インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「送り屋(GS+オリジナル)」

ダヌ (2006-09-03 16:29)


〜あなたが最後に見たいものはなんですか?〜


人は死を迎えると、ここに来ます。
ここは現世と来世の狭間。
人が次の生へと向かうまでの休憩所。

自らの人生を省みて、
最も大切だと思った瞬間を選んで頂き、
その思い出を一枚の写真にします。
その写真を持って、来世へと旅立って頂くというわけです。

私は皆さんが滞りなく旅立てるよう、お手伝いさせて頂く送り屋という者です。

さて、今週のお客様は…彼女ですか。


美神令子さんですね?
はじめまして。私は送り屋という者です。
え?はい。確かにあなたは成仏しましたよ。
はい?はい、その通りです。
ここは成仏した人が来る所なんですよ。
資料通り、頭の回転の早い方ですね。

では、改めてこれからのことについて説明いたします。
あなたにはここで一週間過ごして頂きます。
その間に今までの人生を思い出して頂きます。
その中で、あなたが大切だと思った瞬間を、
一枚だけ、私が写真にいたします。
それを持って、次の生へと旅立って頂くことになります。
どんな思い出でも構いません。必ず私が写真にいたします。
ただ、あくまでも一枚だけです。

いや、さすがにお金渡されても増やせませんって。
私を買収しようとした人は初めてですよ。

さて話しを戻しますか。
期限は、土曜日まで。今日を含めて残り6日ですね。
日曜日、あなたが旅立つことになる日ですが。
その日に写真をお渡しいたします。

あなたの記憶を編集したビデオもあります。
それを見て決めるもよし。
一人でゆっくり考えるのもよし。
話し相手が欲しいのなら私がお相手します。
撮りたい思い出が決まったら私にお伝えください。
それでは、お部屋の方に案内します。

<月曜日>

お、素直そうでかわいらしい女の子ですね。
え?そ、そんな。
どこでそんなに道を踏み間違えちゃったんですか?
は、はい。すいません。

しかし優しそうなお母さんですね。
へー、けどそこまでいくとマザコ…はい、すいません。
お父さんは…う、うん。なかなか個性的な方ですね。
い、いあや。そんなことないですよ。
もちろんです。

この若さでお母さんとお別れしたんですか。
確かに大きな傷が残ったんでしょうね。
けど、この出来事が今のあなたをつくりあげたんじゃないですか?
はは、そうですね。余計なお世話でしたね。
どうも踏み込みすぎましたかね。失礼しました。
今日はこれくらいでお暇しときます。

それでは、また明日。

<火曜日>

美神さんはGSだったんですね。
おっと、邪魔しちゃいましたか?
そうですか。それではお言葉に甘えて、失礼します。
はい?ええ。そうですね。
あなたが成仏させた方も何人かこちらに来ましたよ。
他の人のとこに行った方もいらっしゃると思いますけど。

お、場面が変わりましたね。
なるほど。このとき初めて力に目覚められたんですね?
しかしこの少年は面白いですね。
あれ?どうしたんですか?頬が赤いですよ?
そうだったんですか。これは失礼なことを申し上げました。

また、場面が変わりましたね。
これは…さっきの少年ですか?
はは、これはまた、なんともお茶目な出会いですね。
は、はい。すいません。

しかし、凄い人生送ってますねぇ。
あなたはもちろん、この少年なんて普通ならとっくにここに来てるはずですよ。
全く照れ隠しにも程がありますよ。
す…すいません。
その振り上げた拳を、
できれば収めてくれないかなぁ、とか思ったり願ったりなんですけど。

そ、それじゃまた明日。

<水曜日>

おはようございまーす。
また徹夜で見てたんですか?
って、ん?
こ、これって魔族じゃないですか。
魔族に狙われるなんて。
ほんと凄い人生送ってますねぇ。

そうなんですか。
この少年の恋人はお亡くなりになってしまったんですね。
確かに…それはあなたにとっても辛いことでしたね。
美神さん、美神さん!落ち着いてください。
私の立場で言うことではないかもしれませんけど。
生きている者は幸せにならないといけないんですよ。

あなたは間違っていません。
誰がなんと言おうと私が認めます。
きっとその少年の恋人も喜んでいる、と私は思いますよ。

少し落ち着いた方がいいみたいですね。
私はこれで失礼しますので、ゆっくり考えてみてください。
たまには外を散歩するのみいいと思いますよ。
ええ。はい。
それでは、失礼します。

<木曜日>

どうですか、ご気分は?
そうですか。それはよかった。

お、あの少年も立派になっちゃって。
おやおや、彼だけじゃなくて、美神さんもカチコチですね。
い、いや。はは、まあいいじゃないですか。
プロポーズの時なんてみんなこんな感じですよ。
って、あれ?
全くほんと素直じゃないですね。よくこの人生きてますね。
なんだ、結局嬉しかったんじゃないですか。
意地っ張りで素直じゃないと大変ですねぇって…
あーやめてください!
ほんとほんとすいませんすいません。

ほら、幸せそうな結婚式じゃないですか?
綺麗な新婦ですね。
って、そんなさも当然のように頷かれても。
いやー羨ましいですよ、ほんと。
え?はは、そうですね。
私にも好きな人の一人くらいいましたよ。
うーん、すいません。
自分のことは詳しくしゃべれないってことになってるんですよ。
すいませんね。

甘々の新婚生活の始まりですか。
え?あ、はい。それじゃ出て行きますよ。
けど、そんなに嫌がるなんて。
ひょっとして裸エ・プ・ロ・ンな〜んてやってたり…
は、はい!迅速かつ、的確、疾風怒濤の勢いで失礼します!
そ、それじゃーー!また明日ーーーーー!!

<金曜日>

おや、こんなとこにいたんですか。
探しちゃいましたよ。
たまにはベンチに腰掛けてぼんやりするのもいいですよね。

どうですか?決まりました?
そうですか。
少し差し出がましいかもしれませんが、私からもアドバイスしてよろしいですか?
ええ、ありがとうございます。
私なりにあなたと過ごして感じたことですけど。

あなたの娘にあの少女が転生してこなかったことを、
あなたが後悔する必要はないのですよ。
あなたが悪いとか、誰が悪いとかいうことではありません。
その少女もあなたがその後悔を引きずって来世へ向かうことなど、
望んでいないと思いますよ。

ここで大切なのは、あなたの人生において何が大切だったのか、見出すことです。
あなたがもう一度、自分の人生を思い返したら、
おのずと大切なものに気づくはずです。
明日までにその迷いが晴れることを、祈っています。

それでは、また明日。

<土曜日>

おはようございます、美神さん。
それで、あなたの大切な思い出は見つかりましたか?
そうですか。わかりました。
きちんと私が写真に撮ってきますよ。
安心してお待ちください。

それじゃ、行ってきますね。

<日曜日>

はい、これがお約束の写真です。中を見て、確認してください。

それにしても珍しいですよ。
みんなプロポーズの瞬間や、結婚式を望むんですけどね。

しっかり撮れてるでしょ?
あなたの元に彼が初めて来た瞬間ですよ。
頬についた紅葉もばっちり撮れてますよ。
そ、そんな。
やったのは美神さんじゃないですか。

やっぱり意地っ張りですね。
最後ぐらい素直になりません?
ほんとは気づいてたんじゃないんですか?
出会った時から彼に惹かれていたってことに。
あー、その反応で十分ですよ。
はは。

それでは、これでお別れです。
次の生でも、あなたに幸せが訪れることを祈っていますよ。
また…彼に会えるといいですね。
今度は少しは素直になった方がいいですよ。
はは、はい。
それでは…さよならです。


美神さんは少し照れたような笑顔を浮かべながら旅立っていきました。
ほんと相変わらず意地っ張りで素直じゃない方ですね。
おっと、もう姿をごまかす必要はないんでしたね。
元の姿に戻るとしますか。

ふう、やっぱりこの姿の方が落ち着くわね。
久々に懐かしい人に会えて嬉しかったけど、
美神さんには悪いことしちゃったかしら。
ま、ヨコシマを譲ってあげたんだから、許してくれるかしら?


私は送り屋。
人が次の生へと旅立つために、その準備をお手伝いする者。
美神さん、私はあなたのお手伝いできたかしら?


〜あとがき〜
はたしてどれだけの人が読んでくれるか不安ですが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。送り屋というのは、成仏した後に待っていて、次の生へのお土産を選ぶ手伝いをする人で、大切なものを選べなかった人、選ばなかった人は、選べるようになるまで送り屋として他の人を助ける、という設定です。彼女はあまりに多すぎて、迷ってたら、いつの間にか送り屋になっちゃってたってことにしました。おそらく彼に会うまでこの仕事を続けていくでしょう。
なんだか変な話とか、文章が変、と思った方がいらっしゃったらすいません。変な所とか、教えて頂けると幸いです。
それでは、失礼いたします。


△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze