ここは・・・・・・牢獄・・・・・・・
エスパ-を封印するために自分が・・・皆本光一が設計した牢獄だ。
牢獄の中のみならず周囲のエスパ-の精神波を吸収し、乱し、中和し、壁面を強化するというシステムにより
封じているエスパ-が強力であればあるほど、助けに来たエスパ-が強力、あるいは多ければ多いほど
出られなくなるという仕掛けになっている。
正直「岩」や「正義」はともかく「エリック・マグナス・レ-ンジャ-」くらいなら封じ込める自信があったのだが・・・
本来兵部京介を閉じ込める為に作ったというのに・・・まさかこれに封じられるのが・・・
「ふふ・・・おかしいね・・・目の前にいるのに・・・皆本さんの声が・・・聞こえないよ・・・」
13歳とは思えない成長を遂げた紫穂が、透明な壁の向こうで涙を流している。
「なんで・・・こんなことになってもうたんやろ・・・」
紫穂とは別の意味で13歳とは思えない成長を遂げている葵が、壁の向こうに佇んでいる。
「ちくしょ-!出せ!今すぐ出せ!」
背丈も、それ以外もかなり育ち始めた薫が絶叫しているが、その力は壁向こうの僕の髪の毛すら揺らすことが出来ない。
「なんで・・・なんで・・・」
僕もその言葉を一体何回口にしただろう。
「なんで皆本が閉じ込められなきゃならね-んだよぉ!」
「落ち着きなさい、薫」
「そうよ」
「か-ちゃん・・・ね-ちゃん・・・ あんたらが・・・」
「どうしたの?」
「あんたらがそのボテ腹で落ち着けとかゆ-なあ!」
「コレはね、皆本クン。彼女達のファンやそれ以外の様々な暴徒からキミを守るための処置なんダヨ。
決して秋江さんや好美さんを妊娠させた事がうらやま・・・もとい妬ましくてやってるワケじゃないのを理解してくれタマエ」
「だけどさ、皆本さんは薫の何になるのかしら。お義父さん?」
「お義兄さんでもあるわよね」
「しかも・・・この二人だけでも腹立たしい・・・もとい問題だというのに・・・」
桐壺局長の視線を受けて頬を染めるのは常磐 奈津子と野分 ほたる、バベルの受付嬢兼門番の「ダブルフェイス」の二人。
彼女達の下腹部もちと不自然に膨らんでいる。
そして・・・
「ナオミが-!私のナオミが------!」
「落ち着いてください主任」
「私のナオミがあああああああああああああ!」
「落ち着けこの野郎!」
「ぶごべっ!」
「あんまり胎教に悪い事させないでくださいません?」
「わ・・・・わた・・・・ナ・・・・・・・・・・・・ミ・・・・・・・・・・」
「皆本ォ!何であたしらが16になるまで我慢出来なかったぁ!」
そう・・・今の僕は何故か薫の母親である秋江さんと姉の好美さん、ダブルフェイスの二人はおろか梅壺ナオミ君まで
妊娠させてしまい、兵部用の牢獄に閉じ込められている。
いや、記憶というか感触というか・・・その・・・なんだ・・・覚えはあるのだが
何故そうなったのか、という点が全く思い出せない。
局長の憎しみでこちらを殺せそうな視線にさらされ、それこそ偏執狂に手が届きそうなレベルで鎖に厳重に括られながら牢獄の中で、床をじっと見つめる。
そのうちこの床と前世からの親友になってしまうかもしれない。
視界の端に妙なボロキレが見える。
「ああ、この怒り、どこにぶつけてくれようか!」
「薫ちゃん、ウチの主任なら貸したげるわよ」
「よっしゃ、くらえ!『サイキック マッスルなバスタ-』!」
「めご!」
「続けて!『サイキック マッスルなリベンジャ-』!」
「ぶぎゃ!」
「送り込む!念動力な波紋!サイキックウェ-ブオ-バ-ドライブぅ!」
「げひゃい!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!!
ウリィィィィィィィィ!」
「落ち着いて、薫ちゃん。どっちかっていうと波紋を流し込まれる側っぽいわよ」
「おし、わかったで」
先ほどから何やらノ-トパソコン(有線。ケ-ブルの先は牢獄の外に繋がっているようだ)を操作していた葵が声を出す。
「おかしいたぁおもっとったんや。言っちゃナンやけど皆本はんは『そっち』についてはヘタぁするとウチらより遅れとる。
その皆本はんが一気に五人も手ェ出したんでちっと調べてみたんやがな。
初音はんが見つけてくれたこの薬の包み、これうわさに聞く『厄珍堂』の製品や」
「なんだそりゃ?」
「闇ル-トで手に入れたヤバげな品物を裏ル-トで売買する店ゆうて聞くがな」
「それがどうしたというの?」
「中にはものごっつい幸運や成功を購入者にもたらす品を店主も知らんと売ってまうとか。
その逆もありうるけどな。
まあおそらく皆本はんはこの薬使われたんや」
「それで・・・五人同時にかぁ!ハーレムかチクショウ!!うらやましい!
あたしもその場に居たかった!」
「まあ厄珍堂とやらは国家権力をもって叩き潰しておくとして、皆本クン。
キミはしばらくここにいてもらうヨ。
彼女たちはその間谷崎クンに預かってもらう」
その言葉に、そろそろ友情を交わし始めた床から局長に目を向ける。
「局長、それは危険なのでは?」
「キミに預けておくより安全だろう」
ぐうの音も出ず、再び友人に目を向ける。
「心配はいらないわ。明日も明後日も、また会いに来るもの」
「せや。三年ほど辛抱してや」
「三年?」
「そう、あたしらが16歳になったらまた一緒にやっていこうぜ。
色々と、な」
その言葉とともに皆は牢獄の外へと向かう。
やがて・・・眼前で扉が閉じられていく。
「やれやれ、やっと静かになったね」
「ああ・・・ってお前は兵部!なんでココに?」
「ここは本来僕を封じるために作られたんだろ?
なら僕が放り込まれててもおかしくないじゃないか」
「なんでそんなにボロボロなんだ?」
「はっはっは」
うつろに笑う顔に、抑えきれない怒りが垣間見える。
「君の所業の結果だよ。彼女達の鬱憤を全て僕一人が引き受けたんだよ?」
「そ・・・それは・・・・すまなかった」
実際全身全霊をもって感謝してもし足りないかも、とちこっとおもってしまった皆本だった。
「まあいいさ。これから三年、寝食をともにする間柄なんだからね。仲良くしよう」
「へ?」
そうなのか?そういうことなのか?
「皆本くん」
「なんだ」声に警戒を込める。
「やさしくしてね」
「阿呆かあ!」
これが、これが僕への罰なのか?
罰せられるような事はして・・いや、まあ、その・・・なんだ・・・とにかく覚えは無いんだ!
無いんだよぉ!
後書き
え-、みなさまお久しぶりですシンペイです。
ガッシュのSS放り出してこんなもの書いてしまいました。
他所に投稿したのですがいささかならず不満が残り、しかもそこにどうも雰囲気が合わないので
削除を依頼し、ちと改定してこちらに投稿させて頂きました。
感想、罵倒、ツッコミその他諸々お待ちしております。