ズガァァァァァァンッッ!!
―――これで、終わった・・・・。
たった今最後の機動兵器を破壊した青年―天河 アキト―は、其の身をコックピットに沈めた。
<ラピス、今から帰還する>
<早く帰ってきてね、アキト>
リンクでラピスとやり取りをした後、アキトは己が愛機―ブラックサレナ―を操りユーチャリスへと帰還した。
機体を固定し、コックピットから飛び降りる。
すると、一人の少女が抱きついてきた。
「ただいま。ラピス」
普段の彼を知っている者ならまず間違いなく驚くであろう。
彼はその頬を緩ませていたのだから。
要するに、微笑んでいるのである。
「お帰りアキト」
抱きついたままラピス。
其の手はアキトのマントの裾を握って放さない。
「アキト、さっきアカツキから連絡があった。こっちに来てくれって」
アキトと手を握り、通路を歩きながら言うラピス。
「そうか。少し休んだら行くか?」
あくまで穏やかな声で聞くアキト。
ラピスには何処までも甘いのだ。
「うん」
ラピスも其れが嬉しくて、笑顔と共に言う。
キュッ
「如何した? ラピス」
急に強く手を握り締めてくるラピス。
「アキトは、何処にも行かないよね?」
不安そうな声で聞くラピス。
きっと彼女はこれから先の事を何となく予感していたのだろう。
「昔ならいざ知らず、今の俺はそんな事はしない。それは、ラピスが一番知ってるだろう? これからもずっと傍に居るよ」
ラピスの小さな体を抱きしめながら言うアキト。
「今まで俺が世話になったんだ。今度はラピスの好きな事をしよう」
序にと言わんばかりに、頭を撫でながら言うアキト。
アキトは密かに誓っていたことがある。
アキトの復讐は先程の戦闘で終わっている。
―――現存する火星の後継者は、ナデシコに任せれば大丈夫であろう。
自分がするべき事――北辰、山崎、草壁に対する復讐――は終わった。
火星での戦闘で北辰はしとめたし、連合に捕まっていた草壁はこの手で殺した。
山崎だって、先の戦闘で殺してやった。
だから、俺の残った命は、この子の為に使おう。
そう。
残り僅かな命を、この、自分に尽くしてくれた少女の為に使おうと。
(ルリちゃんや、ユリカには悪いけどね・・・・・)
その思考がリンクで伝わったのか、ラピスは頬を膨らませながら言った。
「アキト、ルリ達の事考えている」
どこと無く哀しそうな其の顔は、きっとアキトがとられると思ったからであろう。
「大丈夫。俺はラピスと一緒に居るから」
安心させる為にもっと強く抱きしめる。
穏やかな雰囲気が流れる中、一つの通信が入った。
ピッ
<あ〜、お取り込み中悪いけど、至急本社の方まで来て欲しいんだけど?>
アカツキからである。
「・・・・・・何時から見ていた?」
一瞬にして通称・ダークネスモードに入ったアキトが聞く。
<ん? 君達が抱擁を開始した時からだけど?>
それが如何した? といった感じに聞くアカツキ。
「そうか。直ぐに向かう」
ピッ
問答無用で通信を切り、ラピスに新しい指示を出す。
「ラピス、一旦月のドックにジャンプする」
念のために補給をするからである。
「解った」
短いやり取りをし、ドアをくぐる。
艦長席に座ったアキトは、ラピスの調子を聞いた後、一言言う。
「ジャンプ」
その言葉と共に、ユーチャリスの姿は消えた。
〜ネルガル月・秘密ドック〜
突如として光があふれ出す。
光が収まった後に姿を現したのは、ユーチャリスである。
ユーチャリスから姿を現すのはアキトとラピス。
「あら? 会長の方から連絡が行ったと思ったんだけど?」
現在、月ドックを任せられていたエリナは疑問に思って聞いた。
「これから行く所だ。念のために補給を頼む」
「解ったわ。早いとこ行かないとまた何かされるわよ?」
「心得ている」
エリナと短いやり取りを交わした後、アキトはラピスと共にジャンプした。
目標はネルガル本社ビルである。
此処がきっと、ターニングポイントだったのだ。
ここから彼の運命は変わる。
後書き
始めまして、神威と申します。
初心者で拙い文ですが、此処まで読んで下さった方に感謝を。
本作は一応ナデシコとサモンナイトシリーズ(1〜3まで)のクロスになります。
感想は勿論、「此処の表現がおかしい」といった指摘、誤字・脱字報告もお待ちしております。
では、これにて。