ちょっち早いですがバレンタインネタです。
女王ティオの主席補佐官兼秘書のメルザが、白エプロンに白帽子を被っている。
「さて女王陛下、いやさティオ三等兵!」
「サ−、イエッサ−」
「まもなくバレンタインです。その準備についてわたしに教えを請いたいというのは大変正しい!」
「サ−、イエッサ−! しかし魔界にもバレンタインってあるのね」
「むしろこっちが本家。魔界の風習を書き留めた書簡を、アメリカ陸軍所属バレンタイン中佐が読み、
そして占領地の子供らに配ったのが人間界におけるバレンタインの始まり。
わかりましたか」
「サ−、イエッサ−」
「女性が愛しい殿方に手作りのチョコを送り、殿方がそのチョコに込められた魔力に対してセ−ビングスロ−に
失敗した場合、作り主の女性に心捧げ従属するという風習!
まさに女性の決戦日!
もし複数の女性が同じ殿方に送った場合、チョコ同士が戦って戦って戦い抜いて、最後に残ったチョコが
まさにチョコ・ザ・チョコ!
全てのチョコの頂点に立つ存在として意中の殿方に食べて貰えるというモノ!」
「素晴らしいです、サ−」
「故に込める魔力は勿論、材料も吟味された物でなくてはなりません。
わかるな三等兵!」
「サ−、イエッサ−! ところでなんで三等兵?」
「口答えは許さん!よってまず魔界一の難所と言われる魔峰ティレン山へ登らねばならん」
「サ−、イエッサ−!」
あまりの吹雪に自分の鼻先すら見えぬ状況に、洞窟でテントを張りヒバ−クするティオ。
「う−寒。しかし!こんな所で挫けちゃ駄目よ!負けられない!負けられないのよぉ! ?」
洞窟の奥から五メ−トル近いサイズの熊みたいな生き物が姿を表す。
「これは・・・ティレンの魔獣!ではこの洞窟の奥にココルの実が!」
「ゴオオオオオオ」
「負けてらんないのよ!必殺!電光ティオちゃんキィ−−−−−−ック」
「はぁ、はぁ・・・と、取って来たわよぉ・・・ココルの実ぃ・・・・」
「ご苦労!では次!」
「で、魔界のその名を轟かせる魔の森ロロアに何の用?
せっかく取って来たココルの実あんな所に放り出して・・・って何アレ?」
ココルの実に、次々と奇怪な生き物が集まってきて、次々と周囲に掘られた溝に落ちていく。
「アレはチョコ作りに欠かせないメルアという生き物です」
人間界に存在するウミウシを毒々しい紫色にぬった外見と思って下さい。
「で、上質のメルアが多数捕れました。
他にもティオ三等兵の活躍でメグシアの花、海草テルもそれぞれいいモノが集められました」
ちなみにメグシアはあまりにグロくてモザイク無しには見れず、テルはワカメっぽい外見です。
「ではまず・・・ティオ三等兵!メルアを絞りなさい!」
「サ−、イエッサ−! ってコレを?手で?」
「復唱は如何しました!?」
「サ−、イエッサ−!メルアを絞るであります!」
ギュっとメルアを絞ると、中からこげ茶色の汁が出てきました。
ちなみに・・・そうですね・・・
「ゴ−ルデンウィ−ク前に牛乳をこぼして拭いた雑巾をそのまま放り込んだロッカ−を夏休み明けに開けた」ような匂いがします。
「ぐ・・・軍曹どの・・・これは・・・」
「文句言わない!絞れといったら絞れ!」
「サ−、イエッサ−!」
「軍曹殿、絞り終わったであります!」
「宜しい。こちらでメグシアの花をほぐし、水につけてあるから泡立てろ!
メルアの汁は加熱しておく。わかったか!」
「サ−、イエッサ−!」
「かああ・・手が・・釣る釣る釣ったぁ・・・軍曹殿!終わったであります!」
「宜しい!次は湯掻いてあるテルを裏ごしなさい!」
「サ−、イエッサ−!」
「何故に・・・緑色のテルが湯掻いて裏ごししたら生クリ−ム(もどき)になるの?
それはともかく!軍曹殿!終わったであります!」
「宜しい。メルアの汁は加熱が終わっているから泡立てたメグシアと混ぜた後型に入れて冷蔵庫に!」
「サ−、イエッサ−!」
「と・いうワケで完成しました!魔界風味チョコ、カマキリジョ−タイプ!」
「よく頑張りましたね、女王陛下」
「サ−、イエッサ−!」
「これなら宰相殿も喜んでくださるでしょう」
「サ−、イエッサ−!」
「もういいのですよ。もう魔界の女王と秘書官という立場に戻りましょう」
「はい・・・ありがとう・・・メルザ・・・」
しかし、その調理風景をこっそり見つめる影が。
(あ・・・ああああああのようなものを食べさせられるのか・・・一刻も早く逃げねばぁぁぁぁ・・・)
這いずって逃げようとしたガッシュですが、その時
「ガッシュちゃん見−つけた!さあアタシの愛てんこもりなこのチョコ食べて!」
「ぬおっ!パティ!」
「なんだったらその後アタシを食べてもいいのよぉん」
「阿呆かぁい!ティオ反転キィック!」ベシッ
「ぶらぁ!何すんのよ!アタシとガッシュちゃんの愛に割り込もうってのね!
必殺!『下・右下・右・A』!」
「なんの!防御の必殺!『ヒットの瞬間右』!」
「今日のこの日だけぁ負けられないのよ・・・アタシの愛のため・・・
何よりアタシに戦いを仕込んでくれた師匠『後退のネジを外した人間発電所』にかけて」
「それをいうならこちらだって女王の名と師匠たる『弁髪結って火を吹く半裸のアラブ人』
にかけて負けられない!」
「あわわわわ」やっとの思いで王宮を逃げ出したガッシュ君。
やれやれとばかりに道端の石に腰を下ろします。
「やれやれ」
「あれガッシュ、何してるの?」
「コルルか。いや、ちと王宮に近づけぬのだ、今」
「?まあいいや。はいこれあげる」
その手にあるのは・・・
「試みに聞くが・・これはいわゆる『ちょこれいと』かの?」
「うん」
「ひょっとして・・・魔界伝統とやらの作り方かの?」
「ううん。しおりちゃんに頼んで人間界の材料送ってもらったの。
あと作り方の本も貰ったから・・・」
やれやれと全身で一息つくガッシュ。
「食べ物と娯楽はやはり魔界より人間界のほうがいいの。こちらではカマキリジョ−も見れぬし」
「いっぱい作ったから沢山食べてね」
「あら?ガッシュがいないわ?」
「ガッシュちゃ−ん、どこぉ?」
終わり
ちくと早いですがバレンタインネタです。
またコルル一人勝ちですが、こういう風にオチにつけ易いんです、この四人組は。
「壊」の字付けた方がいいかしらん。
あと関係ありませんが本来上官が女性の場合「イエス・サ−」ではなく「イエス・マム」と言わねばならんそうです。
それにしてもバレンタインか・・・
泣いてなんかいないやいっ!
本当だぞ!泣いてないからなっ!