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「心と心がつながって……(GS)」

あらすじキミヒコ (2008-06-15 20:52/2008-06-16 08:36)

『美神さん……!!
 シロちゃんたちが予定どおり
 悪霊をひっぱってきました!!』

 それは、除霊中の出来事でした。
 シロちゃんとタマモちゃんが囮になり、美神さんが悪霊を倒す。横島さんは美神さんのバックアップ。
 そういう手はずになっていました。
 私は『目』の役割でしたが、以前のようにヒャクメ様の心眼を持っているわけでもなく、手にしているのは普通の双眼鏡です。高いところのほうが見やすいので、街灯のてっぺんに座っていました。
 今にして思えば、上から俯瞰するのですから、幽体離脱して飛んでたほうが安全だったんですよね。でも、その時はそこまで気がつかなかったんです。

「よーし、もっとついてくるでござる!!」
「ここまでおいでっ……!!」

 下では、シロちゃんたちが上手く悪霊を誘っています。

「よし、行くわよッ!!」

 美神さんも、神通棍を伸ばしました。

「美神さん〜〜!!」

 横島さんは、ちょっと情けない声を上げていますが、大丈夫。三枚目っぽくてもホントは凄いのが、横島さんです。

『ギ……ィィイイッ!!』
「バッカねー横島クン!!
 死んだあとのこと心配してちゃ、
 人生楽しめないじゃん!!」

 もう理性も何もかもなくした悪霊に向かって、美神さんが突撃します。さっきまで横島さんと何かを語りあっていた続きで、言葉だけは、後ろにいる横島さんへ投げかけていました。

「私の信条は……」

 と言いながら神通棍を振るう美神さんでしたが……。
 残念ながら、私には、最後まで聞きとることは出来ませんでした。

「きゃあっ!?」

 激突した霊力の余波が飛び散って。
 私のほうにもやって来て。
 不安定なところに座っていた私は、バランスを崩してしまい……。
 高い街灯の上から落ちてしまったのです。


    心と心がつながって……


(あれ……この光景は!?)

 ふと気がつくと、私は、少し高いところから、氷室の家の縁側を見ていました。
 そこには、『私』と早苗おねえちゃんが座っています。

「おキヌちゃん明日帰っちゃうんだって?
 せっかくの里帰りなんだから
 もっとゆっくりしてけばいいのに……。
 ここはおキヌちゃんの家なんだから
 遠慮はいらねえべ!」
「ありがと、早苗おねえちゃん」

 スイカを食べながら会話する二人。
 早苗おねえちゃんはTシャツに短パンというラフな格好で、一方『私』は、しっとりとした模様のワンピースを着ています。ちょっと可愛らしい服、と思っていたのですが、こうして上から見ると、肩が少し露出しているから、ちょっと恥ずかしいです。

「でも事務所、同居人もふえたし……
 あんまりあけると心配だから」
「……そっか。
 楽しいんだ、あっちの暮らし」

 二人は、私の記憶どおりの会話を交わしています。
 もう間違いありません。これは、私が帰省した時の一場面。つい昨日の出来事です。
 だから、次に『私』が発する言葉は……。

「うん」

 シャリッとスイカをかじりながら、小さく頷く『私』。
 それはいいんですけど……。なんなんでしょう、この背景は!?
 『私』の向こう側に見えるのは田舎の青空のはずなのに、なんだかポワポワした感じの、シャボン玉のようなバックが見えてしまうのは、私の気のせいでしょうか?
 でも仕方ないですね。この時『私』は……横島さんのことを思い浮かべていたのですから。


___________


「あった……!
 前のまんまだ、道路標識……!!」

 義父さんの車で近くまで送ってもらい、少し歩いた『私』は、そこに辿りつきました。
 山道の途中にある、落石注意の標識。私の思い出の場所です。

「ここで私……
 最初に横島さんと会ったんだ……!」

 また『私』の背景が変わりました。清々しい山の景色がフッと消えて、さっきと同じような、ちょっとメルヘンな雰囲気のバックになっています。
 これって、横島さんのことを考えているときの、恋する乙女オーラなのでしょうね。
 う〜〜ん、それならば……。私が今まで横島さんのことを話すたびに、弓さんや一文字さんにからかわれていたのも、なんだか納得です。


___________


 今度は、その夜の場面になりました。

「……!!
 成仏してく……!?
 悪霊を説得しちゃった……!」
「このひとも本当はわかってたのよ。
 ただ、独りで消えてしまうのがさびしくて……」

 早苗おねえちゃんの目の前で、『私』が幽体離脱します。

『私、送ってくるね』

 悪霊だった魂が天へと昇っていき、『私』も一緒に空へ上がります。そして、それがフッと消えるのを見届けました。

『さよなら……!
 またいつか……
 命になって戻ってきてね……!』

 小さく手を振った『私』は、すぐには地上へ戻りません。夜空に留まったまま、自分の一生を振り返っています。

『私がいつかそこへ行くときは……
 ちゃんと思えるよね』

 これまでに出会った人々・神族・魔族、そして彼らとの思い出……。
 それらが、たくさんの絵になって、私と『私』の頭の中を流れていきます。

『本当に楽しかった。
 みんなありがとうーって、 』

 残念ながら私は、江戸時代のことは、あまり覚えていません。確かに、道士さまに記録映像を見せていただいたおかげで、ある程度のことは思い出しました。それでも、私の人生の記憶の大部分は、横島さんや美神さんとの出会い以降の思い出になってしまいます。
 だから……。

『みんなにもらった命……
 その日まで精一杯生きたよって』

 最後に『私』の頭に浮かんだのは、美神さんや横島さんと出会ってここを離れたときのことでした。


___________


 しばらくの間、『私』は空に浮かんでいました。そして、スーッと地上へ戻っていきます。
 でも……。
 私は戻れません。
 ええ、もうわかってるんです。
 今この瞬間が、『そこへ行くとき』なんです。
 これは、街灯から落ちちゃって死んでしまう私が、死の間際に見ている回想なんです。
 走馬灯……っていうんでしたっけ?
 ふふふ。神さまも面白いことをしますね。よりによって、昨日の様子を見せるだなんて。だけど、これまでの人生を振り返った時なのだから、それを『走馬灯』として見せられたら、ある意味、効率的なのかもしれません。

 ……。
 みんなとも、横島さんとも、もうお別れなんですね。寂しいけれど、でも大丈夫です。
 ちょっと……どころか、かなり予想より早かったけど、でも、ちゃんと胸をはって言えます。

「本当に楽しかった。
 みんなありがとう……」


___________
___________


「おキヌちゃん、ダメだーッ!!
 まだ『そこへ行くとき』なんかじゃないぞッ!!」

 その叫び声で、私は目を覚ましました。
 声のした方向に視線を向けると、

「あ……あれ……!?
 病院……!?
 あれ……!?
 じゃ、今のは全部夢だったのか……!?」

 と言いながら、横島さんがキョロキョロと周囲を見渡しています。
 どうやら、横島さんは、自分の絶叫で夢から覚めたようです。

「横島さん……。
 それは私のセリフです……」
「あっ、おキヌちゃん……!?」

 詳しい事情はわかりませんが、私たちは二人とも、病室のベッドに寝かされていました。
 あ、念のためにことわっておきますが、もちろん別々のベッドです。

「横島さんも……夢を見ていたんですか?」

 恐る恐る尋ねる私。
 だって、横島さんの口ぶりでは、横島さんが見ていた夢は……。

「……うん。
 おキヌちゃんの夢を見てた」
「……あっ!!」

 やっぱり!
 そう思って頬が赤くなる私を見て、横島さんは、勘違いしてしまいました。

「ち、違うんだ、おキヌちゃん!
 別にイヤラシイ夢じゃないぞ!?
 おキヌちゃんの昨日までの帰省の様子を、
 もう一人のおキヌちゃんの目から見ているという形で……」

 わかっています!
 横島さんは、私と全く同じ夢を見たんでしょう!?
 だから恥ずかしいんです。
 だって……。

「えーっと……おキヌちゃん!?」

 真っ赤な顔でうつむく私を見て、横島さんは、なんだか困っているようです。
 そんな微妙な空気の中、美神さんが病室に飛び込んできました。シロちゃんとタマモちゃんも続いています。

「横島クン! おキヌちゃん!
 気がついたのね……!?」
「先生!! おキヌどの!!」
「大丈夫!?」


___________


 あの後。
 美神さんが事情を説明してくれました。
 街灯から落ちた私は、地面に激突する前に、横島さんに助けられたそうです。
 ただし、ギリギリだったので横島さんも上手くキャッチできず、頭と頭でゴッツンコ状態。そのまま二人とも意識を失ってしまったのです。
 それでも、特に外傷もなく、数時間眠っただけで、自然に目を覚ましたんですって。
 表面的には、これで一件落着なのですが、問題は、意識不明の間に見ていた夢のことです。

「二人とも同じ夢を見てたの……!?
 それは……
 テレパシーで夢がまじっちゃったのかもね」
「……またっスか!?」

 ニマッと笑う美神さんに対して、横島さんは困ったような顔を返しました。
 横島さんは、美神さんとも『夢がまじっちゃった』経験があったからです。
 それから私のほうを見た横島さんは、

「でも……
 あれがおキヌちゃんの夢だということは
 ……あっ!!」

 そこまで言って固まってしまいました。


___________


 私と横島さんが見た夢の中で、私は、自分の一生を振り返っていました。
 そこで回想した心境は、私の嘘偽りのない本心。それに、例の『恋する乙女オーラ』もありました。
 だから……。
 これまでの私の気持ちを全部、横島さんに知られてしまったんです。

 恋なんてわからなかった幽霊時代も。
 はっきりとした恋心じゃなかったけど、でも横島さんのことが好きでした。

 そして、蘇って、記憶を取り戻してからも。
 やっぱり自分の気持ちがよくわからなかったけど、でも『好き』でした。ずっと一緒にいたい人でした。
 実際、アパートの部屋で二人きりで、ごくごく自然な雰囲気で一晩いっしょにすごしたこともありましたね。そんな幸せな経験を、これからも続けていきたい相手でした。

 そんな微妙な乙女心が……横島さんに全部筒抜けになっちゃったんです。
 はっきりと「大好き」って言ってもわからないほど鈍感な、あの横島さんに。

 恥ずかしいけど、でも、いつまでも恥ずかしがってるわけにはいきません。
 だって……。

「ごめん、おキヌちゃん。
 待たせちゃったかな……?」
「大丈夫ですよ、横島さん」

 今日は、私たちの……恋人としての初デートですから!


(心と心がつながって……・完)


______________________
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 こんにちは。
 こちらの掲示板には、おキヌちゃんをメインにした作品が幾つも投稿されていますが、そうした様々な作品を読むうちに、「私も『甘いおキヌちゃん』を書いてみたい!」と思いたち……。ちょうど前々から「おキヌちゃん、こんなところに座っていたら危ないなあ」と気になっていた一コマと「この『うん』には色んな意味がありそうだなあ」と想像してしまう一コマがあったので、それらを利用して即興で作ってみました。
 自分ではおキヌちゃんファンだと思っているくせに、いざ私がおキヌちゃんを描いてみると、なぜか『ナチュラルに黒いおキヌちゃん』になることもあるそうです。「今度こそは!」というリベンジの気持ちもあったのですが……。
 さて、どうだったでしょうか。御意見・御感想がいただければ、さいわいです。

6/16付記;
 誤字脱字に近いレベルのミス(おキヌ一人称のはずなのに呼称が『美神や横島』になっている)を一つ見つけたので、修正しました。
 なお、皆様からいただいたコメントへのレス返しは、数日後あるいは一週間後くらいに行おうと思っています。


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