「学園長先生! 一体どーゆーことなんですか!!」
神楽坂 明日菜はまるで七福神の福禄寿の様な頭部をした老人へと詰寄っていた。
明日菜に詰寄られ、学園長と呼ばれた老人―近衛 近右衛門は自らの髭を触りながら飄々と答える。
「まぁまぁ、アスナちゃんや、落ち着いて。」
そう言って、明日菜の質問には答えずネギへと視線を向ける近右衛門。
「話しは聞いておるよ。
修行の為に日本の学校で先生をする。
大変な課題をもろうたの〜、ネギ君や。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
近右衛門の修行という言葉に、?マークを飛ばす明日菜と木之香。
そんな明日菜達を気にも留めず・・・いや、気に留める余裕ほど緊張しているネギは、ドキドキしながら学園長の言葉を聞いていた。
「しかし、いきなり正式に教師として雇うわけにもいかん。
まずは教育実習生として、今日から3月まで働いてもらおうかの。」
「は、はい!!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいってば!!
大体子供が先生って可笑しいじゃないですか!!」
近右衛門の話しに耐えられなくなったのか、大声を上げて話しを遮る明日菜。
そんな明日菜を見て、「フォッフォッフォ」と笑い声を上げる近右衛門。
「そう嫌ってやらんでくれ。
君等2−Aの担任になるんじゃからな。」
「え? ええ゛〜〜〜〜っ!?」
「・・・そんなに大声ださんでも。」
明日菜の心の底からの雄叫びにも表情を変えない近右衛門であった。
魔 法 先 生
ネギま!
Career of mistake
第02話
明日菜が茫然自失となり、身動き一つしなくなっても学園長こと近右衛門は「フォッフォッフォ」と笑うだけで済ませてしまった。
視線を明日菜から再びネギへと戻した近右衛門は、彼の趣味でもある一言をネギへと言い放った。
「ところでネギ君には彼女などおるのかの?
どうじゃな? ウチの木之香など。」
「は、はぁ・・・。」
近右衛門の言葉につい生返事を返してしまうネギ。
その顔は非常に困惑していた。
しかし、それ以上に近右衛門は困惑していた。
『なぜじゃ!? なぜ木之香のツッコミがこないのじゃ!!?』
近右衛門はどうやら孫娘の木之香にトンカチでツッコミを入れられるのを待っているようであるが、当の木之香は依然ネギを見つめ続けているだけだった。
ちょぴり寂しいお爺ちゃんであった。
「ウオッホン。
ネギ君、この修行は恐らく大変じゃぞ? 駄目だったら故郷に帰らねばならん。
二度とチャンスはないが、その覚悟はあるのじゃな?」
ちょっぴり悲しい気分のお爺ちゃんは、気をとり直して再びネギへと話しかけた。
「はい、やります! やり遂げてみせます!
スプリングフィールドの名に賭けて!!」
近右衛門の脅しのような言葉にも怯む事無く、力いっぱい返事をするネギ。
その時、誰も気が付かなかったがネギの姓でもある「スプリングフィールド」の名に反応している少女がいた。
先ほどからずっとネギを見つめていた木之香だった。
ネギは今2−Aへと続く学園の廊下を歩いていた。
彼女の隣には先ほど学園長室でネギの指導教員として任命された、源 しずなが同伴していた。
その後ろには、依然としてネギを見つめ続けている木之香と、真っ白になった明日菜が付いて来ていた。
「あ、あの、しずな先生? 彼女達どうしたんですか?」
自分の後ろにいる女生徒達のあまりの静けさに、ついつい隣にいる先輩教師に助けを求めるネギ。
そんなネギに見つめられながらも、しずな自身理由が掴めない為「彼女達もお年頃ですから」という言葉で片付けてしまった。
あながち間違ってもいない所が凄い。
と、ネギ達が明日菜や木之香の不自然な沈黙に困惑しながらも、ついにネギの受け持つ2−Aの教室へとたどり着いた。
「さあ、あなた達は先に教室へ入りなさい。」
しずなの言葉に明日菜は真っ白なままヨロヨロと教室へと入っていった。
しかし、木之香は依然としてネギを見つめる。
そんな木之香を不思議に思い、ついに声をかけることにするネギ。
「あ、あの・・・、どうかしたんですか?」
「え、あ、いや・・・。
なんでもないんよ。」
そう言いながら、明日菜の後を追う様に教室へと入っていく木之香。
ネギの頭には?マークが飛び交っていた。
「はい、コレクラス名簿。
ネギ君、授業の方は大丈夫そう?」
「あ、はい。
ちょ、ちょっと緊張しますけど、だだ、大丈夫だと、思います。」
ちょっとどころかかなり緊張しているのがハッキリと見て取れるネギの状態に、苦笑い気味のしずな。
そんな中、ネギは廊下の窓から教室を覗いてみる事にした。
ネギの視線の先には、複数人の女生徒達が朝のHR前の時間に、ワイのワイのと雑談に華を咲かせていた。
「す、凄い人数ですね。
こ、この人たちをボクが教えるんですね。」
ますます緊張してしまうネギは、ふと手元にあるクラス名簿の事を思い出し、中を見て見る事にする。
そこには31人もの生徒の顔写真と名前、そして前担任である高畑の書き込みあった。
「早くみんなの顔と名前が覚えられるといいですね。」
「は、はい。」
『うう、こんなに大勢の人達の中でボクやっていけるだろうか・・・。
こんな異国の地で、先生なんてやっていけるかな・・・。』
緊張してガチガチに固まってしまったネギは、旅立つ前に姉のネカネとした話の内容を脳裏に浮かべていた。
『お姉ちゃん、ボクやっていけるかな。』
『きっと大丈夫よ。
だって、あなたは私の弟なのよ?』
『うう、でも、あんまり自身ないかも・・・。』
『フフッ、大丈夫。
だって、あなたはスプリングフィールドの名前を受け継いでるのよ?
ほら、何時ものアレ言ってみなさい♪』
『う、うん。
スーハー、スーハー・・・。
スプリングフィールドの名に賭けて!!』
『ええ、頑張ってらっしゃい。あなたはきっと大丈夫。
誇りを持ってね、ネギ。』
「そう、スプリングフィールドの名に賭けて!!」
「ネ、ネギ君?」
いきなり独り言を言い出したネギに、ちょっと不安げな表情をみせるしずな。
しかし、そんなしずなの不安を余所に、ネギの緊張はいつの間にか消えていた。
「行きます!!」
ネギは、先生としての第一歩を踏み出すべく、目の前にある2−Aの扉を開けた。