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「みんな愛のせいね(GS)」

蓮 (2007-08-26 22:03/2007-08-27 12:52)

 さてお立ち会い。
 あのアシュタロスとの戦いから数か月。あの戦いの関係者と言える人間も、魔族も、そして神族も、一応の平穏を取り戻していた。
 もちろん心に深い傷を負った者、世界観の変わってしまった者も数多くいる。それほどにすさまじい闘いであった。
 しかし、それでも世界は進み続ける。個人の思いすらも飲み込んで。
 そしてまた、人はいつまでも後ろを向き続けることができない。それは環境のせいであったり、周囲の励ましであったり、様々だ。
 そして「彼」にとってのその理由は、まさに死活問題であった。

「いつまでもくよくよしてたら死んでしまう!」

 まさにこの一言にあった。
 彼の職業はGS。まさに危険と隣り合わせ。その危険度と言えばおそらく一級品。ほかに並ぶものと言えば傭兵とかそのあたりだろう。
 そんな職業に身を置いている彼が、いつまでもくよくよしている暇は全くなかった。もちろん、ルシオラのことが彼の中で重要な転機になっていることは変わりようがない。思いだせば叫びだしたい衝動に駆られる。
 だが、逆に言えば、思い出さない限りはその事実は事実として受け入れたと言っても過言ではない。
 それは薄情だと言うわけではない。良くも悪くも「人間」はそうして時間と環境とやるべきことによって押し流され、やがて「忘却」という安らぎを手にする。そう言う存在なのだ。
 もちろん、いつまでも過去にとらわれ、結果重大な犯罪に手を染める者もいる。しかし、それらと同じ道を歩むには、彼の周囲は暖かすぎた。
 それがまた、彼をある意味で立ち直らせる後押しとなったのだ。そして今、彼は……。


「サイン、コサイン、タンジェント…こんなのが将来何の役に立つんだと言うんだ…」
「まったくじゃノー」

 学年末試験の勉強に追われていた。
 彼、横島忠夫。職業ゴーストスイーパー見習い。そして身分は高校2年生のある年始のことであった。

 アシュタロス戦のあと、横島どうにかこうにか社会復帰した。まさしく社会復帰である。アパートや机には悪意に満ちあふれる落書きが描かれていたが、それらはオカルトGメンの全面責任により撤去、修復。
 周囲への説明や謝罪によりどうにかこうにか社会復帰を果たしたのである。
 そして周囲がようやく平穏に慣れたころ、彼と彼らに重大な事件が降りかかった。

「りゅ、留年!?」

 ある日職員室に呼び出されたのは横島、ピート、タイガーの3人。
 そして彼らに担任がいい渡したのは「学年末テストで平均を出さなかったら即留年」ということだった。
 学校側としても彼らの職業や事情を十分に吟味し、出席日数にはこのさい目をつぶるとして、学力がともわないものを進級させられないという建前と大人の事情の結果、そう言うことに落ち着いたらしい。
 さらに学校側から事情を聞かされた横島の両親からは「留年なんてふざけた結果になったら問答無用でナルニアに引っ張っていく」というさらに追い詰めるお言葉をいただき、ピートとしても将来オカルトGメンに入隊する際にさすがに高校留年はまずいと西条に言われた。タイガーにいたっては横島と同じ立場であるが、彼はGS免許を取得していないことでエミにネチネチと言われ、こちらも後がない。
 ここにGS見習い3人組の新たなる試練が始まったのであった。


「まぁ、高校ぐらいは出た方がいいでしょうねぇ」

 事情を聞かされた横島の雇い主、美神令子は呆れたようにそう言った。
 バブル崩壊後の今、最低限の学歴はないとまずいだろう。ということらしい。

「はぁ、まぁそんなわけでこれからもう少し学校に通わんといけないらしんですわ」
「OK、こっちもアシスタント留年させたとなったら外聞が悪いし。その辺は考慮するわ」

 ただし、土日はこき使うからね。と、きっちりと釘を刺され、横島は苦笑いを浮かべた。
 そもそも、バブル崩壊後、美神のような――億単位の――高額なGSに依頼を頼むことはめったにない。もちろん美神の方も、横島やおキヌの修行のために比較的安価な――それでも数百万単位だが――を受ける場合もあるが、そもそも修行する人間がいなければ意味がない。
 それより安価なものは、美神のような人間が受けると、全体的なシェアバランスが崩れると自重しているのが現状であった。

 蓄えは十分にあるし、最近の美神除霊事務所はアイテムに頼る必要のない人間(一部妖怪)が4人もいるため経費が抑えられているのだ。
 そのため、横島の時給もようやく4桁になった。その背景にはいろいろと大人の事情というものがあるのだが、それはておき。
 とにかく横島の生活にもやや余裕ができり、ようやく学業に身を入れることができるようになったのであった。


『だ〜か〜ら、ここのthatは指示代名詞じゃなくて…』

 そして今日も今日とて横島、ピート、タイガーの三人は、机妖怪の愛子ちゃんを教師に、放課後の補習となったのであった。
 700年の時を生きるピートはさすがに国語、社会、英語は何とかなるが、さすがに数学や化学に関しては人並である。―――理解力に関してはまた別である。
 横島やタイガーはすべての教科に関して人並み以下、というより底辺である。よって愛子の関心はもっぱら二人に向けられていた。

「英語なんか喋れんでも生きていけるわ!」
『GSなんだからそんなこと言ってられないでしょ』

 血の涙を流しながら英文を訳していく横島の叫びを、愛子があっさりと却下する。たしかにオカルトに関する資料は基本が英語であるし――これはオカルトの本家がイギリスであることが関係している――、海外からの依頼がこないとも限らない。だから最低限英語だけでもしゃべれたほうがいいのは事実である。

「そこはボディーランゲージで!」
「横島はんのそれはセクハラじゃけんノー」

 無理じゃろう。と、タイガーがしみじみ呟くと、愛子とピートもうなずいた。なかなかに友情篤き面々である。横島がさらに血の涙を流したのは言うまでもない。

『とにかく、あと10ページがテスト範囲なんだから!』

 ―――つべこべ言ってないで訳しなさいよね。

 愛子が腰に手を当ててそう促す。それにヘーイと、やる気のない返事を返し、横島は再びテキストに向かう。その姿にため息をついた3人がそれぞれの問題集に意識を集中させた時だ。

「おぉ、よかった。まだ帰ってなかったみたいだな」

 ガラガラと、教室のドアを開けた教師が、4人の姿にそう安堵のため息をついた。


 教師が言うには、1年生用の男子トイレに幽霊が出ると言うことだった。
 怖がってトイレに行かない生徒や学校を休む生徒が出たために除霊委員に依頼になったらしい。
 なにしろ休んだ生徒も詳しい事情を話せないらしいのだ。

「だから変な役職を作らんで下さい!」

 こちとらまじめに勉強してるのにー!と、叫ぶ横島をまぁまぁとなだめ、4人は一階の男子トイレにやってきた。

「何が悲しくて男子トイレに男3人で入らなあかんのじゃ」

 愛子は女子であるがゆえに外で待機となったために、横島が嘆く。

「トイレの幽霊と言えばトイレの花子さんが有名ですからね」

 ピートも横島の嘆きに苦笑いを浮かべながらうなずいた。男子にとってあの女子生徒の「トイレ友達」ほど意味不明なものはない。

「先生の話じゃ個室に入ると幽霊が出てくるらしい」

 ピートがそう言うと、タイガーが横島を見た。ピートも同様に横島を見る。

「な、なんだよ」
「いや、横島さんどうぞ」
「たのんます横島はん」

 問題の個室を指差す二人に横島が切れた。

「ふざけんなー、なんでここが俺なんじゃ!あれか、美形はトイレに行かんとでもいう気かおらー!!」
「落ち着くんじゃけんノー!!」

 ピートの襟首をつかんでガックンガックン揺さぶる横島を、タイガーがあわてて押さえる。
 冷静に考えて、タイガーの体格では個室には入りきらないし、ピートと横島であったら、バインパイア・ハーフであるピートよりは、ぎりぎり人間の領域に入る横島の方が囮には最適である。
 加えて横島は何故かモノノケに好かれると言う体質もある。横島もここが女子トイレならば一も二もなく――むしろ自分から率先して――囮になっただろが、残念ながらここは男子トイレであった。

「何が悲しくて男子トイレに出るような変態の前で下半身さにゃあかんのやー!」
「クラスメイトの前で裸になるのはいいんですかいのー」

 うがぁぁぁ!と雄叫びを上げる横島の背中を、ぜいぜいと息をつくピートを支えながらタイガーが呟く。

『ちょっと!誰が変態よ!!』
「「「?!」」」

 そこに、不意に少女の、いやもう少し年かさの声が響いた。思わず顔を上げる三人。

「おっじょーさん〜〜僕と真実の愛に!!」
『きゃぁぁぁぁぁ!!』

 3人がその姿を目にした瞬間、いやもしかしたら声が聞こえた瞬間かもしれない。横島が女の霊に飛びかかっていた。


 ―――しばらくを待ちください……。


「「「『トイレの花子さん?!』」」」」

 横島をとりあえず女から引きはがし、恐慌状態になった霊を落ち着かせたピートとタイガー。ようやく事態が落ち着いたのは30分後のことだった。
 ちなみに愛子が騒がしさにドアを開け、女の霊に抱きつく横島の頭を机で殴りつけた。というのが事態の収拾方法であった。

「って、愛子、お前の顔見知りじゃないのか?」

 一緒になって驚いている愛子に、同じ学校妖怪だろ。と、前回音楽室に現れたメゾピアノを例に出す横島。しかし愛子は首を振った。

「そもそもトイレの花子さんて全国にいっぱいいて、しかも移動型のも多いから…」

 何人かは顔見知りだけど。という愛子に、そう言うもんなんだ。と3人は納得したような、感心したようにうなずいた。

「それで、なんで男子トイレに出てるんだよ」
『決まってるでしょ!女の子なんて見て楽しくないからよ!』

 引き締まった身体!

 硬い肉体!

 未成年特有のあどけなさ!!

『これが覗かずにいられるかっての』
「なんか誰かの叫びのようだケンノー」
「うーん」

 うふふふふふと、怪しげな笑いを上げる花子に4人は微妙な顔をする。

「でもこれじゃただの痴女だろ、なんで不登校になったんだ?」
『ちょっと、だれが痴女よ!』
「お前なんか痴女でじゅーぶんじゃ!」

 きぃきぃと言い争う二人。そこにはもはや相手が幽霊だとかそう言うことはどうでもいいらしい。
 基本的に横島にとって重要なのは男か女か、もっと言えば、やらしてくれる(若い)ねーちゃんかそうでないか。ということであり、相手が幽霊だろうが魔族だろうが神族だろうがどうでもいいのである。

「は!まさかこの女いたいけな少年相手に狼藉を!!」
『そんなわけないでしょー!!』

 タダオ犯されちゃう〜!などと叫ぶ横島に、花子は『誰があんたなんか!』とその頭を殴りつけた。

「で、でも実際登校拒否が出ているのは確かですし…」

 ピートの言葉に他の3人も花子を注目する。霊力のある4人に注目された花子は『や、やぁねぇ』と少しひきつった顔をした。

『ただ、その、ちょっと…まぁ笑っちゃったりしただけで』

 ―――悪気は、ないのよ?

 エヘと小さく舌を出す花子に、横島、ピート、タイガーの三人は何とも言えない顔をした。ただ一人愛子だけが「笑う?」と首をかしげた。
 普通の場所なら何でもないことだが、ここはトイレである。トイレで笑われると言えばもうひとつしかない。

「狼藉より、ダメージでかいかもなぁ」
「登校拒否にもなるかもしれけんのー」

 しかも親や教師にはその理由を告げるにはちょっと難しい。誰だって幽霊に下半身笑われましたとはいいにくいだろう。

「で、どうします?」

 このままじゃトラウマ大量生産ですよ、というピートに、タイガーと横島も深く頷く。

『最初はやっぱ話し合いじゃない?』
「そうじゃけんのー」

 ぼそぼそとトイレに座り込んで話し合う4人。それを黙って見つめる花子。なんとも間の抜けた除霊シーンであった。


「で、結局どうなったんです?」

 数時間後、美神令子除霊事務所を訪れた横島から事情を聞いたおキヌはそう尋ねた。

「それがなー、結局ピートと二人っきりにしろとか言ってな」

 愛子、横島、タイガーの二人はトイレを出ることになり、その数分後にはピートの必殺技の光があふれたので、詳しいことはわからないのだと言う。
 ただ後に残ったのは、非常に傷ついた顔をしたピート一人。という点でタイガーも横島も深く追求するのをやめたのだ。

「まぁピートがうまくやってくれたと思う、よ、うん」
「……?」

 これ以上突っ込むな。という態度の横島に、首をかしげながらもおキヌはそれ以上問いかけることはなかったのであった。


 その頃唐巣の教会では……。

「先生、僕は、僕は!!」
「うーん」

 しっかりトラウマ化したピートが懺悔と言うか、愚痴をこぼしていたと言う。


 見習GSの試練は続く……。


あとがき
はじめまして、蓮と申します。
GS熱が再燃して、こちらにたどり着きました。みなさんの話を読むにつれ自分でも書いてみたくなり初投稿へといたりました。

しばらくは横島、ピート、タイガー、愛子の高校生(?)4人組を中心に学園モノを書けたらなと思います。なので、他のみんなはあまり出番がないかも…。
横島のルシオラへの感情は賛否あると思います。もちろん横島も完全に吹っ切れてはいないでしょうし、吹っ切れるものでもないでしょう。
そのあたりも徐々に触れつつ、まずは日常編をかけていければいいかなと思っています。
問題はタイガーの口調がいまいちわからない…(シクシク)


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