「あっ……」
衣替えの季節になり、クローゼットの服を入れ替えていた時、
私はそれを見つけてしまいました。
シックな色調の袖の部分が返しになったスーツと白いスカート。
横島さんが私にくれたクリスマスプレゼントでした。
「懐かしいなあ……」
手に取ってみると幽霊だった頃の思い出と一緒にあの時の嬉しさが
蘇ってきました。
パーティに遅れてきた横島さんは全身濡れ鼠のボロボロの格好で
それを渡すと同時に何か呟きながらバッタリと倒れ込んで
私はそんな横島さんが心配だったけどそれ以上に袖を通した時の感触が新鮮で
冷たい筈の私の体に火が灯った様に暖かったのが嬉しくて
嬉しさで流した涙が少し誇らしかったあの時。
本当に嬉しかったです。
プレゼントされた服以上に私の為に危険な冬山を登って織姫様の所に行ってくれた
横島さんの心遣いが本当に嬉しかった。
でも同時に少しだけ申し訳なさがこみ上げてきました。
もうすぐ季節は変わって長袖のシーズンはおしまいです。
なのに私はシーズン中一度もこの服に袖を通す事はありませんでした。
人間になって巫女の衣装だけじゃなくて色々な服が着れる様になって
沢山服を持つようになって何時の間にかこの服も箪笥の肥やしの一つにして
あの時の嬉しさと感謝を忘れてしまっていた自分がすごく嫌な女の子に思えてしまって
ごめんなさいって呟いた私が少しだけ悲しくなりました。
カレンダーにふと見るともうすぐこのカレンダーも捲る頃。
もうすぐこの服の季節はおしまい。
でも
まだおしまいじゃない。
何時の間にか私は着ていた服を脱いでプレゼントされた服に袖を通していました。
鏡を見ると其処にはあの時の私がいました。
初めて袖を通した時の感動そのままにあの時の私が其処にいる。
私はまだ忘れていませんでした。
あの時の嬉しさも感謝も
そして
「横島さん……」
あの時の想いも
初めて会った時の想いは色褪せていない
あのときあのままの想いはまだ私の傍にある
生き返って背中におぶられた時の温かさ
あの時の頬の熱さを私は忘れない
生きてるんだって
触れ合えるんだって
この人を好きでいいんだって
全てを私に与えてくれたあの温かさを私は忘れかけていた
近すぎて気が付けば目の前を通り過ぎていく想いの大切さを
誰かを好きだって気持ちの素晴らしさを
好きな人を目で追うときめきを
私に笑顔を向けてくれる温かさを
もうすぐ季節外れになる服は私に思い出させてくれました
だから
――横島忠夫、只今出勤して参りましたっ!仕事前の霊力充填の為!いざ桃源郷へ赴かぶべらっ!
あの人にも思い出してもらおう
季節外れになる前に
おしまい
課長「この報告書をかいたのは誰だぁ!」
月末の修羅場にUZANごっこですかそうですか