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▽レス始

「盆暮れ以外もヒマじゃないんですよ(GS)」

HEY2 (2006-11-01 22:57/2006-11-07 01:36)

 美神除霊事務所は常に忙しい、と言う訳では実はありません。2月半ばから4月半ばまでの約2ヶ月間、意図的に仕事量を減らしています。
 とは言えお金大好きな所長であるからして、大口の仕事は通常通りに請けています。小口は当然のことながら、平時であれば報酬次第かな、と考慮する様な依頼も即却下です。

 まあ当然彼女もトップと呼ばれるプロです、やんわりと断り、唐巣神父やオカルトGメン、種類によっては小笠原事務所を紹介することも忘れません。いくら仲が悪いとは言えども彼女たちはプロ、お互いの能力は尊重しているし、それがベストだと思えばそこには何の躊躇いもなく紹介はします。それはエミにしても同様です。
 まあエミはそこで仲介料は取りませんが。

 さてでは何故その期間は仕事を請けないのか、答えは簡単、だって

 確定申告の時期ですから。

 しかも確定申告と合わせて、GS協会に提出する書類とのすり合わせも行わなくてはなりません、前科持ちである美神に対しては国税庁・GS協会・オカルトGメンの3方向から厳しいマークが掛けられていますので。
 国税庁としては当然の仕事ですが、GS協会としても『トップGS、脱税で書類送検!』などと言う話題で紙面を飾られるのは御免だし、娘の不祥事をこれ以上は青天の下に晒したくない美智恵も同様です。
 前回のザンス国王の事件の際には追徴課税だけで済んだものの、次はそうは行かないでしょう。

 そこで、じゃあ真っ当に納めよう、なんて発想は、美神令子の魂の中には、例えコスモプロセッサを使ったとしても有り得ません。
 と言う訳でいそいそと書類を偽造、本人曰く「国に掠め取られている物を取り返す作業」に勤しんでいる訳です。前はおキヌちゃんにも手伝ってもらっていたのですが、今はそれができない理由があります。
 前は依頼料・道具の経費くらいで済ませていたのですが、いろいろな理由でそれを人件費にまで用いなければならなくなってしまったからです。

 前であれば、横島とおキヌちゃんの給料くらいならどうにでもなってました。横島は只の荷物持ち、おキヌちゃんは存在すらしていない事になっていたから人件費はゼロだったのですから。
 しかし現在、片や文珠使い、此方ネクロマンサーと、各々が日本どころか世界でも希少な能力者であり、その存在を協会のトップである唐巣神父と六道冥華に知られてしまってます。だから、

 今でも時給255円と日給30円で通用する訳がありません。

 あ、でもおキヌちゃんに関しては六女入学の際に、うっかり口を滑らせてはいけないので、除霊時限定ですが時給2000円に上げました。でも実際、原作ではそこの所どうなんでしょうね?
 書類上は2人とも時給20000円という扱いにしてやがります、これでも実際の功績を考えれば安いんですがね。その上、近所の霊との寄り合いの日や、「サンポという名のひとり犬橇レース(一頭曳き)」開催中の日にも「なぜか」除霊に参加している事になっているなんてコトも有ったりします。なのでこの作業は独りでやるしか無いのです。それに縦しんばおキヌちゃんが手伝ってくれたとしても、もし冥華や美智恵にそこの所追求されたら、彼女の性格では絶対に誤魔化し切れません。
 まあ、黒くなれば血に塗れた方法で逃げ切れるでしょうが、横島が絡まないと黒化には至りませんので此の際それは却下です。


 しかしこれだけでは最初の疑問の半分にしか回答を出していません。確定申告は通常3月中旬で締め切られるからです。ではその後の1ヶ月間で何をするのでしょうか?

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 さて、ココに「月刊GSサンデー」という雑誌があります、年に1回の人気投票では我らが所長美神令子嬢が不動の1位に君臨しているあの雑誌です。名前の通りGS専門誌の様な物なのでGSは銘々で定期購入で郵送してもらいますが、専門的すぎる為、一般書店ではほとんど取り扱っていません。専門書や、デアゴス○ィーニの「週刊なんたらシリーズ」のバックナンバーも扱う様な大型書店で10冊が精々と言ったところでしょうが、人気投票の号(女性上位者のグラビア・全プレテレカ付き)に限っては3倍の入荷を行っています。それはまるで毎年2月中旬に発売される「週刊ベース○ール選手名鑑号(ベー○ボールマガジン社)」の如しです。ここで年末のアン○ンと書かないのは男の発想です。

 月刊誌であるからして、当然のことながら他の月にも様々なランキングが掲載されます。人気投票以外は、GS協会に提出された公式な報告書から算出されます。ランキングの種類には例えば、盆を過ぎると「今夏除霊件数・人数ベスト20」、10月号は「神無月恒例、神族遭遇数トップ5」等があります。当然この2件はネクロマンサーを抱え、妙な神の山に「遊びに行く」と言ってのける男のいる美神事務所が不動のトップに収まっています。

 そしてもう1件、他を圧倒的に引き離しているモノがあるのです。それが「新年度恒例、経営者必見! コストパフォーマンスベスト10」であります。報告書を基に依頼料・費用・人数・時間・給料から算出した数値で、「給料に対してどの位の仕事をしたのか?」と言う数値が算出されます。横島・おキヌでワンツーを取り始めて3年ほどになりますが、美神は毎年この結果が掲載される「5月号」だけは隠します。なので2人ともこの結果は知りません。

 何しろ横島に自分の客観的な価値を知られると、いろいろな意味でヤバいのです。賃上げ要求位ならまだ良いのでしょうが、おキヌちゃん連れて独立・FA宣言とか考えられたら大変です。ただでさえ格安を通り越して罰ゲームレベルの給金で使える上に道具要らずの超ローコストな2人、それにおキヌちゃんの事は妹みたいに思っているし、横島の事だってパートナーと言うよりは大切な………あ゛あ゛あ゛〜〜〜っもう! なんて思っていますしね。

 と言う訳で証拠は難なく隠滅できるのですが、本棚にズラリと並んだ雑誌の列で1ヶ所だけ数字が抜けているのは、それが全然読む気のない本であったとしても逆に気になりますよね? 反対に数字が増えてたりしても変に思うでしょう。「10.5巻って何だよ、ケッ、踊らされやがって」なんてコトは思っても口に出してはいけません、いろんな方面から叩かれます。それに最終巻だけやたらに分厚かったりすると、ああ最後の数週間でイロイロ有ったんだろうなあ、と思ったりしますよね。

 それはさて置きそこで美神さん、似たタイトルの雑誌をそこに挟んでおいたわけなのです。が、事務所で恒例のひと暴れをした際に側頭部から本棚にトペ・スイシーダをかました横島君、首は瞬時に治りますが本棚は直りません、ほいじゃあ片付けますかねっ、と崩れた本の山から偶然最初に手に取った1冊を開いてしまいます。


 貧乏な姉妹の特売大作戦に心の底から同情し、卓球で勝負なんてどこぞのお嬢サマ幽霊じゃあるまいしと溜息をつき、俺も声優と同棲したいぜーとある意味では既に叶っているっぽい希望をかまし、ビジネスマンなら誘拐犯の一人や二人は自力で撃退しろよと本気で思い、警官と同じ燃料で動く土偶を一瞬だけ思い出し、あー猫と言えばあの親子今どうしてるんだろうなぁなんて感傷に浸ってみたり、ハーレムを作る少年を羨んだり、打ち切りを恐れずに魂のシャウトをしてみたり、女子大生ハーレムを作る少年に嫉妬したり女子大生ハーレム帝国を築き上げる少年に多いに憤ったりしました。


 横で何気なく手伝うフリをしつつ、例の「5月号」を誤魔化そうとしていた令子さんですが、横島が一発ツモってしまった上に熟読しています。自分でもわかるほどに焦っています、どこかから『…ざわ…ざわ……』と聞こえてきそうな汗も掻いています。

 一方横島君、ひとしきり読み終えた後に続きを探し始めます。が、他は全部GSサンデーですから、さっきの様なマンガが入っている訳がありません。美神の事務所に漫画が有るのかなんてことは別段気になりませんが、ハーレム漫画だけで煩悩が膨れ上がってしまった横島君、霊能イコール煩悩なのは今更言うまでも無い上、アシュタロス戦後の横島君ですから、その霊圧と言ったらそれはもうスゴイコトになってしまっています。たとえば住人の霊力で生きる人工幽霊が、家ごとすっくと立ち上がり、コメリカまで泳いで辿り着くんじゃないかと言う位の代物。ちなみに今年のワールドシリーズを見て『コメリカパーク野球場』という名前にびっくりしたヒトはいると思います。

 そんな霊力撒き散らして言う言葉が「ハーレムぅ〜」ではGSとしても、そして社会人としても世間様に顔向けができないので美神さん、いつぞや以来の大技『ギャラ○ティカ○グナム』を炸裂させます。昔他誌である人が言いました、
『テンプルのダウンは天国の呼び声、レバーでのダウンは地獄の叫び』と。


 膝から崩れ落つるる横島など眺め、強引に『預かっている』文珠を使い、この間のことを【忘】れさせてこの場はしのぎましたが、世間様的に危険である以上は『月刊サンデーGX(ジェネックス)』は置いとかない方が賢明でしょう。じゃあ何で穴を埋めようか…行き着いた先は『外見が同じ本を作る』でした。


 ところが簡単には行きません。最初は表紙以外の中身は白紙に、とか、例の部分だけ破いておこうと思ったのですが、ココには多数のGSが出入りするのです。何かの拍子でそれを人に、それも母美智恵に読まれた日にはどう転ぶか分りません。

 オカルトアイテムで『書類の内容を変えるような代物』を、もしかしたらアイツは持っているかもしれませんがその人選の時点で却下です。

 次に考えたのは『文珠で複製』と言うものです。が、美神では1文字しか扱えず、それで【本】と使ってみてもイメージが足りません。全文覚えろとは言いませんが、記事の内容程度は完全に把握していないと、しっかり綴じられた本としては完成しないのです。
 ちなみに横島が使った場合は、どのページにどんなオネーチャンが何を着てどんなポーズをしているのかまで、ばっちりイメージしている為、内容から装丁までそれはそれは素ん晴らしいエロ本が出来上がります。
 が、モザイクの向こうのパラダイスは未だ見たことが無い為、どんなに頑張っても憎っくき格子柄は取れません。

 そして最期に辿り着いたのが『例の記事だけ抜いた本を、実際に作る』と言う物でした。実際の本が届いてから小さな印刷所にでも持って行って、そのまま作り直して貰えばいいのです。


 そうと決まれば迅速でした、安い印刷所を探し出し、雑誌1冊抱えて向かいました。ところがどっこい、そんな依頼を受けた印刷所は首を捻ってしまいます。
 コレと同じ雑誌を作って頂戴、なんて注文は前代未聞な上、その依頼人は名も名乗らず、ナイスなバディーを隠すコートを着て大きなサングラスに帽子という出で立ちで『わたくし怪しい者ですがオーラ』を全身から滲み出させていたからです。
 それに出版業界に身を置く立場では、いろんな権利とか法とかに触れまくってしまいそうな依頼は御免被りたい所です。そこで、一応パンフレットなどを渡しつつも、とても手の掛かる代替案を提示しておきます、つまりは遠回しの拒否ですね。

「宜しいでしょうかお客様、多分その様な注文ではこの先どこでも断られると思います。ですから本文を書き写したり打ち出した物、と言う形にさえすれば作ることは一応可能ですが…」

 と、そこまで言った所で怪しい依頼人は姿を消していました。

 やれやれと胸を撫で下ろした翌週です、こないだの怪しい人がMO持ってやって来ました、しかも何気に規定フォーマット通りなので今度こそ断れません……

「30冊からぁ? 1冊でイイからもっと安くならないの?」

 もうそんな事では驚かないZEと思いつつ、下がりませんと斬って捨てる従業員。食い下がる怪しい人、結局10冊で20%引きまで持って行きました。怪しい人完全勝利です。


 と、言うわけで完成いたしました『月刊GSサンデー5月号(偽)』仕上がりに満足した美神さん、それ以来毎年4月になると事務所に届いた本を神業の如き速さで打ち込みますが、見つかるリスクなどを鑑みて慎重にコトを進めると、どんなに早く行った場合でも1〜2週間は掛かってしまいます。

 /

 さてさて、美神除霊事務所に宅配便が届きました。

 そのとき運がいいのか悪いのか、居合わせたのは三人目を体内に抱えた母美智恵のみ、別に何の他意も無く受け取りに出ます。
 包装が破けている箇所があり、そこから見えるのは今月号のGSサンデー、相変わらず横島君とおキヌちゃんは圧倒的よね何て思いながらも、やけに配達が遅いわねと日付の確認のつもりで伝票を見て首を傾げます。
「有限会社 ねこ○しっぽ?
 一部ではあまりにも有名すぎる社名ですが、当然美智恵さんは見たことも聞いたこともありません、GSサンデーは「超」学館社出版です。不思議に思いながら、1冊にしてはやたらと大きな包み紙を開封します。

「なになに……御注文の印刷物、10冊お送り致します、見本誌は無しとのご契約ですので……」

 ここまで読み終えて何かを理解した美智恵さん、背後にはいくらでも時間を遡っちゃえる程の雷を背負っています。人工幽霊壱号は安全のためにブレーカーを落としました。パソコンを持っている人にとっては基本事項ですよね。

 /

「…と言う事があったのよ」
「で、その明らかに途中省略して何かを誤魔化した話と、俺がぐるぐる巻きに縛られている現状に何の関係があるっつーんですか?」
「ああもう五月蝿いわね! いいからアンタ、私のモノになりなさい」
「…………………………へ?」

 呆然とするぐるぐる巻き、再起動からの演算処理には時間が掛かりそうです。

「最後の手だったんだけどね、アンタを共同経営者にでもしちゃえば給料払わなくってもいいのよね〜、それにおキヌちゃんへの牽制にもなr…」
「……モノっ、そして共同っ! それはつまりはボクと共に生きてくれと願う遠回しなプロポーズでーーー」

 話の意味を理解し始めたと同時かやや早目、ぐるぐる巻きのロープ(結界付き)をすぽーんと脱ぎ捨て、手は「コ」の字を右に倒した形に、足は「コ」の字を左に倒した形に広げての美しいダイブ、教本通りの「ル△゜ンダイブ弐式」をキメます。ちなみに「壱式」は「前ならえ」の状態から両掌を合わせ飛び込む形のことを言い、「小さい前ならえ」から掌を合わせた形が「参式」となります(ダイビング教本『空を飛ぶヒト』〜民明書房刊〜より抜粋)

「阿呆かっ!」

 その位は当然のことながら予測している美神さん、構えていた神通棍でフルスイング、北海道民の夢を乗せた打球はライトスタンドへ吸い込まれますが、ウチの打球はいまどき逆に珍しい90リットルポリバケツ(青色・取っ手付き)へとすっぽり収まります。ある人は他誌で言いました、
『カウンターは威力4倍』と、目標は完全に沈黙です。

「まったく…どこをどうしたらそんな発想になるのかしら」

 大事な商売道具に付着した血液を拭いながら呟きます、道具の手入れと証拠の隠滅(?)は一流GSのたしなみですから。

「それはもう少し先の話なんだからね」

 磨き上げた神通棍を眺める美神さんの顔が赤いのは気のせいでしょう、たぶん。


 /あとがきにかえて

 いままではレス専で、作品は初投稿になります。
 まあ、これを機にまたレス専に戻るとは思いますが…
 企業名…関東の方ならわかりますかね? わからない方は○の部分に似た形「の」ひらがなを入れてレッツ検索です。


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