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「響き合う時間の中で  【第一章】(ときメモ2+ハンター×ハンター)」

番犬 (2005-02-11 17:41)

 眼下に広がる日本の町並み。金髪碧眼の少年が、その町を飛行機から見下ろしながら、隣のアイマスクをして毛布を被っている少年に声をかける。

「おい、そろそろ着陸するぞ?」

「うにゃ? ふぁ・・・あ〜・・・やっぱり日本は遠いね〜」

 黒髪の極普通の日本人の少年はアイマスクを外して大きく欠伸を掻く。

「お前、そんなに呑気で良いのか? 俺達が何で日本に来たのか忘れたか?」

「覚えてるよ〜。仕事は仕事って割り切ってますよ、僕ぁ」

「なら良いが・・・」

 金髪の少年は不安そうに黒髪の少年――月上 氷真を見た。


「いや〜! 懐かしの我が故郷ひびきの市! うぅ・・・今までの生活が走馬灯のように・・・」

「さ、馬鹿やってないで指定された住居に行くぞ」

 駅を降りるなり涙を流して叫ぶ氷真を、金髪の少年――アラン=カレンツァが周囲の視線に僅かに頬を染めながら引き摺って歩く。

 駅からタクシーに乗り、指定された住所に行く。そこには、極普通の一軒家がポツンと建っていた。

「あ〜、昔の家だったら学校も近かったのにな〜・・・」

「しょうがないだろうが。此処に来たのだって、お前が地元ってだけなんだから・・・」

「はぅ〜・・・」

 気色悪い声を上げる氷真にゲンコツをかまして家に入る。家には既に家具などが準備されていた。氷真とアランは、とりあえず荷物をリビングに置いて、ドカッとソファーに座り込む。

「時に氷真」

「ん?」

「俺達はひびきの高校とやらに入学するな」

「そだね〜」

 コポコポと湯飲みに緑茶を注ぎながら氷真は頷く。

「で、入学式は四月五日だったよな?」

「そだね」

「今日は何日だ?」

「四月六日だね〜」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 少し暗い沈黙。氷真のズズズとお茶を飲む音が何故か大きく聞こえる。

「早く着替えろ!!!」

「初っ端から遅刻ッスか!!」

 ダッシュで二階へ駆け上がり、制服に着替えると二人は慌てて家から飛び出した。


「ワシがこの学校の校長・・・爆・裂・ざぁぁぁあああん!!! である」

 丘の上にあるひびきの高校の校長室にて、校長である爆裂山のド派手な挨拶がかまされた。が、直に聞いていた氷真とアランは何の反応を見せない。

「む! やるな! ワシの挨拶を聞いて平然とするとは・・・」

「はぁ・・・」

「しかし、初っ端から遅刻とはお主ら、只者ではないな!」

 ほむらですら数時間の遅刻だったと爆裂山は高笑いする。っていうか、遅刻も何も、単に上司の手違いなだけである。

 氷真とアランには全く持って責任は無い・・・・筈である。

「まぁお主らの事は彼奴から聞いておる。普通の学生生活には馴染みにくいかもしれんが、楽しんでくれたまえ」

「は〜い」

「分かりました」

 氷真とアランはそれぞれ返事をすると、校長室から出て行った。爆裂山はフゥと溜め息を吐くと、窓の外に目を向ける。

「日本も物騒になって来たのぉ・・・」


「イギリスから来ました月上 氷真です。よろしく」

 1−Cに案内された氷真はクラスの人間に向かって頭を下げる。クラスの人間達は入学式から一日遅れで来た氷真にザワつく。が、その中で一人の少女が立ち上がって声を上げた。

「ひ、氷真君!?」

「おろ?」

 立ち上がった少女は赤いショートヘアに活発そうな娘だった。その少女を見て氷真は頭の中に小さい頃に、自分の後を付いて回っていた少女の事を思い出す。

「ん? 何だ陽ノ下、知り合いか?」

「え? あ、う・・・」

「あ〜、光か」

 担任に尋ねられて言葉を詰まらせる少女――陽ノ下 光を見て、氷真はポンと手を叩いた。

「昔、日本にいた時の知り合いですよ、先生」

「そうか。まぁ適当に空いてる席に座っときなさい」

「は〜い」

 そう言って氷真は適当な席に座る。斜め前にいる光がこちらを振り向いて手を振って来たので、氷真も微笑んで手を上げた。


「でも久し振りだね〜、氷真君」

「ざっと七年だね〜」

 放課後、氷真は久し振りという事で光と一緒に下校していた。既に夕陽が沈み始め、公園には氷真と光しかいない。

「おじさん達は元気?」

「死んだ」

「そっか・・・死んだ・・・・って、え?」

 何だかサラッととんでもない事を言われたような気がして光はギョッとなる。

「だから死んだって」

「えっと・・・死んだって・・・?」

「つまり心臓止まって、墓の下」

「う、嘘!? あの、おじさんとおばさんが!?」

 光にとって氷真の両親は、実の親と同じくらい可愛がって貰った大好きな人達だ。そんな人達が亡くなったなど、彼女には信じられなかった。

「な、何で?」

「う〜ん・・・それはね・・・ん?」

 説明しようとした氷真だったが、ふと眉を顰めた。

「氷真君?」

「光、ちょっと悪いね」

 氷真はポケットから黒い手袋を取り出して嵌めると、急に光を抱きかかえた。

「え!? ちょ、ちょっと氷真君!?」

 いきなりお姫様抱っこなんかされて光は顔を赤くして慌てる。だが、氷真は先程までのノホホンとした様子も無く、真剣な顔をしていた。

「よっと!」

 すると氷真は飛び上がると、近くの木の上に乗っかった。

「え? え〜!?」

 何だか人間の跳躍力じゃないような気がして光は大声を上げる。

 ズドンッ!!

 その時、先程まで自分達のいた所にナイフが突き刺さった。

「!?」

 だが、そのナイフの威力は半端ではなく、地面にボコッと半径1メートル程の大きな穴が空いた。

 唖然となる光を下ろし、氷真はポンと彼女の頭に手を置く。

「良いな、光? 此処から絶対に動くなよ」

 何だか訳が分からず、機械のように縦に頷く光。氷真は木から飛び降りると、先程、ナイフの飛んで来た所に歩いて行った。

 ビュンッ!!

 すると再びナイフが飛んで来たが、それは氷真に当たる事は無かった。何と氷真の前に氷の壁が出来上がり、ナイフを防いだ。

 氷真はナイフを取ると、フッと唇を歪めた。

「放出・・・いや、強化系か・・・結構な周の使い手の様だけど、まだまだだね〜。出て来なよ・・・・僕の円は半径130mだから隠れても無駄だよ」

 すると茂みの中からサングラスに黒のスーツを着て、深く帽子を被った男が出て来た。その胸元には剣に巻き付いた蛇のエンブレムがあった。ソレを見て、氷真は目を細める。

「どうやら僕らが日本に来てるのは既に分かってるみたいだね・・・」

「ハンター協会の狗が・・・」

「んふふ〜。随分と下っ端の様だけね〜。僕も随分とナメられたな」

「ふん、小僧が」

 男はニヤッと笑うと両手に幾つものナイフを持った。光はその様子をゴクッと唾を呑んで見守っていた。


 アランは学校の屋上で夕陽を眺めていた。そして、フゥと息を吐くと、気だるそうに言う。

「別に俺達がバレて困らない訳ではないが・・・・仕掛けるのが早過ぎだ」

 そう言って振り返ると、そこには公の前に現れた男同様、黒服にサングラス、そして剣に絡みついた蛇の刺繍を持った男がいた。公と違い、こちらは随分と細身だ。

 その男は舌を出して笑みを浮かべると、スッと指を伸ばして来た。

 ピッ!!

 すると指の先端から一筋の閃光が放たれる。アランは顔を逸らして閃光を避ける。閃光が当たったフェンスを見ると、フェンスはジュッと音を立てて溶けていた。

「単純な放出系能力者だな・・・」

 アランは相手が随分と格下だと確信すると、強く拳を握る。

「念を使うまでも無い・・・掛かって来い」

 そう言い、アランは手を振って相手を挑発した。


 黒服の男が投げつけてくるナイフを氷真は全て紙一重で避ける。

「やれやれ・・・下っ端が僕に敵う訳ないでしょ〜・・・がっ!」

 ナイフを取り出そうとした黒服の男との間合いを詰め、氷真は回し蹴りを喰らわせる。

 黒服の男は地面を擦りながら何とか態勢を整える。が、足が急に動かなくなったので足下を見ると、何と足首までが凍り付いていた。

 氷真はニヤリ、と唇を上げると手に氷の刀を作り出した。そして黒服の男の喉元にピタリと突きつける。

「どうせ下っ端だから指令とかは全部、メールとかでしょ? 本部とか何処か知らないんだろうし・・・・生かしておく必要は無いよね」

 そう言った氷真だが、木の上で震えている光を見て、氷の刃を引いた。

「ま、今は幼馴染が見てるから生かして上げ・・・・」

 ドスッ!!

 だが、黒服の男はシンジの言葉を遮り、自分の胸にナイフを突き刺した。それを見て氷真は目を見開き、光も口を押さえた。

 黒服の男はドサッと前のめりに倒れ、絶命する。氷真は舌打ちすると、木の上の光の所へ行き、呆然と死体を見る彼女を抱えて木から下りる。

「光、大丈夫かい?」

「え? あ・・・う・・・」

 言葉にならない光。まぁ無理も無い。今まで普通の女子高生だった彼女だ。急に人が死ぬという光景を見せられて、すんなりと受け入れられないだろう。

「とりあえずコレを何とかしないとね・・・」

 氷真は光を一時置いといて、死体をどうにかしようとした。

「う〜む・・・とりあえず連絡入れよ」

 ポケットから携帯を取り出し、氷真は何処かに連絡を入れる。

「ああ、どうも。ハンターbP7648の月上 氷真です。ひびきの高校の近くの公園で少々、一戦やらかしまして・・・・・・ええ、相手は死亡。急ぎ、県警を回して下さい。死体は茂みに隠しておきますので・・・・はい」

 そこで電話を終えると、光が恐る恐る尋ねて来た。

「ひ、氷真君、今の何処に?」

「ん? 警視総監」

「・・・・・・・・へ?」

「とりあえず僕の家来る? 色々と訊きたいんでしょ?」

 光はコクコクと首を縦に振るしか無かった。


 氷真は光を自宅に招き、コーヒーを差し出しすと、唐突に述べた。

「僕ってハンターなんだ」

「ハンター? 氷真君、イギリスで猟師でもしてたの?」

「あんなもん見て、その発想が出来る君は凄いよ」

 氷真はアハハ、と乾いた笑いを浮かべ、カードのようなものとを取り出して見せた。

「コレがハンターライセンスだよ。ハンターってのは、光が想像するアフリカで動物を銃で撃つような職業じゃないよ。遺跡保護とか、警察じゃ手に負えない犯罪者の取り締まりとか・・・人々の役に立つような仕事さ」

「へ〜・・・でも何で氷真君が?」

「う〜ん・・・」

 氷真は言うべきかどうか考えるが、光にも聞く権利はあると考え、説明した。

「ウチの両親ね、殺されたんだよ」

「え?」

「イギリスに行って二年ぐらいしてからかな・・・・僕がスクールから帰って来たら・・・ね」

 それで氷真は両親を殺した犯人を捕まえようとハンターになる事を決めたと言った。日本では、ハンターは浸透していない。他国でも、ハンターは裏社会の仕事だから、メジャーとは言えない。

「で、僕と一緒に日本に来たアランって奴がいるんだけど、僕らは個人活動じゃなくて、ハンター協会のエージェントなのさ」

「エージェント?」

「そ。実は最近、イタリアのマフィアが日本に闇市場(ブラックマーケット)を開こうとしてる情報があってね〜・・・それで僕とアランが視察で来た訳。任務内容は『マフィアの拠点の捜索。状況によっては殲滅』ってね。相手にも念能力者がいるから、被害を考えると少数精鋭が望ましいのさ」

「ネン?」

 光が首を傾げると、氷真はウ〜ンと口許に指を当てて考える。

「念って言うのは僕が氷作り出したり、相手がナイフを凄い威力で飛ばしてたでしょ? ああ言う力の事さ」

 そう言って氷真はカップの中のコーヒーを凍らせた。ソレを見て光は驚いた顔になる。

「念って言うのは誰もが持つ生命エネルギー・・・つまりオーラを自在に操る事を言うんだ。本当はハンター以外には教えちゃいけないんだけど、まぁ光だし良いかな」

 光は「はぇ〜」と氷付けになったコーヒーを凝視する。

「僕の場合はオーラの性質を冷気に変化させてるんだよ」

「そっか〜・・・氷真君、イギリスに行って色々あったんだね・・・」

「まぁね。けど光を巻き込むつもりは無かったんだけど・・・・予想以上に相手が早く動いて来たな〜」

「ううん。それは良いの・・・・氷真君が守ってくれたし・・・」

 その言葉に氷真は少し気恥ずかしいのか、頬を掻く。だが、光は表情を暗くして恐る恐る尋ねた。

「氷真君さ・・・やっぱりその・・・・人を殺したり・・・してるの?」

「怖い?」

 クスッと手に顎を載せて笑う氷真。それは肯定しているという事なのだが、光はとても怖いという気にならなかったので首を横に振った。そんな彼女の反応に氷真は温かく微笑むと、玄関を指差した。

「暗くなって来たし、そろそろ帰りなよ。何なら送ってくけど?」

「ううん、大丈夫。一人で帰れるよ」

 そう言うと光は立ち上がった。

「安心しなよ、光。僕は変わったつもりは無いよ・・・・また明日、学校でね」

 その言葉に光は表情を明るくすると「うん!」と力強く頷いて、帰って行った。

「ふぅ・・・・さて、早速エスプレッソでも・・・」

「アホ」

 どかっ!

「OUCH!」

 何故か無駄に発音の良い英語で前にずっこける氷真。その後ろでは足を伸ばして表情を引き攣らせているアランがいた。

「やぁアラン。日本では帰って来たら『ただいま』、だよ」

「氷真、貴様・・・・何をベラベラと部外者に話してるんだ?」

「しょうがないでしょ〜が。巻き込んじゃったら事情を話す義務があるでしょ〜に。それに、守秘義務がある訳でもなし・・・」

「だからって念の事まで話すか普通?」

「まぁ良いじゃん、良いじゃん。光だったら知ったって悪用する奴じゃないし、第一、覚えようにも覚えれないっしょ?」

 そう言われてアランは「む・・・」と言葉を詰まらせた。

「で? アランとこにも刺客来たんでしょ?」

「ああ。下っ端だが、放出系の能力者だった」

「どうしたの?」

「結果的にはお前と同じだよ」

 そう言われて氷真は「そっか」と大して気にも留めずに頷いた。

「けど下っ端でも念能力者がいるもんな〜・・・はぁ、もう少し連れて来れば良かったかな」

「援軍が来るまで俺達で辛抱だ」

 愚痴を垂れる氷真を宥め、アランはエプロンを着ける。

「あ! 僕、松坂牛のステーキに鯛の舟作り・・・・はぐぉっ!」

 ごちんっ!!

 滅茶苦茶なリクエストをしてくる氷真に向かってお玉を投げつけ、アランはせっせと夕食の支度に取り掛かった。


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