これで良かったと自分の心に問う。
だが答えは出ない、何故なら答えを得ても無駄だから。
どれぐらいの可能性なのだろうか?
この想いが叶う確率は……
一つだけ分かっている事は、彼が生きてる事……そしてその事が私の全て。
想い、重ねる
私を庇い生命の危機に瀕した横島。
彼の命を助けるには、私の命を渡す事。
悩む事は無い、だって彼は私の全てなのだから。
彼は私で、私は彼になるのだから。
彼の事が好きな人には悪い事をしたのかもしれない。
……嘘……本当は、彼の隣に居るのは私……そう思っている自分が居る。
その事以上に、彼がこの世から居なくなるのが許せないし悲しい、それこそ自分が居なくなるより。
だってこのままだと彼は幽霊すらならず、この世界から存在すら無くなってしまう。
――消滅――無――
どんな言葉が相応しいのだろうか?
当然そんな事はさせるつもりは無い……が、どこか想像してしまう。
彼が居ない世界を……
……生きている意味などない……それが私の決断。
時を重ねた期間は短かったけど、何事にも代えられるものじゃない。
ならばこの命で、彼を救えるなら本望……その事は偽らざる本心。
ただ重荷になりたくないのも事実。
――だから私は嘘を付いた……許してもらう事の無い嘘を……
彼は素直に騙されてくれた。
……すこし将来が不安になるぐらい騙されやすいが、今回はその事に感謝しよう。
ある意味、ずっと許してくれない事を、心のどこかで期待している自分が居る。
許してくれない事で、私を忘れないで欲しいと……
ああ、もう少しでこの意識も消える。
「……ゴメンネ……もう一度夕焼けを一緒に――
「チョット待った――!!!」
突如、どこからともなく現れる男。
「……アナタは誰? どこと無くヨコシマに似てるけど」
驚きと共に薄れかかっていた意識に力が戻る。
「俺の名前は横島忠夫! 但し14年後のな」
ガッシリとした体格に、オールバックの髪型といった違いはあるが、確かに横島の面影がある。
「ほ、本当なの? もう会えないと思っていたのに……嬉しい」
涙で眼が霞む。
「俺も嬉しいよ、ルシオラ」
眼に優しさを滲ませながら言う。
「本当に嬉しいわ……最後に逢えて……」
けどゴメンナサイ……もう意識が保てないわ
「ああ、それも分かってる」
そう言い、手のひらから文珠を取り出す。
「何をするの? いくら文珠でも無理よ」
いくら文珠が万能と言えども限界はある、そして今の私の状況は限界を超えている事に。
{維・持}
そう二つの文字が入った文珠を使う。
「これで少しは持つ」
やはり完全には無理な事は分かっているのだろう、どこか声が悲しい。
「でも何故? それにこの文珠は?」
確かに嬉しい、横島の命が救えて、尚且つ最後を看取ってくれるのだから。
「ああ、なんて言えばいいのか…お願いというか確認と言うか」
どこか歯切れが悪い横島。
「俺には娘が居るんだ、蛍っていう」
……蛍、まさかと思ってた可能性が本当になったの?
「ああ、ルシオラの思ってる通りで間違いない、生まれ変わりだよ」
「――! 嬉しい、本当に嬉しい。ヨコシマにこうして逢えただけでも嬉しいのに、私はアナタの側に居られたのね」
頭の中が歓喜で埋まる。
「それでな色々な事があったんだけど、一年前に記憶を取り戻したんだ」
どこか言いづらそうに言う。
「……記憶って私の?」
「ああ、その通りだ……生まれたときに記憶を封印する事も考えたんだが、自然に任した」
「……ごめんなさい……」
親と子の禁断の愛なんて笑えないわよね、と付け足して。
「いや、それは問題ないというか……押し切られました……」
肩を窄ませて、悪い事を白状しているかのように言う。
「それでな記憶も戻った事だし、最後の想いとも一つになりたいって言い出した。でなんとか神族や魔族の許可をとって此処にきたって訳だ、ギリギリだったけどな」
そしてこの一年、本当に大変だったと目幅の涙を流している。
「最後の想いってワタシの事!?」
どこかそうであって欲しいという気持ちも込めて聞く。
「確かに色々と問題もあった……まだあるけど何とかなる…多分。蛍は蛍であってルシオラでもあるその事も受け入れた、後はルシオラ次第、拒否するのも構わない」
「……ヨコシマの気持ちはどうなの?」
どこか縋るようにヨコシマを見つめる。
「反対……だった。最初は」
空を見上げながら、何かを思い出しながら喋る。
「ルシオラの事は好きだ……それは間違いない。けど蛍の方が大事だったんだ。」
済まなさそうに言う。
「だけど色々な事があって、蛍もルシオラも同じだって気付いた……いや、気付かされたんだ」
「それからは親族や魔族の所を回って今回の許可を取る為に奔走したんだ」
大変だったんだぞと、どこか子供のように言うヨコシマに胸がキュッと締め付けられるような気がした。
「だからって訳じゃないんだが、受け入れて欲しい、ルシオラの為にも……そして俺の為にも」
そう言ってニカッと笑ったヨコシマに対してワタシは断ると言う言葉を失くした。
「これで良しっと」
手をパンパンと叩きながら、疲れる作業を終えた。
ルシオラの意識を文珠に閉じ込め、霊体を{急・速}{培・養}する。
これはルシオラの霊体が崩壊していたからできた事だ。
意識や体がしっかりあったら出来ない、これは細胞は分裂するという俺の思い込みから出来るもんだからな。
想像を信じきれば何でも出来る、それが俺が気付いた文珠の真実。
但し生き返らせる事は不可能、ルシオラの死を一回受け止めたからな……死者は生き返らないって。
だからこそ、ルシオラの意識は先に文珠に移した。
「しっかし、あん時にこの事を知ってればなぁ……無駄か、意識を残すのはこの文珠じゃないと出来ないし、核でもある蛍が居ないと意味が無いし……やっぱり無理なんだよな」
「まぁこの時代の俺には悪いが、悩んでくれ! 俺も悩んだから……良し、終わった」
文珠の輝きが一層強くなり、そして弾けた。
そこから出てきたのは、一匹の蛍だった。
「残りは、べスパが見つけやすい様に固めとくか」
悪いなこの時代の俺、矛盾を起こす訳にはいかないからな。
「じゃあ帰るか。頑張れよ! この時代の俺!」
コスモ・プロセッサの方に向かって叫ぶ。
そして光となり、元の時代に返っていた。
ルシオラは嬉しさで有頂天になり気付かなかった。
娘がいるという事は、母親も居るという事を。
そして横島忠夫いる所に騒乱がある事を。
終
どーも大和です。
どうだったでしょうか?
この話を思いついた切っ掛けは、本当のルシオラはやっぱり東京タワーで消えたルシオラじゃないのかと。
で、本当はルシオラの死にネタだったんですが……出来ませんでした!
考えれば考えるほど、娘になったのも、違う世界のも、此処で死んだルシオラも皆ルシオラに変わりはないと。
ご都合主義と言われようが、素直に受け入れます。
だって幸せにしてあげたいじゃん! これが素直な気持ちです。
続きに関しては、脳内にある程度ありますが、多分書きません。
とてもじゃないですが、完結するとは思えない内容だからです。
横島とルシオラを中心としたGSメンバーの騒がしい日常を延々と綴ったりするだけになるかなと。
……やっぱり終わりが思いつかないですね。
続きが気になる方がもし居ましたら、脳内補完で宜しくお願いします。
母親は内緒です、ただ蛍(霊体)を持って帰ったという事は、蛍(娘)は人間でないという事です。
ご意見、ご感想、ご批判、ご指摘などありましたら宜しくお願いします。
大和