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▽レス始

「どっちがいい?(GS)」

ラッフィン (2007-04-11 00:27)


休日のお昼過ぎ、商店街は平日よりも賑わいを見せている。いつもは主婦やプータローの人くらいしか訪れないのだが、今日は休日。学校が休みであるため、普段この時間には授業を受けている人達も今日ばかりはいるのである。
そんな中、主婦らに混じって八百屋で真剣に野菜を見つめている少女がいた。今時の少女達のように化粧や髪を染めるなどは一切していない珍しい女の子。ちょっと前まで貧乏神に憑かれていた花戸小鳩嬢である。

「あ、そういえば。今日は野菜を買いにきたんじゃなかったんだ」

習慣とは恐ろしいもので今日は本屋によって料理の本を買う予定だったのに、いつの間にか安くよりよい野菜や魚、お肉などを物色している自分に気がつく。料理の本を買う理由は好きな人においしい料理を食べてもらいたいから、という健気な想いからであった。飽きられないように料理のレパートリーを増やそうとしているのだ。この子は良き妻になるだろう。小鳩はいけないいけないと恥ずかし気に八百屋を離れた。

「あれ?そこにいるのって小鳩じゃない?」
「はい?」

目的の本屋を見つけそこに入ろうとしたとき、後ろから声をかけてくる少女がいた。振り返ってみると、そこには美人の部類に入るだろう少女が男の子の腕に自らの腕を絡めてこちらに向かって歩いてくる。小鳩はちょっと驚いたものの相手が知り合いだと気付きすぐに挨拶を返した。

「あ、こんにちわ。烏丸さん。奇遇ですね、どうしたんですか?」
「今から彼とデートなのよ♪」

彼女の名前は烏丸若葉、同じクラスの女の子である。ただ、小鳩はちょっと彼女のことが苦手であった。


「どっちがいい?」


若葉の彼氏と紹介された青年は大学生のようで背が高く体はがっちりとしているのにそんなに筋肉質には見えない。ちょっと長めの茶髪でなかなか整った顔をしていた。俗に言うイケメンである。

「カッコイイでしょ?ピート先輩なんか目じゃないわ」

学校一のイケメンとして有名なピートであるから当然同じ学校に通う若葉はしっている。恋は盲目というか客観的から見て、確かに若葉の彼氏はカッコイイがピートよりカッコイイかといわれると首を傾けるしかない。しかし、顔は全く気にしない小鳩は笑顔で返す。

「素敵な彼ですね」
「でっしょ〜?」

小鳩の返事に気をよくした彼女は見せ付けるように彼の腕を抱きしめる。彼氏のほうも「おいおい・・・」というものの、満更でもない様子だ。

「せっかく、会ったんだしどこかでお茶しない?」
「え?でも、デートの予定だったんじゃ・・・」
「あ、大丈夫よ。映画を見る予定でね。まだ時間があるのよ」

若葉は少々強引ではあるものの、喫茶店でお茶を飲むことに決めると二人を連れて早速向かおうとする。そこに、またしても声をかける人が現れた。

「あれ?小鳩ちゃん?」
「横島さん?」

そこに現れたのはいつものGジャン姿の赤いバンダナを巻いた青年、横島忠夫であった。

「どうしてここに?」
「ああ、仕事がキャンセルになったから食料調達にきたんだよ」
「また、カップ麺ですか?」
「いや、ははは・・・そうです」
「カップ麺ばっかじゃ駄目ですよ!私にいってくれればいつだって作るのに」
「いや、小鳩ちゃんにそんな迷惑かけらんないって!」

若葉達を放っておいてなんかすごい会話をする二人に、若葉がたまらず口を挟む。

「小鳩、この人ってあんたの彼氏?」
「え・・・うん///

若葉の問いに顔をトマトのように真っ赤に染めて答える小鳩。その答えの通り実は横島と小鳩は恋人同士になったのだ。ルシオラのことからようやく立ち直った横島にいつも甲斐甲斐しく世話をしていた小鳩が想いをぶつけた結果、二人は付き合うことになったのだ。隣の横島も恥ずかしいのか、あさっての方向を見て頬をポリポリとかいている。

「ふ〜ん・・・(じ〜)」
「な、なにかな?」
「小鳩、あんた趣味悪いわよ。こんな貧乏臭い貧弱男・・・ま、あんたにはお似合いね」

あんまりな言葉を吐いてきた。隣の彼氏も若葉と同じ意見だったのだろう、明らかに嘲笑を浮かべている。少しカチンと来たものの、小鳩の友達であることとそういうことには言われ慣れていることもあって、苦笑を浮かべることができた横島。それに対して小鳩は沈んでいた。自分のクラスメイトが横島のことを悪くいっているのだから当然だ。不快にさせてしまったと自分のせいではないのに責任を感じている小鳩。
若葉は普段から物事をはっきり言うタイプで少し羨ましいと思っているのだが、小鳩に対してだけは辛辣であるため少し苦手にしていたのだ。
これは若葉が小鳩を一方的に嫌っているためであった。若葉は成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗でクラスの中心的存在だったのだが、小鳩が来てからはその地位が奪われてしまったからだ。小鳩は運動は劣るが成績は常にトップクラスで容姿も良く、何より性格がいいのでクラスで人気者になっている。それが若葉は許せないのだ。それで事ある毎に小鳩につっかかってくるようになった。

「デパートにいいカフェがあったの。そこに行きましょう。彼氏もいいかしら?」

横島も加え4人になった一行はデパートの中にあるカフェで話すことにした。若葉は変わらず彼と腕を絡めて歩いていき、横島と小鳩がその二人の後ろからついていくという構図になる。

「横島さん、彼女があんなこといってごめんなさい」
「小鳩ちゃんのせいじゃないよ。確かにムカっときたけど、本当のことだし」
「そんな!横島さんは素敵です!!」
「ありがとう。小鳩ちゃんがそう思ってくれてるならいいんだ」

とさりげなくイチャついていると、目的のカフェへと到着したらしい。案内されて席に着く、小鳩と横島が隣に座り、小鳩の正面に若葉で隣が彼である。彼と横島はコーヒー、若葉はココア、小鳩はウーロン茶を頼み、しばらく会話に花を咲かせた。会話は若葉が7割を話し、その2割が彼、1割が横島と小鳩である。まぁ、会話といってもほとんどが彼氏の自慢話で、横島も小鳩も勘弁して欲しいというのが正直な気持ちだった。

「私の彼って一流大学に通う御曹司なのよ。あの○○財閥の!」
「そんなの別に生まれたのがそこだってだけで別に俺はすごくないって」
「こんな謙虚なとこもいいでしょ?」
「あはは・・・そうですね」
「小鳩の彼はどうなのよ?」
「俺?俺はまだ高3でバイト学生だよ。卒業したらそのままバイト先に就職予定」
「へぇ〜、まぁ服装から見てそんないいとこではなさそうね」

いちいちつっかかってくる女の子である。本来なら横島の就職するところ――美神除霊事務所――はある意味一流企業よりも上等なとこなのだが、GSとは一般にはほとんど知られていない世界であるために説明してもわからないだろうと言い返すことはしなかった。そして、つっかかってくるたびに小鳩がすまなそうに横島に目配せをしてくるので、横島としてはそちらのほうがつらかった。

「っと、そろそろ時間だ。若葉」
「あ、本当ね。そろそろ出ましょうか」

若葉の彼が4人分の会計を払った。そのため、小鳩と横島が自分の分を払うといったのだが。

「いいよ。今日は無理やりつれてきたようなもんだからね。それに貧乏学生にはつらいでしょ?」

彼女が彼女なら彼氏も彼氏である。確かに二人とも裕福とは言えないが、飲み物代が払えないほどではない。小鳩は貧ちゃんが福の神になってくれて収入は増えたし、横島も実力を認められて給料は増えているのだ。小鳩の表情はさらに暗くなり、横島は怒りがこみ上げる。イケメンに言われたのだから尚更だ。だが、二人は耐えるしかなかった。
やがて、映画を見る二人とは別れ横島と小鳩は近くのベンチに腰を下ろし漸く開放されたと安堵のため息を吐く。

「すいません、不快な思いをさせちゃって・・・」
「小鳩ちゃんは気にすることないんだよ。小鳩ちゃんのせいじゃないって」
「でも・・・」
「小鳩ちゃんは気にしすぎだって。あ!そうだ。これからデートにいこうか?」
「え?」
「実は前の仕事で水族館のチケットをもらってさ。ちょうど二人分あるんだ。どう?」

話を変えようと前の仕事でもらったチケットのことを思い出し、小鳩を誘う横島。沈んでいた小鳩の表情も横島からのデートのお誘いに明るくなる。「はい、いきたいです」と元気に答えた。その笑顔に横島は心の中で「ありがとう!」とチケットをくれた依頼人に感謝したという。

「じゃ、行こうか?」
「はい♪」

話しが決まったところで早速、二人がデートに行こうとした直後。

「「「「「きゃあああああああああああああああああああああ」」」」」

上の階から悲鳴が届いた。


横島達がいるデパートは7階建てになっており、5階までがショッピングフロアになっていて、レストランやカフェ街が6階、最上階は映画館になっている。横島達は6階にいて上から悲鳴が聞こえて来たということは7階で何かが起こったということだ。横島と小鳩は急いで登りエスカレーターで7階に移動した。
7階にいくと、そこは人の波でごった返していた。普段なら映画部屋の隣には一面窓ガラスになっているところから綺麗な景色が眺められ、夜になるとネオンが輝きロマンチックな雰囲気になるのだが、今は人がごった返していてそんな雰囲気は微塵もない。エレベータはもちろん下りエスカレーターも満杯。普段使われることが少ない階段ですら一杯一杯である。それだけじゃ足りないと登りのエスカレーターにまで人が押し寄せてくる。

「幽霊だ〜〜〜!」
「わあああああああああああああ」
「逃げろ〜〜〜!!」

横島は全速力で駆け上がってきて息が切れている小鳩を抱き寄せ素早くエスカレーターから離れたことで間一髪、人波に巻き込まれずにすんだのだった。

「横島さん、これは?」
「俺にもさっぱり。これは、どうなって・・・!?」
「どうしました?」
「霊気を感じる。たぶん悪霊が出たんだと思う」
「あ、悪霊ですか!」

不安になり横島にしがみつくように怯える小鳩。やわらかな感触が嬉しい横島だったが、今はそんな場合ではないので思考を切り替える。

「この感じだとそうだと思う。あそこだ!」

横島が指差したのは最近話題のホラー映画を上映している部屋だった。その部屋の中から人が次々と飛び出してくる。と、そこに見覚えのある顔が現れた。それは、先ほど別れた小鳩のクラスメイト、烏丸若葉の彼氏だった。

「おい、ちょっと!」
「なんだよ。早く逃げなきゃ俺達取り殺されるんだ!どけ!!」
「待てって!お前、自分の彼女はどうしたんだ?」
「あ?腰ぬかしたとか喚いてたから置いてきたんだ!俺はまだ死にたくねぇからな!」

つまりだ。こいつは自分の彼女を放っておき逃げて来たということである。小鳩は顔面蒼白になり、横島は・・・その男の顔に思いっきり拳を叩き込んだ。
ボグ!っとにぶい音がして男は床に倒れ付した。

「何すんだ!てめぇ!」

殴られたことに怒り状況を忘れて横島を睨みつける。本当なら殴り返したいところだが、横島の拳が効いていて動くことができないでいたから睨むだけ。だが、横島の怒りはその男以上に大きかった。

「この・・・最低のクソ野郎が!てめぇの女を置き去りにしただぁ?ふざけんのも大概にしろ!」

本当ならここでその男を叩きのめしたいのだが、そんな時間はないので放っておくことにする。横島は小鳩に向き直ると言った。

「小鳩ちゃんは先に逃げてくれ」

しかし、小鳩はそれを拒否した。

「嫌です。一緒にいきます!」
「でも、中は危険だ。中には確実に悪霊がいるんだ」
「それでも嫌です。中にはクラスメイトがいますし。何よりそんな危険なとこに横島さんだけいかせられません!」

時間がない状況での小鳩の固い決意に横島が折れるしかなかった。

「俺の言うことちゃんと聞いてね?」
「はい!」
「絶対に守るから」
「信じてますよ」

頷き合い二人は部屋の中に突入していった。中に入ると部屋の中央に黒い靄のような悪霊が浮かんでいて周りを雑霊が周っている。そして、何席かには逃げ遅れた人がまだ数人残っているのを見て取れた。

「ギギギ・・・ギギャアアア」

悪霊は理性はないが周りの雑霊を吸収しどんどん力が上がっている。

「小鳩ちゃん、俺が奴をひきつけるから逃げ遅れた人を誘導してくれないか?」
「はい、わかりました」
「じゃ、俺がしかけたら頼むね?」
「はい!」
「いくよ!!」

栄光の手を出現させ、悪霊に斬りかかった。


「わあああああああああああああ」
「悪霊だああああああああああああ」
「逃げろ!!」

映画を見ていた若葉達の前に突如黒い靄のような悪霊が現れた。さっきまで話題のホラー映画を見てわざと怖がり彼氏に抱きついていた若葉だったが、今度のは映画ではなく現実である。あまりのショックに腰を抜かしてしまった。

「うわあああああああ」
「あ・・・待って!」

若葉の隣に座っていた彼氏は一目散に逃げ出そうとしていた。自分は腰が抜けて動けないので、助けてもらおうとしたのだが。

「腰が抜けちゃって・・・」
「うっせ!そんなお前を構ってたら殺されちまうだろ!」

と置き去りにされてしまった。若葉は彼氏に裏切られ絶望感に襲われる。そんな彼女に悪霊が近づいてきた。ああ、もう私は死ぬんだ、という思いが強くなってくる。自分は腰が抜けて動くことができない上に助けもこない。心の中で諦めの感情が支配してしまう。ついに悪霊がすぐ目の前まで迫って来て彼女は死を待ったが、一条の光が飛び込んできて悪霊を吹き飛ばす。

「極楽に逝かせてやるぜ!」

ギャアアアアアアアアアアアアア

その光は横島の右手に輝く栄光の手の輝きであった。悪霊は栄光の手で殴られふっとぶ。

「大丈夫か?って君か」

振り返って無事を確認した横島を見て、あの悪霊をふっとばしたのは横島であると初めて気がつく若葉。だが、話している時間はない。横島はすぐに悪霊に振り返り栄光の手を霊波刀に変化させる。

「あいつは俺が引き受ける。早く逃げろ!」
「でも、腰が抜けて・・・」
「そうだった・・・もう少しで小鳩ちゃんがくるからそれまで我慢してくれ。それまでは俺があいつを止めてるから」
「それじゃ、あなたはどうすんのよ!」
「俺は平気だよ。これが本職なもんでね」
「それってどういう・・・「ギイイイイイイイイイイイイ」

若葉の言葉を遮り悪霊が奇声を上げて突っ込んでくる。避ける若葉が危ないし、切り裂いても若葉に危害が及ぶ。受け止めるという選択肢はない。よって若葉を背負い撤退することに。

「ちょっと我慢してくれよ」

見た目貧弱な横島が自分を片手で軽々と抱き上げたことに軽く驚いたものの、悪霊が迫ってくるためそれどころではなくなってしまう。横島は霊波刀で牽制しながら悪霊の攻撃を避け続ける。時折あたりを見回しているようだが、若葉には何を見ているのか気にする余裕もなかったし、そもそも見回していることすら気付かなかった。

「こっちです。早く!」
「うわああああ」
「これで最後ですね。横島さん!」

横島が悪霊をひきつけていた間、小鳩は逃げ遅れた人達の避難誘導をしていて、先ほど漸く最後の一人を逃がすことができた。小鳩の呼びかけを聞いた横島は悪霊にサイキックソーサーを投げつけ小鳩へと駆け寄った。

「小鳩ちゃん、この子を連れて逃げてくれ」
「烏丸さん!?わかりました。いきましょう」
「うん・・・」

若葉の腕を自分の肩に回しもう片方の手で腰を支えると出口に向かって歩き出す。
横島は悪霊に向かって霊波刀を構えた。
気になるのか、小鳩は出口に向かいながらもチラチラと横島に振り返っている。やがて悪霊が動き出し、横島と戦闘を始めたが、そのころには小鳩と若葉は無事に部屋から出ることができていた。
部屋の外には無事に逃げたようで誰もいなかった。殴られて動けなかった若葉の彼氏の姿もないということは、動けるようになって逃げたようだ。小鳩もすぐに非難しようとエスカレーターを目指したが、そこには数体の浮遊霊が。

「嘘!なんでいるの?」
「そんな・・・」

驚いて立ち止まってしまった二人に霊が気付いてしまう。新鮮な体を持つ人間に。まるで飢えた狼のように霊が近づいてくる。

「カラダ〜、ソノカラダヲヨコセ〜!!」
「「きゃぁあああああ」」

二人は霊からできるだけ離れようと横に移動するが、その先は窓しかない。絶体絶命のピンチである。だが、小鳩は横島を信じていた。

「カラダヨコセ〜〜〜〜!!」
「きゃあああああああああ!」
「(横島さん!!)」

浮遊霊が飛び掛ってきて、恐怖でうずくまる若葉。小鳩はそんな彼女を守ろうと覆い被さるも、横島のことを信じていた。その想いは守られる。

<護>

小鳩達と霊の間に薄い透明な壁が出現して両者を隔てたのだ。壁に阻まれた霊はその直後、光り輝く剣で除霊された。それを見た小鳩は「横島さんだ」と安堵の笑みを浮かべるのだった。

「ごめん、遅れた」
「いえ、ちゃんと約束は守ってもらいましたよ」
「・・・ポー
「ん?どうかした?」
「いえ、なんでもないです!!」

「です」?何故に敬語?と疑問に思ったものの、深くは追求しなかった。
若葉が足元が頼りないが一人で立ち上がるのを待っていると、どこかにまぎれていたのか浮遊霊が若葉に目掛けて突っ込んで来た。

「きゃああああ」
ガシャアアアアアアアン!!

霊はそれが最後の力だったのか若葉に体当たりをすると消えていく。問題は体当たりされた若葉のほうであった。窓ガラスを突き破り外に出てしまったのだ。

「マジかよ!」
「烏丸さん!」

若葉と近い位置にいた小鳩は必死に手を伸ばし助けようとする。それが実って若葉の手をとることができたのだが、小鳩の足はすでに宙に浮いてしまっていた。

「小鳩ちゃん!!」


私は7階に残っている小鳩の彼の姿を見ていた。何故だか景色がスローモーションに感じる。小鳩は自分を助けようと必死になってくれたが、無駄になりそうだ。今は私の体をぎゅっと抱きしめている。私は心の中で小鳩に「ごめん」と謝った。後に残っているのは小鳩の彼氏だけ。きっと私達はこのまま落下して死ぬのだろう。それを下に降りて来た彼が見て大泣きするのだろう。まさか、小鳩と同じように飛び込んでくることはあるまい。そのときの私はそう思っていたんだけど、現実は私の予想を大きく越えてくれた。

「小鳩ちゃん!」

彼は小鳩と同じように迷うことなく飛び込んできたの。このカップルは馬鹿よ!赤の他人と心中しようって言うの?私は涙が出そうになった。そんなもう生きることを諦めている私と違ってこの二人はまだ諦めていなかったみたい。小鳩の彼は私と小鳩を抱きしめるとこういったの。

「絶対に守るから!」

どうやって?私はその言葉を全然信じられなかった。人間は7階のビルから落下して生きていられるほど頑丈に出来てはいないのに。そりゃ、たまに生還する人はいるけど、そんなのはほんの一握りの人に過ぎないのに。そんな私と違って小鳩は彼を信じているみたいだった。

「はい、信じてます」

絶体絶命だっていうのに彼女は笑顔を浮かべていたから。ちょっと小鳩!あんたこの男に何を期待しているのよ!人間は空なんて飛べないのよ?スーパーマンなんていないんだから!そんな私の心情を知らずにこの男は笑顔を見せてのたまう。

「おう、任せとけ!」

そういって彼はビー玉のような小さな玉を二つ取り出した。そして、自分の体を下にしてその上に私と小鳩がくるようにしたとき、その玉が光り輝く。
後のことはあまり覚えていなかった。気付いたときには私は怪我一つなく下にいて、思わず小鳩の彼に泣きついていたから。
後で小鳩に聞いた話だと、あの事件はたまたまホラー映画を見に来ていた客達がしていた怖い話に霊が引き寄せられ、その中に悪霊が混じっていて起きた出来事だったみたい。昔から怖い話をしていると霊が寄ってくるって言うけど、本当だったみたいね。
私はあの後、彼氏にビンタをして別れてやったわ。


あなたは富や名誉ある男と普段は情けない平凡だけどいざとなったら頼りになる男。どちらがいいですか?


数日後・・・

「おっはよ〜小鳩」
「おはようございます烏丸さん」
「もう、若葉だって!」
「あ、ごめんなさい。若葉ちゃん」

あの事件以来、烏丸さん・・・じゃなかった。若葉ちゃんとは親友といってもいいくらいの仲良しになりました。以前のように私に厳しい言葉をいってくることはなくなったし、私も若葉ちゃんへの苦手意識もなくなっていい傾向です。ただ・・・。

「おはよう。小鳩ちゃん、若葉ちゃん」
「おはようございます。横島さん」
「お、おはようございます!横島先輩!」

あれ以来、彼女の横島さんに対する態度が変わました。私、気になっちゃいます。彼女の横島さんを見る目が私と同じような目をしてますから。ライバルですか?せっかく、おキヌちゃん達に競り勝ったのに。またですか?
って結構気にしてたんですけど・・・

――さらに数日後

「小鳩〜!私、好きな人が出来ちゃった。一つ年下なんだけど、あの××財閥の御曹司でカワイイ顔してて母性本能をくすぐるのよ〜♪」

人はそんなに変わらないみたいです・・・。


あとがき


お久しぶりです〜。ラッフィンです!

今回は急に浮かんで来たアイディアの赴くままに書きなぐりました!完全短編作品です。私は長編より短編のほうが向いているのかな?ってくらいすんなり書けました。

ここでオリキャラの烏丸若葉の名前の由来ですけど。
鳩に対して烏、花に対して葉と小鳩の名前から連想して出てきました。しかも、これを考えた時間は10秒!速攻で決まりましたよ。ええ・・・。

こんな私と作品ですけど、楽しんでもらえれば幸いです。


では、前作のレス返しです。


平松タクヤ様

意外でしたか?結構、ベスパっておいしい役をとっていたので予想されているかと思いましたよw
雪蛍が裏工作するのは唯一つ胸のサイ・・・(作者が突然襲撃されたためコメント不可)


たぬきち様

私自身の文章力が未熟ですので、次回作はもっと上手く表現できるように頑張ります。


wata様

とりあえず、愛子は確実ですよねw
羨ましいな・・・


whiteangel様

私はダークとかが駄目ですので・・・物語はハッピーエンドじゃないとね♪


山葵様

皆様ベスパが意外だったようで・・・私の作品ではおいしい役だったんで誰かは予想しているかな?って思ったんですがね。


拓哉様

やっぱりベスパって意外だったんですかね?私はそう思われてるほうが予想外でした。
愛子は括られてるし、タマモは加護を求めるタイプですし。逃げられませんw


街路樹様

初めましてw

やっぱりベスパが(以下略
既成事実で勝ち取りましたw

なんせ、千年の絆、最初に憑いた幽霊、一途な人狼ですからねw


C−brown様

たぶん、雪蛍が物理的に排除しますよw
私はほのぼの作家を目指していたんですが、どこで間違ったかギャグ作家になってしまったようです。そんな私の作品でふんわりとしていただけるとほのぼの作家をまだ目指せると自信が出来ます。


アイク様

すいません、私自身駆け出しですので作品も駆け足のように終ってしまったようで・・・。次からは今までの作品で目立たなかったキャラを目立たせたいですね。


秋桜様

いつかは家族でほんわかした作品が書いてみたいですね。
アドバイスお願いします(笑)
そういえば、タイガーは出番あったのにヒャクメが・・・(泣)

え?某所にある私の作品を読んでいただけたのですか?嬉しいですよ。
創作意欲がますますわいてきます。


アミーゴ様

横島は根っからのトラブルメーカーですからw
野望は妖怪との共存!事務所も野望もまだまだこれからです!

いつかはほんわか家族の作品を書きたいと思います。ヒロインは誰にしよう?迷いますね〜。


DOM様

今度書くときはもっとボリュームある作品を心がけます。まだまだ自分は駆け出しなので未熟者ですが今後ともよろしくお願いします。

>遥香と琴音
一発オリキャラです。どんな事務所にも助手はいるかと思いまして。

みなさんのくれる感想がある限り私はSSを書き続けることができます。


トトロ様

>遥香と琴音も手にいれるとは
彼女達はまだバイト扱いなので、手をつけてませんよ。というかそんな設定もないですし、六道に通っている生徒なので霊能力はあります。

美神家の家訓ですよ。負けは許されない。奪いなさいってことですw


蝦蟇口咬平様

まだまだ未熟者ですので、物足りない思いをさせて申し訳ないです。ご指摘ありがとうございます。


内海一弘様

やっぱりベスパは意外だったんですね。私は裏をかけたということで嬉しいんですけどw

かわりましたよwでも一番変わったのはエミだというのは秘密w


趙孤某様

ベスパは完全に既成事実ですからね〜。GMは妹に結婚許可出しましたし、いいんではないでしょうか?

>いいとも〜!!
この反応が欲しかったんですw


シシン様

妖精か・・・・ニヤソ(ぇ

憑いてきてくださいw私の守護霊様(チガ


太一様

ふふふwただ、ベスパの策略勝ちってことですよw

でも、やっぱりベスパが妻って予想外だったんですねw


△記事頭

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