*相変わらずシリアスと壊れがごちゃ混ぜです。
アキトが宇宙にいる頃、地球のテンカワ家では・・・・。
「ねえ、あなた。」
「ん、なんだ?」
「行き倒れを拾ったんだけど。」
「そうか・・・・・・って、なんだってえええ!!?」
どこかずれた会話が交わされていた。
「あー、それでこいつがその行き倒れか。」
見かけによらず、また、科学者らしからぬ事に意外にパワフルな、アキトの母、カズハが抱きかかえてきた全身黒ずくめの男をアキトの父、アキタカが観察する。
「んー、こりゃ酷いな。全身ボロボロだ。どっかの悪質科学者に人体実験でも受けたか?」
体中に刻まれた傷やらなんやらを確認してアキタカがそうもらす。そして、言った。
「こりゃあ、このままじゃあ、どんな医者にかかっても助からないな。」
「と、いう事は・・・・・・・。」
アキタカの言葉にニヤリとするカズハ。アキタカも笑みを返す。
「ああ、と、いう事はだ・・・・・・。」
「「改造だ(ね)!!」」
こうして黒ずくめの男は人命救助という大義名分の元、改造された。合唱。
「う、ここは・・・・・。」
「お、目が覚めたか?」
「と、父さん!?」
黒ずくめの男は目を覚ましてアキタカの顔を見るなりいきなりそう叫んだ。それを、聞いてアキタカは動揺する。
「なっ!?そんな、馬鹿な、私が浮気をしたのは、15年前と12年前だけの筈だ。こんなでかい子がいる筈が・・・・・はっ!!」
「アキタカさん、それ、どういう事?」
思わず余計な事を口にだしてしまったアキタカに対し、カズハは笑みを浮かべ、そして、携帯電話らしきものを取り出す。
「あ、それは、その・・・・。」
「そういえば、彼、アキトに似てるわねえ。」
――『Standing by』
カズハが笑みのまま、携帯に555と入力すると動作音が発生する。それを見て顔を青くするアキタカ。彼女の腰には何時の間にやらベルトが巻かれている。そして、手を高くあげ叫びと共に携帯をベルトに差し込んだ。
「変身!!」
――『Complete!』
カズハの身体にエネルギーが走り、流体金属製の赤いスーツに包まれた姿に変わる。そして更にベルトに何かつきさした。
「ちょ、ちょっと待て!!いくら何でもそれは!!へ、変身!!」
その脅威を知るアキタカ慌てて変身する。そして、同時にカズハの胸のフルメタルラングが左右に展開し、瞳が黄から赤へと変色する。
――『Start up』
そして姿が赤から銀に変わり、魔法の時間が始まった。通常時の100倍、マッハ4の衝撃波の塊が部屋の中を暴れまわった。
パンチ
「や、やめ・・・・・」
ラリアット
「あべし!!」
体当たり
「うぎゃぴー!!」
そして・・・・・・
――『Exceed Charge』
「クリムゾンスマーッシュー!!!」
エステバリスの装甲をフィールドごと突き破る必殺の蹴りがアキタカに突き刺さるのだった。
「それで、あなた一体どうして倒れてたのかしら?それから、うちの旦那の事、“父さん”って呼んだのは・・・。」
「か、母さんまで!?ここはもしかしてあの世なのか!?い、いや、例えここがあの世だとしても、俺が行くのは地獄な筈だ。会える筈がない。と、いう事はこれは夢か?しかし、両親が変身したりするなんて、なんて夢なんだ・・・・。」
アキタカをボロ雑巾に変えた後、元の姿に戻ったカズハが黒ずくめの男に話しかけると男はいきなりぶつぶつと呟きだした。
「なあ、君、名前は何と言うんだ?」
そこで、復活したアキタカが問いかける。それに対し、黒ずくめの男は最初戸惑ったようま表情をした後、答えた。
「お、俺はテンカワ・アキトだ。しかし、俺の名前を聞いてくるという事は単なる他人の空似ってこと・・・・そ、そういえば、何故こんなにはっきり見えるんだ!?五感が回復してる!?」
黒ずくめの男、アキト(以下黒アキト)が一人混乱し、叫んでいる間、テンカワ夫妻は顔を見合わせる。
「ねえ、彼がアキトだっていう事が本当なら・・・・。」
「年齢からして未来、いや、身体を改造した後が無かった事からして平行世界のアキトである可能性が高いな・・・・。」
「理論上はありえる話だが、まさか本当に起こるとはな・・・・。」
ぼそぼそと打ち合わせた後、二人は黒アキトに向き直り、言った。
「あー、状況を統合するとだ。君は平行世界の私達の息子だと思うのだが、どうだね?」
そして、その後、3人は情報を交し合い黒アキトが平行世界の未来から来たという事でほぼ間違い無い事がわかった。
「ボソンジャンプは何度もしたが、まさかそんな昨日まであるとはな・・・・。」
「ええ、私達も予想外よ。それにしても私達がネルガルのSSサービスに殺されてたなんてね。」
事実を確認し驚く3人。そして、そこでアキタカがあえて避けていた話題を切り出した。
「それで、アキト、お前は何故あんな酷い状態だったんだ?お前に一体何があった?」
「それは・・・・・。」
アキトは躊躇う。他の事は話したが火星の後継者関連の事はまだ話していなかった。人体実験を受けた事も話しづらい事であるが、復讐の為に多くの人間を犠牲にした事は両親には到底話せない事である。だが、アキトは決意し、それをあえて話すことにした。
「俺は・・・・・・・・・。」
「そうか、そんな事があったのか。」
「そうだ、俺の手は血に染まっている。あんた達の息子でいる資格は無い。いや、平行世界での存在である俺には元からそんな資格は無かったな。」
流石にショックを受けた様子のテンカワ夫妻と自嘲ぎみの黒アキト。だが、そこでカズハが口を開いた。
「そんな事は無いわ。確かにあなたと私達には直接的な関わりあいは無いわ。けど、あなたさえ、よければ私達を両親と思っていいのよ。」
「!!しかし、俺にはそんな資格は・・・・。」
カズハの言葉に激しい衝撃を受ける黒アキト。思わず、甘えてしまいそうになる衝動を何とか抑え込もうとする。
「確かにお前は罪を犯したかもしれない。だがな、アキト、親というものは、例えそうであっても子供を見捨てたりはしないものだ。お前が罪を犯したというのなら私達も背負ってやろう。」
「平行世界の事とはいえ、辛い時に側にいてあげられなくてごめんなさいね。」
「と、父さん、母さん・・・・・。」
その時、アキトを支えていた心の鎧が砕けた。そしてアキトは泣いた。実に十数年ぶりに心の底から人に甘えて。
「それでね、アキト・・・実はもうひとつ謝らなくちゃいけないことがあるのよ・・・・。」
アキトが泣き止んだ後、カズハが申し訳なさそうに切り出す。そして、アキタカが話を繋ぐ。
「実はお前を救う為にお前の身体を改造してしまったんだが・・・・・。」
「改造・・・?そういえば、父さん達、変身していたな。この世界にはそんな技術があるのか。まあ、それなら、気にしなくてもいい。元々俺の身体はナノマシンを埋め込まれすぎていてある意味人間とは言えなかったからな。今更人を捨てたとしてもその位なんでもない。」
二人の言葉から自分の状態を推測した黒アキトはそう答える。しかし、二人は申し訳なさそうな表情のままだった。
「あー、そう言ってもらえると助かるんだが、お前の身体は損傷が激しすぎてな。助ける為には強靭な生命力を持った虫の遺伝子を組み込むしかなかったんだが・・・・。」
「虫?一体どんな?」
「えーと、あなたが着ていた格好と同じ色の虫なんだけど・・・・・。」
黒アキトが着ていたのは黒いスーツに黒いマント、黒いバイザーと全身黒ずくめであった
「俺の格好と同じ色、つまり黒くて生命力の強い虫という事か・・・。黒い虫、黒い虫・・・。」
そこで、黒アキトは急速に嫌な予感を覚えた。黒くて生命力が強く、さらに二人が申し訳なさそうな表情をする虫。
「ま、まさか・・・・。」
アキトの声が震える。
「多分、アキトが思っている通りよ・・・・。」
人類の嫌われ者。3億年前から生存している生物。
「「ゴキブリだ(よ)。」」
その瞬間、黒アキトは真っ白な灰になった。
(後書き)
あははははは、やってしまいました。未来のラピスやルリ、ユリカに関してはどうしましょうかねえ。