに小学校高学年〜中学前半。ニヤリと笑うその姿は怖いほど似合っている。
ピンクの神 髪によく映える真っ赤なフリフリの衣装に同じく紅いベレー帽。スカートは膝上15cmフリルつきだ、ヤッタネ♪
なんでも紅いのは実用的だからだ……意味は聞かないでくれ、タノム。
背中には当然のごとくス○ルス○オー2がくっついている。ワアッ、空中飛行もブロ○クンファン○ムも可能ナンダネ! スゴイヨ、カアサン!!
もちろん手には釘バット。なんか泣きたくなってくる。
ていうか、夕菜よ。君がなりたかったのってそんなのなのかい?
マアイイヤ。んで、魔法少女夕菜は「ちがいます」……おや?
「この姿のときにはマジカル・ユーナです!」
だそうで。マジカル・キシャーのほうが似合「何かおっしゃられましたか?」……いえ、何も言ってませんから振りかぶるのだけはヤメテクダサイヤメテクダサイ……。
「まぁいいです。とりあえず、今はこの邪魔者の排除です!」
と、叫ぶとマジカル・キ「ユーナです!」……ユーナはドアのほうを向き、バットを構えた。ああ、見事な一本足打法ですね。
「マジカル・代打逆転満塁サヨナラホムーラン・ヘルアンドヘブーーーーン!!」
ナガッ! つかもはやマジカルでもなんでもない! と、とりあえず、マジカル・ユーナはそう叫ぶと、バットを振りかぶった。
なぜか釘バットが光り輝き始めた。そして、
「和樹さんと私のあまぁい新婚生活を邪魔する悪しき扉よ!! 光にィ、なぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
―――振り下ろした。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという音を立て、ドアは跡形もなく消し飛ぶ。破片すら残らない。合掌。
バットを振りかぶったマジカル・ユーナは右足を地面につき、バットを上に放り投げた。
なぜかその背には「5」という背番号がうっすらと浮かんで見える。
……あなた大阪近鉄だかどこかにいなかった?
「邪魔者は消え去りました! さあ、お掃除です。」
バットを拾うと、ずかずかと和樹の部屋に入ってゆくマジカル・ユーナ。ちなみにさっきした音は外には聞こえていない。
なんでも事前に防音結界を張っておいたそうな。……ヤル気だったなテメエ。
ちなみに、住居侵入罪で捕まらないのは、何かマズいことがあると、
「マジカル・君が○む永○〜〜!!」
と唱え、対象者を釘バットで殴打すると、何があったのかを全部忘れてくれるからだそうな。くそう、ド外道。
ていうか、それ、違う理由で忘れてないか? つか、その人無事なのか?
ちなみに、この魔法(らしきもの)、使用したとき、60%の確率で、吹っ飛んだ後に、いつの間にか迫ってきていたトラックにはねられて、病院送りになって、記憶喪失にまで陥ってしまうという追加魔法に発展するらしい。
あな、おそろしや、魔法少女。
「と、いけないいけない。扉を元に戻しておかないと、和樹さんが帰ってきたときにびっくりしちゃいますね。」
いや、それ以上に違うことにびっくりしないか?
「マジカル・復元呪詛〜っ!」
……マジカルつけばなんでもいいの? とりあえず扉はあっという間に元に戻った。……便利だなぁ。
「さて、元の姿に戻りますか。マジカル・ユーナ、バトルタァァァァァァァン!!」
いや、それ絶対違う!! 掛け声間違ってる!!
理不尽にも、元の姿に戻った夕菜。しかし、下着以外が脱げている。
なぜ脱げるのかは、視聴者サービスだと思ってくれい。視聴者ってとこが不明だけど。
「元の姿に戻ったときに服が脱げちゃうのが、難点ですね……。よいしょっと……。」
バットをポーチの中にしまい、服を着ようとする。と、そこに、
ガチャ...
「え……、き……きゃあああああああっ!!」
帰ってきてしまった少年、式森和樹の最悪なる人生は、ここから始まるのだった……。
次 回 予 告
自らの旦那(自称)である、式森和樹を篭絡せんと、いろいろと頑張る夕菜。
しかし、そこにサイコフレーム搭載済みの風椿玖里子と、斬艦刀装備済みの神城凛が現れる。
彼女らは、宮間が強力な力で式森を篭絡しようとしていることを嗅ぎ付け、"秘密兵器"の使用を許可したのだった!
怒る夕菜、ついに放たれる「キシャー」のセリフ、気力が150に! ついでに底力発動!!
それに対するは、共振現象を発動させた玖里子と、斬艦刀の真の姿(部屋貫通)を開放した凛!
うなる夕菜のブロ○クン・ファ○トム、迸る玖里子の霊符ファ○ネル、迫る凛の一文字切り、そして巻き込まれて空を舞う式森和樹。
埒が明かない三つ巴の戦いに終止符を打つべく、夕菜は異世界から、ついにあのハンマーを取り出す!!
次回! 「和樹、飛んで飛んで飛んでK点越え!!」 を
「見てくれないと、暴走しちゃうわよ♪」
続……かない。
わがち〜です。
書いて、という声があったので急いで書いてみますた。
ちなみに多分続き書きません。
短いのはお許しくださいな。私の腕ではコレが限度……ゲフゥ。
「この犬ッコロが! この犬ッコロが!」と叫びながら、シロのおちりを殴打している夕菜(GSとまぶのクロスで)とか
浮かんできましたが、書けそうにもありません。さすがにそれは書く気0ですが。
A’sですが……やっぱりヤバくなりそうなので、封印指定行きかなあ……。
とりあえず、ss用に再構築してみます。SRC用だったの無理やり詰め込んだのがいけなかったんで。高沢誠一様の許可云々いっちゃったからGSは出そう、ウン
あと、ホムーランは誤字じゃないです。元ネタ知っている方はニヤリとしてくださいな。
改定で次回予告(偽)追加しました。ただ、コレは信じないでくださいな。一発ネタのつもりなので……。
もし、万が一続き書くとしても、そんな話にはしません。ご安心を。