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「アルコール 〜美神の視点〜(GS)」

とーり@GTY+ (2008-06-22 12:11/2008-06-22 12:19)

認めてしまったのだから仕方ない。
認めてしまえば随分楽なもので、つい嬉しくなってしまった私はコイツを飲みに誘った。
飲みに誘うのはこの頃特別なことでも無かったし、普段と違うのは結構な除霊が終わった後すぐだったことくらいだろう。
日中の暑さを夜が追い出し切れていなかったから、せめてシャワーを浴びてからの方が良かったのかもしれない。
でも浮き立つ私はコブラを駆り、戸惑うコイツを文字通り引っ張って、馴染みの店に飛び込んでいった。


−アルコール・美神の視点−


どれだけのお酒を煽ったのか、途中から判然としない。
隣のコイツが、しきりに止めてくださいだのいい加減にしてくださいだの言っていたのは覚えている。
だけど聞く気は全くなくて。
コイツを巻き込みながら、それ以上にピッチを上げて飲んで、飲んで、飲み倒した。
本当に不思議なくらい楽しくて面白くて、はしゃいでいる自分に驚いている自分がいた。
こんな姿を見せている自分を、馬鹿になったと苦笑いする自分がいた。
だからコイツが呆気にとられているのも、矢継ぎ早に積み上がっていく空き瓶の山も、バーテンが顔を引きつらせているのも、全然気にもならなかった。
同じように気にしなければいいのだろうけれど、どうしても気になって−−−いや、気になってしまうことがある。

それは、今、なんで私がコイツにおんぶされているのかということ。

前後の記憶が無いからどうしようもない。
いくら考えても記憶をたどろうとしても、一人混乱するばかりでむなしく時間だけが過ぎていった。
ほてった体に夜風が気持ちよくて、まあいいやと寄りかかった私は少なからずはっとしていた。
顔を埋めた肩も、手がかかった首周りも、足を支えてくれている手も、何よりおぶさっている背中が、除霊中に合わせた背中よりもちょっと大きく感じたからだ。
イメージのせいか、お酒のせいか、除霊中の緊張のせいかは知らない。
ただ私を受け止めてくれる背中は確かに心地よく広く、ちょっとだけ堅かった。
まどろみに任せてこのほのかな暖かさに触れていようとして、可笑しくなった。
あんな出会い方をしたコイツが、ずいぶん変わったものだと。

いつもの様に事務所に行って
いつもの様に除霊をして
いつものポジションでコイツを背にしていたら
いつもと少し違う表情のコイツを目にするようになって
気づけばコイツは、私を真正面から見据えるようになっていた

別に不愉快じゃなかった。
昔のコイツがそんなことしようものなら、シバキ倒してあげただろうけれど。
物陰から隠れるように、下から見上げるように、後ろから腫れ物に触るように話しかけてきていたコイツの背筋が、しゃんと伸びているのを見るのが気持ちよかったのかもしれない。
同じようなものだった背丈がいつの間にか私を追い越していたのに気づいたのも、あの頃だったろうか。
そんなだったから、きっと私は今日まで認められなかったのだろう。

こんなにもコイツを近くに感じられる自分がいるのだと。
合わせたコイツの背中にとても安心出来たから、出来たのだと認めてしまえば本当に楽になれた。
大丈夫、まだいけると想えた。
呼吸を合わせ、取り巻く霊群にもう一歩を踏み出せた。
全く、こんなのあの大きな戦いの時にだって想いもしなかったのに。

お礼を言おうと想った。
別におんぶを頼んだのでも強制した訳でもないし、コイツが勝手にやっているだけだけど、とにかく言いたかった。
言おうと決めたらすぐにも言いたくなってしまって、でもなかなか言い出せなくて。
狸寝入りを決め込んでいたら、コイツがかすかに笑った。
なあに気持ち悪いわね、と。
びっくりさせてやろうと企んで、不意打ちを食らった。

「こーなったらもー美神さんでいきます」

耳元でささやかれた言葉に、私は戸惑った。
戸惑って、反芻して、ようやく理解して、そしてどうしようもなくなった。
忘れていた。
この馬鹿は、妙なところで鋭いのだ。
全く、ホントにこの大馬鹿は。
わき上がる感情のままに首を締めてやっても力は入らなくて、余計に動悸は激しくなってしまって、身じろぎ一つ出来もしない。
悔しくて悔しくて、もう少しだけなんとかして締めあげてやろうと想い、自然首が傾いてしまって−−−唇が、コイツの首に接触した。
感じた柔らかさは私をますますドギマギさせてしまったけれど、でもやっぱり不愉快でもなんでもなくて。
このまましばらくおぶさったまま、コイツの背中と夜風を楽しむことに決めた。
事務所まで後いくらあるのか知らないが、甘えておこうと、そう決められた。
それがただただ、嬉しかった。


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