ここは、どこにでもあり、どこにもない喫茶店“ネバーランド”
さあ、今日のお客様は?
「やあ、今日はお客さんを連れてきましたよー」
「何で、わざわざ俺があんたと喫茶店に来なきゃならないんだよ!ゲタ帽子!」
首根っこを掴まれて、引きずられてきたらしい少年と、強引に連れてきた青年
「いらっしゃいませ、喜助さん、お久しぶりです。新顔さんですね」
「黒崎サンっていうんですよ。じゃ、アタシはこれで」
言うと、ひらと手を振って去って行く
「おいこらてめぇ!なにがしたいんだ!」
オレンジ色の頭をした少年は怒鳴って、後を追いかけようとします
「きっと、あなたをここに連れてきたかったんですよ。あなたみたいな人は、たまにはこう言うところに来るのが必要だから」
ニコニコと、営業用スマイル+αで言う斉藤小雪
ちなみに、今日は藤原芽衣はお休みだ
「はあ?」
「お気になさらず、黒崎さん。お勘定は、喜助さんにつけときますから。お茶をどうぞ」
顔の疑問符もとれぬまま、お茶を口に運ぶ
「・・・うまい」
思わず、と言ったようにぽつりとこぼす
「ふふ、ありがとうございます。黒崎君は、高校生ですよね?何年生ですか?」
「ああ、一年」
「私は二年生です。ちょっとだけ、お姉さんなんですね、私の方が」
「え」
ぴた、と
茶を口元に運んでいた手が止まった
「どうかしましたか?」
「俺と一つしか違わないのか!?嘘だろ!?絶対二十越してると思ったぞ!!落ち着きすぎだろ!」
「そんなに老けて見えますかねー私」
(なかなか鋭いですね。確かに、精神年齢はそのくらいですが)
ちなみに、彼女が召還されていた期間は五年
それなりに、苦労もしてる
主に、戦争したり、戦争したり、女王様したり(あらぬ誤解を受けるので、様付けはやめてくださいBy小雪)
「いや、老けてるってわけじゃなくて。大人びてるっつーか、そこらの女子高生とは格とか存在感が違う気がする・・・」
もっと簡単に言えば、敵に回してはいけないと少年の本能が訴えかけてくるのだ
実際、敵に回すと恐い事になるのは間違いないだろう
彼女も、生半可な人生経験をしていない
「あらあら、買いかぶりすぎですよ」
ころころと穏やかな笑みを浮かべる小雪
「やっほ〜小雪ちゃん。ケーキ食べさせて〜」
「いらっしゃいませ、都筑さん」
バンと扉を開けて新たなお客がやってきた
スーツの上に黒いコートを羽織った、紫電の瞳の青年
「小雪ちゃんのケーキは美味しいから、俺大好きっ!」
パタパタと全力で振られる尻尾が見えるようだ
そんな都筑を、微笑ましく見守る小雪
明らかに、小雪の方が年上に見える
「都筑さんは、甘いもの好きですからね」
「うん、大好き。あれ、新顔さんだね?名前、なんて言うの?俺は都筑麻斗」
「俺は、黒崎一護だ」
ぶっきらぼうに答えたイチゴに、続きはちょっと驚いた表情になる
「あっ、黒崎って密・・・俺の相棒と同じ苗字だ。へへ、これも何かの縁かな。よろしく、一護君」
「あ、ああ、よろしく」
自分よりも明らかに年上なのに、どこか子供っぽいオーラを漂わせる都筑に戸惑う一護
「都筑さんは、ぴっちぴちの明治生まれですから、労わってあげてくださいね」
「嘘だろ!?」
本当です
「はは、俺は永遠の二十六歳だよ、小雪ちゃん」
それも間違ってはいない
「どちらにしても、あまり変わりありませんよ。それより、そのブルーベリーのシフォンケーキはどうですか?結構自信作なんですが」
「美味しいよ。小雪ちゃんは、料理上手だよねー。お茶淹れるのも上手いし」
「お褒めに預かり、光栄です」
和やか〜な空気と会話に、先ほどまでのやり取りはうやむやになる
「そうだ、一護君、都筑さん。新作のチョコレートケーキがあるんですが、味見していただけませんか?」
「食べる」
「勿論」
二人とも即答だった
「都筑さんはいいとして、一護君も即答ですか。チョコ、お好きですか?」
「ああ」
「それなら、期待しててくださいね。腕によりをかけますから」
ウィンク一つ残して、腕まくりをする
「一護君もチョコ好きなんだ」
嬉しそうな満面の笑みで言う都筑
背は高いのに、どことなく子犬を思わせる
「まあな。あんたもか」
ぶっきらぼうな口調だが、こちらもどことなく嬉しそうである
「うん。俺はチョコだけじゃなくて、甘いものはだいたい大好き。ここのケーキはどれも美味しいんだよ。それに、ここの空気も好きだな」
幸せそうにお茶の匂いを嗅ぐ
「空気?」
「うん。今は小雪ちゃんだけだから、落ち着くーって感じだけど、今はいないけど、もう一人のメイちゃんがいると、明るくてにぎやかな感じでね、どっちも好きだな、俺は」
「・・・ま、確かに居心地は悪くねーな」
今回は、あの正体不明の浦原商店店主に感謝しておこうと思う一護
「お客さんもいい人ばっかりだし!なんか、俺がケーキ食べてると、時々奢ってくれるんだよね」
(それは餌付けされてるんじゃ)
黒崎少年、当たりである
正確に言えば、えさを一生懸命食べる子犬かわいさに、ついつい余分に餌をやってしまう心理、とでも言うのか
「はい、お待たせしました。新作のチョコレートケーキです。今までのと違って、ちょっと香り付けにお酒を使ってみたんですよ」
ふわりと薫る、チョコレートの香り
「うわー、おいしそうだねっ」
語尾にハートマークでもついてそうな喜びようである
「ああ、うまそうだ」
こちらは、表情はさほど変わらないが、それでもどことなく嬉しそうに見える
「ではどうぞ、召し上がれ」
「「いただきます」」
手を合わせ、チョコレートケーキをそれはおいしそうに食す二人
これは、喫茶店“ネバーランド”のなんでもない一日
Fin
先ほど、間違えてGS板の方に投稿すると言う暴挙をやらかしてしまいました。寝ぼけた頭だと、ろくなことしませんね・・・
えー、突発的に意味のない日常的なお話が書きたくなったので
今回のニ作は、割と有名なので解説は必要ないと思うのですが、キャラの性格が違う予感
自分内の都筑のイメージが犬なのは何故だろう。しかもどっちかと言うと子犬系
本当は、某地獄先生か狐医者か某魔人の狼生物教師が出るはずだったのですが、よく考えたら、この二人死神で共通点あるから、この二人だけの方が統一性あっていいかな、と
いや、死神的なシーンは全く入ってないのですが
この話だと、世界とか基本設定の違いとか気にせずに書けるので楽です
なぜなら、喫茶店“ネバーランド”自体が一つの異世界だから