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▽レス始

「ある男の呟き(GS)」

U9 (2006-10-14 21:42)


――俺はいったい何処で、何処から間違ったんだろうな……。


 目覚めて半年。見飽きた白い天井を眺めながら、俺は心の中で何度となく呟いた台詞をまた呟く。

 漸く動くようになった右手を、顔の前まで持っていく。天井に取り付けられた蛍光灯の光りを遮り視界が暗くなる。

 此処、白石病院に入院して1年と3ヶ月。鍛え抜いた体は見るも無残に痩せ衰え、肌は青白くなった。


「俺はいったい何処で、何処から間違ったんだろうな……」

 今度は声に出して、もう1度呟く。いったい、何処で間違ってしまったのか……。


 俺の実家は寺。そして、両親は2人供ゴースト・スイーパーのライセンスを持っていた。両親は俺が生まれるまで常にGSとして戦い続け、俺が生まれてからは、家の道場で修業僧を育てる事に専念した。

 当然俺も物心付く前からGSに成るべく育てられ、俺自身も将来はGSに成るのが当たり前と思っていた。毎日の修行も辛くはあったが決して嫌ではなかった。若い修行僧達と一緒に修行をして気付いた事は、俺には常人より優れた才能があったって事だ。両親に教わった事は少し修行しれば直ぐに出来るようになったし、組み手をすれば自分の身長の倍もある修行僧にも負けた事がなかった。


――俺はいったい何処で、何処から間違ったんだろうな……。


 小学校に入学して、名前の事で虐められてからか……?

 それとも、一般人を半殺しした時か……?

 その事が原因で両親と殴り合いの喧嘩をした時か……?


――俺はいったい……何処で、何処から間違ったんだろうな……。


 俺は中学に上がった頃には一端の不良になっていた。原因は色々あるが霊能者って奴は一般人には受け入れ辛いものなのだろう。小学校の頃、俺の名前の事を馬鹿にした奴を病院送りにしてから周囲の目は明らかに変わった。

 当時の俺は『一般人』なんて人種が居る事自体知らなかった。

 軽い、小突く程度の霊波砲。これ一発で俺を馬鹿にしたガキは動かなくなった。それ以来、俺に近づく奴は俺の事を知らない奴か、身の程知らずの馬鹿だけになった。最も俺の事を知らないで近づいて来た奴は、俺が異能者だという事に気付くとすぐに離れて行ったが……。

 まあ、そんなこんなで俺の周囲で、俺に逆らう奴は居なくなった。

 実家の寺に、1人の目付き悪い同じ歳の男は来るまでは……。

 その男は、はっきり言って弱かった。ただ真っ直ぐ突っ込んでくる直情馬鹿。霊力はそれなり有る様だが、使い方がなってない素人。力の差は歴然。それでも、そいつは毎日突っかかって来ては俺に気絶させられた。

 馬鹿か。こいつは?

 そう思いながらも俺はこいつに興味を持った。普通、俺にやられた奴は二度と俺に逆らう事はなかった。だけどこいつは毎日しつこく突っかかって来る。

 俺がこいつに霊能を教える……いや、叩き込んむにはそう時間は掛からなかった。


――俺はいったい何処で、何処から間違ったんだろうな……。


 俺が目付きの悪い男に、初めて負けた時か……?

 新しく入って来たオカマに叩き伸された時か……?

 目付きの悪い男とオカマには、もう敵わないと思い知った時か……?


 それとも……


 堕ちた竜神と契約を結んだ時か……。


――俺はいったい何処で、何処から間違ったんだろうな……。


 俺の名前は、陰念。

 白竜寺 陰念。

 ただの一犯罪者だ。


 


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