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「彼女達の理由(GS)」

凛 (2008-04-17 15:42)


 一文字魔理は椅子に座りながらカリカリと頭を掻いていた。

理由は、たった今受け取った1年生最後の成績表の結果が素晴らしいとはいえない結果だったからだ。

 内訳を曖昧に表現するとすれば、ところどころアヒルの群れが並んでいるといったところか。あまり優秀とは言えないことは自分でも理解しているが、これを霊能に詳しいとは言えない両親に見せるのは躊躇したいところだろう。成績が良くなければ、危険なことも多いといわれる霊能の世界に居てほしいとは思っていない両親である。

そういうわけにもいかないことも分かっているからこその葛藤であるが。


 やがてため息をつくと、そっと成績表を閉じ、机の中に入れ込んだ。


   彼女達の理由


 やがて1年最後の授業が終わり、周りはキャイキャイとこれから何をするかといった内容をクラスメイトが語り合っている。さすがに学年最後の日は、いわゆる半ドンで終了し、暇になる午後をどうするかといったところか。

劣等生気味の自分と比べて幾分テンションが高い様子から見て、それぞれが満足を持てる結果を出せたのだろうか?と、少し羨ましくもあったが、いまさら過去を悔いたところでどうにもならない事も認識していたので、気分を変えようと、自らも春休みにどんな事をしようかと思いを馳せようとしたところで、聞き覚えのある声がかかった。

「魔理さん!」
「ああ、おキヌちゃんか」
「弓さんとこれから帰りにお茶をしていこうとお話していたのですが、魔理さんもどうですか?」

 ちらりと弓かおりの方を見ると、帰り支度はすでに済んでいるのかどこか所在なさげに此方を眺めていた彼女と目が合った。すぐにふいっと目線を合わせないように顔を背けられてしまったが、どこか悪戯を見つけられた子供のようなその仕草に苦笑し、了承の意を伝えると、おキヌは嬉しそうに頷いてかおりの方向に歩いていく。

 それを見つめながら、おキヌちゃんはどことなく可愛らしくて羨ましい。そんな詮無きことが考えた自分自身にまたも苦笑しながら、鞄を取り出して帰り支度をはじめた。


 3人とも電車通学であるためか、お茶をするとなるといつも学園近場の駅前にある小洒落た喫茶店に寄るのが慣例になっている。

 規模は割りと大きく2階にも席があり、晴れた日には店前に日よけのパラソルを挿した簡易テーブルが並んでいたりする。

店内は静かなクラシックが流れ、使用されているグラスやカップなども凝った品が使われているその店は、かおりのお気に入りの店でもあった。

 今日は同じような考えの生徒が多いのか、六道の生徒や、近場の別の高校の生徒達が大勢入店しているらしくざわざわと騒がしく感じられたが、3人寄れば姦しいといわれる女性の、しかも高校生である3人にはあまり関係の無いことである。なんせ、彼女たちも姦しいほどに喋るのだから。


 2階の奥まったテーブル席に座り、注文を終えて一息ついたところで、口火を切ったのは弓かおりだった。

「そういえば成績表はどうでしたか?」

 それを聞いた途端、魔理とおキヌは『ビクッ』と身じろぎすると、「あー」やら「えーと」等と言葉を濁し、触れられたくなかった!という空気を発散させていた。

「そういう自分はどうなんだよ?」

 と、魔理は逆に聞き返したが、弓かおり嬢はクラスの委員長を務める所謂優等生な人である。だが、あまり人の感情を読み取るといった事は苦手な彼女は、その言葉を聞くとゴソゴソと鞄から成績表を取り出してテーブルの上に広げた。

結果はご想像の通りである。
 広げられた成績表は、どこに出しても恥ずかしくないといえるだけの評価であり、一度でいいからこんな成績出してみたいと思ってしまえるほどの内容だったとだけお伝えしておこう。魔理にとってそれは、後光さえも見えてしまいそうなものだった。

 そして、何の衒いも無く無造作に広げられた成績表に、返す答えは自らの成績表も差し出すという答えしか見出せない。これは仁義の問題であるが、魔理とおキヌも鞄から成績表を取り出し、そっとテーブルの上に置いた。ただし、閉じ折りのそれを閉じたまま。

 まず、かおりが先に手を伸ばしたのはおキヌの成績表である。
 おそるおそる出された、と言ってもよい2人の態度に、首を傾げているかおりであるが、おキヌのそれを開いたところで目が細まった。

 一言で言えば、可も無く不可も無く。古文や霊能に関する成績はまずまずといった結果である。
しかし、理数系や霊的格闘技術の欄が厳しいといったところだ。慣例として、最低評価である棒一本で表すアレは見当たらなかったが、なんとも凹凸の激しい評価だったと言えばいいのか。

 簡単に説明するとすれば、2or4。中間は無かった。全体のバランスでみれば、若干低い方が多いように見受けられる。

 ただ、霊的特殊技能の欄は高評価がついていた。これには5段階評価はつけられていないが、担任の鬼道による評価の言葉が書かれている。

 ヒーリングやネクロマンシーに加え、笛を利用した精神感応も使用できるおキヌだからこその評価だった。締めくくりに、後衛としてなら問題は無い。と、書かれていた。


「なんとも評価に困る成績ですわね」
「数学とか科学とか解んないですー」
「あれほどテスト勉強なども教えてさしあげましたのに・・・」
「でも、がんばったんですよー?」
「まあ氷室さんは、そもそも一般常識すら怪しいところがあってのこの成績ですから・・・ね」

 最後に小さな爆弾じみた発言が見られたが、ブツブツとそう呟くと『ほぅ』と、溜息をついたかおりを見かねたのか、おキヌは話題変換を試みた。

「あははー、ま・・魔理さんはどうでしたか?」
「お、おう!」

 それを聞いてギクリとした魔理である。彼女の成績は、おキヌのそれよりも悪い事を知っていたので、おキヌでこの態度であるところのかおりにどんな嫌味を言われるのかと戦々恐々としながら、いまだ閉じられたままであったその成績表を、テーブルの中央に差し出した。

 はたして明かされた結果は、劣化おキヌのような成績である。
一般的授業の欄は、おしなべて悪い。たまに3が見えるアヒルの行列。つまり2が多い。

霊能力と、一般授業の欄は区切りがされていて、六道学園の場合どちらかと言えば霊能関係の技術や知識のほうが重要視される傾向にある。

 修める授業は多く、一般授業の他には霊的格闘技術、霊的知識、霊的古代史。
選択授業もあり、英語、ラテン語、漢文、古文から選ぶ。これは、オカルトに関する書物などが主にこれらの言語で書かれていることが多いからであり、学園の図書館に置かれている書物などは、OGや教師が翻訳していない限りはそのまま置かれているからだ。

 つまり、読みたければ読めるようになれということ。読めない者には開く資格すら無いという厳しい姿勢がとられている。

読んだだけで新しい技能が得られるといった事はありえないが、自らの霊能は自ら開発するべきであり、その手段の一つとして知識を求めるのならば努力しろ。という事らしい。 


話が逸れたが、魔理の霊的総合評価は芳しくなかった。
 まず霊的格闘技術だが3つの項目に分かれている。
 霊的攻撃力、防御力、回避術である。左から4・3・2 総合評価は3で、悪くは無いが、良くも無い。
おキヌの場合は2・2・4 評価は3だった。かおりは5・4・4 評価は4だが、霊的特殊技能の欄に弓式除霊術の鎧を使用した場合という評価もあり、その場合は5・5・4で評価は5である。

次に霊的知識、古代史は共に2。選択授業は特にこういった技能が欲しいという要望も無いので、書物を読む以外にも利便性が高そうな英語を選択しているが、これも2。がんばりましょう。と、書いてあるのが哀愁を誘う。

 そして霊的特殊技能の欄は特殊な技能をもっているわけではないので特に無し。担任からの評価としては、肉を切らせて骨を断つといった行動が多いことに対して注意するように。と、一筆されて締めくくられていた。

「一文字さん、あなたもですか・・・」
「あはははははは・・・」

 魔理としては笑うしかなかった、自分の頭が良いとはけっして思ってはいないが、あのクラス対抗試合の後、おキヌを交えてかおりと話すようになってからは、高圧的に見えて実は面倒見が良い彼女におキヌともども勉強を教えてもらったりしていたのがこの評価である。

確かに赤点で再試験という不名誉な結果は出なくなったので昔よりは上向き上昇しているが、目に見えて評価に現れるほど上がっていなかったのが悔しくはあった。

「自分としてはがんばったつもりなんだけどなぁ」
「・・・努力していたことは認めましょう」

 そう発言したかおりに、魔理は目を丸くして、

「弓も丸くなったもんだ・・・・昔のツンツントゲトゲしていた弓はどこにいったのだろ」

 思わずそう口にしてしまった魔理だったが、それを聞いたかおりはふっと微笑した後、
「今度からはもっと厳しく教えて差し上げますわ」

 そう言った時の彼女は、目が笑ってはいなかった。むしろギラリと光って見えたと魔理は後に語ったという・・・・。

「ついでですのよ!あなたがたに教えることは、私の復習にもなりますから」

 威圧感を一瞬感じさせるほどの印象を受けた彼女が、慌てたように言い募る様に、やはり昔とは変わったのだな。と、現在の友人の成長を見て少し羨ましく感じた魔理だった。


 その後、春休みに3人でショッピングに行こうという話しになり、それぞれの都合を考えながら日にちを決めたり、それぞれの好きな男についての愚痴を魔理とかおりが語るのを、おキヌが静かに聞いていたりしていたとき。ふと唐突に静かになった。

 天使が通るとでもいうのか、なにか決定的なものがあるわけでもなく、本当に唐突にそれまで話をしていた魔理とかおりが両方揃って会話を止めた。

キリが良かったというのもあるだろう。
 しかし、とまってしまった流れはどうしようもなく、何か話題は無いものか思ったその時、

「お二人は、どうして六道学園に入学しようと思ったのですか?」

 と、唐突におキヌが尋ねた。


「理由・・・。ですか・・・」
「理由・・・。かぁ・・・」

 思わず同じタイミングで同じ事を呟いた二人だったが、表情は別だった。
 かおりはどこか自重したような表情で、魔理は苦笑している。
 まず、口火を切ったのはかおりだった。


「そうですわね。私の場合は家業が退魔師として続いてきた家柄ですので、否応も無く幼い頃から鍛錬なども行っておりました・・・・。
 鍛錬と申しましても、格闘技を基本とした霊的戦闘術を含めた様々なものを教わるわけでして、幼い頃には他の家の子が遊んでいるときに何故私は痛い思いをしながら鍛錬を行っているのだろうか?と、考えたことも無いとは申しませんが、日々行うそれらに慣れていき、一般の方々には見えないものも見える様になった頃から、私は霊能を扱う世界に身を置くことを漠然と考え始めていたのかもしれませんね。
六道に入学しようと思ったというよりは、六道学園しか目に入っていなかった。
いまでこそ、視野狭窄に陥っていたものだと思いますが、私にはこれしかないと思っていましたし、関東圏内に霊能を教わる高校も六道学園しかありませんでしたので、自然と選んだ。と、いったところでしょうか」

 そう締めくくって、かおりはカップに半分ほど残った紅茶で口を湿らせた。


それを聞いたおキヌは、『へぇー』と声に出しながらコクコクと頭を上下に振りながら感心していたが、魔理にとっては初めて聞いた彼女の心情に驚いた表情を浮かべていた。


魔理とかおりは同地区同学年で、小・中学校は同じだった。クラスは重なったり重ならなかったりしたが、言葉を交わすことはほとんど無かったといっていいだろう。

 かおりが魔理をどう思っていたかは知らないが、物心がつき思春期に差しかかった頃には、かおりは優等生と呼ばれる存在だったことは覚えている。

 付き合う友人も、学年の優等生グループと付き合いが深かったかおりに対して、彼女は所謂劣等生グループに属していた彼女であったし、友人も似たようなものでかおりとの接点はほとんど無かったに等しい。

 どこかいつも張り詰めたような表情を浮かべ、日々を過ごしている彼女に対して、ライバルを見るかのような感情は抱いていなかったが、いつも努力していることも知っていた。

 反抗期だったのだろうか家に帰るのが嫌だった頃、放課後に友人が誰も捕まらないときに図書館で眠りながら時間を潰したりすることもあったが、図書室の隅でうたたねしたりしている時、ほぼ必ず彼女は自習というのか復習というのか。もしくは宿題だったのかもしれないが、ノートを広げて勉強をしていたのを覚えている。

 自らが劣等生であることを認めていたし、そうであるがゆえに優等生に対してやっかみじみた敵意を持たなかったか?と、問われれば。持っていたとしか答えようが無いが、彼女が真剣に勉強をしている姿勢を知っていたからか、彼女に対してそういった感想は抱かなかった。

彼女が真面目に取り組んでいる姿勢に、むしろ自分が持っていないものに対しての憧れや羨望。そんな感情を抱きつつも、自分には無理だと諦めてぬるま湯のような生活をしていた自分が嫌いでもあった。

勉強もできたし、スポーツも得意だった。毎回委員長に選ばれていたような記憶もある。
 完璧超人じみたように見えていた彼女にも、それなりに思うところはあったのか。
 と、魔理は彼女を見て、そう感じた。


「一文字さんはどうですの?」

 どこかスッキリした面持ちで、カップの中の紅茶をぼんやりと見ながら魔理に話を振ったかおりは、その言葉を言い切った後にバッと顔を上げ、なぜか頬を赤らめながら魔理を見つめていた。

「?私は・・・」

 そんなかおりを見て、なにか恥ずかしい事でも思い出したのか?と、一瞬いぶかしんだが。考えてもわかるわけではなし、そう呟きながら話を聞く姿勢に入ろうとしている2人を眺めると、ニヤリと笑いながら、


「しいて言うならおキヌちゃんと弓のおかげ・・・・かな?」

 それを聞いたかおりは、なぜかさらに頬を赤らめて魔理をじっと見つめていたが、

「えっ?えっ?私、魔理さんになにかしましたっけ?」

 おキヌは何を言われたのか理解はせども、思い当たらないのか頭に一休さんのごとく両手の人差し指をこめかみに当ててウーンウーンと唸っていた。


「じゃ、ヒントだ。私は幽霊の頃のおキヌちゃんと会ったことがある」
「えっ!えー!?」

 さらに混乱したのか、同じ姿勢でさらに目をぐるぐると回し始めたおキヌをニヤニヤと眺めていた魔理だったが、

「どういうことですの?」

 若干頬の赤みが引いたかおりがそう聞いてくるのを切欠に、

「私が六道学園に入学しようと思った理由だろ?」

 そう答えると、気を取り直したのかかおりとおキヌは、そろってコクコクと頷いた。

「おキヌちゃんと会ったのは・・・・、進学先を決める少し前くらいの事だったかな。その様子だと覚えていないのだろうけど」

 それを聞いて今度は右手の人差し指を顎にあて、眉をしかめながら考え始めるおキヌを尻目に、話を続けた。

「じゃあ話を続けるよ?私は・・・まぁ一般的に言うところの不良で、それを心配したのか死んだはずの爺さんに説教を受けたことがある。その時に、爺さんがなぜか連れてきた幽霊がおキヌちゃんだったんだよ」

「あっ!あの時の・・・?」
「あはは、その事は覚えていたんだな」

 合点がいったのか、初めて知った縁に驚いていたおキヌだったが、話の見えないかおりは、

「死んだはずのお爺さん・・・?」
「ああ、爺さん幽霊だったしな。その割りに元気そうで死んでいるように見えなかったけどな」
「それがどうして六道入学に繋がるのかしら?」
 と、先を知りたいとばかりに問いかけた。

「うん。その頃は、まぁ私は爺さんのこと嫌いじゃなかったけど反抗期だった・・・多分。だからさ、盛大に文句を言いながらも説教されていたんだけど、その状況ってのが変わっててね。
 強制的に幽体離脱させられていたんだよ。
 たまたま家に居たときだったんだけどさ、話をするにもその頃の私は霊を見るなんてことできなかったから、『それしか方法が無かったんじゃ!』って爺さんは言っていたけど、その間に私の体に入っていたのがおキヌちゃんだったんだ」

 うんうんと頷いているおキヌと、話の見えないかおりをチラリと眺めて、話を続けた。

「その時は知らなかったけどさ、体と幽体は二つで一つ。幽体が入っていないと体は衰弱して死んでしまうから、私の変わりにおキヌちゃんに憑依していてもらおうって話だったらしい」
「あら?ちゃんと勉強されているのですのね」
「茶化すなよ、弓。今でこそ理解できてるってだけさ」

「そんな事知らないし、そこまでされて説教を受けなきゃならんのか!とか思ったりしたものだけど、まぁそこまでするほど死んだ爺さんに心配されていたのか。と、感じる所はあったからさ、話を聞いていくうちに・・・・。まぁなんというか黙って聞いていた。
で、説教が終わって近況を報告っていうか話していたとき、突然体が引っ張られる感覚に陥って、気がついたら体に戻っていて、見知らぬ男に手を握られていた」

「あっ、それ横島さんですよ」
 嬉しそうに話すおキヌに、彼の話になると元気になるなぁと思った魔理とかおりだった。

「名前も知らない男だったけど、対抗試合の時に来ていたあいつを見て、あの時の男ってこと思い出してさ。おキヌちゃんと知り合いってことは後から聞いたけどね」
「はい。私が誰か憑依していても、私だということが判ってしまうと、憑依が強制的に解かれてしまうのだそうです。それで・・・・、会ってすぐに判られてしまうと思いませんでしたけど」
 なんだか惚気話になっていきそうな気配を感じて、

「まぁ、そこでおキヌちゃんとあの時の事を結びつけてその事に気が付いたわけだ。
話を戻すけど、爺さんの事嫌いじゃなかったからさ、もっと話をしたいと思って、手を握っていた男をぶん殴って急いで家に帰ったけど、戻っても爺さんは居なかった。
 それきり、爺さんに会うことは無かったから、多分成仏したんだろうな・・・・」

 そう言って懐かしそうに目元を緩める魔理を黙って2人は見ていた。『殴ったんですか・・・・?』と、おキヌは若干顔を引きつらせていたが。一瞬、柔和そうだが怒ると怖そうなお爺さんが、魔理の後ろに立ちながら微笑しているような光景を2人は幻視するかのように見たような気がするが、気のせいなのかもしれない。

「それからだ。しばらくすると、私は幽霊が見えるようになっていった。
最初は気のせいかと思ったけど、それは本当のことで、気がつくとどんどん見えるようになってしまった。
 理由は判らない。自分が幽霊になって爺さんと話をする機会があったからそうなったのかもしれないし、おキヌちゃんが私に憑依していたからかもしれないし、元々才能があったからなのかも・・・。まぁ最後のはそうであってほしいという願望かもしれないけど」

「えっ?私のせいなんですか?」

「おキヌちゃんのせいじゃないよ、おキヌちゃんのおかげさ。今ではそう思えるようになっているから気にしないでいいよ。
 おキヌちゃんは、300年も山の神みたいなことやっていたんだろ?鬼道先生に前に質問したことがあるけれど、幽体になったことがあるというのも、力のある神様が憑依したことでも、霊能が目覚めるというのは可能性としてはあるだろうということだったしね。
 ともかく、幽霊が見えるようになった私は、世界が恐ろしいものに変わったかのように思えた。
その頃の私には、幽霊に対してどうすればいいのか知らなかったから、怯えた。
 爺さんみたく、知っている人ならいいかもしれないけど、見えないはずのものが見えることが私は怖かった。人としての原型を保っていないのもあったからね。
 出歩くときも、極力見ないようにしながら生活していた。人はわからないものに怯えるって言うけど。多分それだと思う。
 それで、見えるようになってからしばらくして、弓の家に行ったんだ」

「えっ?ウチに来られたのですか?」
 驚いたように顔をゆがめたかおりだったが、それにかまわず

「ああ、わざわざ学校を早退して、弓に気がつかれないようにこっそりと」
 そう言って苦笑する魔理に

「私に相談してくれたらよかったですのに・・・」
 そう答えるかおりだったが、

「その頃私らに接点なかったじゃないか、それにお堅い優等生に見えたあんたに話しかけるほどの度胸は無かったよ。それも、幽霊について・・・だぜ?
 見えない人に、幽霊が見えることについて話すとさ、信じるとか信じないとか以前に、胡散臭いみたいな目で見られるじゃないか。だから話づらかったのさ」
「・・・そうですわね、確かにそういった目で見られる方も居られます」

 彼女にもそういう経験があるのだろうか、心持ち鎮痛そうな表情でそう呟いた。

「でも、話してくだされば相談にのりましたのに・・・」

「まあまぁ、それももう済んだことだから気にしなくていいってば。じゃ、話を続けるよ。
 弓の家。つってもお寺だったけど、弓の実家がGS業を営んでいることは近所でも知られていたし、近場でそういう話を聞いても大丈夫そうに思えたところはそこしかなかったのもある。
そこで会ったのは弓の親父さんで、アポもとっていなかったけど、快く話に応じてくれてさ、それで身の上の話しと幽霊が見えることについて相談したんだ。
 色々な話をして、結局得られた答えは
『極力見ないようにすること』
『危険だと感じた場所には何があっても近寄らないこと』
『もし、身を守る術を身に着けたいのなら、弓の親父さんが教えてもよい』
それと、
『六道学園に入学して、身を守る術を学ぶと良いかもしれない』
と、いうことだった。
 最後の話については、六道学園が霊能に関する事を学べる学校で名門ということも聞いて、私には入る資格があるのか?と、悩んだけど、そのときは結局身を守る術をどうするかということについては保留にして、御礼を言って帰ったんだ。
 その時、弓も霊能を持っていることも聞いた。弓も六道学園に進路をとるだろうということも聞いたし、弓の親父さんに色々と教わっているということも聞いたんだ」

「そんなことお父様一度も話してくださらなかったですわ・・・」

「まぁ弓には口止めするようにお願いしたからね」
「何故ですっ!」

 どこか熱しやすい彼女の性格を今では知っている魔理は、「まぁまぁ」と宥めながら話を続ける。

「何度も言うけれど、済んだことだからさ」

「私のせいで怖い思いを・・・」
 そう呟いて顔を青ざめさせているおキヌに対しては

「だから今では気にしてないから。解決していることを思い悩んでどうするのさ、おキヌちゃん」
 そう言って苦笑した。

「それからしばらくしてさ、状況は端折るけど、他校の生徒と喧嘩するハメになっちゃった時があってね。
 その時、相手の子に幽霊。今では判るけど悪霊が執りつこうとしたことがあった。
 喧嘩で興奮していた私は『私の相手を取るな!』みたいなことを言いながら悪霊に殴りかかって、変にテンションがあがって霊力を拳に纏っていたのか悪霊をブン殴って退治してしまった。
そして幽霊に対して何もできないわけじゃないと悟った。
 それからかな、私は勉強が得意というわけじゃない。だけど、霊能がある。と、思うことができるようになったのは。
 だから、必死に勉強して六道に入学した。

 それが私の理由・・・かな?」

 霊能に関して幼い頃より鍛錬しているはずのかおりが、自分よりも一手も二手も上手であろうと、彼女に対して羨望と対抗心を抱いていたことは内緒である。

 そう締めくくると、おキヌは音がしないように拍手しながら微笑んでいて、

「そんなことがあったのですか・・・」
 と、あの学級対抗試合で見ることがあった彼女の気持ちとは別に、彼女には彼女の理由があって六道に入学したのだということを改めて知った。

 思えば、かおりは彼女に対して。不良であった過去がある(今でもそうであるかどうかは微妙であるが)それだけを盾に、ずいぶんとひどい感想を抱いていたものだと思い至った。
 自分の霊能が、同じ学園の生徒と比べても随分と上位であるということにプライドを持ち、プライドを持つことが悪いことだとは思わないが、あまり霊能を操ることが得意ではない彼女に、それにかこつけて暗い気持ちをぶつけようとしていたことを恥じた。
それを顔にだすことはしなかったが。

「なんだ?今日の弓はいつもより静かだよな。なんかこう、もっと嫌味みたいなこと言うのかと思ってたのだけどな?」

 そんな事を考えていた時に魔理の言葉である、瞬間

「一文字さん!あなたという人は!」

 と、立ち上がって激昂しかけたが、

「まぁまぁ」
 と、微妙に顔を引きつりながら取り成そうとするおキヌと、こうなることが判っていたかのような表情でニヤニヤしている魔理をみて

「もう・・・今日はいいですわ」

 そう言って腰を椅子に降ろす

「考えてみると、不思議と縁があったのですねぇ。私と魔理さん、それと弓さんと魔理さんにも」
 そう呟くおキヌに

「そうだな」「そうですわね」

 と、同時に返したことで顔を見合わせ、苦笑しながらも次のターゲットは決まっている。

「氷室さん、次はあなたの話ですわね」
「そうだな、おキヌちゃんの話も聞かなきゃね」

 そう言いながら身を乗り出してゆく二人

「えっ?えっ?私の六道に入学した理由は前にお話したことがあったと思いますけど?」
 腰を引こうとしても、椅子にひっかかって後退できない彼女に

「もちろん、あの男とどこまでいったかという話に決まってるじゃないか」
「そうですわ、私たちのお話だけ聞いてさようなら。という訳にはいきません」

「あの、えと・・」
 逃げ場が無い彼女に

「さぁ話してもらおうか」
「さぁ話していただきましょう」

 グイグイと顔を寄せながらおキヌに近寄っていく魔理とかおり


 結局、おキヌは
 根掘り葉掘り、それこそ温泉でも湧き出すのではないかというほど掘られるといったところまで掘り下げて告白させられ、真っ白になったという。

 色々と聞いてホクホクした顔の二人が、真っ白に燃え尽きた彼女を、どこぞの宇宙人の写真のごとく二人で挟んで引きずりながら喫茶店を出たのは夕暮れのオレンジ色の光が輝く頃だった。


 後書き

 イメージが浮かんだのは、寝ようとしながらウトウトしている時。
 もしも、原作でお爺さんに説教されていたのが一文字魔理であったら?といった想像が浮かんだのか、手元にあったメモに『爺さんに説教』『一文字魔理』とだけ書いて寝た模様。

 起き抜けにメモを見て、なんだこれ?と、悩むこと数分。

時間経過によるメタ的な事情は完全無視で、書いてみるか。となんとなく思っちゃったのが見えない終わりの始まりでした。

書いて、消して、繋げて、文の繋がりを考えて、推敲をしながらまた弄って。を、繰り返し、いきなり沸いてきた言葉を入れ込もうとして、話の繋がりを見て無理だろうとか思ったり。
序盤の六道で学ぶものとか蛇足っぽいよな。とか思いつつ、あえて消さないことにしてみたり、設定考えすぎだろ自分。自重しろwとか、考えつつ

構想数分、製作3日。総時間12時間くらい(適当)で、書き上げたこの作品。
とにかく丁寧に書いてみようと思いました。

どちらかといえば魔理視点で進むお話ですが、途中途中で弓の視点をなどもちょこっと入れ込んでみたり、これは文としてはどうなのだろう?と、思わなくも無かったわけですが
あえてこのままで批評を受けてみようと思ったので、直そうとせずにこのまま投稿に及んだわけです。

 特に伏線とか入れようと考えなかったので、基本はダラダラペース。
 面白くしようとかあまり考えず、内面をどう表現していくかを考えました。
 あと、改稿難しい・・・。ずいぶんと適当なはずです。

 途中、弓かおり嬢が頬を染めたのは、一文字魔理嬢の六道に来た理由等を断片的ながらも、あの対抗試合のときに覗き見ていたから。
 と、いうのが裏設定。
深くは考えないほうがいいです。多分。

批評、罵詈雑言受け付けますので、ガンガン書いちゃってください。
 次に何を書くかといった気持ちは今のところ無し。燃え尽きるほど打ち込んだぜ!なんて思うほどがんばったという気持ちも特に無いのが問題です


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