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!警告!インモラル、ダーク、バイオレンス有り
15禁注意

「2nd カタストロフ 1-1(GS)」

田中 太郎 (2008-01-17 00:22)


第一章 ソレは、回避不能


1,日常のヒカリ

 それは夢だった。辺りは靄(もや)がかかった様にぼやけ、ただその男しか見えない。
 喪服を着た男、髪は所々跳ねているが、寝癖というわけではないだろう。長さは横島より、ほんの少し短いくらいだ。 
 後姿から徐々に正面側へと移行する視界。だから判った、これが夢であると。
 酷く違和感を感じたのは、輝る篭手だ。淡く、深く、矛盾しているソレは、両腕の肩下までを覆っている。
 色は深緑(ふかみどり)−−いや、そんな安っぽくは無い、黒翠(ふかみどり)、それは造語であるが、それ以外に形容しようのない色だ。
 その男が手を天に掲げた、いつの間にだろうか? その手に何か握られている。
 右手には大人の拳大の水晶のような物。左手には−−

−−ひゅっ。

 息を呑む。それは、ルシオラだった。
 いや、正確にはルシオラの霊基片、その結晶体だ。

 その男は手の内にある、淡く光るソレを見て嘲(わら)った。
 男の顔には仮面が付けられいる。ピエロの仮面だ、両目から幾筋もの涙の雫を流している、そんな、仮面。

 故に男の顔は見えない。

 夢だからか、五感は視覚以外無く、声も聞こえない。だが、嘲ったように、見えた。
 寒気すら感じる、”ぞわ”っと何かが這い上がってくるような、霊感が警笛を鳴らす。

−−なんつー悪趣味な”夢”や。
 波立った心を静める。それは暗示だ。

 こういうのを無駄な努力とでもいうのか、横島を嘲笑うかのように、その男はルシオラを、ルシオラの霊基片を−−握りつぶした。
 声も出ない、思考が停止する。
 夢とか現実とか、そんなことは関係なかった。ただ、涙は出なかった。
 悲しくないわけではない。ともすれば、叫び、その男を切り裂き、串刺して、魂すらも消し飛ばしてやりたいほどの激情があった。
 だがコレは夢。体はなく、ただ見ることしかできない。

−−くそっ! 

 その男が嘲った。こちらを見てだ。視線が交差する。
 子供が新しく買ってもらった玩具を自慢するが如く、右手に持ったソレを掲げて見せる。
 なぜ、今の今まで気がつかなかったのか? 横島の記憶の中、ソレと似たようなものを見たことがあった。

−−嘘、だろ……? 魂の結晶!?

 そう、ソレは酷似していた。
 何故だろう? 嗅覚が戻った。最初に感じたのは瘴気だ。言いようも無い酷い匂い。次に感じたのは−−

−−血の、におい……あいつが? つーか、あいつ魔族?

 その疑問に答えるように、その男の頭から角が生える。捻くれた、二本の角。
 その男は此方(こちら)を見ながら”コクリ”と肯くと、結晶体らしきものを持った右腕を振るう。
 つい先日起こった、あの大戦時のべスパすら超えるだろう魔力が、周囲の靄を吹き飛ばす。
 自分と相手、その力は比べるだけ無駄、それほどの格差。

 完全に視界が開け、見えたのは首、そう、生首だった。
 変わり果てた姿、それは皆、横島の知り合いだった。

−−あ……

 この夢で最大の衝撃だった。
 美神親子、おキヌ、シロ、西条、ワルキューレにベスパ、パピリオ、小竜姫にヒャクメ、斉天大聖、天龍童子までも。
 敵味方関係なく並ぶソレらは、本当にコレは夢なのか? そう、過ぎたはずの疑問すら再浮上するほどにリアルだった。
 血のにおいの向こう側、微かに感じられる彼女たちの香り。
 狂いそうな思考を留めたのは、偶然だ。”カチリ”と意識の奥で音がした。俗に、そういったものを閃きと言うのだろう。
 泡のように湧き上がる思考、それを纏めれば、つまりはこういう事だ。

 ”神魔や妖怪は生首になどに成りはしない。彼、彼女らは、死すれば空(くう)に消える。なぜならば、人のように肉の体が無いのだから”

 その考えが基点となり、横島を留める。

−−は、ははっ……脅かすなってのっ。 そうだよ、コレ夢だろ? そう、夢だ……。

 少しの余裕を取り戻し、あらためて、ソレらを見渡す。無意識下の行動ではあるが、それは自分の考えを肯定するためだ。

 そして、一人の少女に目が留まった、シロの隣にあったソレは、生前なら誰もが目を留める美少女だっただろう。
 だが、横島はその娘に見覚えがなかった。

−−いやいや、俺がこんな美少女忘れるはずがっ……って、タマモ?

 その思考に驚いたのは、横島自身だった。
 知るはずのない少女、だと言うのに、思うより、すんなりと出た名前。だが、その矛盾にとらわれる前に横島の視界は、思考は−−ブラックアウトした。


 
 「ふえぁ……」と気の抜けた欠伸。重い瞼を”ぐしぐし”と擦り、開(ひら)けた視界は、いつもの部屋。本当に六畳あるのか? と、疑いたくなるような狭苦しい部屋。
 いつもなら、「せめて風呂付きで…」等々と愚痴ってしまうのだが、今日は違う。目が覚めたらこのボロ部屋、それが酷く嬉しかった。

 横島は寝ぼけ眼のまま、”はぁ”と一つため息をついて、「なんつー悪趣味な”夢”や……」そう呟いた。
 窓から入ってくる光に、その向うにある空(そら)に、いつもの日常を投影しながら。



作者の声

 えーと、はじめまして。田中太郎と申します。
 最初に、私の駄作をお読みくださった皆々様に感謝の言葉を、ありがとうごさいます。

 この話は基本的にダーク、バイオレンス、インモラル、横島最強系だったりします。
 全部を通して、ダークだったり何だったりしますので、全話に注釈(インモラル、ダーク、バイオレンス、15禁)を付けさせていただきます。そのことについてはご了承くださいませ。

 えー、あと、ですね。今回が、初SSだったりしますので、生暖かい目(ぉ)で見てくれると嬉しかったりします。

 えーと、それでは、これからもヨロシクお願いいたします。
 あっ、最後に、短いのは仕様です。1−2以降から少しは長くなったりします。


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