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「娘とプリクラ(GS)」

トンプソン (2008-02-19 00:41/2008-02-23 20:22)

なんだかんだ言っても・・・
「日本はいいわね。ひのめ」
「あぶー」
と、赤ん坊らしい素晴らしい返答を母親にしたひのめであった。
少しえぐい話にはなってしまうが。
子を成すというのにはどう考えても女性の方が負担は大きい。
まず乳房が痛いぐらいまでに張るのだという。
体重も5〜10kgは増える。
そして最後には男には分からぬ痛みを伴う。
出血も男であれば失神する者もでてくるであろうか。
苦労の結晶が今、腕の中にいる。
次女が腕の中にいる。
出産に伴うリスクも多い。だが日本であれば問題が無いわけではないが、
技術も高い、万一の問題も対応が出来るだけの技術がある・・。
逆算にいえば。
GS美神玲子のGS極楽大作戦が展開されていた時代も先進技術である。
それ故、手洗い場で固まる美神美智恵婦人その人であった。
遅れながら季節を語ると。
肩に桜の花びらが舞い落ちる状況であった。

「・・・蛇口はあるんだけどなぁ」
ひのめが起こした粗相を偶々近くにあったゲームセンターのトイレで直していた。
当初は個室があれば良いと思っていた美智恵婦人であったが、
「やっぱり日本って凄いわ・・。トイレでもこんなに綺麗なんだもん」
と独り言を言ってしまうほど綺麗な場所であったらしい。
最も今まで居住していた場所と比較するのはどうかと思うが。
ドア一枚隔てると様々な音が混濁しているホールがある。
赤ん坊というのは音に対して敏感である。ひのめちゃん、ちょこちょこと歩きながら、
比較的優しい音楽がなっている大きな箱体の近くに陣取っている。
そして母親美智恵夫人は手を洗おうかと蛇口近くに歩みを進めて手を洗おうとしたら。
「・・どうやって水を出すのかしら・・・?」
ひねり口がみあたらないのである。
十字型の右回しで水を出すひねり口がないのである。
いくら自分の子供とはいえ、臀部から発生した粗相をきれいにした後ぐらいは手だけでも綺麗にしたい物である。
ちょうど蛇口の先端に丸いシールが付いている。
「これを押すのかしら」
と独り言を発しながら人差し指でちょんと押してみても水は出ない。
「困ったわねぇ・・」
そうしているとトイレの奥から現れた黒髪でロングヘアーのセーラー服姿の女の子。
意を決した美智恵婦人が。
「あの、ちょっといい」
「はい?なんで御座いますか?」
「いえねぇ、手を洗いたいんだけど、ひねり口が分からなくて・・」
素直に白状すると「くすっ」と笑った女子高生が。
「このタイプは蛇口の下に手を掲げますとセンサーが反応致しまして」
言葉を続けながら自らの手を下に置くと、当然ながら水が出る。
「・・・ひえーー。日本の技術はすごいわねぇ」
感嘆極まりといった風体であった。
では失礼しますわ、と黒髪の女子高生が先に出て行った。

このゲームセンターは渋谷や池袋の駅前にあるようなメガ・スペースではない。
店の奥には10年前の箱体も現役という風情のあるゲームセンターである。
かといって古いものばかり集めているわけではない。
最近流行の柔道着を着た主人公が波動という理解できそうで出来ない物を飛ばす機械もおいているし。
「あらひのめ。ここにいたの」
優しい音楽を奏でている大きな箱体は例えるなら証明写真を撮るよな物体で人が4〜5人は入れそうな機械である。
中には矢張り5人程度であろうか、先ほどのセーラー服とは違うであろう仲良し女の子達が入っているようである。
「なんのゲームなのかしらね・・??」
自分が独身の頃(20歳)の頃は喫茶店の紫煙が曇る中、インベーター飽きるまで行うのがゲームセンターであったと理解している。
疑問には思うが然程の興味もなかったので、ひのめを抱いて家路につこうとした時、その機械から眩いばかりの光が発する。
そして中から。
「あーん。私目ーつぶっちゃったー」
という声を筆頭にどうやら写真写りを気にする女の子達がいる。
「???なんの機械なのかしらねー。ねーひのめ」
「あぶー」
やっぱり良い答えである。
今(2008年現在)ではカラオケと同じぐらいの知名度を誇る日本文化、「プリクラ」を目の前にしている美智恵婦人である。

「へーーやっぱ日本ってすごいわー。こんな面白そうなこと、思いすらつかなかったわ・・オバ」
プリクラから出てきた仲良し女子高生軍団にこの機械の遊び方をお伺いした美智恵婦人、再び感嘆の一言である。
ただし、「オバ」とは中年婦人を表す言葉を発しまいとした努力である。
もっとも肌つやから考えればそうは思えぬ婦人を前にし、なにより、
「うわー、ほっぺプニプニ」
と、女子高生軍団の生きているぬいぐるみ状態のひのめであった。
「それでこうやって16分割したシールがでてくるんです。そしてここに・・」
やや利発そうな女子高生軍団の1人が近くにあるボードを指差して。
「一枚張っていくのが最近の流行なんですよぉ」
と、親切におしえてくれていた。
そのうちに、軍団の1人が用事があるので失礼しますと言い始めると雲の子をちらすがなんとやらで、綺麗にいなくなっていた。
最後の1人が。
「あ、折角ならお子さんとプリクラしてもいいんじゃないっすかー、じゃねーひのめちゃんv」
などと言っていた。
元々、直ぐに帰宅するつもりであったが、トイレを借りた手前、無料で帰るのも心苦しいという物で。
「折角なら・・やってこうかな?」
料金もコイン3っつ程度と家計にも響くものではない。なによりもボードに張られたシールが。
「あら、私と同じぐらいの方もやっているのね」
近くの会社に勤めるOLグループであろうか。にこやかにピースサインをしている物がある。
そして少なくない割合で男の子と女の子の二人組みである。
「ははぁ、確かに「ぷりくら」はデートにはもってこいね」
うんうんと頷いている美智恵婦人の後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「ママ、なにやってるのよ」
長女美神令子ちゃんが珍しい物でもみるかのようにそこに立っていた。

「じゃママはひのめの後始末でゲーセンによったのね、びっくりしたわぁ」
事の顛末を聞いた長女も納得といった風体であった。
「ま、ね。それにしても、アンタは買い物の帰りなの?」
「うん。向こうの酒屋に美味しい洋酒が入ったって聞いてね。みてママ、これ戦利品」
喜々として見せるは酒呑みには有名な洋酒である。
この世のすべての喜びを一身にあびている風体の長女に少し不安を覚える美智恵婦人である。
「ったく。どうしてそんなに呑兵衛になったのかしら、はぁ」
とため息をつきながらふと思いついたことがある。
「ね、令子、折角だから「ぷりくら」しない?アンタならしってるでしょ?」
長女の令子は東京暮らしが当たり前だが長い。未成年の頃は貧乏であったが今は経済的には余裕がある。
答えをまつ美智恵夫人にたいして。
「・・・・・そうね。プリクラなんてやった事ないからちょうどいい機会ね」
と告白している。
「令子・・・アンタプリクラやった事ないのぉ?」
「うん、なんか嫌な予感がしてね、避けてたんだけど、ママがご推薦なら」
「悪い予感?」
うん、でもちょっとした予感だから、気にしないで、と令子は手を振りながら母親とひのめをプリクラの中へと促した。
時に。
この美神親子、車や銃器関係には滅法つよいのだが、所謂白物家電にはどういった訳だが。
「なんか、この掃除機使いづらいはね」
などごちるように相性が悪いと言わざるをえない。
このプリクラもどちらかといえば、こういった類に近似した存在である。
「ねぇ、令子、何処にお金をいれるのかしら・・」
「あれー?どこかなぁ」
と母子して初期段階から迷っている。
「あーうー」
とひのめが答えをだしているのがほほえましい・・・と言えようか。
あぁ、ここなのねと美智恵婦人がコインを三枚いれてると、箱体の上から電子音が響く。
『フレームを選んでね』
さて何のことやら分からぬ美神一家三名様である。
「・・令子フレームって何?」
「さぁ、メガネの一部をフレームっていうけど?」
「あーうー、ぶー」
少しおねむになりつつあるひのめちゃんであった。

このまま待っていてもらちがあかぬと一旦外に出た美神令子の前に見えたのは。
「!美神お姉さま!!!」
驚きを隠せないのは先ほど、美神美智恵婦人に蛇口のセンサーについて教えた黒髪でロングヘアーの女子高生、
弓かおり嬢であった。
そしてその隣には。
「あーらー。お安くないわねぇ、雪乃丞クン」
と、美神令子が半ば二人をからかう様に言ったものである。
話を総合すると。
六道女学園から自宅へと至る途中にあり、かつ雪乃丞が近くに寄れるゲームセンターがここであるという。
更にかおり嬢曰く。
「この雪乃丞はどういうわけか、古いゲームが好みでよくここで屯(たむろ)しておいでですわ」
との事。
多少は雪乃丞には付き合うが少しは私の意見も聞いてほしいとの事でプリクラをやろうという事であった。
「ま、俺も異存はなかったしな」
とは雪乃丞が頭をかきながら言い放った言葉であった。
俺はプリクラについて詳しくないけど、弓なら・・・・。
雪乃丞の言葉に嘘はなかった。
「じゃ、お教え申し上げますわ」
張り切ってどうすれば写真がとれるか丁寧に教えたものであり、加え。
「私たち霊能者であればこれをお持ち下さい」
とお守りを渡したものである。

結論からいえば。このお守りは弓・雪乃丞の二人には効果があった。
しかしながら元々霊能には強い力を発揮する美神母子にはお守りですら諦めるほどであった。
すとんとシールが出てきて急いで取った美智恵婦人が、ため息をついたのである。
「どうしたのママ?」
「どうもこうもないわよ。見て令子、アンタの嫌な予感が当たったわよ」
「・・あー。やっぱそっか」
娘のため息も認めざるをえまい。
このプリクラというのは画素に関しては正直低いといわざるを得ない。
ところが、はっきりと写真に写っている物がある。
諸兄は心霊写真をご存知であろうか。正にテレビに出せば喜ばれるであろう心霊写真が撮れているのである。
「あーしかも10人を超えてるじゃないの」
美神母子にしてはむしろ心霊現象のない写真の方が珍しい。
この程度は何時も通りなのである。
「あ、申し訳ありません。わたしのお守りが効かなかったようで・・」
と、縮こまる弓を励ます美神令子があった。
さてと、こんなのはボードに張れないわねと言った美智恵夫人であったが。
「失礼ですが」
ぬっと割り出てきたのはこのゲームセンターのオーナーであろうか。30代のちょいとした良い男である。
来ている物もこのゲームセンターのロゴが入った背広であった。
「どうやら、奇妙な現象が起こったようで、申し訳御座いません。御代は結構で御座います」
と差し出したのはコイン三つである。
つまりは弁償するという事であろう。
別段断る理由をもたない美智恵婦人。むしろ申し訳なさそうに。
「そ、そうですか、ではお言葉に甘えて・・」
と、コインを受け取っている。
「さて、奥様、一つご相談がありまして、このプリクラ、頂戴できますでしょうか。若し、この写真が悪さをしなければ、ですが」
この心霊写真も大雑把に言えば二つに分かれる。
一つはその人その物が何かに恨みを買っている場合。これは問題である。
一つはその人が霊能者である為、余人には見えぬ何かを写してしまう場合である。
美神一家は後者である。
「・・折角だから、私と娘の分は欲しいけど、よろしければ2枚差し上げてもよいですよ」
と美智恵婦人が申したところ、有難う御座いますと頭を下げたオーナー殿であった。

悪い気のしない美神美智恵、娘の令子が帰ったのを確認してこのオーナーがどこぞに電話をかけている。
『プリクラの新しい可能性を思いつきました。フレームにちょっと怖い幽霊的な物を映すのです・・
   そう、被写体と同じぐらいになる大きさで・・・そうです。ちょっと怖いのをおいておけば被写体は美人に写ります
     ・・・はいご検討を。実際に面白くなると思います。あぁ、かわいい悪魔というコンセプトも悪くないかと思いますよ』

数ヵ月後、プリクラの新機種に悪魔と雪だるまの合いの子みたいなキャラクターが登場し、
若い女の子を中心にキモ可愛いとあいされていったのである。
このゲームセンターの小さな花壇には向日葵が笑顔を振り撒いていた。


FIN


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