インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始▼レス末

「まぶらほ〜闇人の巻〜 第四章 第二節(まぶらほ)」

B-クレス (2005-01-02 22:31)


 駿司来襲から、次の日の放課後


 和樹が約束した場所には、凜以外に、リナはまた別としても別の人間

 千早、夕菜、沙弓の三人がいた

 因みに全員学生服であり、沙弓にいたっては凜をにらんでいたりする

 「・・・式森、今日はコンビネーションの特訓ではなかったのか?」

 和樹以外の面々を見回した後、凜が和樹に向かってそう言った

 「あぁ、そうなんだけどね・・・その前に

  僕が求めるコンビネーションはどのレベルなのかを、教えたくてね」

 和樹は、柔軟をしながら、そう言った

 「・・・杜崎が前衛で、式森が後衛だとすると・・

  私は、誰と組むのだ?夕菜さんか?山瀬さんか?」

 「いや、沙弓は審判だよ、神城さんは夕菜と組んで

  僕が前衛として千早と組んで勝負するから」

 和樹はそう言うと、魔道書を開いた

 和樹が開くと共に、魔道書から膨大な数のページが飛び出していき

 その全てが、和樹の右手へと向かって飛んでいき

 和樹の右手がその集まった紙に覆いつくされた瞬間、光が走り


 和樹の右手には、一本の、蒼く輝く剣が握られていた

 「これは氷宝剣(コキュートスソード)、僕が使う魔道剣の一つ

  僕は元々前衛が得意でね、今みたいに後衛になったのは最近なんだよ

  この魔道剣は、魔道書のページの半分を使用して形成されてるんだ

  でも、この『存在』自体が魔力を持っている物だから・・・

  召喚の際に魔力を消費するだけで、使用する分にはなんら魔力を消耗しない

  これから約6日間、神城さんが求めるLvに達するまでの間

  僕は、この氷宝剣を元に戻すつもりはない

  さてと・・・まずは、一戦、交えようか」

 和樹は、身に纏う空気を唐突に変え、凜に向かってそう言った

 凜も、和樹の纏う空気、戦士の空気を敏感に感じ取り、戦闘体勢に入った

 「夕菜さん、支援をお願いします!!」

 凜は、そう言うと即座に和樹に切りかかっていった

 和樹は、凜の攻撃を、何の苦もなく受け流した

 「いきなり突出してどうする!!

  後衛との間合いを考えながら行動しないか!!」

 和樹は、受け流した後、即座に自分から凜との距離をとり

 少し離れた位置にいた千早を、夕菜と凜からかばう位置で体勢を整えた

 「凜さん、いきますよ!!」

 夕菜は、そう言うと、アイスアローを十数発、和樹に向かって撃った

 凜も、それに合わせる形で、和樹に向かって突撃していく


 因みに夕菜が和樹に攻撃しているのは、和樹が直々に頼んだからだったりする


 「後衛に合わせてどうする!!」

 和樹は、凜が夕菜の攻撃に合わせて行動したのを見ると

 そう叫び、夕菜の魔法にも、凜の攻撃にもなんら怯まず

 むしろ、突撃を仕掛けていった

 一見、無謀としかいえないこの行動・・・

 だが、夕菜のアイスアローが、和樹に到達するまでもう少しといった瞬間

 急に和樹の前方の空間に火の壁が走り、アイスアロー全てを溶かしきった

 そして、その火の壁は、アイスアローを消し去った瞬間に即座に消え

 目の前に火の壁が現れたというのに、なんら速度が落ちていない和樹が

 その勢いのままに、剣を振り下ろした

        ガキィィン!!

 凜は、かろうじてその攻撃を受け止めるが

 和樹の、攻め込みの勢いに負け、その攻撃を流しつつ、後ろに引き、距離を取り直した

 和樹は、凜が離れたのを認めると、自分からも距離をとり、再び千早をかばう位置に戻る

 「さてと・・・・次はこっちの番だよ!!」

 和樹はそう言うと、一気に加速し、凜に向かって突撃を開始する

 凜は、その単独突撃を見て、和樹の攻撃を流す事に専念しようとしたが


 突撃している和樹の、直ぐ傍に、7,6本程のファイヤアローが出現していた


 そのファイヤアローは和樹を追い抜き、凜へと迫っていく

 「くっ・・!!夕菜さん!!」

 「わかりました!!」

 凜が、あせりながら叫ぶと同時に、

 夕菜は凜の前にアイスウォールを張り、ファイヤアローを相殺する

 氷と火の衝突により、辺り一面に蒸気が走った

 凜は、衝突地点から離れる事で視界を戻し、和樹の攻撃に備えようとしたが・・・

 「ここで引いてどうする!!」

 そう声が聞こえた瞬間、和樹は凜の目の前に既に迫っており

 その勢いのままに、胴を薙ぎ払おうとしていた

 「クッ!!」

 凜は、ギリギリで刀を胴と氷宝剣の間に挟み、その斬撃を防いだが

 「踏み込みが・・・甘い!!」

 和樹は、さらに斬り込む力を上げ、凜もろとも、刀を弾き飛ばした

 凜は、飛ばされた事を悟ると、衝撃に備えようと必死に体制を整えていたが・・

 「やれやれ・・・これで二度目ね、

  和樹の頼みじゃなきゃ無視する所だけどね・・・」

 いつの間にか、凜の飛んでいく方向にいた沙弓が、凜を受け止めていた

 凜は、沙弓のその言葉にもなんら反応せず、顔を伏せてしまっていた


 「さてと・・・神城さん、どうして負けたか分かるかい?

  そうそう、僕と千早も今回が初タッグだから

  コンビネーションの熟練差で負けたって言い訳は聞かないよ」

 和樹は、凜の方へ、ゆっくりと歩きながら、問いかけた

 「・・・・私と式森の腕の差だ・・・・

  私程度の腕では・・・式森には・・・」

 凜はそう言うと、さらに顔を伏せたが・・・・

 「いや、それは違うね、僕と神城さんの実力は実はそう大きく違わない

  僕が、『力』を持って敵を倒す前衛型なら

  神城さんは『技』を持って敵を倒す前衛型なんだ

  僕の剣術は、完全な我流、力で敵を押しつぶす戦いに特化させた剣術なんだ

  神城さんみたいに正式な流派を持つ人相手だと、我流では厳しくなる

  特に、『神城』の剣術は魔を倒す事に特化させた剣術

  つまり、僕の『力』の我流剣術は、一番相手にしたくない流派なんだ

  力を込めても、流されればなんら意味はないからね

  神城さんが負けた原因、それは、信頼関係にあるんだ」

 和樹がそこまで言うと、凜は今まで伏せていた顔を上げた

 「神城さんは、完全には夕菜を信頼しきれてなかっただろう?

  最初の攻撃も、夕菜の体勢が整いきる前に仕掛けていたし

  次の攻撃も、夕菜の体勢も整ってて、攻め込む余裕もあったはずなのに

  わざわざ、夕菜の魔法攻撃を待って、僕に突撃してきた

  最後は、夕菜の支援が来る事を信じきれずに

  構えを崩してまで、夕菜に支援要請をした・・・・

  僕と千早とのタッグと比べたら、どこがまずかったか分かるだろう?」

 和樹がそう言うと、凜は、僅かに頷いた

 今回の戦いが和樹たちの圧勝で終わったのは、流れを完全に制されていたからなのだ

 最初の突出、これで凜は和樹達の出鼻をくじこうとしたが

 結果的に、最初から護りの体制に入っていた和樹にその攻撃は通用せず

 逆に、出鼻をくじかれる結果となった

 二度目の衝突は、凜は、アイスアローを意識しすぎていたために

 逆に、アイスアローを無視し、凜にのみ集中していた和樹に迎え撃たれ

 三度目にいたっては、ファイヤアローを回避しようと体勢を崩したために

 その体勢を整えなおすために引いた結果、和樹の攻撃によって敗れ去った


 後衛の支援を信じ、前衛としての職務を果たそうとした和樹

 和樹ほど支援を信じきれず、前衛というよりも、剣士として動いた凜

 タッグ戦において、どちらの方がより優秀かは、言うまでもないだろう


 「このまま僕とコンビネーションの特訓をしても、

  無意識のうちに夕菜とのコンビと同じ行動をとっちゃうだろうから

  しばらくは、夕菜と組んで、僕と千早のタッグとの模擬戦に集中しよう

  無意識で今回みたいな行動をとらないようにしないと

  並大抵の相手ならともかく、人狼で剣術を習っている駿司さんには勝てないだろうからね」


 凜は、無言で和樹の言葉に頷いた


 その後、しばらくの間、模擬戦は続いた

 凜は、何度も何度も、和樹に叱咤され続けていた

 時に、沙弓も凜に向かって皮肉が混じった叱咤をしていた

 凜は、叱咤されるたびに悔しそうに顔をゆがめていたが

 それでも、叱咤されればされるほど、その動きは、前衛に適した物になっていった


 「・・・もうこんな時間か・・・今日はここまでにしよう

  明日、もう一日模擬戦をすれば、十分僕の要求するレベルになりそうだしね」

 和樹がそういい、氷宝剣をこれまた魔道書のページを重ねて作った鞘に納めると

 凜も、荒い息を吐きながらも、頷いた

 「さてと・・・僕はちょっと用があるから、千早、リナを部屋につれてってもらえるかな?」

 「うん、いいよ

  リナちゃん、お姉ちゃんと一緒に帰りましょうね〜♪」

 千早は、和樹の言葉を聞くと、本当に嬉しそうにリナの頭を撫でていた

 リナも、千早に頭を撫でられて、嬉しそうな顔をしていた

 その後、和樹は千早達と別れ、河原まで来ると、氷宝剣を抜いた

 「で・・・いつまで人の事をこそこそと見ているつもりですか?

  僕は男色の気はないんですけど」

 「あぁ、安心してくれ、僕もそんな気はないからね」

 和樹の言葉に、いつの間にか和樹の前方にいた駿司が答える

 「で・・・こんなところまでついてきて・・・手合わせでもしてくれるんですか?」

 「それも面白いんだろうけどね、今日はゆっくりと話したいと思ってね」

 駿司はそういいながら河原に座り、和樹に自分の隣に座るように促した

 和樹は、警戒しながらも駿司の要望どおり、隣に座った

 「単刀直入に聞くよ・・・凜は、僕に勝てそうかい?」

 「・・・勝たせます、勝てる可能性がある限りは、僕が勝たせます」

 「そうか、『魔殺者』の君がそういってくれるのなら、信頼できるね」

 駿司のその言葉に、和樹は一瞬で立ち上がり、氷宝剣を構える

 駿司をにらみつける目は恐ろしいほど冷たかった

 もし、視線だけで相手に攻撃できるのなら

 駿司は、一瞬で凍り付いていたであろう程に、冷たいまなざしだった

 「ストップストップ、争う気はないんだって

  僕は神城の『闇』を担当していたからね

  『闇』を生きている物には、君の名は有名だろう?」

 和樹は、駿司の言葉に僅かに構えをとくが、眼差しは冷たいままだった

 「まぁ・・・本気になるのは、戦いのときだけにしてくれないかな?

  どうせ、僕はもう少しで寿命なんだ、一週間くらい見逃してくれてもいいだろう?」

 駿司は、立ち上がりながら、両手を挙げ、害意が無い事を証明しながらそう言った

 「・・・寿命?」

 「あぁ、寿命だよ、これでも200年は生きてるからね

  それに・・・大分無茶してきたし・・・ね」

 瞬時はそう言うと、悲しそうに笑った

 「・・・なら、なぜあんな馬鹿なことを?

  寿命が近い、消えかけた蝋燭のような状態で

  全力を出したりすれば、命の火は一瞬で消える可能性があるんですよ?」

 「あぁ、そうだろうね・・・でも、最後に、凜の成長を見たくてね

  僕にとって、大切な『妹』が、これからも頑張っていけるかどうかを・・・ね」

 「・・・詳しく、話してもらえませんか?」

 和樹がそう言うと、瞬時は深く頷き、口を開いた

 駿司が語る凜の過去は、ある種、残酷な物だった・・・・

 凜は、本来静岡の分家に生まれ、普通の少女として生活するはずだったのに

 その、生まれ持った魔法回数の多さと、剣術の才能に目をつけられ

 幼い頃から九州にある本家に呼び出され、親と離れ離れにされ

 さらに、遊ぶ事も許されず、ただ、稽古だけの毎日を送らされていたという

 そんな凜が、初めて本家に逆らったのが、この葵学園への入学だと言う

 駿司は、大きな声ではいえないが、その事を喜んでいたらしい

 神城の『駒』として、その生涯の全てを捧げた駿司は

 自分の大切な『妹』までもが、そんな道を歩む事を、内心、嫌がっていたのだ

 だが、自分はあくまで『神城』に拾われた人狼でしかないため

 自らの意見を出す事も出来ず、ただ、命令に従い、凜に稽古を強要していたというのだ

 だが、駿司自身、その事を悔やんでおり

 今回、凜と和樹が、僅かながら接触を持っているという事を知って

 何とか、和樹を巻き込む事で、本家に、葵学園在住を認めさせようとしたというのだ

 そう・・・・自らの命を、代償とすることで・・・・


 「・・・本当に、いいんですか?」

 悲壮な決意を秘めた駿司に、和樹が、問いかけた

 「あぁ、僕はお世辞にもいい兄ではなかったし、いい師でもなかった

  どうせ嫌われているのなら、嫌われたまま逝くのもいいと思ってね」

 「・・・・全力で・・・いきますからね」

 「あぁ、そのほうがこっちも助かるよ

  闇世界の生きる伝説である『魔殺者』の全力と戦えるんだ

  一介の武人としても、なんら未練なく逝けるよ」

 駿司は、その決意の悲壮さを微塵も感じさせないほどの笑顔を見せていた

 和樹は、そんな駿司に対し、深くお辞儀をすると、ゆっくりとその場から立ち去っていった


 それから数日間、決戦の日まで、和樹の纏う空気は、変わっていた

 訓練の形事態はそう変わっていなかったが

 和樹の一撃一撃の重さが、変わっていたのだ

 だが、凜もその変化に十分に対応しきり、和樹の求めるレベルにまで達し

 決戦前の三日間は、和樹と凜のコンビネーション特訓に当てられたのだ

 和樹の脳裏には、常に駿司の笑顔が張り付いていた

 その笑顔は、かつて、和樹が失った・・大切な人の笑顔に、酷くよく似ていた

 だからこそ、和樹はそれを忘れるかのように、全力で訓練に挑んでいた

 凜も、和樹に引っ張られるような形で、無心に、訓練に励んでいた


 駿司が言った、和樹を示すという『魔殺者』の言葉の意味とは?

 また、駿司の悲壮な決意は、悲しき物語を作り出してしまうのだろうか?

 凜は、駿司の悲壮な決意に気付かぬまま、敵として駿司と戦うのだろうか?

 ある一つの物語が・・・・終焉を迎えつつあるが・・・

 その結末がいかなる物になるのかは、神にも、魔王にも解らないものであった・・・


 あとがき

はい、今回も微妙なところできりました・・・ orz
いや、自分ももっとうまく書きたいとは思うんですが
技術の方が・・・追いついてくれません orz
明日から再び、バイトで身の回りが忙しくなりますので・・・
レス返し、新作投稿は、再び遅くなると思います

因みに今回作中に出た魔道剣は、『存在』を知る物なら誰でも呼び出せたりします
氷宝剣もそうですが、後々出る宝剣シリーズは全て、過去に失われた物であり
その、かつて『存在』していたという事実と一種の信仰心を利用する事で
この現在の時の流れの中に『存在』させるという、一種の荒業です
つまり、術者が宝剣の詳細を詳しく知る(信仰心を増幅する)事で
この世界に、強引に存在させたときの存在時間と、その秘めた力を上げることが出来ます
和樹君は、ある特異な事情により、宝剣の詳細を詳しく知っているため
今回のように、一度召喚した後は、存在させ続ける事は容易になっています
一応、宝剣を存在させ続ける事で魔力を消費はしていますが
魔道書が、世界からマナを汲み上げる量の方が勝る結果となっているのです
ですが、宝剣本来の力を使おうとすると、魔力を大幅に消費します
少なくとも、半日は低級魔法すらも使えないほどに、魔道書の魔力を消耗します
まぁ、某ハラペコ騎士王の宝具の様な物だと思ってください

では、次回・・・いつになるかは分かりませんが、のんびりとお待ちください


△記事頭

▲記事頭


名 前
メール
レ ス
※3KBまで
疑似タグが使えます、詳しくはこちらの一覧へ
画像投稿する(チェックを入れて送信を押すと画像投稿用のフォーム付きで記事が呼び出されます、投稿にはなりませんので注意)
文字色が選べます   パスワード必須!
     
  cookieを許可(名前、メール、パスワード:30日有効)

記事機能メニュー

記事の修正・削除および続編の投稿ができます
対象記事番号(記事番号0で親記事対象になります、続編投稿の場合不要)
 パスワード
    

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!