「わ〜、すごいや。
人がいっぱい居るんだな〜、日本って・・・。」
騒然とする日本の空港。
ネギ・スプリングフィールドはイギリスから修行のために、はるか遠くの日本の地へとやって来た。
立派な魔法使い『マギステル・マギ』と成る為に―――
魔 法 先 生
ネギま!
Career of mistake
第1話
「ヤバイヤバ〜イ!! 今日は早く出なきゃいけなかったのに〜!!」
麻帆良学園に通う中学二年生、『神楽坂 明日菜』は学園へと続く通学路を、寮の同室であり親友でもある『近衛 木之香』と共に疾走していた。
明日菜の髪飾りの鈴が明日菜の走るタイミングに合わせて鈴音を発している。
彼女の特徴ともいえるオッドアイは少し不機嫌そうな彼女の表情の所為で細められており、遠目には目立たなくなってしまっている。
方や彼女のすぐ側にいる木之香は日本人特有の黒髪を風になびかせ、明日菜の後を追っていた。
「でもさ、学園長の孫娘でもあるアンタが何で新任教師のお迎えまでしなくちゃなんないの?」
「スマン、スマン。なんやじいちゃんが『どうしても引き合わせたい』言うてな。」
木之香は疾走する明日菜の少し後方をローラーブレードを履き、追いかけていた。
中学生がローラーブレードで登校しているもの珍しい事だが、その前を疾走する明日菜の体力はもっと珍しい。
一般の女子中学生では有り得ない速度で疾走し、他の生徒をドンドン追い越していった。
「じじいの紹介ね〜。またお見合いなわけ? 大変ね〜、あんたも。」
「そういう話とは違うみたいやったよ? でも、今日は運命の出会いありって書いてあったから、それもあり得るかもしれんな〜。」
そういって肩に下げているカバンから週刊誌を取り出す木之香。
明日菜もそんな木之香のほうへ視線を向ける。
「へぇ、そうなんだ〜。
私はいいわ。運命の人ならもう出会ってるし〜♪」
「そうけ?あ、でもほらココ。
明日菜も運命の出会いありってかいてあるえ♪」
「なにそれ? きっとインチキね。
私は運命の人に随分前に出会ってるわよ?」
「え〜、結構当たるって評判やけど・・・。
あ、ここ。好きな人の名前を10回言って『ワン』ってなけば、恋愛運上昇って書いてあるえ♪」
「え!? マジ!!
高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、ワン!!!」
木之香の言葉に多大な反応を見せ、すぐさま行動に移す明日菜。
周りの生徒達は明日菜の奇行に驚きを隠せず、ついつい距離をとってしまう。
そんな明日菜と周りを見て、目を真ん丸くしてしまいちょっとばつが悪そうな木之香。
「あははは、明日菜。高畑先生の為ならなんでもするなぁ。
まさか本当にやるとは思わへんかった。」
「殺すわよ・・・」
木之香の反応についつい声に凄みが出てくる明日菜。
「あれ? でも、この占い信じないんやなかったんけ?」
「そ、そんなの場合にヨリケリよ。」
ばつが悪いのか木之香から視線をずらす明日菜。
そんな明日菜を尻目に、再度週刊誌へと視線を落とす木之香。
「えっと、他には・・・。
逆立ちして開脚の上全力疾走50mして『ニャー』と鳴く・・・。」
「やらねぇ!!」
「あにゃ!?」
ドテッ
木之香の読み上げる占いの内容についつい大声で否定する明日菜。
そんな明日菜の大声の後、謎の声と誰かが倒れる音がした。
「へ? なに?」
立ち止まり辺りを見回す明日菜と木之香。
そして二人の少し後ろの方で、倒れている小学生と思わしき男の子が倒れていた。
「ガキ?」
「あやや、ボク大丈夫か〜?」
「は、はひ。だいひょうぶです。
鼻打っちゃいました。」
テヘヘと照れくさそうに笑っているのは、冒頭で日本に着たばかりのネギ・スプリングフィールドであった。
そして、そんな彼を少しは離れているところから眺めている明日菜と、駆け寄って助け起こす木之香。
しかし、彼女達二人は照れ笑いしている少年の顔を見た瞬間、なぜか動きを止めていた。
「???」
急に動きを止めた明日菜達を目を丸くして見つめているネギ。
ネギの困惑を余所に、明日菜は胸に広がる懐かしいと感じる感情と、胸のトキメキを感じていた。
そして木之香は、今現在疎遠になってしまっている幼馴染のクラスメイトと共に遊んだ、自分達にとっての頼れるお兄ちゃんだった少年の面影を、照れ笑いしている少年を通して見ていた。
「あの?」
ネギの声で途端に現実に戻ってくる二人。
木之香はネギを助け起こし、明日菜もネギに近づいていった。
「ボク、大丈夫なん?」
「はい、大丈夫です。
ありがとうございます。」
木之香に助け起こされつつ、日本の女性はやっぱり優しいなぁと感慨に耽っている彼は、急に胸倉をつかまれる。
ネギの胸倉を掴み、彼の顔を覗き込んでいる明日菜は、やはり無くならない胸の鼓動と感情に困惑していた。
しかし、そんな困惑を断ち切るかのように、子供嫌いと公言してはばからない明日菜はネギを睨みつけ、脅すように声を凄ませ話しかけた。
「なんでこんな所にガキがいるのよ! ココは女子校エリアなのよ!?
アンタみたいな初等部のガキがこんな所に入り込んでくるんじゃないわよ!!」
「あぶぶぶぶ!??」
急に胸倉を掴まれ頭をガクガクと揺すられるネギ。
そんな明日菜の腕を掴み、とりあえず幼児虐待を止める木之香。
「明日菜、初等部の子、あんまり苛めたらあかんよ?」
「いいのよ、ガキなんて! どうせいたずらで入り込んだんだろうから!!」
「ち、ちがいますよ〜!! ボクはココに用事があって――」
「ガキが何の用なのよ!!」
「明日菜〜。」
「いやー、いいんだよ、アスナ君!」
そんな中、3人以外の第三者の声が当たりに響いた。
全員が声の方へと視線をめぐらせる。
そこには校舎の中から窓を開け、3人を見下ろしている中年の男性が居た。
「お久しぶりです! ネギ君!」
そんな彼の姿と、彼のは放った言葉についつい止まってしまう明日菜。
「へ? 高畑先生?」
「あ、ひさしぶりー! タカミチ!!」
「!? し、知り合い!??」
そして、自分の思い人である彼の名前を馴れ馴れしく下の名前で呼び捨てにする少年を驚きの表情で見る明日菜。
そんな騒動の中、木之香は高畑が言った「ネギ」という名に反応し、ネギと呼ばれた少年をジッと見つめていた。